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IRUCAA@TDC : 一般歯科診療所におけるHBV、HCV 感染症検査の統計学的検討

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,

Journal

日本口腔検査学会雑誌, 2(1): 65-68

URL

http://hdl.handle.net/10130/1925

Right

(2)

調査・統計

一般歯科診療所における

HBV、HCV 感染症検査の統計学的検討

監物 真

1) *

、木下安紀子

2)

、三輪恒幸

1)

、Sultan Zeb Khan

1)

、木村 裕

1)

、松岡海地

1)

 橋本和彦

1)

、劉 潁鳳

1)

、杜 岩

1)

、辛 承一

1)

、松坂賢一

1),3)

、井上 孝

1),3) 1)東京歯科大学臨床検査学研究室 2)東京八重洲歯科クリニック 3)東京歯科大学千葉病院臨床検査部 抄 録 目的:一般歯科診療では、病原体を含む血液や唾液に接する機会が多いが、感染症検査は ほとんど行われておらず、スタンダードプリコーションの実施が充分でないのが実情であ る。今回、一般歯科診療所における HBs 抗原、HCV 抗体感染症検査の結果を総検査件数 と陽性数、陽性率、陽性者年齢分布について集計した。 方法:平成 11 年 12 月から平成 21 年 7 月までに東京八重洲歯科クリニックを受診した 患者 2181 名を対象とした。 結果:東京八重洲歯科クリニックにおける総検査件数は 2,181 件で HBs 抗原陽性件数は 13 件 (0.6%)、HCV 抗体陽性件数は 31 件 (1.4%) であった。年齢分布では HBs 抗原陽性 者は 60 歳代にピークを示し、HCV 抗体陽性者は 60 歳 ~70 歳代にピークを示した。 結論:歯科治療前に感染症検査を実施すること、同時にスタンダードプリコーションの徹 底が重要である。しかし、感染症検査を一般歯科診療所に浸透させるには、歯科医師の感 染症検査に対する積極的な意識改革の必要性がある。

キーワード:HBV, HCV, positive rate, standard precaution 論文受付:2009 年 10 月 26 日 論文受理:2009 年 12 月 24 日 緒 言  歯科医療機関で発生する病原微生物の院内感染に は診療所や医療行為を介して患者間、あるいは医療 従事者間で発生する感染がある。歯科治療は抜歯を はじめとする外科処置が多く、歯科医療従事者は患 者の血液や唾液に接触する機会が多い。B 型肝炎ウィ ルス(HBV)、C 型肝炎ウィルス(HCV)をはじめ多 くの病原体を含む血液や唾液による院内感染で、病 原体の伝播が拡大する可能性が高い。従ってわれわ れ歯科医療従事者にとって感染対策が重要であると 同時に、患者のウィルス感染の有無を処置前に把握 しておくことが必須であると考える。大学病院では 処置前に感染症検査を行う機会が増えてきつつあり、 われわれの大学病院における臨床統計も報告してき た1)2)。しかしながら、一般歯科診療所での感染症検 査はほとんど行われていないのが実情である。今回、 感染症検査を導入している診療所と、大学病院の結 果を比較することを試み、平成 11 年 12 月から平成 21 年 7 月までの 9 年 8 か月間に東京八重洲歯科クリ ニックを受診した患者における HBV、HCV 感染症検 査について、臨床統計を行った。 *:〒 261-8502 千葉市美浜区真砂 1-2-2 TEL:043-270-3582 FAX:043-270-3583 e-mail: [email protected]

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材料および方法  平成 11 年 12 月から平成 21 年 7 月までの 9 年 8 か月間に東京八重洲歯科クリニックを受診した患者 2,181 名に対して行った HBs 抗原および HCV 抗体検 査結果をデータとして使用した。尚、東京八重洲ク リニックにおける感染症検査は受診した患者全員に 対して行っている。また、感染症検査は自費で行い、 採血は歯科医師によって行っている。指定されたス ピッツに血液を採取し、株式会社昭和メディカルサ イエンスへ委託している。  このデータをもとに HBs 抗原、HCV 抗体検査の結 果を総検査件数と陽性件数、陽性率について集計し た。 また、平成 18 年 10 月から平成 20 年 5 月まで の 1 年 8 か月に東京歯科大学千葉病院臨床検査部に て行われた検査結果を対象とした。 結 果  東京八重洲歯科クリニックにおける総検査件数は 2,181 件で HBs 抗原陽性件数は 13 件 (0.60%)(表 1)、 HCV 抗体陽性件数は 31 件 (1.42%)(表 2)であった。 年齢分布では HBs 抗原陽性者は 60 歳代にピークを示 し(図 1)、HCV 抗体陽性者は 60 歳 ~70 歳代にピー クを示した(図 2)。一方、東京歯科大学千葉病院臨 床検査部で行われた結果は、HBs 抗原検査数が 3216 件で陽性件数は 33 件 (1.02%)(表 1)、HCV 抗体検査 数が 3133 件で陽性件数は 45 件 (1.43%)(表 2)であっ た。東京八重洲歯科クリニックは大学病院と比較して HCV 抗体陽性率はほぼ同様であったものの、HBs 抗 原陽性率は低い結果となった。また、HCV 抗体陽性 患者の年齢分布は同様の傾向を示した(図 3、4)。 考 察  わが国で見られる肝癌の 95%は肝細胞由来の肝細 胞癌であり、その死亡者は年間 3 万人を超える3) これらの 95%はB型肝炎ウィルス(HBV)および C 型肝炎ウィルス(HCV)が原因である。これらの持 続感染による慢性肝疾患(慢性肝炎、肝硬変)から 肝癌を発症する。HBV は成人が感染した場合、大多 数は急性肝炎を発症した後にウィルスが排除される。 慢性化し、キャリアとなるのは1%以下であると報 告されている。一方、HCV は成人が感染した場合、 約 30%はウィルスが排除されるものの、70%はキャ リアとなる。肝炎ウィルスの持続感染者については B 型肝炎で 140 万人、C型肝炎で 200 万人存在すると 推定されている4)。肝炎ウィルスのスクリーニング 検査として、B 型肝炎には HBs 抗原、C 型肝炎ウィ ルスには HCV 抗体の検査を行うことが多い。  HBs 抗 原 は HBV の 外 殻 蛋 白 で あ り、1967 年 Blumberg らによって発見された5)。HBs 抗原は当初 オーストラリア抗原と呼ばれ、オーストラリア先住 民の血清から、それぞれ沈降反応によってクロス反 応する抗原、抗体の発見が発端となった。HBs 抗原 陽性とは、肝臓内に存在する HBV の表面を覆う HBs 蛋白が合成されている状態を意味する。HBs 抗原の 測 定 に は 当 初 MO 法(Micro-Ouchterlony) が 行 わ れていたが、感度が悪いなどの問題があったため、 現 在 で は EIA 法(enzyme immune assay)、RIA 法 (radioimmunoassay)などが主流になっている6)  HCV は 1989 年、Choo らによってウィルス遺伝 子の断片として発見された7)。また、同年 12 月に は遺伝子組み換え技術により、酵母で発現させた C100-3 蛋白を利用した HCV 抗体の測定(第一世 表 2 HCV 抗体検査結果の比較 HCV 抗体検査数 HCV 抗体陽性件数 陽性率(%) 東京八重洲歯科クリニック (平成 11 年 12 月 ~ 平成 21 年 7 月) 2,181 31 1.42 東京歯科大学 (平成 18 年 10 月 ~ 平成 20 年 5 月) 3,133 45 1.43 (平成 18 年 10 月 ~ 平成 20 年 5 月)

(4)

代)が導入され、1992 年にはコア蛋白を追加し感 度と特異度を向上させた第二世代の試薬に変更され た8)。更に 1999 年より 500 人分の検体をプールし、 それを試料とした核酸増幅検査(NAT:Nucleic acid Amplification Test)が開始され、現在では輸血によ る肝炎ウィルスの感染が起きる可能性は極めて低く なっている。  今回、東京八重洲歯科クリニックの HBs 抗原陽性 率は年齢分布では 60 歳代にピークを迎え、平成 15 年度三鷹市肝炎検診集計、厚生労働省平成 14 年度版 肝炎ウィルス検診、および第 15 回全国原発性肝癌追 跡調査報告の実績に経過年数を加えたものとそれぞ れ同様な傾向を示した9)- 12)。これは現在のわが国 で HBV キャリアの新規発生がきわめて稀に過ぎない とする過去の報告12)に準じた結果といえる。東京歯 科大学のデータと比べ HBs 抗原陽性率が低かったの は、クリニック受診患者が若年層の占める割合が多 いことが影響したものと考えられた。  また、東京八重洲歯科クリニックの HCV 抗体にお いて陽性率は東京歯科大学のデータとほぼ同様であ り、年齢が高くなるにつれ陽性者が多くなる傾向を 示した。これは、C 型肝炎の発見および検査方法が 確立する以前に輸血や不適切な医療器具を使用した ためと考えられた。実際にクリニックの 30 歳代 ~40 歳代の HCV 抗体陽性患者には刺青が原因と考えられ る患者が 2 名含まれている。  肝炎ウィルスは肝臓以外の臓器や組織に障害を引 き起こすことがあり、これらを総称して肝外病変と 呼ぶ13)。そのなかでも、歯科医師にとって重要な疾 患に HCV が発症に関連するといわれている扁平苔癬 が挙げられる。扁平苔癬患者の 30~60%に C 型肝炎 を合併しているという報告がある13)14)。肝外病変は ウィルス感染を契機にしてウィルス自身あるいは宿 主の免疫応答などが関与しておこるとされているが、 発生機序は明らかではない。一方、肝機能の減少と ともに血小板数の減少、血液凝固因子の産生低下に より出血傾向を生じることが知られている。扁平苔 癬あるいは歯肉出血が止血しにくいなどの臨床症状 が認められた場合に HCV 感染の可能性を疑い、血 液検査あるいは内科受診を勧め、適切な内科的治療 を受けさせることが歯科医師の重要な役割と考える。 特に HCV キャリアは高率に肝硬変や肝細胞癌へ移行 することが明らかにされており、早期にインターフェ ロンなどの治療を行うことでウィルスの除去や肝細 胞癌への移行を遅らせることが可能である。  現在の歯科診療では患者の全身状態を把握するの 図 1 HBs 抗原陽性者年齢分布 (東京八重洲歯科クリニック) 図 3  HBs 抗原陽性者年齢分布 ( 東京歯科大学 ) 図 2 HCV 抗体陽性者年齢分布 ( 東京八重洲歯科クリニック ) 図 4 HCV 抗体陽性者年齢分布 ( 東京歯科大学 ) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳代 80歳代 0 2 4 6 8 10 12 20歳代30歳代40歳代50歳代60歳代70歳代80歳代 0 2 4 6 8 10 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳代 80歳代 0 2 4 6 8 10 12 14 16 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳代 80歳代 20  30  40   50  60  70   80 (歳代) 20  30  40   50  60  70   80 (歳代) 20  30  40   50  60  70   80 (歳代) 20  30  40   50  60  70   80 (歳代) 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 12 10 8 6 4 2 0 10 8 6 4 2 0 16 14 12 10 8 6 4 2 0

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 それゆえに、歯科治療前に感染症検査を実施する こと、同時にスタンダードプリコーションの徹底が 二次感染予防の観点からも重要である。        しかし、同クリニックで実施している感染症検 査を一般歯科診療所に浸透させるには、歯科医師が 簡易検査キットの応用を含めた感染症検査に対する 積極的な意識改革の必要性がある。 参考文献 1) 萩田恵子、仙波利寿、秦 暢宏、川原由里香、才藤純一、 成瀬晋一、國分克寿、鏡明展、佐藤大輔、国分栄仁、小 池吉彦、村上 聡、松坂賢一、井上 孝:東京歯科大学千 葉病院臨床検査部における感染症検査の統計学的検討  特にB型肝炎、C型肝炎および梅毒について、105:479-484、2005 2) 木村 裕、松坂賢一、田村美智、秦暢宏、川原由里香、萩 田恵子、草野義久、井上 孝:歯科治療におけるHBV、 HCV検査の必要性 - 東京歯科大学千葉病院におけるHBV, HCV陽性患者の割合 - 、日本口腔検査学会雑誌、1: 37-39、2009 3) 日本肝臓学会:肝がん白書、2000 4) 黒松亮子, 高田晃男, 佐田通夫:肝臓癌の臨床検査 肝細 胞癌原因の推移、臨床検査、49:1185-1191、2005 5) Blumberg BS, Gerstley BJ, Hungerford DA, London WT,

Sutnick AI: A serum antigen (Australlia antigen)in Downs sundrome, leukemia and hepatitis, Ann Intern Med, 66: 924-931, 1967

6) 鈴木文孝、熊田博光:関連検査法 血中HBVマーカー検 査法、日本臨床、62:121-123、2004

7) Choo QL, Kuo G, Weiner AJ, Overby LR, Bradley DW, Houghton M: Isolation of a cDNA clone derived from a blood-borne non-A, non-B viral hepatitis genome, Science, 244: 359-62, 1989 8) 高橋雅彦、村岡正人、田所憲治:輸血によるC型肝炎の実 情-核酸増幅検査導入の有用性‐、日本臨床、62:267-271、2004 9) 2002、2003年度東京都三鷹市肝炎集計 10) 厚生労働省:平成14年肝炎ウィルス検診などの実績およ び平成15年度肝炎ウィルス検診の実施状況について 11) 日本肝癌研究会:第15回全国原発性肝癌追跡調査2003 12) Sasaki F, Tanaka J, Moriya T, Katayama K, Hiraoka M,

Ohishi K, Nagakami H, Mishiro S, Yoshizawa H: Very low incidence rate of community-aquired hepatitis C virus infection company employs, Epidelil, 6: 198-203, 1996 13) 長尾由実子, 佐田通夫:ウイルス性肝炎 基礎・臨床研究

の進歩 C型肝炎ウイルス(HCV) HCV感染に起因する肝 外病変 肝外病変の主要病態とその対処法 その他の肝外 病変、日本臨床、62:561-568、2004

参照

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