第148回 月例発表会(2013年09月) 知的システムデザイン研究室
パケットロスを考慮した無線センサネットワークによる
知的照明アルゴリズムの提案
内村祐之
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はじめに
センサ付き無線端末を複数配置しそれらが協調して情 報収集する無線センサネットワークは様々な利用が期待 されている.無線照度センサノードを知的照明システム に導入することで,照度センサの敷設容易性の向上や,オ フィスのレイアウト変更および照度センサの追加などに 柔軟に対応できるようになる.しかしながら,無線セン サネットワーク上にはパケットロスが存在する.パケッ トロスによって現在の照度を取得できなくなり,目標照 度への収束を達成できない場合が起こる. 本研究ではパケットロスを考慮した知的照明における 制御アルゴリズムを提案する.2
知的照明システム
知的照明システムは,調光可能な複数の照明,複数の 照度センサ,制御PC,および電力計を1つのネットワー ク上に接続することで構成される.この構成により,照 度情報,光度情報,消費電力情報を取得し,各執務者の要 求する個別の明るさを実現する.また,知的照明システ ムでは,照明が照度センサに及ぼす影響度合いを回帰分 析により学習することで,照明の点灯パターンを最適化 する.これによって,目標照度を満たし,かつ省エネル ギー性を実現する.3
パケットロスを考慮した制御手法
3.1 手法1 : 計算精度を考慮した制御 現在使用されているアルゴリズムではパケットロスが 発生した際に,最後に取得した照度を回帰分析および目 的関数の計算に使用する.しかし,パケットロス発生時 に現在の照度を使わない場合,回帰係数の精度が悪化し, 照度収束に影響が生じる.そこで,パケットロス発生時 は回帰分析および目的関数の計算を行わないようにする. これによって回帰係数の精度と照度収束率が向上すると 考えられる. 3.2 手法2 : 回帰係数を利用したシミュレーション 手法1ではパケットロスが連続して発生した場合,目 的関数の計算が正確に行われず照度収束に時間がかかる. そこで,パケットロス発生時に回帰係数を利用した照度 値のシミュレーションを行う.照度の推定値はそれぞれ の照明の光度と影響度をかけて足しあわせたものの総和 から得られる.しかし,照度センサから離れた照明ほど 回帰係数の精度が低くなる.そこでシミュレーションに は,閾値以上の回帰係数を用いる.具体的には以下(1) の計算式から現在の照度値を算出する. lx ∑m i=1Cdi∗ ri ; lx0 ∑m i=1Cd0i∗ ri (1) lx:現在の照度,m:回帰係数が閾値以上の照明の数 Cd:現在の光度,r:回帰係数,lx’:最後に取得した照度 Cd’:最後に照度が取れたときの光度4
パケットロスの検証実験
4.1 実験概要 提案手法の検証を行う前にパケットロスがどのように 発生するかについて検証実験を行った.場所は同志社大 学の香知館KC104で,実験には2台の無線センサノー ドを用いる.無線センサノードはCrossbow社のMOTE MICAzを使用する1) .1台を受信機とし,もう1台の 無線センサノードから1秒毎に連続する整数を,10分間 送信する.数字が連続しなかった箇所をパケットロスと 判定する.無線センサノードは送信機を受信機からそれ ぞれ4 m,8 m,12 mの位置に配置した. 4.2 実験結果 KC104の各地点におけるパケットロス率の結果をFig. 1に示す.また,地点Eの詳細をFig. 2に示す. Fig.1 KC104の各地点でのパケットロス率 Fig.1の地点EおよびFより,同じ距離でも場所に よってパケットロス率が大きく異なることが分かる.ま た,Fig. 2より,パケットロスは単発で発生するだけで なく,連続して起こることが分かる.5
提案手法の動作実験
5.1 実験概要 本実験では,パケットロスを考慮した知的照明アルゴ リズムの照度収束率について検証する.照度センサには 無線センサノードを用いる.目標照度はセンサノードA を450 lx,センサノードBを500 lx,センサノードCを 1Fig.2 地点Eでのパケットロス 600 lxとする.また,500ステップ後にセンサノードC の目標照度を800 lxに変更する.なお,収束判定は,目標 照度の± 50 lx以内とする.また,最初の100ステップ は回帰分析のため,SHCで照度収束を行い,100ステッ プ後にRCに移行する.ただし,手法1を用いる場合は パケットロス発生回数分だけRCへの移行を遅らせる. 実環境でのパケットロスを模擬するため,4.2節で得ら れた地点Eでのパケットロスデータを用いた. 実験は提案手法を用いない場合,手法1だけ用いた場 合,最初のSHCでは手法1,RCから手法2を用いた場 合の3つに分けて行った. 5.2 実験環境 実験環境をFig. 3に示す.本実験は,白色蛍光灯15灯 と無線センサノード3個を用いて行う.無線センサノー ドは,照明1灯の直下,照明2灯の間,照明4灯の間の 3点の場所に配置し,それぞれをセンサの位置は固定と する.また,無線センサノードはCrossbow社のMOTE
MICAzを使用する.MOTE MICAzに汎用外部センサ
基板であるMDA088を設置し,リードタイプのNapica 照度センサを組み込むことで,照度値を取得可能とする 2) .その際の MDA088とNapicaセンサの間における 抵抗は430Ωとする. 㸿 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
Lighting Fixture Illuminance Sensor
1.8 m 1.8 m 㹀 㹁 1.9 m 0.6 m Fig.3 実験環境 5.3 実験結果 提案手法を用いない場合,手法1だけ用いた場合,最 初のSHCでは手法1,RCから手法2を用いた場合の結
果をそれぞれFig. 4,Fig. 5およびFig. 6に示す.
Fig.4より,提案手法を用いない場合,照度収束に失 Fig.4 提案手法を用いない場合の照度履歴 Fig.5 計算精度を考慮した制御の照度履歴 Fig.6 回帰係数を利用したシミュレーションの照度履歴 敗することを確認した.これは,パケットロスのない環 境下と比較して,回帰係数の精度が悪化したからだと考 えられる.そのため,全ての照明が照度センサへの影響 は低いものと判断され,最小光度になった.Fig.5より, 手法1を用いた場合,照度収束には近づくが,収束率は 低い.Fig.6より,シミュレーションを用いることで, 安定して照度収束できることが確認できる.また,目標 照度変更後も素早く収束していることが確認でき,本提 案手法は有効であると言える.