Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,
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Title
歯ブラシの毛先
Author(s)
高柳, 篤史
Journal
歯科学報, 114(1): 27-29
URL
http://hdl.handle.net/10130/3238
Right
カ ラ ー ア ト ラ ス の 解 説
はじめに
日常のブラッシング行動は歯科疾患の予防や治療
経過にも大きく影響する。歯ブラシは主たる口腔清
掃用具として用いられ,多種多様な製品が市販され
ている。そのため,歯科診療においても,多様な歯
ブラシの特性を理解した上で,個々の患者の口腔内
状況や保健指導の受容性に合った道具の選択や個の
多様性に配慮した指導が重要である1)
。
歯ブラシの役割として,①口腔バイオフィルムの
物理的除去,②歯肉マッサージ,③歯磨剤の薬効成
分の局所送達 等が挙げられる。歯ブラシの毛先は
ブラッシング時に歯や歯肉に直接接する部位であ
り,毛先の形状は歯ブラシの機能にとって極めて重
要な部位である。そこで今回,歯ブラシの毛先の形
状と機能について解説する。
1)細部到達性を高めるための構造
齲蝕や歯周疾患の予防には,小窩裂溝,隣接面,
歯頸部の細く狭い部位のバイオフィルムを除去する
ことが重要である。そのため,毛先だけを細く削っ
たテーパード毛(図1a)やブリッスル全体が先端に
向かって徐々に細くなるように加工されている極細
毛(図1b)などがある。極細毛では通常のブリッス
ルに比べてたわみやすいために,材質にポリブチレ
ンテレフタレートが用いられている。近年,細部到
達性を高めた構造が付与された歯ブラシが増加して
いる。
ブリッスルの細い歯ブラシは細部到達性が向上す
る反面,清掃効率が低下する2)
。そのため,このよ
うな歯ブラシは日常生活において時間をかけたブ
ラッシングが受容できる患者に推奨される。また,
ブリッスルが細いと歯ブラシの使用によるブリッス
ルの変形がおこりやすい。そのため,ブリッスルの
細い歯ブラシは通常の歯ブラシよりも早めに歯ブラ
シを交換する必要がある。中でも極細毛は,ブリッ
スルのたわみがブリッスルの先端に集中するため,
長期使用しても歯ブラシ全体のブリッスルは広がり
にくいが,毛先の変形と磨耗のために清掃効率が低
下する。図2には,1日2回30日間使用した極細毛
の歯ブラシの植毛部(図2a)と毛先(図2b)を示し
た。外見上,ブリッスルに変形は生じていないが,
すでに毛先は変形と磨耗が生じている。
2)表面積を広げる構造
バイオフィルムを効率的に除去するためには,毛
先の表面積が広い方が効率的である。毛先の表面積
を広げるための構造には,毛先を細く3つに分けて
いる先端極細毛(図3a),毛先がらせん状になって
いるスパイラル毛(図3b),先端付近のブリッスル
を粗造にした研削毛(図3c)などがある。研削毛で
は先端部分が細くなるために,細部到達性にも有利
に働く。
毛先の表面積が増加することで,バイオフィルム
の除去効率が向上するだけでなく,歯磨剤に含まれ
る薬効成分の局所送達性にも有利に働く。特に,歯
磨剤に配合されているフッ化物を小窩裂溝などの齲
蝕好発部位に効率的に送達させることは,歯ブラシ
の重要な役割の一つである3)
。
3)歯肉の損傷を防ぐ構造
歯ブラシで歯肉を強く擦ると,歯肉が損傷するこ
とがある。そのため,歯肉の損傷を防ぐ構造として
毛先を丸く削ったラウンド毛(図4a)や毛先を球状
に加工した球状毛(図4b)の歯ブラシが用いられて
いる。特にラウンド毛の歯ブラシは,市販の歯ブラ
シで広く用いられている。
4)指向性を持たせた構造
歯ブラシは一般にヘッドの長軸方向に前後に動か
して使用するため,この方向に動かしたときに清掃
効率が高くなるように毛先が作られているものがあ
る。これらの代表的なものに,へら状毛(図5a)や
方形毛(図5b)がある。
5)バイオフィルムをかき取るための構造
ブリッスルの断面形態は一般には円形が大部分を
占めるが,特殊な歯ブラシとして,三角毛(図6a)
や菱形毛(図6b)がある。これらの歯ブラシでは毛
先が歯面と線状で接することで,バイオフィルムを
かき取る効果を高めることを目的とした構造であ
る。
文 献
1)高柳篤史:歯ブラシの機能と選択.p63−67,106⑵,
歯科学報,2006
2)高柳篤史:歯磨きのソムリエになる② 歯ブラシの選び
方.デンタルハイジーン p162−166,Vol.28(No2),2008
3)高柳篤史:セルフケアの処方箋 第1版(中川種昭,高柳
篤史,薄井由枝 編集)p44−47,医歯薬出版,東京,2009
歯ブラシの毛先
高 柳 篤 史
埼玉県
a.ヘッド部の外観 b.先端拡大図
図2 1日2回30日間使用後の極細毛の歯ブラシ
a.テーパード毛 b.極細毛
図1 細部到達性を高める構造
a.先端極細毛 b.スパイラル毛 c.研削毛
図3 表面積を広げる構造
a.ラウンド毛 b.球状毛
図4 歯肉の損傷を防ぐ構造
a.へら状毛 b.方形毛
図5 指向性を付与した構造
a.三角毛 b.菱形毛
図6 エッジで歯垢をかきとる構造