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写真における地理的メタファー : 交通空間から世界と表象の関係を再考する試み

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Academic year: 2021

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氏 名 辰 タツ 巳 ミ 唯 ユイ 人 ト 学 位 の 種 類 博 士 ( 美 術 ) 学 位 記 番 号 博 美 第 3 9 1 号 学 位 授 与 年 月 日 平 成 2 5 年 3 月 2 5 日 学 位 論 文 等 題 目 〈 論 文 〉 写 真 に お け る 地 理 的 メ タ フ ァ ー - 交 通 空 間 か ら 世 界 と 表 象 の 関 係 を 再 考 す る 試 み - 〈 作 品 〉 Telescope 論 文 等 審 査 委 員 ( 主 査 ) 東 京 芸 術 大 学 教 授 ( 美 術 学 部 ) 伊 藤 俊 治 ( 論 文 第 1 副 査 ) 〃 〃 ( 〃 ) た ほ り つ こ ( 作 品 第 1 副 査 ) 〃 准 教 授 ( 〃 ) 鈴 木 理 策 ( 副 査 ) 〃 教 授 ( 〃 ) 佐 藤 時 啓 ( 論 文 内 容 の 要 旨 ) 本 稿 の 目 的 は 、 写 真 や 美 術 の 背 景 に 連 綿 と 受 け 継 が れ て き た 地 理 的 な メ タ フ ァ ー ( 隠 喩 ) を 指 摘 し 、 地 理 学 や 写 真 ・ 美 術 が 問 題 化 し て き た 世 界 と 表 象 の 関 係 性 に つ い て 、 論 述 と 作 品 実 践 の 両 面 か ら 考 察 す る こ と で あ る 。 英 語 で 「 大 地 を 描 く 」 を 意 味 す る 地 理 学 ( Geography) と 、「 光 で 描 く 」 を 意 味 す る 写 真 ( Photography)は 、ど ち ら も 世 界 を 表 象 に 描 く と い う 点 で 共 通 す る 。議 論 で は 、地 理 学 と 美 術・写 真 評 論 と い う 、 別 個 に 扱 わ れ て き た 分 野 を 同 時 的 に 論 じ 、 接 続 さ せ る こ と が 目 指 さ れ る 。 作 品 は 、 隠 喩 的 な 可 能 性 を 持 つ 交 通 空 間 を 利 用 し な が ら 、 世 界 と 表 象 の 関 係 に つ い て 、 作 品 を 媒 介 と し て 問 い か け を 行 う た め に 提 示 さ れ る 。 Ⅰ 章 で は 、序 論 と し て 、等 閑 視 さ れ が ち で あ っ た 写 真 の「 空 間 性 」に 注 目 す る 必 要 性 を 述 べ た 。「 空 間 性 」 に よ っ て 、 写 真 の 議 論 は 地 理 学 と 接 続 さ れ る 可 能 性 を 持 つ 。 Ⅱ 章 で は 、 議 論 や 実 践 に 進 む た め に 、 本 稿 の 基 本 的 な 用 語 に つ い て 検 討 し 、 世 界 と 表 象 の 関 係 を 中 心 と し て 定 義 づ け を 行 っ た 。 写 真 が 空 間 に 関 わ る も の で あ る 故 に 、 地 理 的 メ タ フ ァ ー ( 地 理 的 空 間 や 場 所 に ま つ わ る 語 彙 ) が 必 然 的 に 付 随 す る こ と を 述 べ た 。 ま た 、 ラ カ ン の 三 界 を 参 考 に し な が ら 、 写 真 の 位 置 が 検 討 さ れ た 。 写 真 が 世 界 像 を 構 成 す る 過 程 を 検 討 す る た め に 、 近 代 人 が 想 像 す る 世 界 と 表 象 の 写 像 / 逆 写 像 の 関 係 を 、「 一 対 一 」 関 係 と し て 定 義 す る 。「 一 対 一 」 関 係 で は 、 世 界 と 表 象 は 完 全 な 対 応 関 係 を 達 成 す る こ と が 志 向 さ れ て お り 、 関 係 は 閉 鎖 的 ・ 固 定 的 な 再 生 産 に 陥 る 傾 向 を 持 つ 。 有 為 な 作 家 の 実 践 は 、 こ の よ う な 「 一 対 一 」 関 係 へ の 批 評 的 態 度 に よ っ て 説 明 さ れ る 。 本 稿 で は ル フ ェ ー ブ ル や ソ ジ ャ の 空 間 論 を 参 照 に す る 。 ソ ジ ャ の 用 語 を 用 い れ ば 、 有 為 な 芸 術 的 実 践 と は 「 第 三 空 間 」 の 領 域 に 位 置 づ け ら れ る も の で あ り 、「 第 一 空 間 」 と 「 第 二 空 間 」 の 間 を 往 還 し つ つ 、 無 意 識 の 領 域 も 動 員 し な が ら 、 世 界 と 表 象 の 関 係 に つ い て 組 み 替 え を 行 う こ と で あ る 、 と 定 義 で き る 。 論 考 と 実 践 を 組 み 合 わ せ た 本 稿 の 構 成 も ま た 、ソ ジ ャ の 空 間 論 を 参 考 に し た 。す な わ ち 、Ⅱ ~ Ⅳ 章 が「 第 一 空 間 」 と 「 第 二 空 間 」 に つ い て の 議 論 で あ り 、 Ⅴ 章 に お け る 作 品 制 作 の 実 践 が 「 第 三 空 間 」 に 相 当 す る 。 Ⅲ 章 で は 、 地 理 学 と 美 術 ・ 写 真 が 、 相 互 に 接 近 す る 状 況 を 説 明 し た 。 ま ず 、 近 年 の 英 語 圏 や 日 本 の 人 文 地 理 学 に お い て 、 写 真 へ の 関 心 の 高 ま り が 見 ら れ る こ と を 指 摘 し た 。 人 文 諸 学 問 に お け る 視 覚 表 象 へ の 関 心 の 高 ま り は 「 空 間 論 的 ・ 文 化 論 的 ・ 視 覚 論 的 転 回 」 に 位 置 づ け ら れ る 。 ま た 、 現 代 美 術 や 写 真 の

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文 脈 で は 、 1970年 代 頃 か ら 地 理 的 メ タ フ ァ ー が 多 用 さ れ る よ う に な り 、 ロ バ ー ト ・ ス ミ ッ ソ ン の 実 践 や 「 サ イ ト・ス ペ シ フ ィ ッ ク 」の 動 向 、「 ニ ュ ー・ト ポ グ ラ フ ィ ク ス 」展 な ど を 挙 げ た 。こ れ ら は 人 文 諸 学 問 の「 転 回 」と 並 行 的 で あ る 。と く に 、ス ミ ッ ソ ン の 実 践 は 、美 術 を「 第 二 空 間 」に 止 ま ら せ ず 、「 第 一 空 間 」 と の 関 係 へ 拡 張 し た 点 で 画 期 的 な も の で あ っ た 。 ま た 、 日 本 の 写 真 に お け る 事 例 と し て 、 松 江 泰 治 ・ 柴 田 敏 雄 ・ 畠 山 直 哉 ら を 挙 げ て 写 真 の 文 脈 に 採 用 さ れ る 地 理 的 メ タ フ ァ ー を 検 討 し た 。 地 理 学 と 美 術 の 接 近 に も 関 わ ら ず 、 両 者 の 間 に は 埋 め ら れ な い 差 異 も 残 さ れ る 。 両 者 の 差 異 は 『 星 の 王 子 様 』 に 登 場 す る 地 理 学 者 を 事 例 に し て 説 明 さ れ た 。 科 学 と し て の 地 理 学 に 対 し て 、 美 術 の 実 践 は 世 界 と 表 象 の 関 係 性 を 常 に 問 い 直 さ な け れ ば な ら な い 。 Ⅳ 章 で は 、本 稿 の 地 理 的 メ タ フ ァ ー と し て 、「 交 通 空 間 」を 導 入 す る 。メ ン タ ル マ ッ プ の 議 論 に あ る よ う に 、一 般 的 に「 風 景 」は 、交 通 空 間(「 道 」の 領 域 )か ら 見 ら れ 、撮 影 さ れ る 。交 通 空 間 か ら 見 ら れ る 全 て の 景 観 は 風 景 の 母 集 団 と し て あ り 、 そ こ か ら 交 通 空 間 と 風 景 の 密 接 な 関 係 が 指 摘 さ れ る 。 交 通 空 間 は 、 自 由 に 移 動 可 能 で あ り な が ら も 社 会 的 ・ 政 治 的 な 制 約 が 常 に 内 在 し 、「 道 」 か ら 「 風 景 」 を 表 象 し よ う と す る 実 践 は 必 然 的 な 矛 盾 に 直 面 す る 。 し か し 、 有 為 な 作 家 達 は こ れ ら の 困 難 に も 関 わ ら ず 、 交 通 空 間 か ら 重 要 な 実 践 を 行 っ て い る 。 ド ・ セ ル ト ー の 議 論 か ら 、 交 通 空 間 は 「 間 の 領 域 」 と し て 世 界 の 要 素 を 結 び つ け 直 す 隠 喩 的 な 可 能 性 が あ る こ と が 指 摘 さ れ た 。 交 通 空 間 で 風 景 を 表 象 す る 事 例 に つ い て 、近 代 の 画 家 や 現 代 の 写 真 家 を 挙 げ て 述 べ た 。ま た 、「 フ ェ ン ス 」 を キ ー ワ ー ド に 、 交 通 空 間 で 作 家 の な す べ き 実 践 を 考 察 し た 。 Ⅴ 章 で は 、 交 通 空 間 に お け る 作 品 の 実 践 を 説 明 し た 。 本 章 の 実 践 は 、 ソ ジ ャ が 「 第 三 空 間 」 と 呼 ぶ も の 、 す な わ ち 隠 喩 的 な 想 像 力 を 動 員 し な が ら 「 第 一 空 間 」 と 「 第 二 空 間 」 の 関 係 を 問 い 直 す 試 み に 相 当 す る も の と し て 位 置 づ け ら れ る 。 作 品 は 、 薄 暮 の 時 間 帯 に お け る 道 路 ト ン ネ ル で 内 側 と 外 側 の 光 量 が 等 し く な る よ う に 撮 影 し た も の で あ り 、 異 種 の 空 間 が 並 存 す る こ と に よ る 緊 張 関 係 、 時 間 的 ・ 空 間 的 な 境 界 性 ( 昼 と 夜 、 内 と 外 ) な ど を 問 題 と し た 。 本 作 品 は 、「 第 三 空 間 」 に お け る 想 像 力 の 領 野 を 作 動 さ せ 、 世 界 と 表 象 の 関 係 性 を 問 い か け る 場 と な る こ と を 目 指 し て い る 。 地 下 空 間 の も た ら す 隠 喩 的 効 果 や 、 関 連 作 品 か ら の 影 響 に つ い て も 述 べ た 。 Ⅵ 章 で は 、論 考 と 実 践 の 両 面 で 、世 界 と 表 象 の 関 係 性 が ど の よ う に 問 題 化 さ れ た の か を 評 価 し て い る 。 < 以 上 > ( 博 士 論 文 審 査 結 果 の 要 旨 ) 本 論 文 は 、世 界 と 表 象 の「 大 地 を 描 く 」を 意 味 す る 地 理 学( Geography)と「 光 で 描 く 」を 意 味 す る 写 真 ( Photography) が 、 共 に 世 界 を 表 象 し 描 き 出 す 点 で 共 通 す る こ と に 着 目 し 、 写 真 や 美 術 の 背 景 に は 、 連 綿 と 受 け 継 が れ て き た 地 理 的 な メ タ フ ァ ー ( 隠 喩 ) が あ り 、 そ の こ と に よ っ て 、 従 来 、 別 の 分 野 で 扱 わ れ て き た 地 理 学 と 美 術 ・ 写 真 評 論 を 接 続 さ せ 、 一 体 的 に 論 じ る こ と が 可 能 で あ る 、 と い う 仮 説 の 実 証 と し て 論 述 を す す め 、 地 理 的 メ タ フ ァ ー を も ち い て 、 批 評 的 態 度 を も つ 有 為 な 芸 術 の 実 践 を 問 う 論 考 で あ る 。 本 論 文 の 重 要 性 は 、地 理 学 や 社 会 科 学 に お け る 視 覚 表 象 に 関 わ る 理 論 や 用 語 を 積 極 的 に 援 用 し な が ら 、 精 神 分 析 学 の ラ カ ン の 理 論 に よ り 、 地 理 学 と 美 術 ・ 写 真 評 論 の 両 者 を 包 括 的 に 捉 え る 枠 組 み を 明 快 に 示 し 、 一 体 的 に 論 じ る 議 論 の 基 盤 を 整 え た こ と で あ る 。 こ れ ま で 記 憶 や 歴 史 に 関 わ る 写 真 の 「 時 間 性 」 に 関 す る 写 真 評 論 が 中 心 で 、 等 閑 視 さ れ て い た 「 空 間 性 」 に 着 目 す る 社 会 学 者 の ル フ ェ ー ブ ル の 空 間 論 に 依 拠 し 、 ポ ス ト モ ダ ン 地 理 学 の ソ ジ ャ の 空 間 論 と の 対 応 を 明 ら か に し な が ら 領 域 を 接 続 し 、 議 論 の 枠 組 み を 構 築 し た 。 地 理 学 や 視 覚 表 象 に 関 わ る 社 会 科 学 、 写 真 や 美 術 、 建 築 な ど に お け る 世 界 と 表 象 の 議 論

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へ の 貢 献 が 期 待 で き る 。 本 論 文 の 新 規 性 は 、「 交 通 空 間 」と い う 新 た な 地 理 的 メ タ フ ァ ー を 提 示 し 、論 じ た こ と に あ る 。地 理 学 の 領 域 と し て の「 知 覚 さ れ る 空 間 」と「 第 一 空 間 」、美 学 、表 象 文 化 論 の 領 域 と し て の「 思 考 さ れ る 空 間 」 と「 第 二 空 間 」を 対 応 さ せ 、「 第 一 空 間 」と「 第 二 空 間 」の 一 方 的 な 作 用 を 他 に も た ら す だ け で な く 、ダ イ ナ ミ ッ ク に 往 還 し つ つ 世 界 と 表 層 の 要 素 間 の 関 係 に つ い て 組 み 替 え 、 置 換 、 転 置 、 付 加 を 行 う 「 生 き ら れ る 空 間 」 を 「 第 三 空 間 」 と 対 応 さ せ 、 そ れ が 社 会 生 活 に 潜 在 し 、 無 意 識 の 領 域 を 動 員 す る 芸 術 の 実 践 に お け る ダ イ ナ ミ ッ ク な 領 域 で あ り 、 閉 鎖 的 な 循 環 に 陥 る は ず の シ ス テ ム を 緩 や か に 組 み 替 え な が ら 維 持 す る と し て 端 的 な 論 述 に よ り 論 を 展 開 し た 。 そ し て 、 ス ミ ッ ソ ン の 「 サ イ ト 」 と 「 ノ ン サ イ ト 」 を つ な ぐ 抽 象 的 な 「 ハ イ ウ ェ イ 」 に 対 し 、 大 地 と の 関 係 を と り も つ 「 小 径 ( trail)」 で あ る 「 交 通 空 間 」 を 提 示 し た 。そ れ は 、新 た な 地 理 的 メ タ フ ァ ー 、場 所 を 様 々 な 組 み 合 わ せ で 結 び つ け 、空 間 を 組 織 化 し 、 道 筋 の 物 語 を つ く る 「 メ タ フ ォ ラ イ 」 と し て の 「 交 通 機 関 」 で あ り 、 今 後 の 議 論 と 実 践 の 展 開 へ の 大 き な ポ テ ン シ ャ ル を も つ 。 こ の よ う に 、 本 論 文 は 重 要 性 と 新 規 性 を も ち 、 数 多 く の 領 域 に 広 が る 地 理 的 メ タ フ ァ ー に よ り 、 世 界 と 表 象 に お け る 空 間 性 の 一 体 的 な 議 論 の 枠 組 み を 構 築 す る 大 き な 評 論 の ヴ ィ ジ ョ ン と 地 理 的 メ タ フ ァ ー の 地 図 を 示 す 総 論 的 研 究 で あ り 、 大 き な ス ケ ー ル を も つ 萌 芽 的 研 究 と し て 高 く 評 価 し 、 今 後 、 各 論 の 解 像 度 を 高 め 、 有 為 な 実 践 に む け た 議 論 と 研 究 の 展 開 を 期 待 し た い 。 し た が っ て 、 博 士 課 程 に 相 応 し い 優 秀 な 論 文 と 認 め 、 全 員 一 致 で 合 格 と し た 。 ( 作 品 審 査 結 果 の 要 旨 ) 辰 巳 唯 人 の 「 写 真 に お け る 地 理 的 メ タ フ ァ ー - 交 通 空 間 か ら 世 界 と 表 象 の 関 係 を 再 考 す る 試 み - 」 で は 、 写 真 や 美 術 に お け る 地 理 的 メ タ フ ァ ー の 問 題 を 扱 っ て い る が 、 そ の 観 点 は 、 こ れ ま で 地 理 学 、 美 術 批 評 、 写 真 批 評 の 異 な る 分 野 に お い て 個 別 に 論 じ ら れ て き た 論 題 を 横 断 す る 画 期 的 な も の で あ る 。 特 に 写 真 の 「 空 間 性 」 に 注 目 す る こ と に よ っ て 、 地 理 学 と 写 真 を 接 続 さ せ よ う と す る 試 み は 意 欲 的 で 高 い 評 価 に 値 す る 。 社 会 科 学 、 美 学 ・ 写 真 論 の 他 、 精 神 分 析 学 の 分 野 も 視 野 に い れ た 上 で 、 世 界 に つ い て の 視 覚 表 象 と し て 写 真 を 論 じ る 態 度 は 、 写 真 を 単 な る 審 美 的 な 鑑 賞 対 象 に 留 め る の で は な く 、 写 真 に 現 れ る 地 理 的 ・ 空 間 的 表 象 を 丹 念 に 描 出 し て い る 。 一 方 で 、 美 術 に お け る 地 理 的 メ タ フ ァ ー と ア カ デ ミ ズ ム 地 理 学 に お け る 写 真 と い う 領 域 の 間 で 依 然 と し て 存 在 す る 差 異 に つ い て も 触 れ 、 実 践 的 試 み と し て の 自 作 解 説 に つ な げ て い る 。 辰 巳 は 自 身 の 作 品 制 作 に お い て 交 通 空 間 に 着 目 し 、 複 数 の 地 点 を 結 ぶ 「 間 の 領 域 」 で あ る 交 通 空 間 に 隠 喩 的 可 能 性 を 見 出 し て い る 。ト ン ネ ル を 被 写 体 と す る 提 出 作 品「 Telescope」で は 、撮 影 に お け る い く つ か の 方 法 論 が 設 定 さ れ て い る 。 大 型 カ メ ラ の 精 密 な 描 写 力 、 長 時 間 露 光 に よ る 非 瞬 間 的 空 間 把 握 、 人 間 の 痕 跡 の 排 除 、 均 一 な 撮 影 法 を 反 復 す る こ と で 手 に 入 れ る タ イ ポ ロ ジ ー 的 観 点 等 は 、 1970~ 80年 代 に ベ ッ ヒ ャ ー ・ シ ュ ー レ の 作 家 達 が 発 表 し た 作 品 を 思 い 起 こ さ せ る 。 だ が 、 辰 巳 は ド イ ツ の 作 家 達 が 審 美 的 理 由 で 好 ん だ や や 俯 瞰 的 な 視 点 を 斥 け 、 あ え て ア イ レ ベ ル を 選 択 し 、 撮 影 時 の 視 点 を 展 示 空 間 に 接 続 し よ う と し て い る 点 で 批 評 的 で あ る 。 コ ン ク リ ー ト 打 ち 放 し の 内 壁 で 、 演 出 性 の 高 い 照 明 が あ り 、 さ ら に ゆ る や か な カ ー ブ を 描 く ト ン ネ ル と い っ た 撮 影 対 象 の 選 定 条 件 を 厳 密 に 定 め た 結 果 、 産 業 景 観 と し て の ト ン ネ ル の 人 工 性 を よ り 強 く 表 す こ と に 成 功 し て い る 。 必 ず 歩 道 を 備 え て い る ト ン ネ ル を 選 び 、 歩 道 部 分 に カ メ ラ を 据 え て 撮 影 を 行 っ て い る こ と は 、 例 え ば ト ー マ ス ・ シ ュ ト ル ー ト が 車 道 の 中 心 に カ メ ラ

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を 置 い て 撮 影 し た 「 Street」 シ リ ー ズ と 比 較 し た 時 、 社 会 に お け る 撮 影 者 と い う 存 在 を い か に 位 置 づ け る の か と い う 問 題 を 喚 起 す る も の で あ り 興 味 深 い 。 提 出 作 品 に お い て 、 ト ン ネ ル 内 部 と 外 部 の 光 量 が ほ ぼ 等 し く な る よ う に 撮 影 の 時 間 帯 を 選 択 さ れ て い る こ と は 、辰 巳 が 強 い 関 心 を 寄 せ る「 空 間 」「 時 間 」の 境 界 と そ の 近 接 の 問 題 を 扱 う 上 で 充 分 な 効 果 を 与 え て い る 。 カ ラ ー 写 真 で あ り な が ら 、 色 味 を 失 っ た 光 景 は 、 風 景 を 対 象 と し た 絵 画 、 写 真 、 ラ ン ド ア ー ト 等 を 深 く 考 察 し た 上 で 初 め て 獲 得 さ れ た 世 界 の 表 象 で あ る と 言 え る 。 以 上 の 理 由 か ら 学 位 授 与 に 値 す る と 考 え 合 格 と す る 。 ( 総 合 審 査 結 果 の 要 旨 ) 辰 巳 唯 人 は 京 都 大 学 大 学 院 博 士 後 期 課 程 三 年 ( 地 理 学 専 攻 ) か ら 東 京 芸 術 大 学 大 学 院 博 士 後 期 課 程 に 入 り 直 し た 経 歴 を 持 つ 。 東 京 芸 術 大 学 大 学 院 博 士 後 期 課 程 入 学 後 は 、 写 真 と 地 理 学 を 結 び つ け る 交 通 空 間 の 可 視 化 の 研 究 に 励 み 、 地 下 鉄 の プ ラ ッ ト フ ォ ー ム や 鉄 道 の ト ン ネ ル な ど 、「 イ メ ー ジ と 交 通 /移 動 」 の 関 係 を 明 確 化 す る 作 品 作 り を 行 い 、 ニ コ ン サ ロ ン な ど で 発 表 、 新 た な 表 現 者 と し て 期 待 さ れ て き た 。 今 回 の 博 士 論 文 は そ の よ う な 経 緯 を 踏 ま え 、 写 真 を 中 心 と し た 映 像 メ デ ィ ア が 現 実 世 界 の 地 理 的 場 所 と ど の よ う な 関 係 性 で 結 ば れ て い る の か を 、 写 真 家 や ア ー テ ィ ス ト ら の ア プ ロ ー チ や 試 み か ら 詳 細 に 考 察 し た も の で あ る 。 写 真 家 や ア ー テ ィ ス ト ら は 地 理 的 場 所 や 空 間 を ど の よ う な 態 度 や 視 点 で 捉 え て き た の か を 歴 史 的 、 美 学 的 に 辿 り な が ら 、「 移 動 」 や 「 交 通 」 と 言 っ た キ ー ワ ー ド を 核 に ま と め 直 し 、「 写 真 の 地 理 学 」 と い う 独 自 の 研 究 領 域 を 確 立 し よ う と し て い る 。 文 章 力 、 構 成 力 、 表 現 力 も あ り 、 論 文 の 精 度 や 質 も 高 い 。 ま た ト ン ネ ル の 内 部 か ら 外 部 を 撮 影 し た 作 品 シ リ ー ズ は 、 内 と 外 、 昼 と 夜 、 光 と 闇 、 時 間 と 空 間 と い っ た 二 元 論 を 反 転 さ せ る 特 別 な ト ポ ス を 定 着 さ せ た 新 た な 地 理 学 的 写 真 と し て 高 く 評 価 で き る 。 以 上 の 理 由 か ら 審 査 委 員 全 員 の 承 認 の 下 に 論 文 ・ 作 品 を 博 士 号 に 値 す る と 認 め る 。

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