通年性アレルギー性鼻炎の病態とそれに基づく薬物療法
増 山 敬 祐
山梨大学医学部耳鼻咽喉科 要 旨:アレルギー性鼻炎は罹患率が増加しかつ難治化の傾向にある。アレルギー性鼻炎は致死的 疾患ではないが,生活の質を著しく低下させるとともに最近では喘息の危険因子としても注目を集 めている。このレビューは,これまでに明らかにされたアレルギー性鼻炎の発症機序を整理し,そ の病態に応じた薬物療法について解説したものである。 I 型アレルギーの抗体 IgE が石坂夫妻により発見されて 37 年であるが,その後 I 型反応は肥満細 胞,IgE がトリガーとなって起こる即時反応のみならず遅発反応があること,遅発反応は好酸球を 主体としたアレルギー性炎症であること,などが明らかにされた。アレルギー性鼻炎においても, 遅発反応では好酸球を主体とした炎症細胞が浸潤し,ロイコトリエンやトロンボキサン A2 の産生 遊離を介して鼻閉を起こすことが推察された。薬物療法では,鼻閉型にこれらケミカルメディエタ ーの拮抗薬が登場したことである。また,強力な抗炎症作用を持つ局所ステロイド薬も,鼻粘膜に おける作用機序が明らかになった。病態解明はより適切な薬物治療を可能にする。難治例では,免 疫療法,手術療法などとの組み合わせが QOL の改善に寄与するものと考える。 キーワード アレルギー性炎症,ヒスタミン,ロイコトリエン,トロンボキサン A2,好酸球, Th2 サイトカイン はじめに 1960 年代の前半頃から慢性副鼻腔炎の減 少・軽症化に伴い,アレルギー性鼻炎が増加し ている。増加の原因は明らかではないが,抗原 量の増加が最も重要であると考えられている。 気密性の高い住宅,暖房やソファーといった快 適な住環境は人間だけでなくダニにとっても住 みやすいものとなり,ダニが増加した。子供た ちは室内で遊び抗原暴露の機会が増した。副鼻 腔炎を含め幼小児期における感染の減少によ り,鼻粘膜環境が Th1 優位から Th2 優位へと 変化した。その他,大気汚染,栄養,ストレス などがアレルギー性鼻炎の増加に関与している と推定されているが,ヒトでは確証に至ってい ない。 通年性アレルギー性鼻炎の有病率は推定で約 10 ∼ 20 %,花粉症は約 10 ∼ 15 %であるが, 最近では両者は近づきつつありかつ増加の傾向 にある1)。 発症機序 通年性アレルギー性鼻炎の病因抗原の主なも のは吸入性抗原で,ヒョウヒダニ(ハウスダス トの主要抗原)が重要で,その他真菌,昆虫類 などがある。以前通年性はダニ,季節性は花粉 であったが,最近では重複感作症例も増え花粉 症においても通年性に症状を認める場合がある。 〒 409-3898 山梨県中巨摩郡玉穂町下河東 1110 受付: 2003 年 7 月 25 日 受理: 2003 年 8 月 1 日総 説
まず特異的な吸入性抗原に対する IgE 抗体の 産生が起こること,そして,その抗体が鼻粘膜 に分布する好塩基性細胞上の IgE 受容体に固着 することにより感作が成立する。感作発症素因 は多因子的でありまだ解明が進んでいないが, その中で IgE 抗体産生素因が重要と考えられる。 感作が成立した個体の鼻粘膜に再度抗原が吸 入されると,鼻粘膜表層に分布する肥満細胞表 面で IgE 抗体と結合し,抗原抗体反応の結果, ケミカルメディエターが遊離される。このケミ カルメディエターが標的細胞を刺激して起こる 局所アナフィラキシー反応がアレルギー性鼻炎 の即時相である。発作性反復性のくしゃみ,水 性鼻漏,鼻閉は即時相の局所アナフィラキシー 反応によって起こる。即時相におけるケミカル メディエターではヒスタミンとロイコトリエンが 現在重要と思われる。すなわち,肥満細胞から 遊離されたヒスタミンが感覚神経である三叉神 経終末を刺激,この刺激が中枢へ伝達され上位 脊髄を経てくしゃみ反射に連なる。また,三叉 神経の求心性刺激は中枢で副交感神経へと伝達 され,鼻粘膜への遠心性刺激によりその末端か らアセチルコリンが遊離され,これが鼻腺を刺 激し鼻汁過多となる。一方,血管に作用したヒ スタミンやロイコトリエンは,血管透過性の亢進 や静脈叢における血管拡張や血流うっ滞を引き 起こす。その結果鼻粘膜が腫脹し鼻閉を起こす。 即時相に続き半数の症例で,6 ∼ 10 時間後 に鼻閉を主体とした遅発相が起こる。ケミカル メディエターとしてはロイコトリエンが重要で ある。また,遅発相では様々な炎症細胞浸潤が 起こり,好酸球,好塩基性細胞,好中球,CD4 陽性 T 細胞等の浸潤が認められる2–4)。局所で 活性化されたこれら炎症細胞は,ケミカルメデ ィエター,サイトカイン,顆粒球由来組織障害 性物質を遊離することにより,鼻粘膜組織の不 可逆性変化や慢性炎症を招来すると考えられる (図 1)。 図 1.アレルギー性鼻炎の発症機序 Hi :ヒスタミン,LT :ロイコトリエン,TX :トロンボキサン,NP :神経ペプチド NO :一酸化窒素,PG :プロスタグランディン,PAF :血小板活性化因子,SP :サブスタンス P
病 態 Ⅰ.即時反応および遅発反応における炎症細胞 とケミカルメディエター アレルギー性鼻炎の即時相における炎症細胞 の主役は肥満細胞である。そして,抗原抗体反 応後の結果起こる即時反応は,ヒスタミン,ロ イコトリエン(LTs),プロスタグランディン (PGs),トロンボキサン(TXs),ブラディキニ ンなどのケミカルメディエターが三叉神経,鼻 腺,鼻粘膜血管に作用することでそれぞれくし ゃみ,鼻汁分泌,鼻閉が発現する。以下,各症 状別にケミカルメディエターの役割について述 べる。 1)くしゃみ くしゃみは三叉神経感覚終末刺激によって起 こる。くしゃみ反射に関与する神経伝達物質は substance P(SP),calcitonin gene-relataed pep-tide(CGRP)である5,6)。くしゃみを誘発する ケミカルメディエターはヒスタミンである。ヒ スタミン(H1 )受容体拮抗薬を投与すると抗 原誘発によるくしゃみ発作は抑制される。すな わち,ヒスタミンは三叉神経終末の H1 受容体 を刺激し,SP,CGRP の神経伝達物質によりそ の興奮を三叉神経知覚核に伝え,くしゃみ中枢 を経てくしゃみ反射を起こす。 2)水様性鼻汁 即時相にみられる鼻汁分泌は,ヒスタミンに よる三叉神経感覚終末刺激を介した副交感神経 反射によるものがほとんどである7)。ケミカル メディエターが鼻粘膜上皮細胞や鼻腺に作用し て鼻汁分泌を起こす可能性もあるが,その機序 は非常に少ない。 3)鼻閉 即時相にみられる鼻閉出現の機序は,容積血 管平滑筋の弛緩による血管拡張と血管の透過性 亢進による浮腫である。これらは,ケミカルメ ディエターの容積血管平滑筋および細静脈に対 する直接作用と感覚神経終末刺激に始まる血管 反射がそれぞれ関与する8)。 鼻粘膜抗原誘発の研究によると,即時相に遊 離される各種ケミカルメディエターの量を測定 したところ,ヒスタミン約 60 ∼ 70 ng,ペプチ ド LTs 約 2 ∼ 2.5 ng, PG 約 3 ng, TX B2 約 0.009 ng であった8)。ペプチド LTs の量はヒス タミンの約 30 分の 1 だが,弛緩作用の強さは 10 万倍であることから,即時相の容積血管拡 張による鼻閉に最も強く関与しているケミカル メディエターはペプチド LTs であると推測され る。一方,遅発相では様々な炎症細胞浸潤を認 めるが,なかでも好酸球が多い。また,遅発相 で遊離されたケミカルメディエターはペプチド LTs が主でありその量は 1 ng 程度である。した がって,遅発相の容積血管拡張によって引き起 こされる鼻閉の主体はペプチド LTs であり,主 に好酸球によって産生される LTs が鼻閉を惹起 すると考えられる。 さて,鼻閉に関与するもうひとつのケミカル メディエターは TxA2 である。 しかし,TxA2 のアナログ U6619 を作用させても容積血管平 滑筋の弛緩作用は認められず,またアレルギー 性鼻炎の患者の鼻粘膜に U6619 を投与しても 明らかな鼻粘膜の腫脹を認めない8)。ところが, TxA2 受容体拮抗薬(ラマトロバン)を内服す ると,抗原誘発後の鼻閉あるいは鼻汁が抑制さ れる9)。近年,ラマトロバンには Th2 細胞,好 酸球,好塩基球などに発現する PGD2 の受容体 である CRTH2 に対する拮抗作用があることが 報告され,PGD2 受容体の遮断効果を介し遅発 相での炎症細胞の遊走や脱顆粒を抑制する可能 性が示唆される10)。 Ⅱ.鼻粘膜におけるサイトカイン・ケモカイン の発現 Durham ら11)は鼻粘膜遅発相に発現するサ イトカインの mRNA を検出し,コントロール に 比 べ 有 意 な IL-4, IL-5, GM-CSF, IL-3 mRNA の発現を認めた。また,IL-13 も mRNA および蛋白レベルで発現することがわかってい る12)。
鼻粘膜におけるサイトカイン発現細胞の検討 では,IL-4,IL-5,IL-13 を発現する細胞の主体 は T 細胞である12–14)。これらは Th2 サイトカ
インであり,IL-4,IL-13 は前述した IgE の産 生や好酸球の血管内皮細胞への接着に関与す る。好酸球の血管内皮細胞への接着では,血管 内皮細胞の VCAM-1 の発現が IL-4,IL-13 によ り増強され,VCAM-1 のリガンドである好酸球 側の VLA-4 と選択的に結合することで動きが 止まり,血管内皮を越えて組織内への通過が可 能となる。また IL-5 は好酸球前駆細胞の産生, 好酸球の成熟・活性化・生存延長に関わる。特 筆すべきは T 細胞のみならず肥満細胞,好酸 球もこれらサイトカインを産生する点である。 また,遅発相の CD4 陽性 T 細胞の浸潤には上 皮および粘膜固有層に発現がみられる IL-16 が 関与している15)。 さらに,Th2 サイトカインのみならず,アレ ルギー非特異的な向炎症性サイトカインである IL-1,TNF-α,IL-6 なども16–18),即時相や遅発 相での産生が確認されている。これらは,炎症 細胞動員に関わる血管内皮細胞の接着分子発現 増強,リンパ球機能の活性化,アラキドン酸代 謝の亢進など幅広く炎症反応の増幅を引き起こ すことが示唆されている。 次に,ケモカインの発現に関して好酸球動員 に関与する RANTES と Eotaxin について述べ る。抗原誘発 6 時間後の鼻粘膜遅発相では, RANTES mRNA および蛋白の発現が認められ る19)。一方,Eotaxin は鼻粘膜上皮および粘膜 固有層に正常者群においても恒常的に発現し, アレルギー性鼻炎群の遅発相ではその発現が増 強する20)。これらケモカインの鼻粘膜での主 な発現細胞はマクロファージである。また, MCP-1, -3, -4 の産生も報告されている21,22)。こ れらは,好酸球,T 細胞,単核球の遊走因子で あり炎症細胞の動員に深く関っていると考えら れる。 以上,局所アナフィラキシー反応で始まった アレルギー性鼻炎は,様々な炎症細胞が上皮細 胞や腺細胞などの構成細胞と複雑なネットワー クを形成し,次第に過敏性を獲得し不可逆性の 慢性炎症反応へと様相を変えていくと推察され る。 臨 床 像 通年性アレルギー性鼻炎の症状は,発作性反 復性のくしゃみ,鼻内掻痒感,水性鼻汁,鼻閉 である。鼻の非特異的過敏性も亢進しており, 発作は朝起床時,冷房,風呂上がりの湯冷め時 などにも起こる。 ダニは夏の高温多湿期に増殖する。また,近 年では気密性の高い住宅のせいで 1 年中を通し てダニが増えている可能性もある。ダニは空中 を舞うことはないが,エアコンやクーラーに付 着したダニの影響で,その使用時に症状の増悪 をみる。 QOL 調査では,くしゃみ,鼻汁,鼻閉と相 関が強い項目は勉強・仕事・家事の支障,精神 集中不良であった。さらに,くしゃみ,鼻汁で はまわりの人への迷惑感が,鼻閉では睡眠障害 が強い相関を示した。このように,アレルギー 性鼻炎は致死的疾患ではないが,生活の質を障 害することが明白である23)。 治療について 完治が難しい慢性疾患であり,病気や治療に 対する理解が得られるように,患者とのコミュ ニケーションをよくし QOL の改善を目指す。 抗原の回避が基本であるが,本論文では発症機 序を考慮した薬物療法を中心に話をすすめる。 薬物療法 通年性アレルギー性鼻炎の薬物治療で用いら れる,いわゆる抗アレルギー薬について述べる。 ここに言う抗アレルギー薬とは,ケミカルメデ ィエター遊離抑制薬,受容体拮抗薬,Th2 サイ トカイン阻害薬,ステロイド薬などを含んだも のである(表 1)。さらに,重症度や病型に応 じた治療法の選択が鼻アレルギーガイドライン に表示されている(表 2)。以下主な薬物につ いて解説する。 1)ケミカルメディエター遊離抑制薬(肥満
1 ケミカルメディエター遊離抑制薬 (肥満細胞安定薬) クロモグリク酸ナトリウム(インタール),トラニラスト(リザベン), ペミロラストカリウム(アレギサール,ペミラストン) 2 ケミカルメディエター受容体拮抗薬 1)抗ヒスタミン薬 第 1 世代:d-マレイン酸クロルフェニラミン(ポララミン,レク リカ),フマル酸クレマスチン(タベジール,ヒスタベ リン)など 第 2 世代:フマル酸ケトチフェン(ザジテン),塩酸アゼラスチン (アゼプチン),オキサトミド(セルテクト),メキタジ ン(ゼスラン,ニポラジン),フマル酸エメカスチン (ダレン,レミカット),塩酸エピナスチン(アレジオ ン),エバスチン(エバステル),塩酸セチリジン(ジ ルテック),塩酸レボカバスチン(リボスチン),ベシ ル酸ベボタスチン(タリオン),塩酸フェキソフェナジ ン(アレグラ),塩酸オロパタジン(アレロック),ロ ラタジン(クラリチン) 2)抗ロイコトリエン薬 プランルカスト水和物(オノン) 3)抗トロンボキサン A2 薬 ラマトロバン(バイナス) 3 Th2 サイトカイン阻害薬 トシル酸スプラタスト(アイピーディ) 4 ステロイド薬 1)局所用:プロピオン酸ベクロメタゾン(ベコナーゼ,アルデシン, リノコート),フルニソリド(シナクリン),プロピオン 酸フルチカゾン(フルナーゼ) 2)経口用:ベタメタゾン・ d -クルルフェニラミン合剤(セレスタミン) 5 その他 変調療法薬,生物製剤,漢方薬 表 1.アレルギー性鼻炎用抗アレルギー薬 (鼻アレルギー診療ガイドライン 2002 年版(改訂第 4 版)改変 ) 表 2.治療法の選択 症状が改善してもすぐには投薬を中止せず,数ヶ月の安定を確かめて,ステップダウンしていく。 (鼻アレルギー診療ガイドライン 2002 年版(改訂第 4 版)改変 ) 重症度 軽 症 中 等 症 重 症 病 型 くしゃみ・鼻漏型 鼻閉型 くしゃみ・鼻漏型 鼻閉型 治 療 1 第 2 世代 抗ヒスタミン薬 2 遊離抑制薬 1, 2 いずれか一つ 1 第 2 世代 抗ヒスタミン薬 2 遊離抑制薬 3 局所ステロイド薬 1 LTs 拮抗薬 2 TXA2拮抗薬 3 局所ステロイド薬 局所ステロイド薬 + 第 2 世代 抗ヒスタミン薬 + LTs 拮抗薬または TXA2 拮抗薬 必 要 に 応 じ て 点 鼻 血 管 収 縮 薬 を 治 療 開 始 時 の 5 ∼ 7 日 間に限り用いる 1, 2, 3 のいずれか一つ 必要に応じて 1 または 2 に 3 を併用する 鼻閉型で鼻腔形態異常を伴う症例では手術 特異的免疫療法 抗原除去・回避
細胞安定薬) 肥満細胞からのケミカルメディエター遊離を 抑制する薬剤としてクロモグリク酸ナトリウム (DSCG)(Chromolyn sodium)が 1967 年に開 発されて以来,局所用,経口用の本薬が多種類 開発,市販されており,欧米と比較しわが国の 特徴である。アレルギー性鼻炎の発症機序には 粘膜型肥満細胞が重要であるが,本薬は粘膜型 肥満細胞のケミカルメディエター遊離抑制作用 は弱く,動物の結合織型肥満細胞からのケミカ ルメディエター遊離抑制は証明されている。本 薬に共通した性質は,効果がマイルドで,臨床 的に十分な効果が認められるには 1 ∼ 2 週間の 連用が必要なことである。投与を続けると改善 率は増す。使い方としては,他剤を使用して中 等症から軽症へとステップダウンした時点で, 維持療法として用いるのがよい。また,花粉症 の初期治療にも,眠気や口渇などの副作用がな いため使用しやすい。局所用は刺激が軽度にあ り,経口薬は胃腸障害,肝障害を起こすことが あるので注意する。特にトラニラストではとき に肝障害,膀胱炎が発生する。 2)ケミカルメディエター受容体拮抗薬 発症メカニズムの最終段階の標的組織を作用 点とする。ケミカルメディエターとしてヒスタ ミン,ロイコトリエン,プロスタグランジン, トロンボキサン A2,血小板活性化因子,キニ ンなどが報告されているが,ヒスタミン,ロイ コトリエンを除き,病態への関与の機序につい ては十分明らかでない。現在,アレルギー性鼻 炎の治療には抗ヒスタミン薬,抗ロイコトリエ ン薬,抗トロンボキサン A2 薬が市販されてい る。 (1)抗ヒスタミン薬 第 1 世代抗ヒスタミン薬の効果発現時期は 10 ∼ 20 分と速いが,中枢鎮静,抗コリン作用 などの副作用が強い。初期第 2 世代の抗ヒスタ ミン薬(フマル酸ケトチフェン,オキサトミド, 塩酸アゼラスチン)は,抗ヒスタミン作用のほ かに多彩な抗アレルギー作用が実験的に明らか にされ,臨床的にも第 1 世代のそれより中枢鎮 静作用が軽く,鼻閉にもやや効果が強い。さら に,後期第 2 世代の抗ヒスタミン薬(メキタジ ン,塩酸エピナスチン,エバスチン,塩酸セチ リジン,塩酸フェキソフェナジン,ベシル酸ベ ボタスチン,塩酸オロパタジン,ロラタジン) では,持続が長く,眠気などの副作用が著しく 改善された。第 1 世代と比較した第 2 世代抗ヒ スタミン薬の特徴は,中枢鎮静,抗コリン作用 などの副作用が少ない,全般改善度や鼻閉に対 する効果がややよい,効果がマイルドのため発 現が遅く(1 ∼ 2 日),持続が長い,連用によ り改善率が上昇するなどである。主な抗ヒスタ ミン薬の相互作用については表 3 に示す。小児 は成人に比し中枢鎮静副作用が少ない。むしろ 興奮性作用をみることがある。 (2)抗ロイコトリエン薬 ロイコトリエンはアレルギー性鼻炎における 鼻粘膜血管透過性亢進,鼻粘膜浮腫に関わるケ ミカルメディエターの 1 つであり,その受容体 拮抗薬は,即時相および遅発相における鼻粘膜 腫脹を抑制する。その結果,鼻腔抵抗の上昇を 抑え,鼻閉を改善する。効果は内服開始後 1 週 で認められる。また,鼻粘膜への好酸球浸潤を 抑制することで鼻粘膜の過敏性を軽減し,さら にロイコトリエン D4 による鼻汁分泌を抑制す ることで,くしゃみや鼻汁にも効果がある。エ リスロマイシン,イトラコナゾールなどとの相 互作用があるので併用には注意が必要である。 副作用として,下痢,腹痛,ビリルビン上昇, 嘔気,白血球や血小板減少,肝機能障害がみら れることがある。 (3)抗トロンボキサン A2 薬 アレルギー性鼻炎における鼻粘膜血管透過性 の亢進や鼻腔抵抗の上昇に対する抑制作用を有 し,鼻閉を改善する。また,好酸球浸潤を抑制 することで鼻粘膜の過敏性を減弱し,くしゃみ, 鼻汁に対する効果も認められるという。効果発 現は比較的緩徐で,自覚症状の改善がピークに 達するまで 4 ∼ 8 週間を要する。本剤は血小板 凝集能を抑制するため,抗血小板剤,血栓溶解 剤,抗凝固剤との併用に注意する。その他,サ
リチル酸系製剤,テオフィリンとも相互作用が ある。副作用として,稀に肝機能障害,腹痛, 頭痛・頭重,出血傾向を認め,注意が必要であ る。 3)ステロイド薬 I 型アレルギーにおけるステロイド薬の作用 は抗炎症作用にある。主に点鼻ステロイド薬が 使われる。粘膜型肥満細胞,好酸球,リンパ球 の局所浸潤の抑制,サイトカイン(IL-1, 2, 3, 4, 5, 6, 8,IFN-γ, GM-CSF)の産生放出抑制,血 管透過性や腺分泌の抑制,アラキドン酸代謝の 阻止によるロイコトリエン,プロスタグランジ ン産生の抑制,その他一般的抗炎症効果が作用 機序として考えられる。遅発相にのみならず, 連用すれば即時相にも有効である。 点鼻ステロイド薬は,いずれも微量で局所効 果が強く,吸収されにくく,吸収されてもすぐ に分解されるため 1 年以上の連用でも全身的副 作用は少なく,効果は確実である。局所用のた め軽度の鼻内刺激感,乾燥感,鼻出血が冬期の 空気乾燥時にときにみられる。本剤は効果発現 が早く,約 1 日で効果が出現する。長期連用に より改善率は上がる。重症例にも効果があり, 切れ味がよく著効例も多い。抗ヒスタミン薬に 抵抗する鼻閉にも有効で,血管収縮(α交感神 経刺激)点鼻薬の離脱にも有効である。 局所ステロイド薬では制御できない症例(重 症・最重症。難治例)に対してステロイド薬内 服を行なうこともある。抗ヒスタミン薬(d-マ レイン酸クロルフェニラミン)とベタメソゾン 表 3.主な抗ヒスタミン薬の相互作用 *構造式からは第 1 世代フェノチアジン系抗ヒスタミン薬の新薬に属するが,中枢抑制,抗コリン作用が第 2 世代抗ヒスタミン薬と同程度なので,第 2 世代に入れた。 +は,併用薬各欄の共通の相互作用にプラスされることを示す。 (鼻アレルギー診療ガイドライン 2002 年版(改訂第 4 版)改変 ) アレルギー用薬 併 用 薬 相互作用 第 1 世 代 抗 ヒ ス タ ミ ン 薬 エタノールアミン系 (レスタミン,タベジールなど) ピペラジン系 (ホモクロミンなど) ピペリジン系 (ペリアクチンなど) プロピルアミン系 (ポララミン,クロルフェニラミンなど) フェノチアジン系 (ピレチア,アリメジンなど) 中枢神経抑制薬, MAO 阻害薬, 抗コリン薬, アルコール 相互作用増強 第 2 世 代 抗 ヒ ス タ ミ ン 薬 メキタジン * (ゼスラン,ニポラジン) フマル酸ケトチフェン (ザジテン) オキサトミド (セルテクト) 中枢神経抑制薬, MAO 阻害薬, 抗コリン薬, アルコール 相互作用増強 ●プロピルアミン系 +フェニルブタゾン 作用減弱 ノルエピネフリン 血圧上昇 ペハリン Na,ダルテパリン Na 作用減弱 ●フェノチアジン系 +降圧薬 作用増強 ●メキタジン +メトキサレン, 光線過敏症 トリオキシサレン
の合剤であるセレスタミンは比較的広く用いら れているが,ステロイド薬単独(プレドニゾロ ンなど)もときに用いられる。しかし,アレル ギー性鼻炎では短期間の使用にとどめるべきで ある。 おわりに 通年性アレルギー性鼻炎の発症機序とそれに 基づいた薬物療法について概説した。しかしな がら,重症あるいは難治性の症例では薬物療法 も無効であり,手術療法が選択されることもし ばしばである。それには,鼻粘膜の縮小と変調 を目的とした凝固壊死法(高周波電気凝固,レ ーザー,トリクロール酢酸など),鼻閉の改善 を主とした切除法(下鼻甲介粘膜や骨・鼻中隔 手術など),鼻漏を軽減する後鼻神経変性術な どがある。 また,唯一治癒または長期寛解を期待できる 方法である免疫療法も行われている。だが,現 在のところ日本で使用できる抗原はハウスダス トであり,標準化ダニ抗原は輸入に頼るほかな い。標準化されてないハウスダスト粗抗原は使 用すべきでないと WHO の見解書に明記されて いる24)。今後は,標準化ダニ抗原が日本で利 用できるようになることを希望するとともに, 最近話題となっている抗 IgE 抗体療法(スギ花 粉症で治験ずみ)25)についても使用可能となれ ば,免疫療法と組み合わせた新しい治療法の可 能性が広がるものと期待している。 文 献 1) 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会:鼻 アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花 粉症― 2002 年版(改訂第 4 版).ライフサイエ ンス,東京,2002. 2) 寺田脩久,安藤英樹,伊藤永子,杉山達朗,吉 野泰弘,ほか:鼻アレルギーとロイコトリエン (第 2 報):抗原誘発後の鼻腔洗浄液における ペプチドロイコトリエンおよび炎症細胞の経時 的変化.日耳鼻,92: 1337–1344, 1989. 3) Bascom R, Pipkorn U, Lichtenstein LM, Naclerio
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