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紹介 加藤弘之・上原一慶編著『中国経済論』

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紹介 加藤弘之・上原一慶編著『中国経済論』

著者

金澤 孝彰

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジア経済

45

10

ページ

114-114

発行年

2004-10

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00007655

(2)

 『アジア経済』XLV‐10(2004.10)

   

 次々と新しい制度・政策が生まれる一方で古いも のがその都度改廃されていく,とも受けとめられる 近年の中国動向の新陳代謝的側面が,大学にて中国 経済論を担当・講義する者をして抱かしめる“悩み 事”のひとつに,自他著を問わず前年度使用テキス トが今年度以降の講義にも十分耐え得るものか否か といったことが挙げられるのではなかろうか。いざ 書店に足を運べば,最近の情報増で誰もがよりいっ そう恒常的かつ身近に中国に接することが可能に なったことを反映して,程度の差はあれ悲観,楽観 いずれかの立場で書かれた中国関連書の“氾濫”ぶ りに圧倒され(それに加え,最近では中国株ブーム に乗っかった経済本までもが目立ってきた…),そ れらのなかから“一押し”のテキストを探し当てる のに時間も労力も要する感がする。  本書はそのようななかで上梓された現代中国経済 論テキストのひとつと位置づけられるが,その序章 において,諸問題を抱えながら遂げてきた改革・開 放以降の持続的発展についての来し方行く末を含む 中国経済の全体像を,単に経済理論を当て嵌めるの ではなく,「四つの世界」,「二重の移行過程の同時進 行」,そして「一つの統合原理」といったキーワー ドで表現される中国が持つユニークさにもとづく枠 組みでとらえる方向に読者を誘っていこうとしてい る。その点で,序章の「中国経済への招待」とのタ イトル表記は首肯し得る。  本書編著者の1人である加藤弘之教授は,恐らく 自大学での講義概要として記されたのであろう文章 のなかで,改革・開放下中国の構造変化の特徴を, 「経済システムの変遷」,「二元構造から多元構造へ の転換」,「封鎖経済から開放経済への転換」の3点 に纏められている(神戸大学経済経営学会編『経済 学研究のために(第8版)』351∼353ページ参照)。こ れら3点に相対応するかのように,そして,表現形 式を「∼のなかの∼」に統一したうえで読者に各部 の重点を容易に把握させる配慮がなされているかの ように本書第1章から第13章までの各論は,第Ⅰ部 「現代のなかの歴史」(第1章∼第3章),第Ⅱ部「多 様性のなかの発展」(第4章∼第9章),第Ⅲ部「世 界のなかの中国」(第10章∼第13章)に棲み分けられ ている。これらのうち第Ⅰ部では章ごとに20世紀全 体,建国以降,そして改革・開放以降というように タイムスパンを長短に区切ったうえで,現代のなか に歴史的断片を見出し,その連続性から市場移行や 経済発展をめぐる解釈上の視点を提示している。次 に第Ⅱ部では国内経済に重点をおき,経済発展を複 数の構成要素間の相互依存または反発の構図のなか で把握する視点を提示し,三農問題,企業改革,地 域構造,格差など多様な問題のなかで中国独自の国 内発展パターンの方向性を解明していこうとしてい る。そして第Ⅲ部では,中国企業の海外進出(“走出 去”)を含む多国籍企業の経営戦略の転換,近隣諸国 との地域統合ないし地域経済圏の可能性など,グ ローバル化に伴う中国の開放政策の多面性に関する 視点を提示している。  総じて,いずれの章とも執筆担当者が各専門領域 から斬り込み,実証分析を通じて今後の展望・課題 についてもふれるという構成で読み易く書かれてお り,必要とあれば序章と各章冒頭要約と終章を読む だけでも中国経済の諸相の理解は可能である。  中国に対する理解欠落に伴う偏見や,逆に情報過 多による消化不良が昨今の中国経済をめぐる脅威論 もしくは崩壊論を形成しているものとして,そうし た歪みの是正のためにも複眼的視点に立って現状を 客観的にとらえ直し,中国経済の今後を展望する冷 静な思考態度が求められる。その意味で本書は,中 国経済論の講義テキストとしての有用性はさること ながら,普く政治学,社会学,歴史学など関連諸分 野を包括した地域研究(Area Studies)の視点から 中国理解を試みる読者にとっても絶好の書であろう。 (和歌山大学経済学部助教授)

加藤弘之・上原一慶編著

『中国経済論』

(現代世界経済叢書 

第2巻)

ミネルヴァ書房 2004年 ix+321ページ 金 澤 孝 彰 かな ざわ たか あき

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