• 検索結果がありません。

相模川水系におけるタイワンシジミの侵入状況とシジミ亜科分類の変遷

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "相模川水系におけるタイワンシジミの侵入状況とシジミ亜科分類の変遷"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)Aclinia. 16: 11119. (March 2005). Bulletl'n of the Manazum Man'ne Faculty ofEducatllon and mLman. Labomtoり′. fw. Scl'ence Educatllon,. Scl'ences, Yokolzama. Natl'onal. Unl'verslty. 相模川水系におけるタイワンシジミの侵入状況と シジミ亜科分類の変遷 園原哲司 Invasion. numL'nea. of Coyblcu)a taxonomical. into the Sagami of Sub. change. family. river. system. and. Corbiculinae.. Tetsuji Sonohara Abstract. determine. :. has. We. collected. observed. invasion of exotic. whether. disappeared. and. from. CoL-bl'cuh. Coybl'cula We. both the river systems.. samples. Huml'neB. in the Sagami. has occurred. not. could. river system. C. Huml'nea. find C. 1eaDa. and. has invaded. in either the. Sagami. Kaname. river. river. system. to. system. and indigenous. C. 1eana Kaname. or. river system. The. present. study suggests. that the invasion. C・ Huml'nea. of exotic. 生物部 〒259-1185 園原曹司:向上高等学校 (sonoherb@oregano. ocn.ne.jp ). result. in the extinction. 神奈川県伊勢原市見附島411. of the indigenous. C・ 1eana・. TELO463-9610411. イワンシジミの生息状況を明らかにする目的で,. はじめに タイワンシジミCozbl'cuh. may. Html'neaはシジミ科. 2001年に伊勢原市内の金目川水系4河川(園原, 2002), 2002年相模川右岸流域, 2003年相模川左 岸流域の各河川,水路において淡水性シジミ類の. の1種で,台湾,中国をはじめ束アジア各地の 淡水域に分布している(黒住, 2000)。タイワ ンシジミは日本産マシジミC.1eana. Prime,. 1864. 生息調査を行った。その結果,相模川水系及び. と形態上大変類似しており,遺伝的にも極めて. 金目川水系全域の122ケ所の調査地点のうち58ケ. 近い。マシジミはタイワンシジミのシノニムで. 所でタイワンシジミの生息を確認した。在来種の. あるとの見方もあり,分類学的な扱いが定まっ. マシジミが生息していたのは厚木市内の-ケ所の. ていない(古丸,. 2003)。全国的にタイワンシ. みであった。タイワンシジミが相模川の両岸全域. ジミ類が分布を広げているが,この仲間は単為. で分布を拡大する一方,マシジミは調査地域の河. 生殖,雄性発生で繁殖しているため,生物学的. 川や水路では絶滅に近い状況であることが判明し. な種の概念の適用が難しく,果たしてマシジミ. た。なお,生物多様性調査において神奈川県内. が独立種なのかという疑問が残り,レッドリス トの対象外とされている。 (近藤, 2000). でタイワンシジミの生息は-ケ所も報告されてい. ない(環境省生物多様性センター,. 相模川水系,金目川水系における在来種マシ. 1999年,向上高校周辺(神奈川県伊勢原市. ジミ及び外来種タイワンシジミの生息状況の全. 石田)の3面コンクリート農業用排水路で外 来種のタイワンシジミ(Corbl'cuhHuml'nea 1'nsulan's prime,. 1867)の生息を確認した。それ. 2002)。. f.. 体像とタイワンシジミ分布拡大の経緯を報告す. まで神奈川県内でタイワンシジミの生息に関す. る。なお,報告の詳細については神奈川自然史 資料(園原, 2005)に掲載しており,その内容. る報告はなかった。. の主要部分を図と共に引用する。あわせて,シ. 本研究では,相模川全流域でのマシジミ及び夕. ジミ科の分類の変遷を文献から紹介する。.

(2) 園原哲司. 12. 2.調査方法 調査は2001年4月から2003年9月まで,図2 に示した122地点で実施した。調査対象河川,水 路等は,相模川,中津川,求野川,小鮎川,恩曾 川,新玉川,鈴川,渋田川,歌川,戸張川,笠張 川,金目川,鳩川,姥川,道保川,八瀬川,永池川, 目久尻川,小出川,千ノ川,西部用水路,左岸用 水路,相模川両岸の用水路などで,城山町,愛川町, 厚木市,伊勢原市,平塚市,秦野市,相模原市, 座間市,海老名市,寒川町,茅ヶ崎市にまたがる。 貝類の採集には,直径30cmで3mm目のふるい を用いた。. 1地点の調査時間は平均約1時間と. し,採集した生月および貝殻は向上高校に生物 標本として保存した。調査地点の環境について も写真撮影を行った。 本報告では,タイワンシジミを殻表面が黄褐色,. 殻内面が白色ないし自紫色で両側歯が紫彩され (タイプI),殻表. ているものをCozbl'cuhsp.I. 面が緑がかった黄褐色,殻内面が紫色であるも. (タイプⅡ)とした。一方,. のをcorbl'cuhsp.II. 在来種であるマシジミC.1eana. (タイプⅢ)は殻. 表面が椎貝では黄緑色であり,老成すると黒色. O:夕.でワンシジミ笠削亀慮 車:タJI. p7ンシジミ鎗9)hの荘敢為戚 ●;シジミ頬汐見つからなかった故意 ★. :マシジミ生温地点. 図1.タイワンシジミ及びマシジミの生息分布. を帯び,一般に光沢は鈍く,殻頂部は剥落して 灰白色が露出する。殻内面は濃紫色である。. (1)相模川右岸における分布拡大の経緯. タイプⅠは,ダイワンシジミでもカネツケシ. 地図上にタイワンシジミの生息地点をプロッ. ジミ型と呼ばれるもので判別は比較的容易であ. トすると,相模川,中津川,荻野川を除き,そ. る。しかし,タイプⅡは殻の形態,色彩からは. のほとんどが西部用水路の下流側にあることが. マシジミによく似ているものもあり,容易に断. わかる(図1)。西部用水路では,中津川より下. 定できない。. 流は一年中少量ながら水が流れている。水路内. なお,採集したシジミ類の同定については姫 路市立水族館増田修氏に依頼した。. でカーブの内側など,砂や磯が堆積していると ころにはタイワンシジミが生息しており,椎貝. も多く見られた。砂や傑が堆積している箇所が, 4.結果および考察 Ⅰ.淡水性シジミ類の生息調査 相模川両岸122ケ所の調査地点のうち58ケ所 でタイワンシジミの生息を確認した(図1)。相 模川,金目川両水系全域,. 20河川中14河川にタ. イワンシジミが生息していた。また,相模川右. 岸の西部用水路,左岸の左岸用水路にもタイワ ンシジミは広範囲に生息していた。. 在来種のマシジミの生息を確認できたのは,厚 木市内のゴルフ場の遊水池1ケ所のみであった。. 言わばタイワンシジミの養殖場になっていた。. 相模川右岸流域では,タイワンシジミ分布拡 大の経路のひとつとして以下の結論に達した。. (彰相模川に何らかの原因で侵入し,分布を広げ たタイワンシジミの成員や椎貝が西部用水路. に侵入し,通年水が滑れず,砂棟が堆積して いるところで繁殖した。 (彰西部用水路,支水路で分布を拡大した成月や 椎貝が,支水路,水田を経由して排水路であ. る各河川に侵入し,定着した。.

(3) 相模川水系におけるタイワンシジミの侵入状況. ただし,上記の経緯で西部用水路より上流側. の相模川,中津川,荻野川にタイワンシジミが 生息していることは説明できない。. (2)相模川左岸における分布拡大の経緯 相模川右岸と同様に,左岸でもタイワンシジ ミは分布範囲を大きく広げていた。左岸用水路 と支水路をはじめ,道保川,鳩川,八瀬川,永 池川,小出川でタイワンシジミの生息が確認さ れた。姥川,目久尻川,千ノ川ではタイワンシ. ジミの生息は確認されなかった。 右岸では西部用水路の下流側にタイワンシジミ. 図2.座間市入谷の龍源水ホタルの公園水路. の生息箇所が集中していたが,左岸ではそういっ た傾向がみられなかった。右岸同様に用水路で繁. Ⅱ.シジミ亜科の分類の変遷. 殖し,支水路,水田を経由して各河川にシジミが. 1938)の中で, 「シジミ類の如く各地に鏡産する貝. 流れていくのは変わらないが,水質,底質の点で. 類では其地方の水流,水量,水質或は底質等の環. シジミの定着できる環境が少ないと推測される。 今後,水質,底質の詳細な調査が必要と考えている。. 境によって様々に変化しているから恰も多数の種. 左岸用水路よりも上流側の道保川,八瀬川に. 黒田徳米は,. (黒田,. 「日本産シジミ類の研究」. 類又は亜種が存するのではないかとさえ疑われる ばかりである。中略それで精密な採集調査を行う. タイワンシジミがいる理由は,左岸用水路と直. に随って大抵の場合に連続的中間型の出現によっ. 接には結びつかない。可能性として第一に考え. て区別の線を引き難きに至るものである。次に述べ. られることは,シジミそのものを意図的に放流. るように我国から既に20以上に上る多くの種名が. したり,負,他の貝,水草などの生物に付着し. 報告されているのは,上述の様な理由と命名者に. て持ち込まれるなど,いずれにしても人為的な. 提僕された標本の個体数が少数であった為め之等. 原因であろう。この点は,次の項目で議論する。. の変異型の連続を示すに十分でなかった為めとで あったと思われる。」と述べている。また,シジミ類. (3)ホタル保護活動によるタイワンシジミ分布拡大 左岸用水路内にはタイワンシジミとカワニナ が同所的に生息している。左岸用水路からカワ. 分類上の主要な特徴として,殻の彫刻(輪脈),内 部の色彩及び歯丘(nymph)の彫刻等を挙げている。 始めて本邦産のシジミ類を研究し,. 1864年マ. シジミとヤマトシジミを報告したTemplePrime. ニナと共にタイワンシジミを採集し,ホタルの 幼虫と共に放流している事実が判明した。寒川. 以来,専ら殻表及び殻内面の特徴によってシ. 町岡田の青少年広場付近の湧水(佐々木私信),. ジミ類は分類されてきた(黒田,. 及び座間市入谷の龍源水ホタルの公園,神奈川. 徳,雌雄異体か雌雄同体か,卵生か卵胎生か,. 県立座間谷戸山公園の水路である(佐藤私信)0. 浮遊期をもつか否か,染色体数等,発生学及び. タイワンシジミが生息している環境には,タ. 1938)。その. 遺伝学的特長をもって分類が進み現在に至って. イワンシジミが生息していることが多い。外来. いる。しかしながら,分類が確定する前に外来. 種のタイワンシジミを在来種マシジミと誤同定. 種シジミが国内に侵入し,自然繁殖する状況と. し,放流するケースが他にもあるものと推測さ. なった。外来種のシジミは,原産地である大陸. れる。シジミということで、外来種であることを. 地域において分類が十分に確立されているとは. 知っていても抵抗感なく自然水域へ放流してし. いいがたく,国内で怪しいシジミが産出しても,. まうのであろう。これに類した人為的な外来種. 種の同定や原産地の推定はかなり難しいという. シジミ放流の可能性が多くの地域で考えられる。. (中井,松田,. 2000)。.

(4) 14. 園原曹司. ミトコンドリアDNAによる分析でも,タイワ. 日本産規の新研究矢倉. 和≡郎. ンシジミとマシジミは非常に近縁であることが. 介類叢話1922(大正1. 1年). 示唆されており,別種とすべき差異であるのか. どうか,検討の余地があるという(石橋,. Ⅰ.殻は卵≡角形、漆黒の表皮を被り滑らか、 2002)。. 増巨‖ま私見としながらも,タイワンシジミの 外見上の特徴として,マシジミより広く規則的. な殻表面の輪肋,小月面,盾面の明瞭な色分け,. 幼貝の時多く放射状斑線を有す。歯丘滑らか に近く側歯短し、内面淡紫色又は白色。 (1)殻は栗葺状三角、渦脈密、漆黒の艶あり、 内面淡紫色、歯丘広く滑らか。. 内面腹縁部の色抜け等を紹介している。しかし,. ①ニホンシジミ. 殻内面が濃紫色の個体はマシジミとの分別が困. C.nliponensl's pils. ②サドシジミ. 難である(増田,. 2004a)。. さらに広い領域のミトコンドリアDNAによ. る分析により,在来種と外来種の同定,分別が 可能になることを期待する。. C.nliponensl's sadoensl's (彰ヒニホンシジミ dell'cata. C.nliponensl's. 以下,明治,大正,昭和のシジミ類の分類資. pils.. pils.. 1907. (2)殻卵三角形、渦脈不明瞭漆黒の艶あり、内. 料を抜粋の形で紹介する。分類の変遷と混乱を. 面多く乳白色罵心部に紫斑を有す、側歯僅湾. 窺い知ることができる。. 曲、前側歯長し。 (カヤマトシジミ. 日本産の規に就いて. 岩川友太郎. 介頬雑誌第3巻第1号1909(明治42年) Ⅰ.殻の前半部は後半部よりも小なり。 (丑マシジミ Prime,. 1864. 黒班は雲紋帯を有し、内面紫色、側歯長く殆 Pilsbry,. or由odonta. 1907. (2)歯丘の表面は、殆ど滑らかにして微かに租 構なり。 CoTbl'cuhjaponl'ca. prime,. C.1eana. 1878. C.al確/1enSl's. vl'oh Pilsbry,. 1907. pilsbry,. 1901. (丑カネツケシジミ C.pTOdacta. fuscataatTBta. Reinhardt,. 1878. Ⅱ.殻の前半部は,後半部よりも大なり。. Martens. (彰タイワンシジミ C.Huml'nea. Muller,. 1774. Ⅲ.殻亜≡角形大型、渦脈不明瞭漆黒の艶あり、. (丑アワジシジミ pilsbry,. 1901. 内面乳白色、外套膜線外帯責。 オオシジミ. (彰テクゴシジミ tTanSTlerSa. pils.. 色。. b.ニホンシジミ. awBjlenSl-s. Pils.. (2)穀亜三角形、渦脈荒く精粗なり、内面淡童. ③a.サドシジミ sadoensl's. ozthodonta. (彰アワジシジミ. (彰ムラサキシジミ Corbl'cuh. Prime. ②ナリヒラシジミ、オグラシジミ(方言). 1864. Coybl'cula sandal'Reinhardt,. Corbl'cuh. (1)殻大小不同あり、歯丘租植、内面濃紫色。 C.1eana. b.セタシジミ. Corbl'cuh. ど長緑、歯丘租提なり。 (丑マシジミ. (丑a.ヤマトシジミ. Corbl'cuh. Pils.. Ⅱ.殻亜≡角形、渦脈荒く精粗なり、幼貝の時. (彰ナリヒラシジミ. Corbl'cuh. C. saDdal'Reinh.. C.sandal'vl'oh. leana. CoLlbl'cuh. (多々タシジミ ④ムラサキシジミ. (1)歯丘の表面は、著しく粗糧なり。 Coybl'cuh. prime, C.japonl'ca. Martens,. 1877. CoLbl'cuh. maxl'ma. prime,. 1860.

(5) 15. 相模川水系におけるタイワンシジミの侵入状況. 日本産規類の研究黒田 VENUS. 8-1. 徳米 (昭和13年). 1938. =枚貝綱/掘足網1977(昭和52年) 雌雄異体卵生. ①ヤマトシジミ CoLTbl'cuh japonl'caprime. 汽水に多いが淡水にもすむ. (カヤマトシジミ. (参ニホンシジミ pils.. Syn.ニホンシジミ、チクゴシジミ、. ③サドシジミ. サドシジミ、ヒメニッポンシジミ sadoensl's pils.. nllPOnenSl's. (多々タシジミ. Ⅱ.セタシジミ. Corbl'cuh. ①セタシジミ. Syn.ムラサキシジミ. CoLblcuh. CoTbl'cula Huml'nea. (参ムラサキシジミ. Prime. leana. 外国産シジミ類. Pils.. ozihodonta. Ⅲ.ハナシジミ属 pils.. awBjlenSl's. ハナシジミ Cfomosana. (1)朝鮮. Ⅳ.オオシジミ属. Q)カンコウシジミ. C.subsulcata. 1905. ②チョウセンシジミ C.producta. Dall,. 1903. オオシジミ. Martens,. Yon. Prime,. アワジシジミ. Ⅳ.外国産シジミ頬. C.ehtl'or. 淡水棲 leana. Syn.ナリヒラシジミ、オクラシジミ、. ④アワジシジミ Cwb1-cub. Cozbl'cula. (丑マシジミ. ④ナリヒラシジミ、オグラシジミ(方言) CoTbl'cula. 1774. 胎生、卵生. 雌雄同体. Ⅲ.マシジミ種群 G)マシジミ leana. Muller,. Ⅱ.マシジミ属. Pils.. sandal'vl'oh. Corbl'cuh. 1878. sandal'Reinhardt,. ③タイワンシジミ. sandal'Reinh.. Coybl'cuh. 1964. Cotbl'cuhjaponl'caprime,. nlFPOnenSl's. CoLlbl'cuh. 忠重. Ⅰ.ヤマトシジミ属. Ⅰ.ヤマトシジミ種群. CoTbl'cula. 波部. 日本産軟体動物分類学. Syn?. Martens,. lion. (彰ウスシジミ C. LbapyTaCeaHeude". CJqlena. Clessin,. 1878 prime,. maXl'ma. 1860. 1905. Yon. Marts.,. 1905. (2)台湾 Q)タイワンシジミ C.Huml'nea. Muller,. 1774. ②カネツケシジミ C.1'nsulan's. prime,. 1867. ③オオシジミ C.subsulcata. Clessin,. ⑨ハナシジミ C.fomlOSana. 喜憂≡……. 1878 I. I.-;:; ヨ 塗. し I. Dall,. 1903. ・-:.;. +. A. 蔓 田. 垂. I. +. 言士 千. 図3.明治時代のシジミに関する文献. 1864.

(6) 16. 園原曹司. 5.まとめ. 林らによると,溶存性有機物濃度が高い水域 において,夏季の高水温条件下で底泥直上部の 溶存酸素が枯渇して無酸素状態となるような劣 悪条件下においても,タイワンシジミはニッチ. を得て増殖可能であるという(林・絵島・古丸・ 稲森,. 2004)。タイワンシジミはマシジミと同. 様に卵胎生で雄性発生という特殊な繁殖生態を 示し,動物界でも稀な自家受精で繁殖すること ができ,水系に1個体でも侵入すれば繁殖可能. である(古丸. 2001)。精子量等を比べても,タ. イワンシジミの繁殖能力はマシジミの比べはる. かに高い(古丸,. 図4.同所的に生息するカワニナとタイワンシジミ(神 奈川県城山町). 2003)。マシジミの生息地に. タイワンシジミが侵入すると数年で置換してし まう例も報告されており,タイワンシジミの分 布拡大が在来種であるマシジミの不在につなが る可能性が高い(増田・河野・片山, タイワンシジミ侵入の経緯について,. 月の混在する選別屑の河川への放棄」. 1998)。 「放流,坐 「出荷場や. 家庭での洗浄時などに,エラの中の椎貝が溝や川 へと猛れ,すみ着くこと」などが増田らから指摘 されているが,はっきりしたことは分かっていない. (増田, 2004b)。本調査でも,最初の侵入の経緯 は分からなかった。本調査の結果から推論できる ことは,何らかの理由で相模川に侵入したタイワ. ンシジミが西部用水路,左岸用水路など主要な用 水路に入り込み,通年生息し,支水路,水田を経 由して各河川に侵入,繁殖したということである。. 図5.粘着糸で親月に付着するタイワンシジミの椎貝. 人為的な経緯で侵入し,農業用水路といった人工. 的な施設が分布拡大の大きな要因になっている。 ここで特に問題なのは,ホタル放流といった自. 動植物等の移動は,外来種の分布拡大等,意 図しない事態を惹き起こしかねない。また,自. 然保護活動に携わっている人が,タイワンシジミ. 然保護活動に熱心な方が外来種とは知らずにタ. をマシジミと誤同定し,外来種を在来種と認識し,. イワンシジミを相模川左岸地域の広範囲に放流. タイワンシジミを拡散させていることである。ホ. していた事実も判明した。旭川,道保川,八瀬. タルの幼虫放流の際,カワニナを同じ水系,近く. 川でタイワンシジミの生息箇所は,多くがこの. の水路から採集して放流するといった細心の注. 放流地点の下流に位置する。相模川左岸の各河. 意を払ったとしても,殻長1mm前後のタイワン. 川におけるタイワンシジミ分布拡大の主要な原. シジミの椎貝は排除できないということである。 卵胎生で粘着性の糸を持つタイワンシジミの. 因は,こうした放流によるものと思われる。た. 椎貝は,カワニナにも水草,小石にも付着して. ミの生息箇所があり,タイワンシジミ分布拡大. いる。. (図5). だし,放流地点の約2km上流にもタイワンシジ. の原因は他にもあると思われるが,いずれにし ろ人為的要因による可能性が高い。.

(7) 17. 相模川水系におけるタイワンシジミの侵入状況. 6.今後にむけて. 明氏,千葉中央博物館の黒住耐二氏に種々のご. 以上の問題点を踏まえて,今後の課題としては,. 教示を頂いた。池辺進一氏からはシジミ類分類. (1)在来種のマシジミ及び外来種タイワンシジ. に関する貴重な資料を提供頂いた。ここに謹ん. ミをはじめとする淡水性シジミ類の分類を確定. で感謝の意を表する。. すること。カネツケシジミはマシジミとの区別. が容易であるが,殻内面が紫色系のタイワンシ ジミはマシジミとの区別が専門家でも困難であ. るという(増臥. 2004b)。しかしながら,在. 来種を保護するにも分類が確定しないと具体的 な対策に着手することが難しい。さらに広い領 域のミトコンドリアDNAの分析が進み,漁業 の対象ではないマシジミ及びタイワンシジミの 分類が確定することを期待する。 (2)一般に外来種シジミについては知られてお. らず,ホタルの幼虫,カワニナの放流に伴うタ イワンシジミの分布拡大に見られるように,自 然保護に関わる活動によって外来種が広がって いくケースさえある。環境教育の課題としても, 外来種に関する情報を広く発信する必要がある。. (3)全国的な外来種シジミネットワークづくり 及び在来種,外来種シジミの全国的な生息情報 の収集をする必要がある。環境教育の一環とし ても大学及び研究機閲と小・中・高校との連携 をはかる必要がある。. /ト・中・高校は全国に隈. なく分布しており,自然環境観測のアンテナと しては最も適している。一定レベルの目的意識. とノウハウを共有することができれば,地域の 研究者として大きな役割を持つことができる。 (4)記録と標本を残す。過去に相模川流域でど. のようなシジミが生息していたか,現在とどう 違うのか,神奈川県立生命の星・地球博物館, 国立博物館新宿分館で調査したが,該当する標 本が見出せなかった。地域の観測者として現在 の自然環境を記録し,標本を残す。望ましくは,. そうした記録と標本が博物館等の公的な施設に 保管されること。それがいますぐに役立たなく ても,将来に残す意義は大きい。 7.謝. 辞. 本報告を作成するに当たり,姫路市立博物館 の増田修氏には標本の同定をお願いし,多くの 情報を提供いただいた。また,三重大学の古丸. 献. 8.文. 石橋亮. 2002.移入シジミ及び日本産シジミの初期発 生過程と系統類縁関係に関する研究.三重大学大 学院生物資源学研究科博士学位論文 岩川友太郎. 1909.日本産の晩に就いて.介類雑誌, 3(1), 18-23. 環境省生物多様性センター.2002.生物多様性調査 動物分 布調査報告書(下) (陸産及び淡水産貝類).1217-1218 黒住耐二. 2000.日本における貝類の保全生物学. 42-56. 月刊海洋/号外20, 黒田徳米. 1938.日本産規類の研究.. vENUS8(1),. 21-36. 古丸明. 2001.国内産シジミ、外国産シジミの特性 について.第3回全国シジミ・シンポジウムin天 塩 44-47 シンポジウム資料, 古丸明. 2003.日本産シジミと外国産シジミの特性 について.第4回全国シジミ・シンポジウムin/ト. 川原シンポジウム資料, 53-57 近藤高貴.淡水貝類のレッドリスト. http://www.. osaka-kyoiku.. ac.jp/-kondo/redlist.htm 2002.金目川水系4河川におけるタイワン シジミの生息状況.神奈川自然誌資料, 23, 35-38 園原哲司. 2005.相模川水系におけるタイワンシジ ミの出現状況と神奈川県内のマシジミの生息状況. 神奈川自然誌資料, 26, 103-108 2000.日本における淡水貝類 中井克樹・桧田征也. 20 57-65. の外来種.月刊海洋/号外No. 2004.外来二 林紀夫・松島陣・古丸明・稲森雄平. 枚貝タイワンシジミ生息域拡大の要因.用水と排 水, 46(1), 69-75 波部思量. 1977.日本産軟体動物分類学 二枚貝綱 /掘足綱. pp. 238-241.図鑑の北隆館,東京 1998.西日本における 増田修・河野圭典・片山久. タイワンシジミ種群とシジミ属の不明種2種の産 因原哲司.. 出状況.兵庫陸水生物,. 49,. 22-35.. 増田修. 2004a.日本産淡水貝類図鑑②汽水域を含む 全国の淡水貝類. 200-211.ピーシーズ,東京 増田修. 2004b.日本の河川で侵略を始めたタイワン シジミ.自然保護,. Mar.. /Apr.. No.. 478,. 36-37. 矢倉和三郎. 1922.日本産鋭の新研究.介類叢話, 173-191.

(8) 18. 因原曹司. 1. Plate. I.在来種シジミ (1)マシジミ. C.. A.厚木市荻野 22.5×20.2×. 1eana. B.城山町上薬山 13.6. C.鎌倉市山崎. 28.5×24.7×15.5. 29.2×25.7×11.8. D.鎌倉市手広 16.4×. E.藤沢市川名. 14.7×10.8. 17.7×15.6×9.4. (Sと同所生息). (2)マシジミ(ァヮジシジミ型). F.座間市入谷. G.山北町田屋敷. 18.3×13.5×9.3. 24.7×19.4×14.1. (Lと同所生息). C.. 1eana. ( 3 ) Corbl'cula. H.厚木市東大竹 17.8×14.1×9.5. (Jと同所生息). sp.. Ⅰ.山梨県竜王町 20.5×16.3×10.9.

(9) 19. 相模川水系におけるタイワンシジミの侵入状況. Plate. 2. Ⅱ.外来種シジミ (1)タイワンシジミ(カネツケシジミ型). J.厚木市東大竹. K.厚木市三田. 18.2×15.6×10.8. 22.3×19.8×12.4. (Hと同所生息). (2)タイワンシジミ. 0.愛川町小沢 22.5×19.3×12.. C.. C.. Huml'neaf.. 1'nsularl's. L.座間市入谷. M.小田原市曽比. 13.5×12.0×8.6. 12.0×11.7×7.4. (Fと同所生息). (Qと同所生息). N.台湾. 花蓮産. 17.8×14.1×9.5. Huml'nea. P.城山町葉山島 20.1×18.3×12.1. Q.小田原市曽比 13.8×12.3×8.7. (Mと同所生息). R.鎌倉市今泉台 20.9×18.4×11.1. S.城山町上葉山 21.2×20.3×12.5. (Bと同所生息).

(10)

参照

関連したドキュメント

土壌汚染状況調査を行った場所=B地 ※2 指定調査機関確認書 調査対象地 =B地 ※2. 土壌汚染状況調査結果報告シート 調査対象地

平成30年 度秋 季調 査 より 、5地 点で 調査 を 実施 した ( 図 8-2( 227ペー ジ) 参照

【葛尾村 モニタリング状況(現地調査)】 【葛尾村 モニタリング状況(施工中)】 【川内村 モニタリング状況(施工中)】. ■実 施

(2)工場等廃止時の調査  ア  調査報告期限  イ  調査義務者  ウ  調査対象地  エ  汚染状況調査の方法  オ 

1970 年代後半から 80 年代にかけて,湾奥部の新浜湖や内湾の小櫃川河口域での調査

(79) 不当廉売された調査対象貨物の輸入の事実の有無を調査するための調査対象貨物と比較す

「緑の東京 10 年プロジ ェ ク ト 」 の 施 策 化 状 況 2012(平成 24 年3月). この施策化状況は、平成 19 年6月策定の「緑の東京 10

昭和 61 年度から平成 13 年度まで環境局が実施した「水生生物調査」の結果を本調査の 結果と合わせて表 3.3-5 に示す。. 平成