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Faraday Rotation Measureに基づく銀河系の磁場構造

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(1)

Faraday Rotation Measure

に基づく銀河系の

磁場構造

明星大学理工学研究科物理学専攻修士二年

小澤武揚

February 5,2013

概要 目的 一般的に渦巻き銀河はその腕に沿うような磁力線を持っている。我々の銀河系も同様に 渦巻き銀河であるが、内部から観測するという難しさのためにその磁力線の構造は明らかに なっていない。本研究ではFaraday Rotation Measureを用いて銀河系円盤の大域的磁場構 造を明らかにする。 方法 宇宙磁場の観測方法としてファラデー回転を利用するものがある。ファラデー回転と は、プラズマ中の磁場を直線偏光が通過した際その偏光角が回転する現象である。この時回転 角ϕϕ = RM × λ2となる。RMRotation Measureと呼ばれるもので観測により決定 される量である一方、電子の数密度と磁場の視線方向成分との積分により計算することもでき る。これを利用し銀河系に電子のモデルと磁場のモデルを与えRMを計算、観測値と計算値と のフィッティングを行い銀河系に最適な磁場モデルを探る。 結果 動径方向へピッチ角が増加する可変ピッチ角を用いたBSS(Bi-Symmetric Spiral)磁場 モデルを構築し、観測値に対しフィッティングを行い最適なパラメータを決定した。その結果 パラメータとしてpmin= 3.9◦pmax = 7.9◦xmin= 5.4± 0.1kpcxmax= 7.9± 0.4kpc

を決定することにより、χ2

red = 4.09で最適なBSSモデルを定めた。pminは螺旋のピッチ

角の最小値、pmaxは最大値、xminはピッチ角が増加し始める銀河中心からの距離、xmax

ピッチ角が最大値に達する距離をそれぞれ表す。 結論 ピッチ角を可変にするモデルを導入することにより、従来の固定ピッチ角を用いたBSS モデル以上のフィッティングを可能にした。outer方向の磁力線のピッチ角がp = 7.9± 0.4◦ であるのに対し、inner方向の磁力線はピッチ角p = 3.9± 0.1◦が最適値である。innerでは 磁力線の巻きつきがきつくなっている、または単純なBSSで表せない複雑な構造をしている 可能性があると考えられる。

(2)

1

序論

1.1

銀河磁場

磁場は宇宙のあらゆるところに存在する。身近なところでは地球の地磁気、フレアの原因と考え られる太陽磁場、さらに大きなスケールでは銀河にも磁場は存在する。ここで言う銀河の磁場とは 銀河に含まれる分子雲などに付随する磁場の総和のことではなく、銀河という天体それ自体が固有 に持つ大きな構造の磁場の事である。銀河磁場はシンクロトロン放射の起源となり、宇宙線の起動 を曲げ、さらにガスの運動に大きく影響を与えるなど重要な役割を果たす。 銀河は渦巻き銀河、楕円銀河、不規則銀河と大きく3種類に分類することができるが、特に渦巻 き銀河においてはその腕に沿うような磁場構造が存在することが知られている。このような磁場を 大域的磁場(regular fields)と呼び、数µGの値を持つ。また腕に沿うような磁場と共に様々な方 向を示すランダムな磁場も銀河内には存在する。例えば銀河系中心付近のフィラメントや、超新星 爆発の影響により圧縮されたと考えられる分子雲では1mG程度の磁場が観測されている(Beck et al.2001)。 渦巻き銀河の磁場の強さはシンクロトロン放射の観測によりM31、M33において平均数µG程 度、ガスリッチな銀河であるM51、M83、NGC6946などでは平均数十µG程である事が知られて いる(Beck et al.2009)。我々の銀河系に於いては中心から3kpc10µG、太陽近傍では6µGで あることが同様の観測により明らかにされている(Beck et al.2001)。

図1 —左よりring、ASS、BSS(Fujimoto & Sawa et al.1990)

代表的な渦巻銀河の大域的磁場構造の分類としてringモデル、ASS(Axi-Symmetric Spiral)モ

デル、BSS(Bi-Symmetric Spiral)モデルが存在する(図1参照)。それぞれの特徴を述べると、ま ずringモデルはその名前の通り円環状の磁場構造が存在するものをいう。ASSモデルは磁場が中 心に向かって流れこんでいき、銀河面上空から俯瞰した場合divB ̸= 0となる構造である。最後に BSSは一方から入ってきた磁力線が反対側へ抜けていくという構造を指す。M31など一部の銀河 ではring磁場構造を持つことが確認されているが、大半の渦巻き銀河では渦状腕に沿う磁場構造 を持っているようである(Sofue et al.1986)。

(3)

が存在する。ダイナモ理論とは銀河の差動回転に伴うガスの運動により磁場が増幅、維持される理 論である。もう一方の初期磁場理論は銀河が形成される以前から磁場が存在し、銀河の形成、回転 に伴い渦状の磁場が構成されるというものである。現在のところいずれが正しいのかはわかってい ない。 このように系外渦巻き銀河の磁場構造は徐々に明らかにされつつあるが、肝心な我々の銀河系に 於いてはその大域的磁場構造は未だに明らかにされていない。その最たる原因は我々が銀河系の内 部に存在することにある。銀河系の磁場の観測方法としてはゼーマン効果を用いるもの、シンクロ

トロン放射を用いるもの、Faraday Rotation Measureを用いるものなどがある。今回我々は銀河

系の大域的磁場構造を明らかにするためにFaraday Rotation Measureを利用し研究を行った。

1.2

ファラデー回転

プラズマを含む磁場中を直線偏光が通過すると通過した電磁波の偏光角が回転する。この現象を ファラデー回転と呼び宇宙空間の磁場の観測に広く用いられている。磁場中において熱電子はロー レンツ力により一様な向きに回転しながら運動している。即ち左右円偏光それぞれの屈折率の違い によりこの現象は起きる。直線偏光の回転量は電磁波の波長に比例しており、 ϕ = ϕ0+ RM× λ2 (1) で表される。ϕϕ0、RMλはそれぞれ偏光角、初期偏光角、Rotation Measure、電磁波の波長 である。 ここでRM はRotation Measureと呼ばれる量で RM = e 3 2πm2 ec4 ∫ neB∥dl = 810 ∫ ne[cm−3]B∥[µG]dl[kpc] (2) と天体から観測者までの積分で定義される。ne は電子の数密度、B は磁場の視線方向成分であ り、RMの値が正であるとき磁力線が観測者に向かって存在する。式(1)から分かる通りRMは 波長と偏光角との関数の傾きであるため、2波長以上の観測を行えば容易にRMの値を知ることが できる。RMから視線方向の磁場強度を得るには |B| ∼ RM neL (3) のように、RMは電子と磁場の積分量であるため観測領域の電子の情報を与える必要がある。

(4)

図2 —ファラデー回転概略図(http://en.wikipedia.org/wiki/Faraday effect) 以上のことからRMを得るには観測領域の背後に直線偏光を出す天体が必要であるが、それに はパルサーや系外銀河が用いられる。パルサーを用いたものとしてHan et al.2002によりノルマ アームでの磁場の向きが調べられている。図3のようにパルサーのRMの観測によって銀河系の 磁場は腕に沿い且つ磁場の向きが数回反転していることが確認できる。 図3 —パルサーRMによる銀河系の大域的磁場の向き(Han et al.2001)。中空記号は負の RMを表し、塗りつぶされたものは正のRMを表す。磁場の向きは矢印で表されている。

一方系外銀河を用いたものとしてTaylor et al.2009によるものがある。彼らはNational Radio

Astronomy Observatory VLA Sky Survey (NVSS)のデータを解析し37,543ものRMを全天に

渡り求めた。図4を見ると非常に特徴的な構造としてハローにクアドロポールなRMの分布が見

(5)

図4 —銀河系のRM分布図(Taylor et al.2009)。赤がRMが正、青が負を表す。円の大き さはRMの大きさを表し、−60◦< l <−30◦ の中心にある黒い円は強さ300[rad/m2]のRM の円の大きさを表している。 また銀河面に注目するとこちらも銀経に依存するような特徴的な構造を見ることができる。図 5は図4 において銀緯|b| < 3◦ のRMを抜き出したものである。RMの値が銀経に依存して波 打つように変化していることがわかる。これは銀河面に存在する渦状腕に沿う大域的磁場構造と、 その数回に渡る磁場反転の影響が現れたものと考えられる。またNVSSは南天に観測できない領 域がある。Taylor et al.2009のデータはNVSSを基にしているためδ =−40◦以下の領域が空白 となっている。本研究ではNota & Katgert et al.2010 による、主にSGPS(Southern Galactic

Plane Survey)の解析データを利用してこの領域を補完した。

このようにファラデー回転を利用した探査により日進月歩銀河系の磁場は明らかにされつつ有

る。次章ではこれら豊富なRMデータを利用した銀河系の大域的磁場構造の解析方法について解

(6)

-1000 -800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800 1000 -180 -150 -120 -90 -60 -30 0 30 60 90 120 150 180 RM[rad/m 2 ] Galactic longitude

Taylor 2009 avobe the plane Taylor 2009 below the plane Nota and Katgert 2009

図5 —Taylor et al.2009とNota & Katgert et al.2010のRMデータから銀緯|b| < 3◦

RMを抜き出したもの。

2

理論

前章で紹介した通り銀河系のRM分布はTaylor et al.2009によりその詳細な構造が明らかにさ れた(図4参照)。一方式(2) RM = 810ne[cm−3]B[µG]dl[kpc] にある通りRMは電子と磁場の分布が分かれば計算可能な量である。即ち銀河系に適当な電子と 磁場のモデルを用意し、計算されるRMが実測値と同様の値を出すようモデルを調整すれば銀河 系の大域的磁場構造を決定することができるのである。このような手法は既にStanev et al.1997、

Tinyakov & Tkachev et al.2002、Sun et al.2008、Pshirkov et al.2011などによって行われてい

るが未だに磁場構造は確定できていない。本研究ではTaylor et al.2009とNota & Katgert et

al.2010の2つの系外銀河によるRMデータをフィッティング対象として銀河系の大域的磁場モデ

ルの決定を図った。

Taylor et al.2009のRMデータはCondon et al.1998によるNVSSのデータを基に計算されて

いる。このNVSSのデータはストークスパラメータI、Q、Uの1364MHz、1435MHz、2バンド

による観測で全天の82%をカバーしたものである。これを基にTaylorらは37,543点のRM分布

(7)

またNota & Katgert et al.2010のRMデータは主にBrown et al.2007のSGPSRMデータを 再解析したものである。のデータより視線方向上に電子の大きなfluctuationがあると思しき RMデータを排除している。そのデータ数は107個で、253◦< l < 357◦|b| < 3◦をカバーする。 本研究は渦状腕に沿う大域的磁場構造を探ることを目的としているため、両データセットとも使 用する領域は|b| < 3◦のデータのみである。図4の銀河面付近を見ると分かる通り、銀緯を広く取 り過ぎるとハロー領域のクアドロポール構造が観測値に影響してくるという可能性もある。この |b| < 3◦ の領域の両データのソース数は計960個で、内Taylor et al.2009によるものが853個、

Nota & Katgert et al.2010のものが107個である。

RMの観測データには各々観測誤差がついている。その値は平均11.89± 5.8[rad/m2]である。 観測誤差の重み付けを行いフィッティングを行った場合データ数の少ない銀河中心方向のフィッ ティングが軽んじられてしまうため今回重み付けは行なわなかった。

2.1

銀河系の磁場モデル

図6 —z = 0におけるBSS磁場モデル俯瞰図(左)とBSS磁場モデルベクトル図(右)。青い 線は時計回りの磁力線、赤い線は反時計回りの磁力線を表す。黄色の線は磁場が反転する境界 であるB = 0のニュートラルシートを表している。太陽の位置から銀河中心に向かって磁力線 の数回の反転が再現できている。

磁場のモデルとして主にASS、BSS、ringの3タイプを考えることができるが、Han et al.2002

のパルサーRMの観測により銀河系の磁場は動径方向に向かい磁力線の向きが数回反転している ことがわかっている。磁力線の反転を再現するために今回BSSモデルを採用した。またBSSモデ ルを構築するため数学的には対数螺旋を利用した。 対数螺旋とは極座標系に於いて r = aebθ  (4) で表される曲線であり、abは任意の実数、eはネイピア数を表す。別名等角螺旋と呼ばれる様に 曲線の接線と動径とのなす角が常に一定となる特徴を持ち、bが正の時左巻きの螺旋となる。曲線

(8)

の接線と動径とのなす角をαとする時、αの余角p = 90◦− αをピッチ角と呼び α = 1 arctan b b = cot α (5) より、式(4)は r = aebθ = aeθ cot α = aeθ tan p (6) と変形できる。この場合もpが正の時左巻きの螺旋となる。 これを用いると、円筒座標系(rϕz)において螺旋磁場の成分は Br = B sin p Bϕ= B cos p Bz = 0 (7) と表される。B は円筒座標上任意の点での磁場の強さを表し B(r, ϕ, z) = D1D2sech2 z h (8) と決定した。D1、D2は D1= { B0RsunR R≥ Rc 5 R < Rc (9) D2= sin( lnRsunR tan p − ϕ + a) (10) である。ここでzは銀河面から垂直方向の距離、hはスケールハイト、Rは銀河系中心から任意の 点までの距離、Rsunは銀河系中心から太陽までの距離、B0は太陽近傍での磁場の強さ、Rcは磁 場の強さが一定である銀河中心からの半径、pは螺旋のピッチ角、ϕは銀河中心角、aは螺旋の初 期角度をそれぞれ表している。銀河系中心から太陽までの距離はRsun = 8.5kpcとした。 D1 は銀河中心から動径方向への磁場の減衰を表しているが、パラメータとしてB0 = 2µGRc= 3.4kpcという値を設定した。これらのパラメータを使うことにより同径方向への磁場の減衰 は図7の様になる。ノルマアームでの磁場の強さ約4.4µG(Han et al.2002)と太陽近傍での磁場 の強さ約1.4µG(Beck et al.2001)という研究結果に基づきこれらの値は決定された。なおこの関 数では中心に近づくほど反比例的に値が大きくなるため中心から3.4kpc以内の強さを5µG一定と した。

(9)

0 2 4 6 8 10 0 5 10 15 20 B[ µ G]

Distance R from the Galactic center[kpc]

図7 —R方向への磁束密度の減衰関数。横軸は銀河系中心からの距離、縦軸は磁場の強さを 表す。R = 3.4kpcより内側では赤線のB = 5µG一定となる。 次にD2は螺旋磁場の構造、つまり同径方向への磁場の反転を表す関数である。sin関数を使 い周期的に磁場の値を正負に振り磁場ベクトルの向きを変えている。磁場の向きはR = 8.5kpcϕ = 90◦、つまり太陽の位置で時計回りの磁力線が通るように式を立てている。パラメータaに よって太陽近傍での磁場の向きを微調整できるが、フィッティングの困難さから今回このパラメー タはa = 0◦と固定した。 最後にsech2 zh は銀河面垂直方向への磁場の減衰を表している。電子の分布と磁場強度に相関が

あると考え、NE2001モデルのthic disk componentの電子の減衰の仕方と同様の形にした。ス

ケールハイトhには1.83kpcという値が入る。 螺旋のピッチ角についてだが先行研究においてこの値は定数となっている。今回新たな試みとし てピッチ角を同径方向への関数として表した。 p = pmax− pmin xmax− xmin × (R − x min) + pmin  (11)

式(11)は銀河中心からxmin の位置よりRの一次関数として位置xmaxまでピッチ角をpmin

からpmaxまで増大させる関数である。これを用いることによりピッチ角を定数として与えるより

(10)

0 5 10 15 0 5 10 15 Pitch angle[degree]

Distance R from the Galactic center[kpc]

図8 —可変ピッチ角関数。グラフではフィッティングにより決められたベストフィットパラ

メータを代入、R = 5.4kpcからR = 7.9kpcまでピッチ角をp = 3.9◦からp = 7.9◦まで比例 的に増加させている。

2.2

NE2001

電子モデル

図9 —NE2001電子モデル俯瞰図(Cordes & Lazio et al.2002)

RMを計算するためには電子の密度が既知である必要がある。電子の観測方法としてパルサーの

Dispersion Measureを用いるものがある。Dispersion Measureは

DM =

nedl (12)

(11)

今回銀河系の電子の分布モデルとしてNE2001 電子モデルを使用した (Cordes & Lazio et

al.2002)。詳細な式については付録 A を参照されたい。このモデルはパルサーの Dispersion

Measureを基に銀河系の電子の分布を主にthin disk、thick disk、spiral componentの3成分に分

けそれぞれ算出している。NE2001ではthick diskのz方向の関数に(z = 0時、n0= 0.03cm−3

zh = 0.95kpc)という値が使われているが、今回 Gaensler et al. 2008 により改良された値 (z = 0時、n0= 0.014cm−3zh= 1.83kpc)を使用した。spiral componentに於いては電子が腕 に多く存在するようモデリングされている。しかし銀河系の腕はGeorgelin et al.1976により初め てそのおおまかな構造が明らかにされたが、その詳細な構造、特に太陽から腕までの距離、つまり 腕がいったいどこにあるのか未だ判然としていないことに留意する必要がある。NE2001では5本 の渦状腕が再現されているが、それぞれの腕のピッチ角の平均値は約12となっている。 図10 —図は構築したBSS磁場モデルとNE2001電子モデルを重ね合わせたもの。青線が時 計回りの磁束密度のピーク、赤線が反時計回りの磁束密度のピークをそれぞれ表す。黄色の線 は磁力線の向きが反転する|B| = 0の位置を表している。

(12)

3

方法

3.1

計算方法

-1000 -800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800 1000 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360 RM[rad/m 2 ] Galactic longitude

Taylor 2009 + Nota Katgert 2010

図11 —Taylor et al.2009とNota & Katgert et al.2010のRMデータから|b| < 3◦のRM

を抜き出したもの。横軸の描き方が異なるだけで図5と同様のものである。 式(2)を計算することによりRMを算出することができるが、銀河系中心を中心とした直交座標 系において(|x| = 20kpc|y| = 20kpc|z| = 10kpc)に達するまで太陽(x, y) = (0, 8.5)から積分 を行った。 またRMは銀経銀緯の関数となっているが、この2変数にはフィッティング対象となる960天 体それぞれの方向の銀経銀緯を代入した。したがって算出されたモデルをグラフ化すると、モデル が正しい場合図11の各観測値の平均を通るようなグラフになるはずである。

3.2

フィッティング方法

磁場モデルのベストフィットパラメータを決めるためにカイ二乗フィッティングを使用した。 χ2= Ni=1 (RMcal− RMobs)2i σi2 (13)

(13)

χ2red = χ 2 d.o.f. (14) ここでNは観測天体数、RMcalはモデルのRMの値、RMobs はRMの観測値、σはRMのモ デルからの分散、d.o.f.(degree of freedum)は自由度を表す。観測で得られるRMは大域的磁場由 来のもののみならず当然ランダムな磁場、及び電子のfluctuationを含んでいる。したがって適切 なモデルを選択できた場合RMの観測値はモデルから出されたRMの値の周りに正規分布すると 考えられるが、RMの分散を正確に見積もることは難しい。 -1000 -800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800 1000 -180 -150 -120 -90 -60 -30 0 30 60 90 120 150 180 RM[rad/m 2 ] Galactic longitude 0°<b≤1° 1°<b≤2° 2°<b≤3°

図12 —Taylor et al.2009とNota & Katgert et al.2010のRMデータから0◦< b≤ 3◦の データを抜き出し、各銀緯0◦< b≤ 1◦、1 < b≤ 2◦、2 < b≤ 3◦ごとに色分けしたもの。 銀緯が低いものほどinner方向でのRMの分散が大きいことがわかる。対照的にouter方向で は銀緯が低いものでもRMの分散は小さい。 しかしながら図11、12を見ると銀緯方向への寄与が少ないおかげで120◦≤ l < 260◦にかけて RMの値が比較的同じくらいの分散で存在していることがわかる。この範囲の平均値の関数を最小 二乗法により求め(RM = 1.71l− 311.39)分散を導出するとσ = 95.75[rad/m2]という値が得ら れる。つまり正しいモデルを使用した時に観測値がσ = 95.75[rad/m2]の標準偏差でモデルの周 りに正規分布すると考えるのである。 このσ を一律式(13)の分母として今回フィッティングを行った。当然120◦≤ l < 260◦という

outer方向で出した分散をinnerの方向に対して同様に使うことは不適切と考えられるが、inner

方向の分散を見積もることが難しい現状ではベターな選択と思われる。そのため算出されるχ2

(14)

は1以上の値に近づくことが予想され、統計的にはいささか不十分な結果となることを附記して おく。

またフィッティング範囲は|l| < 20◦を除く範囲で行った。我々の銀河系はbarを持つと示唆さ

れ中心の構造が複雑である可能性が高く、且つ渦状腕に沿う磁力線構造を考えているため中心付近 にはそもそも腕に沿う磁力線構造が存在し得ないと考えられるためである。

決定されたパラメータは式(11)中のpminpmaxxminxmaxの4パラメータである。パラ

メータの推定誤差はフィッティング時に1パラメータを可変にしたときχ2の値が∆χ2= 1増加 する点、2パラメータを可変にした時∆χ2 = 2.3増加する点で68.3%の信頼率を記述している。 具体的には固定ピッチ角のフィッティング時には1パラメータを可変、可変ピッチ角のフィッティ ング時には2パラメータを可変にしている。

4

結果

-1000 -800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800 1000 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360 RM[rad/m 2 ] Galactic longitude

Taylor 2009 + Nota Katgert 2010 Best fit Model

図13 —ベストフィットモデルと観測値との比較。

図13はピッチ角を可変とした式(11)を用いて計算されたベストフィットモデルをグラフ化、

図11 に重ねたものである。各パラメータpmin = 3.9◦pmax = 7.9◦xmin = 5.4± 0.1kpc

xmax = 7.9± 0.4kpcを決定することにより、χ2= 3917.63 for d.o.f. = 958(χ2red = 4.09)、とい

う値が得られた。以下可変ピッチ角の導入経緯について解説する。

(15)

-1000 -800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800 1000 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360 RM[rad/m 2 ] Galactic longitude

Taylor 2009 + Nota Katgert 2010

p=7.9°

図14 —パラメータとして固定ピッチ角p = 7.9◦を代入した場合のグラフ。

領域のみで可変ピッチ角を用いずピッチ角を固定しフィッティングを行うと(図17、1の範囲)、ベ

ストフィットパラメータp = 7.9± 0.4◦χ2= 942.87 for d.o.f. = 579 (χ2red = 1.63)となる(図

14参照)。 銀河系の腕のピッチ角が12°程度と言われていること考えると磁力線の巻き付き方はガスより もきついようである。図14を見ると240 < l < 300◦ においてモデルと観測値が比較的揃って いる。しかしながら更に中心方向である銀経l < 30◦l > 330◦付近では観測値に対しモデルが 合っていないように見える。またフィッティングを行ったにもかかわらず、銀経120◦≤ l < 260◦ 方向の傾きが明らかに一致していない。この傾きはパラメータaを変化させることにより調整でき る。しかしながら傾きを合わせると銀経240◦< l < 300◦のモデルと観測値が一致しないという問 題が生じる(図15参照)。フィッティング範囲を調整することによりaのベストな値を導くことが できるかもしれないが、今回はピッチ角のみ注目する事としa決定は見送った。今後aを決定する 場合、銀経240 < l < 300◦ を一致させるためにも銀経60◦< l < 300◦の範囲でフィッティング を行うことが妥当と考えられる。 次に 20 ≤ l < 120◦、260 ≤ l < 340◦ のinner 方向の領域で同様に可変ピッチ角を用い ず固定ピッチ角によるフィッティングを行うと(図17、2の範囲)、ベストフィットパラメータ p = 3.9± 0.1◦の時χ2= 3320.04 for d.o.f. = 379(χ2 red = 8.76)となる。ピッチ角の誤差が小さ いが、これは観測値の銀経方向への変動(図12における|l| < 90◦でのRMの波状の変動)がピッ チ角に対し敏感であることを表している。また図16を見ると図14のピッチ角p = 7.9◦の場合よ

(16)

-1000 -800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800 1000 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360 RM[rad/m 2 ] Galactic longitude

Taylor 2009 + Nota Katgert 2010

p=7.9° 図15 —パラメータに参考値として固定ピッチ角p = 7.9◦a = 272.3◦を代入した場合のグ ラフ。傾きを合わせると銀経240◦< l < 300◦方向でモデルが一致しない。 りも銀経120◦≤ l < 260◦方向の傾きの一致具合がさらに悪い。一方銀経l < 30◦l > 330◦付 近ではp = 7.9◦の時に対し良くフィッティングできていることが確認できる。 最後に中心方向−20◦ < l < 20◦を除く全領域を可変ピッチ各を用いずピッチ角を固定しフィッ ティングを行う(図17、1と2を合わせた範囲)。するとベストフィットパラメータp = 3.9± 0.1◦

の時χ2= 4339.14 for d.o.f. = 959(χ2red = 4.52)という値が得られた。

ピッチ角p = 3.9◦という値がベストフィットパラメータとして得られたが、全域でフィッティ ングを行うとよりピッチ角に敏感なinner方向を合わせるようにフィッティングが行われるようで ある。したがってinner方向のみのフィッティングを行った時のパラメータ、ピッチ角p = 3.9◦と 同様の値が得られたが、既にouter方向でのフィッティングで求められたとおりouter方向のピッ チ角のベストフィットパラメータはp = 7.9◦である。前述のとおりピッチ角p = 3.9◦ではピッチ 角p = 7.9◦の場合よりも銀経120 ≤ l < 260◦方向の傾きの一致具合が悪く、ピッチ角を固定し たままでは最適なモデルを構築できないことがわかる。 以上の理由からinner方向でのピッチ角p = 3.9◦、outer方向の7.9◦両条件を満たすよう式(11) のとおり可変ピッチ角を導入した。可変ピッチ角を用いることによりinner、outer両方向で適切 なピッチ角を連続的に表すことができている。既存の研究は固定ピッチ角のみで研究が行われてき たが、右の結果より螺旋の動径方向に対するピッチ角の変化を今後は考える必要があると思われ る。しかしながら、これだけ観測値の分散が大きいということはそれだけinner方向は複雑な構造

(17)

-1000 -800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800 1000 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360 RM[rad/m 2 ] Galactic longitude

Taylor 2009 + Nota Katgert 2010

p=3.9° 図16 —パラメータとして固定ピッチ角p = 3.9◦を代入した場合のグラフ。 をしているということであり、銀河系の中心に向かうほどピッチ角を小さくするというモデルを構 築したが、実際のところ現在使っている単純なBSS構造ではそもそもその複雑な構造を表しきれ ていないという可能性も否めない。 図17 —モデルのフィッティング範囲。円弧の範囲でフィッティングを行う。

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結論

BSSモデルにおいて可変ピッチ角を導入することにより以前まで使われてきた固定ピッチ角に 比べよりよいフィッティングを行えるようになった。銀河系のinnerではその分散の大きさから複 雑な磁力線構造をしていることが予想され、今回用いた単純なBSSモデルではその構造を表しき れていないのかもしれない。また銀経240◦< l < 300◦方向の傾きの不一致、これを決定するパラ メータaの調整についても解決してゆかなければならない。図10にある構築した磁場モデルと電 子モデルの渦状腕の不一致という問題も、渦状腕が一致する電子モデルを導入するという方法で次 の論文で扱っていく。 本研究ではBSSモデルを用いて大域的磁場構造の決定を図ったが、Sun et al.2008が賛成す るASS とring磁場を合わせたモデルなど数々の磁場モデルが提案されており、今後も銀河系の 大域的磁場構造を知るために研究が続けられていくことだろう。特にRMの観測値に関しては

Kronberg & Newton-McGee et al.2011の CGPS(Canadian Galactic Plane Survey)とSGPS

のデータを新たに編集したものなど年々その数が増つつある。本研究で構築した最適なBSSモデ

ルも今後出てくるデータによってはその信頼度が変わってくるだろう。 以下得られた結論を羅列する。

1. 新たにBSS磁場モデルを構築した。構築したBSS磁場モデルとNE2001電子モデルを使

い銀河系のRM分布を計算した。

2. Taylor et al.2009とNota & Katgert et al.2010の|l| < 3◦のRMデータとモデルのRM

とをフィッティングし、構築した磁場モデルに対する最適なパラメータを算出した。その結

果、pmin= 3.9◦pmax= 7.9◦xmin= 5.4± 0.1kpcxmax= 7.9± 0.4kpcχ2= 3917.63

for d.o.f. = 958(χ2 red = 4.09)という値が得られた。 3. 可変ピッチ角を導入することにより、BSSモデルにおいて従来のピッチ角を固定とする方 法よりも自然に大域的磁場構造を表した。 4. 銀河系のinner では単純なBSSモデルではフィッティングしきれていない可能性がある。 今後出てくる新たなRMデータが待たれる。 5. 太陽近傍の磁場の向きを決定するパラメータaによってモデルの傾向が大きく変わる。今回 a = 0としピッチ角のみに注目したが、aについてもその値を決める必要がある。 銀河系磁場研究では本研究も含め主に系外銀河のRMを用いてモデルの妥当性が検証されてい る。BSS磁場モデルを採用した理由としてパルサーRMの分布があるが、今後はこれらパルサー のRMデータもフィッティング対象とする事が良策と考えられる。パルサーRMをフィッティン グ対象とすれば近傍の磁場構造を正確に反映したモデルを構築でき、パラメータaを決定すること もできるだろう。

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図18 —CO観測による銀河系の渦状腕構造と磁場モデルとの比較(Nakanishi & Sofue et

al.2006)。青い線が時計回り、赤い線が反時計回りの磁力線を表す。

また今回使用したNE2001電子モデルは主にDispersion Measureを用いて銀河系全域の電子の

分布を見積もっている。NE2001の不確実さから、電子との相関を調べる必要があるがNakanishi

& Sofue et al.2003などの実際のHI分布をNE2001の代わりとして使うという方法も挙げられる。

謝辞

研究を行うにあたりご指導くださった祖父江義明教授、小野寺幸子助教、日比野由美様、並びに

RMの計算コードを提供してくださったSIfAの赤堀拓也様に深く感謝いたします。また同研究室

の津田裕也様には常日頃他愛も無い研究報告を行い多大な御迷惑をお掛けしました事をこの場を借 りてお詫び申し上げます。

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参考文献

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図 1 — 左より ring 、 ASS 、 BSS(Fujimoto &amp; Sawa et al.1990)
図 2 — ファラデー回転概略図 (http://en.wikipedia.org/wiki/Faraday effect) 以上のことから RM を得るには観測領域の背後に直線偏光を出す天体が必要であるが、それに はパルサーや系外銀河が用いられる。パルサーを用いたものとして Han et al.2002 によりノルマ アームでの磁場の向きが調べられている。図 3 のようにパルサーの RM の観測によって銀河系の 磁場は腕に沿い且つ磁場の向きが数回反転していることが確認できる。 図 3 — パルサー RM に
図 4 — 銀河系の RM 分布図 (Taylor et al.2009) 。赤が RM が正、青が負を表す。円の大き さは RM の大きさを表し、 − 60 ◦ &lt; l &lt; − 30 ◦ の中心にある黒い円は強さ 300[rad/m 2 ] の RM の円の大きさを表している。 また銀河面に注目するとこちらも銀経に依存するような特徴的な構造を見ることができる。図 5 は図 4 において銀緯 | b | &lt; 3 ◦ の RM を抜き出したものである。 RM の値が銀経に依存して波 打つよう
図 5 —Taylor et al.2009 と Nota &amp; Katgert et al.2010 の RM データから銀緯 | b | &lt; 3 ◦ の RM を抜き出したもの。 2 理論 前章で紹介した通り銀河系の RM 分布は Taylor et al.2009 によりその詳細な構造が明らかにさ れた ( 図 4 参照 ) 。一方式 (2) RM = 810 ∫ n e [cm − 3 ]B ∥ [µG]dl[kpc] にある通り RM は電子と磁場の分布が分かれば計算可能な量である。即
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参照

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