Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
Multiple HPV subtypes infection in Japanese oral
squamous cell carcinoma
Author(s)
大野, 啓介
Journal
歯科学報, 113(4): 464-465
URL
http://hdl.handle.net/10130/3189
Right
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的 近年,子宮頚部癌のリスクファクターである Human papillomavirus(HPV)の感染が口腔扁平上皮癌(OSCC) にも関与するとの報告がされている。頭頸部扁平上皮癌において HPV 陽性例は,陰性例より浸潤・転移の頻 度が少なく予後が良いことが報告されているものの,口腔からの HPV 検出方法やサンプルの違いによって0 ∼80%と検出率が一定ではなく,HPV との関係が不透明である。また HPV の遺伝子型である subtype との 相関性の報告も少ない。子宮頸部癌において HPV は,癌化に強く関連がある high risk type と関連のある low risk type が報告されている。今回我々は,37種類の HPV subtype が検出可能な Linear array genotyping kit を用い OSCC における検出率および subtype の検出を行ったので報告する。
2.研 究 方 法
東京歯科大学千葉病院口腔外科にて OSCC と診断され,外科的切除を施行した腫瘍組織検体93例と,52例 の正常健常人の頰粘膜をスクラビング法にて細胞(smear 検体)を採取した検体を対象とした。検体より DNA の抽出を行い,ビオチン化した PGMY プライマーを用いて PCR 増幅。Linear array 法にて PCR 増幅産物を 37種類の HPV 型特異的プローブとリバースハイブリダイゼーションを行い,HPV subtype の検出を目視下で
行った。HPV の感染率および subtype の検出と,臨床情報との相関性を検討した。 3.実験成績および考察
腫瘍組織検体からは93例中10例において HPV が検出された(10.7%)。また正常健常人の smear 検体から
は,52例中2例(3.8%)が検出された。腫瘍組織検体からの検出率は,近年わが国で報告されているものと同
様であった。10例の HPV 感染 OSCC 組織検体において High risk type および Low risk type の複合感染を認 めた。一方,正常健常人からは HPV16のみの単独感染であった。以上より,HPV の複合感染が OSCC の癌化 に関与していることが示唆された。最も多く検出されたのは,HPV33,35,51であった。人種および地域に 差はあるものの,OSCC 含め頭頸部癌では HPV16と18が高率に検出されると報告されているが,我々の研究 では HPV16は検出されず,HPV18が1例のみが検出された。しかし,子宮頚部において近年わが国では,欧 米と比べ HPV31,33,55,58が多い傾向にあり,HPV16,18の占める割合が少なくなってきていると報告さ れており,それと同様な傾向を示した。また OSCC と検体において,HPV 検出率および subtype 数と臨床情 氏 名(本 籍) おお の けい すけ
大
野
啓
介
(茨城県) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 1963 号(甲第1209号) 学 位 授 与 の 日 付 平成24年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 Multiple HPV subtypes infection in Japanese oral squamous cell carcinoma
掲 載 雑 誌 名 Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, Medicine, and Pathology http : //dx.doi.org/10.1016/j.ajoms.2013.01.001 論 文 審 査 委 員 (主査) 柴原 孝彦教授 (副査) 片倉 朗教授 田中 陽一教授 東 俊文教授 石原 和幸教授 歯科学報 Vol.113,No.4(2013) 464 ―116―
報において相関性は認めなかった。
4.結 論
今回我々の研究において,HPV の感染率および subtype 数と臨床情報において明らかな相関性は認めな かったが,正常健常人から HPV16の単独感染に対し OSCC 全ての検体から複数の sub type が検出されたこと から,HPV の複合感染が癌化に関与していることが示唆された。
論 文 審 査 の 要 旨
近年,子宮頚部癌のリスクファクターである Human papillomavirus(HPV)の感染が口腔扁平上皮癌(OSCC) にも関与するとの報告がされている。本研究の目的は Linear array 法を用い OSCC における HPV の感染率お よび subtype の検出を行い,臨床指標との相関性を検討することである。対象と方法は,東京歯科大学千葉 病院口腔外科にて OSCC と診断され,外科的切除を施行した腫瘍組織検体93例と,52例の正常健常人の頬粘 膜を smear で採取した検体(smear 検体)より DNA の抽出を行い,Linear array 法にて37種類の HPV 型特異 的プローブとリバースハイブリダイゼーションし HPV の検出を行い,統計学的解析を行った。結果は,腫瘍 組織93例中10例において HPV が検出された(10.7%)。また,正常健常人の smear 検体からは,52例中2例 (3.8%)が検出された。腫瘍組織検体からの検出率は,近年本邦で報告されているものと同様であった HPV 陽性 OSCC 組織検体10例全てにおいて2つ以上の複合感染を認めた。一方,正常健常人からは HPV16のみの 単独感染であった。以上より HPV の複合感染が OSCC の癌化に関与していることが示唆された。最も多く検 出されたのは,HPV33,35,51であったが,subtype 数と臨床情報において明らかな相関性は認めなかった。 近年,本邦の子宮頸癌は欧米と比較し HPV31,33,55,58が多い傾向にあり,HPV16,18の占める割合が少 なくなってきていると報告されている。今回我々もそれと同様な傾向を示した。今後は検体数を増やし,sub-type と臨床指標との相関性を検討し,p53や Rb などの癌抑制遺伝子との関連を解析すべきと考える。 本審査委員会では,1.HPV の感染 subtype の変遷および複合感染と癌化について。2.正常健常人の検 体の妥当性について。3.Linear array 法の感度について。などの質問があった。これらの質問に対しては, 1.本邦の子宮頸癌において HPV subtype の変遷が報告されており,口腔扁平上皮癌においても同様の傾向 を示すようになっていると考える。また子宮頸癌において HPV の複合感染はリスク因子であると報告されて おり,複合感染が癌化に関与している可能性がある。2.過去の報告においても頬粘膜からの細胞診で HPV の検出を行っている。また,角化層の比較的菲薄な部位であるため頬粘膜を選択した。3.方法論は確立され ており,マスターミックに dUTP を含み,偽陰性,偽陽性の発生を最小限にしている。と説明した。また, 論文の文章構成や英語表現についての指摘があり,修正が行われた。 本研究で得られた結果は,今後の歯学の進歩,発展に寄与するところ大であり,学位授与に値するものと判 定した。 歯科学報 Vol.113,No.4(2013) 465 ―117―