企業官僚制へのアプローチ
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(2) これまでに知られるもっとも技術的に卓越した組紙の形態に他ならない。 か くてウェ ーバー においては. 近代官僚制の合理性の重要な要素の一つは「知 識による符理」にあるが.,•これは「官僚制的管理は知識による管理を意味す る。 これが官僚制をして, とりわけ合理的たらしむる 基本的特徴である。 ……官僚制は知識の点ですぐれており, それは専門知識とその関心領域内で の個々の事実に関する知識の両者を含む」1) という彼の主張に 明示されてい るばかりでない。 彼が「専門的資格にもとづく採用」を, 官僚制の喧要な原 則の 一つにあげていることにもそれが明らかであろう。 この近代官僚制の特質を, 官僚制組織においてとりわけ集約的に体現して いる要素の一つが「規則」に他ならない。 けだし, 近代官僚制においては, 規則は多かれ少なかれ, それぞれの専門的見地から,最大限の能率をめざし て合目的的に制定されており, この意味で. それはすぐれて「知識」にもと づいているからである。 もちろん, 封建社会における統治や嘗理においても 規則はみられないわけではないが, この場合には.. それが 知識にではなし. に, 「伝統」に根ざしているところに近代官僚制との 大きな差異がある。 か くて, 組織の近代化あるいは官僚制化の尺度として重要な意義をもつのは. 単なる規則の存在ではなく, むしろその性格にあるということは注目を要す 2. るであろう ) 。 同様なことは,「階統制」にもあてはまる。 すなわち, 封建的統治におい ても臣従関係にもとづく階層的な地位分化は複雑な身分的序列の発達をもた らしているが, 近代官僚制とは異なるこの場合の大きな特色は, そのすぐれ て人格的な支配隷属関係にある。 したがって, 階統制に関しても, 組織の官 僚制化の基準として大きな意味をもつのは, 単なる階層の数や監督の巾の大 きさではない。 換言すれば, ここでは, 階統制における権限関係の某本的な 性格が重要であるが, 近代官僚制のそれは. すぐれて没人格的であることに ” 大きな特色がある 。. ちなみにここで. 組織が目標達成の手段として機能的に合理的であるがた -160 (160)-.
(3) めの条件に目を向ければ, まず 第一に, 合理的な意思決定を制約する前近代 的な伝統や因習の束縛からの解放が重要であるところに,「知識による管理J の貫徹が 必要になる ゆえんがある。. その意味において, ウェ ーバー のいう. 「日々, 増大する合理化」による「世界の魔術からの解放」という歴史的基 調は, まさに, 官僚制組織の発展にとって不可欠の歴史的前提をなす。第二 に, 組織の合理性は, 組織的決定が成員の個人的私情や恣意の介入によって ゆがめられる 場合にも そこなわれる。. 換言すれば 成員の組織人格上の役割. が, 個人人格上の役割によってむやみに侵害されたり, 制約をうけてはなら ないのである。「没人格性」の原則が重要な意義をもつのも, この点からに 他ならないが, 本質的にヘル(Herr)のペルゼ ー ン(Person)への固執が 強い伝統的支配やカリスマ的支配においては, その貫徹による組織人格と個 人人格の厳格な区分には大きな限界があり, 合法的支配にもとづく近代官僚 制においてのみそれが基本的に可能であるとすれば, この点からも元来, 官 僚制組織がフォ. ー. マル組織のすぐれて合理的で近代的な形態たることは自明. であろう。 かくて, 元来,官僚制組織が,フォ. ー. マル組織のすぐれて合理的で近代的な. 形態であるとすれば, 能率の論理の貫徹する経営組織にかかる官僚制化への 強い志向が内在するのも当然であろう。ウェ ー バ ー が強調するように官僚制 組織は, そのすぐれて形式合理的な性格において技術的に卓越しているばか りでない。 ルー チンという技術的特質にもそれが集約的に具現されているよ うに, 官僚制組織の重要な指導原理が経済性と継続性にあるとすれば、この 点においても,それはすぐれて,経営にとって内在的な存在をなす。 近代経営 の発展の方向が, 多分に, 経営組織の官僚制化と軌をーにするゆえんである。 注 1) Max Weber, Wirtschaft und Gesellschaft, 5 auflage, hersg., von Johaness Winckelmann, Tubingen: J. C. B. Mohr, S. 129. (以后,木書はWuGと略 す。) N. Mouzelis, Organization and Bureaucracy, 1967. P. 39. 2) 3) ibid., P. 40. -161{161)-.
(4) 2.. 組織と階統制 経営組織の大規模化や合理化が, 多分に, 官僚制化の過程に通じているこ. とを, とくに官僚制的構造の中核をなす階統制との関連において解明しよう とする点において, A. ダウンズ(A. Downs)の次の所説もここで注目を要 ・ する。 まずダウンズによれば, どの組織も, もともと,「異なる課業をもつ多人 数の調整された努力なしにはなしとげえない目的を達成するために形成され ている」以上, 調整がきわめて重要であるのはいうまでもないが, これは, 各成員が, 他の成員の行動との調和のための自己の行動の修正にやぶさかで あってはならないことを意味している。 重要なことには, この相互適応の円 滑な展開が自生的(spontaneously)に生ずれば, 権限におけるあからさま な階層的構造の展開も, 更に必要ではないが, 組織が大規模であることそれ 自体が, すでにその障害の大きな源泉であるとすれば, ここに階統制の展開 が不避的となるゆえんがあるのはいうまでもない I) 0 ダウンズはこの障害を「利害関心のコンフリクト」と「技術的制約」の両 者にまず大別するが, これらはいずれも, 必ずしも意思の衝突を意味しない という点において感情的には中立の用語として用いられている「コンフリク ト」を, すなわち「不斉合的行動」を生み出すばかりでない。 彼によれば, これを受容可能なレベルにまで抑制する必要から発展してくるのが「階統制」 であることは重要であろう2) 0 ダウンズによれば,「利害関心のコンフリクト」は, 「戦員の追求する明示 的目標の差異」と「現実の認識様式の差異」に由来する。 成員達が同一の情 報をもち, 不確性には一切直面せず とも, 明示的目標の差異から, 組織の当 面の課題については意見が異なる場合がありうる。 かかるコンフリクトは, 組織の技術的能力の改善によっても, 完全には根絶しえない3) 0 「現実認識の様式の差異」は, 様々の領域の特殊な 専門的訓練によってつ. -162 (162)-.
(5) ちかわれる独自の思考様式に 含まれている価値構造に 由来する。 この場合 も, たとえ当事者達が, 明示的目標と情報を同じくしていても, 各々の認識 様式の独自性によって問題の異なる側面が強調される結果, 当面の組織課題 4). については意見の不一致が生じることがありうる. 0. 技術的制約は, 各人が知識と情報についてかぎられた能力しかもたないと ころから生じる。 課業の特殊化は不可避的に情報の特殊化に導くがゆえに, 各成員は それぞれに異なる情報の束をもつ。 したがって, たとえすべての成 員が同一の目標と認識様式をもつ場合も, 当面の組織課題については異なる 結論が出てくる。 同様に, 不確実性も, 特定の行為から生じる結果について 異なる見解を許容する。 もちろん, よりくわしい情報によって正確でないこ とが判明する場合もある。 しかし, 不確実性の完全な根絶が不可能な以上, 理性的な人々が明示的目標と認識様式ならびに情報を同じくしても なお, 見解の不一致の余地はある9。 技術的制約にもとづくコンフリクトの中には, 各成員が それぞれに, 他の すべての成員の なしていること, なしてきたこと, な そうとしていることに ついての完全な知識の欠如にもっぱら由来し, 実質的には, いかなる見解の 対立も含まない場合もあるが, ダ ウンズによれば, 職能的特殊化の高度にみ られる組織では, コンフリクトの単一の源泉としてもっとも一般的であるの はこの種の不斉合性に他ならない。 また,. コ. ンフリクトが成員の行動の相互. 関連性から生じるのはいうまでもないが, それが必ずしも職能的相互依存関 係からくるものだけに かぎられないのは, ダ ウンズに よって それが純機能 的, 純配分的, 両者混合的の三類型に区分されていることにも明らかであろ う。 しかし, 資源の配分に関する決定はなされるべき活動に関する決定を意 味し, その逆もまた真なるがゆえに, 両者は本来, きわめて密接な関連にあ る。 不斉合的行動を生じるがままにしておけば, 大規模組織の有効性は破壊さ れぬまでも, 著るしく減退することはさけがたい。 ある成員の行為は他の成. -163 (163)-.
(6) 員の行為によって相殺されるからである。 もちろん, これへの対応は何らか のメカニズムの導入を不可欠にするが, ダウンズによれば, この場合にとり うる形態は結局において次の二つしかない。 その一つが多数決制にみられる ような, 関係当事者の同等の権限を前捉とする何らかの規則の活用にあると すれば, いま一つは, 組織内の特別の地位にある者への,. コ. ンフリクトの解. 決における特別権限の委託にあるが, 後者から出てくるのが階統制に他なら ない。 しかるに, その経済性において, 両者の間には決定的な差異がある。 そして, このことは, 多少とも経済性が重要な意義をもつ大規模組織におい ては, 事実上は後者のみが可能な唯 一の方法であることを意味していること は重要であろう。 たとえば. 組織の規模や 成員の地理的分散が 大である場 合, あるいはとりわけ コ ンフリクトの生じやすい職能構造の場合, 投票によ る コ ンフリクトの解決という方法は, あまりにも多大の時間とエネルギ ー を 浪費することになる凡 ダウンズによれば, 大規校組織では, その経済性への志向から,. コ. ミュ ニ. ー. ケ ー ションの面においても. 一種のヒエラルヒ 的システムの導入は不可欠 であるばかりでない。 階統制における活動や資源配分の調整が有効であるた めには, それに関する適切な情報が必要である。 加うるに, 情報の コ ントロ ールは, 管理者の権限を強化する一つの有力な手段でもあるがゆえに, 権限 0)中心点とコミュ ニ ケ ー ション. ・. センタ ー との緊密な連結は, 権限の受容の. 促進にも有用である。 ここに, 官僚制組織では, 単一の階統制が. 調整機能のみならず, 伝達機 能においても, その大なるにない手たるゆえんがあるが, かかる階統制の機 能的意義にてしても, 近代経営では多かれ少なかれ, 官僚制組織の発達が不 可避的である ” 。 注1) A. Downs, Inside Bureaucracy, 1967, P. 50. 2) ibid., P. 50. 3) ibid., P. 50.. -164 (164)-.
(7) 4) ibid., P. 50.. 5) ibid., pp'. 50-51.. 6) ibid., PP. 51-52. 7) ibid PP. 53-56. ◆,. 3.. 伝統的組織論の役割. マックス 迅速,. 一. ・. ウェ. ー. バ ー は官僚制組織の技術的卓越性を強調して,「的確性,. 義性, 文書に対する精通, 持続性, 統一性. 厳格な服従, 摩擦の除. 去, 物的ならびに人的費用の節約――-. これらは, 厳格に官僚制的な. とく に訓練を受けた個々の瞭員による単一支配的な管理においては, あらゆる合 議的な.. または名挙職的, 兼職的な 形態にくらぺて最適度にまで高められ. る」と指摘したばかりでない%「完全に発展した官僚制の機構と他の形態と の関係は. ちょうど, 機械生産と非機械生産との関係にたとえられる」とも のぺて丸. その合理性を強調した。 この場合. ウェ. ー パー. のいう「合理的」. は基本的に 「手段の目的に対する適合性」 を意味し, 組織論的脈絡でいう 「能率」がそれに該当する。 されば, 組織はその目標達成にあたって, 最と も能率的な手段がえらばれる場合にもっとも合理的ということになるが. こ こではもっばら「組織の全体的目標」のみが考慮に入れられていることは注 目を要するであろう。 したがって, この意味で組織が合理的であっても. そ のことは決して組織における成員の公式的な活動が, 彼ら自身の個人的目標 や動機にてらしても合理的であることを意味しない。 むしろ逆に組織がその ような意味で合理化され, 官僚制化してくればくるほど. ますます成員は, 彼らの意思を超越して作用をつづける巨大な組絨メカニズムにおける 一 片の 歯車の歯にすぎぬ立場におかれ, ついには自らのなす活動の目的や意味さえ も見失うにいたるという事態も往々にして指摘されている。 マンハイム(K. Mannheim)のいう「機能的合理性」 はまさにこの種のものをさすものに他 ‘. ならない 心 しかるに, 経営組織論の出発点をなす伝統的組織論のめざしてきた経営組. -165'(165)-.
(8) 織の合理化の方向が,まさにこの 「機能的合理性」の増大にあづたのは注目 を要するであろう。たとえば それは, 「職能が できるだげ単純な構成部分に 分割され,特殊化されればされるほど,従業員の熟練が高まりく、. , 生産システ ム全体の能率が上がる」という基本的仮説の下に,蔵能分化や部門化の問題 に,きわめて精力的にとりくんできたが,その背後iりむA閾�:'itt切の感情 や社会的欲求を捨象したきわめてメカ ニ カルなフレ ー ムワ ー クがみられるば かりで�i. い。そこでは,.組織は多分に.. トップの集権的なコントロ ー )ぃや計. 画の下に,全面的に操作可能な,互換性をもった部分からなる用具,ぁるい は 「機械」とみなされるが,これを,経営組織の官僚制化を支配して 岩た思 想の原型として,y. A.ートンプソンがあげている「生産イデオロギ ー」と比 較するとき,両者が酷似しているのは決して偶然でないs.i:_o かかる伝統的組織論のアプローチに対しては,すでに様々の警告もなされ ているが;「科学的管理法はアメリカの企業制度をむしばんでいる病弊を治 療するために調合された薬剤であるが,その用い方をあやまればきわめて危 険である」というギプ=ノ. ー ルトン(G.. S. Gibb and E. H. Knowlton)·の指. 摘にもその一例がみられるばかりでない%. ジュ ニ ングス(E. E. Jennings). もやや皮肉な論調で,「通常鼻変革はより一層の官僚制化を 意味するもので あるが,官僚制化をさけるというふれこみでなされる処置が,かえって一層 の官僚制化を招かねば幸いである」との主旨の警告を発しているが,これが その対象とする伝統的組織論に多分に妥当するとすればこれもまた,伝統的 組織論が経営組織の官僚制化の一つの大きな理論的源泉たることの証しに他 ならない。いずれにしても,いたずらに 「合理化」や「近代化」という言葉 のもつひびきに眩惑され,局限的視野で,やたらと組織の表面的な部分的改 革のデザインを追い求めることに急で,組織全体の墓本的動向や性格の変化 への注 意を欠いていると,いつのまにか組織は,過度の官僚制化からくる重 大な危険に直面しているということにもなりかねないであろう。ぞのフレ ー ムワ ー クの特色にかんがみ,かかる傾向が伝統的組織論にもある以上,それ. -i66I(1a6v-.
(9) が従来の経営組織論の展開において 占めて き た位置の大 き さか らしても, . 経 営組織の官僚制化におけ る その影響力 は, こ の 問題 を考え る 場合の一つの無 視しがたい存在であろ う。 以上を要す る に, 歴史的 にみて, 企業官僚制 の発展が, 工場制工業経営の 段階におけ る 大規模な生産活動の 展開 に 対応 し て い る の は い う ま で もない。 ちなみに, いかに高度の生産技術といえども, こ れを生かしう る 組織を欠け ば, 実践的には無意味に等しい。 かくて それは、ま さl乙 現代社会におけ る 高 度の物質文 明の 展開 を可能にす る 制度的支柱':こ 他 な らないが, か か る 企業官 僚制 の 展開は, 単に産業革命以来の生産の機械化の•発展と結びついてい る ば か り でない。 そ れは他方 に おいて企業形態の発展ー・ と く に 信用資本の高度 の 集中形態として の株式会社制度の発展と も密接に結びついてお り , こ の 三者 が 「規模の経済」 の原理の下に統合され る と ころに, 近代経営 の成立があ る とすれば, ま さしく官僚制組織は, 近代経営にとってす ぐ れて 中核的な存在 であ る。 注 1 ) M. Weber. WuG, a. a. 0., SS. 561-562. 2 ) M. Weber, WuG, ,a; .a. 0., S. 561 . 3 ) N. Mouzelis, op. cit., P. 51 .. 4 ) ibid., P. 51. 5 ) V. A. Thompson. Bureaucracy and Innovation, !969, P. 19ff. 6 ) M. E. Dimock, Administrative Vitality, 1959, P. )9.. 7) E. ジ ェ ニ ン グ ス 著, 「 エ グ ゼ ク テ ィ プ」, 福島正光訳, 昭和38年,. 第二節. プ ォ ー マ ル 組織の デ イ レ ン マ. ブ ラ ウ = ス コ ッ ト (P.a M., Blau. and W. �- Scott) は, こ れからと り あ げる 次の三つのフ ォ. ー. マ ル組織 の 内 在 的デ ィ レ ン マ を指摘したが叫. これが. 官僚制組織に 高度に妥当 す る こ とは 注目 を要す る。 それは あ る 意味 に おい. :c. - 1e1 16n-.
(10) て, 官僚制組織が, フォ ー マル組織のす ぐ れて高度の形態であることを意味 するばかりでない。 それはま た, 官僚制組殺 にお け る 内 在的限界とそれ に根 ざす逆機能が, 近代経営 にお け る一つの大きな 問題の源泉であることをも示 唆している。 注1) P. M. Blan and W. R. Scott, Formal O rganizations, 1962, PP. 242-250 .. 1.. 調整と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン. プラウ=スコ ッ ト によれば.. 自 由な コ ミュ ニ ケ ー ションの流れ, すなわ. ち. ア イ デ ア や批判. 助言な どの無制限の交換は, 次の点 において有効な問 題解決 に貢献し. 意思決定の向上をも たらす。第一 に, 意思決定 に伴う不安 が. そこ において得られる社会的 支持や是認 によって解消 さ れるばかりでな い。第二に かかるコ ミュ ニ ケ ー ション過程は, 一種の誤謬訂正 メ カニ ズ ム を提供する。 すなわち, 同じ問題 についても, ア プロ ー チのフレー ム ワ ーク は人 によって様々であるが, この差異が他者をして, 提案者 には気づきえな かった 誤謬や盲点の検出を容易 にする。第三 に, 論議の過程 に生 じる畏敬の 念をめ ぐ る競争が. す ぐれ た 提案をなすことへのよ い 刺激 になるととも に, 他者の貧困な提案 に批判を加える強い刺激 にもなる凡 しかし 自 由なコ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンは. 次の点では「調整」を さ またげる 。 すなわち. 無制限のコ ミュ ニ ケ ー ジ ョンは, ア イ デ アの戦場を生み出すが, それは合意の形成をむづかしくする。 しかる に,「調整」は.. 同程度 にす ぐ. れた 計画案が他 にみられる場合 にも, 一つの計画案のみをマスタ ー ・ プラン とすること につ いて, 全体の合意が成立することをつね に要求する。 かくて ここ に,「社会的コ ミュ ニ ケ ー ションの過程は, その課題が, 一つの問題の 最善の解決法の発見 にある場合 には, 集 団的 遂行をして個人 的遂行 にま さ ら しめるが. その課題が調整 にある場合 には. 集 団的遂行をして, 個人的遂行 におとらしめる」と い う 結論が出て く ること になる丸 権限の階層 的分化が. 意思決定 にとって逆機能的であるのは. それが, 次. -168 C 168 ) -.
(11) の 点 に お い て , コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 自 由 な 流れを さ ま た げ る か ら であ るd す な わ ち , 階統制 に お け る 地位の格差 は ,. コ. ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に お ける 下位. 者 の 参加を抑制 し て , 一方的 に , そ の上位者への集 中 を も た らす ばか り で な い。 そ れ は下位者の仕事に お け る 満足 と , 貢献意欲の減退の 大 き な 原 因 に も r. な っ て い る 。 も っ と も , プ ラ ウ = ス コ ッ ト に よれば.ぃそれがヲ) ." .'!r'" ケ - シ ョ ン の 自 由 な 流れの障害に な っ て い な い 場合 にiむ 楷統制に よ っ てかえっ て 意思決定が 向 上す る 事例 も み ら れ る と こ ろ から ... .「 階層分化が 問題解決にと っ て 逆機能的で あ る の は , 自 由 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が それ に よ っ て制約 さ れ る と い う こ と に と く に帰因 し て い る 」 と い う 結論が 出て く る 。 し かし ,, 同 時 に 彼 らに よ れば, 階層分化を して 問題解決に逆機能的た ら し める に -の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の制約 こ そが , 細整に と っ て は, は な は だ重要な機能的意義 を も っ て い る 。 け だ し , 調整の能率を高め る た め に は, 階層分化 と集権的指 令, な ら び に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 限定が多 かれ少な かれ必要で あ る の は , . 様々 の コ ミ ュ ニケー シ ョ ン れてい る か ら で あ る. ・. ネ ッ ト ワ ー ク に 関 す る 実験結果で も 明 ら かに き. :i. )0. い う ま で も な く , 組織が有効 で あ る がためには, 有効 な 調整 と 有効な問題 解決の 双方が必要で あ ろ う 。 し か る に , 階層分化が そ れを通 じ て能率的な調 整 に 貢献す る メ カ ニ ズム そ れ 自 体が, す な わ ち , コ ミ ュ = ヶ ー シ ョ ンの流れ の 限定と そ の 方 向 づ け が , 他方で は有効な 問題解決のさ ま た げ に な る 。 注意 を要す る こと に は , 同輩集団 に お い て さ え , こ れが み ら れ る 。 す な わち [ そ こ で も問題解 決に貢献する 自 由 な コ ミ ュ ニ ケ ー ジ ョ ン の 流れ は , ィ ン フ ォ — マ ル な地位分化を も た ら し , ひ と た び そ れが確立 さ れると , こ れま た コ ミ・ ユ ニ ケ ー シ ョ ン の障壁 を な す。 か く て, こ の ディ レ ン マ 比 調 整と 問題解決と い う , いずれも , 組織 に と っ て 基本的な二つの内在 的要請に 根 ざ し て お り 、 そ れだ け に , 決 して根本的 に解 消 し う る も の で は な い。 そ れが多かれ少なか れ, つ ね に 組織 に み ら れ る ゆ えんで あ ろ う '\. - 169f(169 う 一.
(12) 注 1 ) P. M. Blau and W. R. Scott. op. cit., PP. 242- 243. 2 ) ibid., P. 243 . 3 ) ibid., PP. 243- 244. 4) ibid., P. 244.. 2.. 官僚制規律 と専門技能. ブ ラ ウ =スコ ッ トによれば, ウ ェ ー パ ー が官僚制組織を支配する諸原理と 専門職業的諸原理を区別することに失敗した一 因は, 次の点において両者に 共通性がみられることにある。 第一に, いず れの場合も決定は個 々 の事例における特殊な個人的事情への 配慮に左右されずに, 普遍的基準にもとづいて, 没人格的で冷徹になされる ことが要請されているが, そ の ねらいが合理的判 断の促進にあるのはいうま でもない。第二に, 専門的訓練にもとづ く 特殊化された能力をもつという点 においても, 官僚制の職員と専門職業家の問には共通な特色がみられるが, これが, その権威 (authority) のお よ ぶ範 囲を, 特定領域に限定させるこ とになる。第三に, いず れの地位も, 先天的な身分や家柄に よ って決まる帰 属的地位ではな く , 訓練や能力を基準として任用がなされる達成的地位に他 ならない I) 。 しかし次の点では, 両者は重要な差異をもつ。第一に, 戦業専門 家は, 顧 客の福祉と その 利害の代弁を 第一義とするサ ー ビス基準と倫理準則に よって 内面的に抱束される。 しかるに官僚制の職員の重要な責務は, 所属組織を代 弁し, そ の 利益を 促進することにある。 第二に, 識業専門家の権威の源泉 は, 専門家としての技能や名 声にあるが, 官僚制の職員の権限の源泉は, 公 式的制裁にうらづけられた法規にある。第三に, 職業専門家の決定が内面化 された専門戦業的基準に支配されるべ く 期 待されているのに対し, 官僚制の 聴員の それは, 上司の命令への規律ある服従によって支配されるべ く 期 待さ れている。 たしかに, ときには専門的資格においても上司が部下 よりもすぐ れているということもありうるが, 管理者の場合, つ ねに その決定を, 少 <. - 170 ( 170 )-.
(13) と も 部分的には, 純粋な専門職業的基準 と 抵触す る こ と も あ る 管理的配慮 IC も と づ い てなさねばならな い と い う 事実がここでは 重要であろ う 。 第 四に, 官僚制の職員の場合, その決定の是非の最 終 的 判 断 は , 上司た る 管理者の特 権であ る が, 職業専門 家の場合に は . 同僚専門家集団の手に それが留保され て い る 2) 。 以上の差異の示 唆す る 管理組織の諸要求 と 朦業専門 的 基準 と の コ ン フ リ ク ト の検討の意義を大き く す る 一 つの重要な背景は , 官僚制組織に おけ る 職業 専 門 家の増 大 と い う最 近の傾 向に他な ら な いが, この コ ン フ リ ク ト は通常, 経営管理者を主要な準拠集 団 と す る 従業員 と 同 僚専 門 家にそれを見出す従業 員の間の対照的な志 向の下に見出され る が, こ の官僚制 的 志 向と 職業専 門 的 志 向の コ ン フ リ ク ト の も つ 意義の重要性 は, これに言及す る 論者の数の増 大 に も 反映されてい る 。 た と えば, 生えぬき 型 と 遍歴型従業員の間の コ ン フ リ ク ト に関 す る ヒ ュ. ー. ズ CE. C. Hughes) の報告, フ ラ ン シス =ス トー ン ( R.. G. Francis and R. C. Stone) によ る サ ー ビス志 向型職員 と 手続志 向 型職 員の区分,. 帰属組織に忠誠を ち か う 「 ロ ー カ ル」. と 普遍 的業績に 志 向 す る. 「 コ ス モ ポ リ タ ン」 についての ゴ ー ル ド ナ ー の 区分も その一例であ る 。 また プ ラ ウ =ス コ ッ ト 自身も, あ る 福祉機関について実証研究をな し て い る が, そこに お いて彼ら は, 所属組織よ り も 社会福祉の職業専門的基準への志向が 強い職員達は, 他の戦員達にくらぺ, その機関への愛着心が弱 いばか り でな く, と くに顧客への奉仕 と い う点に お い て, その機 関 の 活 動に も 批判的で, 管理上の手続きにも十分に従わな い 傾 向があ る こ と を見出 し て い る 凡 更に プ ラ ウ=ス コ ッ ト は,. この 問題に 関連 し て,. ス チ ン カ ム ( A. L.. Stinchcombe) やユ ー デ ィ (S. H. Udy, Tr.) が, 種々の生産組織に関す る 比較分析から, 「合理的な フ ォ. ー. マル組織の構造 は,. 必ず し も 官僚制 的であ. る と はかぎらない 」 と いう結論を導き 出 し た 心 と に 注 目 す る 。'. lti な わ ち ,. 1 彼. らによれば, 季節によ る 需要変動が大き いために, 継続的な官僚制組織の維 持に困難があ る と ころから, それに代 っ て専門職業的労働力が, 合理的生産. - 171 071 )-.
(14) を確保する 手段 と し て展開 し て い る 建設業の 事例 Iと み ら れるように, 組織が. 専 門化や業絃に比例する報酬, 契約に よ る 合意などの合理的諸原理に支配さ 4) れてい ろ と し;, う 事実 は , 必ず し も . 官僚制的構造の展開を意味しない 。. しかし,. プ ラ ウ =ス コ ッ ト によれば,. 遂行されるべき サ ー ビスの 複雑性. も,` こ の 場合 の 専 門職業的労働力の活用 の 一つの促進要因たることを看過す べ き で な い o し た が'<'? て, 研究機関や医療機関のよ う に , 組織全体の 職能の 常 規 的 な 特殊化 さ れ た 課業への分解 に 大 き な限度がみ ら れる場合に は ,` 意思 決定が, 上 司 の 指令への規律ある服従に よ る よ り も , むしろ, 職業専門家の 卓越し た判断に ゆ だ ね ら れた方が能率的 で あ る。 か く て こ こに プ ラ ウ =ス コ ッ '卜 は .., 専門的技能と 官僚制規律I乙 不確実性 に対処する二つ の 代替的方法 を 見 出 す こ と に な る 。 す な わ ち . 後者に よ っ て不確実性の範囲の縮少が も た ら さ れ る と すれ ば . 前者に よ っ て も た ら さ れ る のが, 不確実性への 対処に要 ず る 知 識 と 社会的支持 に 他な ら ない。 しかし, .近 年, 職業専門家の仕事が官 僚制組織 に お い で な さ れ る 機会が ま す ま すふ え , 官僚制の活動 も 次第に専門 化 の 程度を高め つ つ あ る ことにかんがみ, このあい対立す る 二種類の コ ン ト ロ ー ル • メ カ ニ ズ ム の下に同時に おかれる人々の数と, そ の およぶ範囲がま す ま す拡大す る 傾 向がいなみがたい と すれば. 両者のデ ィ レ ンマは今後 も 存 続す る のみ な ら ず. む し ろ ま すま す拡大す る こ と が予想され る のはプ ラ ウ = ス コ ッ ト の 指摘の と お り で あ ろ う 凡 注l ) · P. M. Blau and W. R. Scott, op. cit., P. 244 . 2 ) ibid.; PP. 244-..245 .. V. ゎid., P. 246 .. 4 ) ibid.. PP. 246-247 . ' . 5 ) ' ibid.. P: 247 .. ' 3.,. 集権的プ ラ ン ニ ン グ と 儘人 的 イ ニ シ ァ テ ィ ブ. プ ラ ウ= ス コ ッ ト は, 集櫛的 プ ラ ン ニ ン グ の ニ ー ド と 個人的イ ニ シ ァ テ ィ ブ の 二 .:... ド の間に, フ ォ ー マル組織の第三の基本的デ ィ レ ン マを見出すが,. - 172 072 ) -.
(15) その重要 な 出発点は, 「大規模組織に おけ る 調整が有効であ る た め に は,. ぁ. る 程度 の集権的指揮が必要であ る 」 と い う 認識にある ばか り で な い 9 。 こ の 経営者に よ る 調整は, 必ず し も, 職位の権限に もとづ く 階思的 コ ン ト ロ ー ル を通 じ て な さ れ る とはかぎら な い と し て, 経営者の 集権的プ ラ ン ニ ン グの下 に導入 さ れて く る様 々 の タ イ プの没人格的な コ ン ト ロー ル ・ メ カ ニズムに注 目す る 。 たとえば, ア セ ン プ リ ー ンベアー. ・. ・. ラ イ ン もそ の一例であ る が, この場合には; コ. ベル ト がオ ペ レー タ. ー. に加え る 没人格的 な抱束によって , 階統制. におけ る 注文の 流れ の 方 向に逆転が生 じ る 傾 向 があ る 。 す な わ ち, 労働者へ の 注文の殆ん どは,. コ. ン ベ ア ー ・ ベ ル ト に よっ て, 自動的に な さ れ るので,. 労働者の注文への対応が, 戦長の も っ ばら の 役割とな る のみ な ら ず, これと パ ラ レ ル な 変化が よ り 上位の 階 層に も あ る 程度は波及す る ことは注目を要す る で あ ろう。 ここにはた し かに経営者の集権的な指揮はあ る が, それは階統 2). 制にお い て なさ れ る わ けで な い 。. ..;. プ ラ ウ=ス コ ッ ト のあげ る いま一例は. 従業 員 の業 績 の 相 互比較を可能な ら しめ る 「業績統計記録」· に あ る が. こ の 場合の 大き な 特徴 は, 肉 体的課業 のみな らず.. 非肉体的課業の コ ン ト ロ ー ルにも その適用が 可能なことにあ. る 。 この計塁的資料に も と づ く 定期的な 動 務評定も, 従業員の 抱束に大き な 効果を も ち. 監督者によ る 日 常的な監視の必要を大いに減退 さ すばか り でな い。 組織におけ る 注文の統れが逆転 し , 部下への助言や助力が監督者の 主た る 役割にな る 傾 向 も この 制度にはみられ, 活動の 指揮が, そ の デザイ ン を行 う上級管理者に集 中 す る ことからも. こ の 制度は. 調整を促進 す る 効果をも. っt) 。 ・. か く て, ア セ ン プ リ ー ・ ラ イ ンも, 業績統計記録 も, 権限 の直接的行使の 極少化に よ っ て , 監督者と部下の 関係の改善を も たらす ことは重要であ る 。 し か し 前者は労働者の自由裁量 の 減退に よ る 仕事の満足の低下を伴 う のに対 し , 後者は多分にその逆であ る と こ ろに大き な 差異が あ る •\. - 173 { 173 )-.
(16) オー ト メ. ー. シ ョ ンは一見する と そ の効果に お いて, 前者よ り も後者に類似. す る 。 た と え ばし 常規的課業は機械に代替 さ れる ので, 労働者の殆ん どは保 全や事故処理に あ た る 技能熟練者で, 、よ り 多 く の自由裁量が発揮でき る とこ ろ か ら , 仕事の 満足も大き いと考 えう る 。 しか る に あ る オ ー ト メ. ー. シ ョ ンエ. 場についての 網査研究では, 労働者の平均的技能と責任の レ ベ ルは, オ ー ト メ. ー. シ ョ ン化の前よ り もま さ って お ら ず, 自由裁量も拡大していなかっ た ば. か り でない。 そこでは, ひとたび故障が おき る と, 損害が非常に大きくな る ところ か ら , 織長は極度にそれを警戒 し て, ア セ ン プ リ. ー. ・ ラ イ ン の場合に. も ま して, . こまかく労働者を監視 し た。 更に, オ ー ト メ. ー. シ ョ ン化によ る 職. 位 の 削 減が, 下位の それだけにとどま ら ず,・ よ り 上位のそれにおよぶことか ら もた ら さ れ る 昇進の機会の 減少も, . 労働者に と っ ては'. ―. つの 大きな不漉. の源泉 を な し ていた。 も っ と も , プ ラ ウ =ス コ ッ ト は, と の 調査研究の結果 を, 直 ち に一般化しようとはしない が, そ の理 由 は, こ • の 事例 の場合, オ ー トメ. ー. シ ョ ンの長所 を フ ルに活用す る だけの作業過程の再編成が不十分で あ. る ことにも そ の 一因 が あ る とみ られてい る か ら で あ る % プ ラ ウ = ス コ ッ ト によれば, 労働組合の賃上げ圧力 も, この再編成の促進 要因にな る 。 労務費が増大す る と. 経営者は生産性への志向 を強め. その 一 手段 と し て, よ り 一 層 の オ ー ト メ. ー. シ ョ ン化によ る 常規的職務の 削減をはか. る 。 そ し て, な おもそこに残留 してい る 高賃金労働者には, 従来の戦長やス ペ シ ャ リ ス ト が遂行していた保全織能に要 す る 技能を体得す る 責任をも課し う る と なれば, それによ る 自 由裁 量 の 増 大と 「こまかな監督」の必要 の 減少 によ っ て も , 仕事の満足が高め ら れ る ばか り でない。 この 労働力の専門聴業 化は, 報酬制度の再編成にも通 じ よう。 けだし, 直接の 金銭的利得や生産性 を強調す る 出来高給制度よ り も, 昇進の 機会 や結果にもとづく評価を強調す る 報酬制度の 方が, この専門職業 化 し た課業の遂行には, よ り 有効な剌激た 6). り う る か ら であ る 。 かくて, プ ラ ウ = ス コ ッ ト によれば. 経営者によ る 生産過程の集権的プ ラ. - 174 074 ) -.
(17) ン ニ ン グのな かには, 階層的 コ ン ト ロ : Iレに よ る よ り も , イ ニ シ ャ テ ィ ブ の 発揮を さ ま たげる こ と が少ない場合 も 含まれて い るが. こ のこ と は決 し て, 経営者の集権的 コ ン ト ロ ー ル と 従業員の個人的イ ニ シ ャ テ ィ ブ と の 基本的デ ィ レ ン マ が, 根本的に解 決さ れた こ と を意味する も のでない。 せ い ぜ い の ぞ み う るのは, 服従と イ ニ シ ャテ ィ プの最善の組合せにすぎ な い が; こ れ と て も あま り 多 く は期 し がた い。 けだ し こ のバ ラ ン ス も , 一方に おける秩序への ニ ー ド と 他方に おける 自 由への ニ ー ドに よ っ て, た えずうち こ わ さ れるか ら で あ る” 。 注 1 ) P. M. Blau and W. R. Scott. op cit., P. 247 . 2 ) ibid P. 248 . ◆,. 3 ) ibid., P. 248 . 4 ) ibid., P. 248 . 5 ) ibid.: PP. 248-249 . 6') ibid., ·P、 249 . 7 ) ibid., PP. 249-250.. 第三節 . 1.. 官 僚 制 組織 の 内 在 的 限界 と 逆機 能. 官僚制組織の内在的限界. プ ラ ウ = ス コ ッ ト の指摘 し た フ ォ に も う かがえるよ う に, フ ォ. ー. ー. マル組織のデ ィ レ ンマ は, 前節の 内 容. マ ル組織の有効性 が必ずしも 相互に調和的で. はない種々の多元的 な ニ ー . ドに依存 している こ と を 示 唆す るも のに他ならな いが, こ のこ と はま た, こ れ ら のニー ドに対応 し て, フ ォ. ー. マ ル組織 に おけ. る官僚制 の 作 用 も また, 順機能 と 逆機能の両面にわ た っ て多元的で ある こ と を意味 し て い る 。 か く て, 近代経営に お け る 官僚制組織の問題性の 基盤は, 官僚制組織が, 近代経営に と っ て, 順機能的で あ る と 同時に逆機能的で あ る と い う デ ィ、 レ ン マ に あ る ばか り でない。 官僚制組織に固有の内 在的限界とそ れに根ざす逆機能の尖鋭な顕在化を も たらす一つの 大 き な媒介的契約が, 官 - 175 .( 175 ) -.
(18) 僚制組織の 発達 そ れ 自 体に あ る と すれば, ぃま 一つ の それが現代企業 を と り ま く 激 しい環境 の変化にあ る切む 従来, 一般 に 経営 に おいて, 官僚制組織 の問題が, 経営組織の 大規模化や複雑化に伴 う構造的変容が も たらす経済性 阻害の 問題 と し て意識され,, 繁文縛礼や形式主義, 規則の 自 己 目 的化,. Jレ ー. チ ン , セ ク シ ョ ナ リ ズム, 責任の回避i 安全第一主義, 保守性, 冷 淡, 無関 心, 革新能力の減退, な どの 諸要素が指摘 さ れて き た こ とに も 明らかであろ う 。 . , けだ し こ れらの諸要素 は 組織の体質の硬直 化 と• そ れに伴 う 可変的環境 へ の適応の 困難性を示 唆 し てい る ばかりでない。 組織の 全体的目標 と . 成員 の 個人的目標 と の アンバランスや コ ンフリクトの増大 も そこには反映 さ れて 9. 9. い る からであ る 。 いわゆ る 人間性疎外の. 一. 大源泉 と し て 官僚制組織の発達 が. あ げられて き たゆえんであ る 。. •• I. 以上のよ う な諸要素に示 唆されてい る 官僚制組織の二つの内在的限界の う ち で, 基本的に. 組織と 個人 と の 関係にかかわ る 後者を,. -w. . ベ i:.- 17- • (W.. Bennis) の 用 語法にならって 「相互性的限界」 と よべば. 組織 と環境 と の 関係にかかわ る 前者はこれを「適応性的限界」 と よび う る 。 を 織 諸 ここで試みに,第一 の. [相互性朋 限界」 制'組 ,) : ● る宜億 .r- ,:、 ., •..かわ ' i'.i --ぶ, hr, 父'. 男因 ·- '・ J 7/· .'・ー'· _:; A;、 、 · , 1:: . ,に弁 ぶ ! @ い く つか列挙すれば, 成員の 殆ん ど を重要 な 意思決定過程か ら し め出す中央 i. :. ・. 集権的構造, 中央におけ る 遠 隔操作によ る 組織命体の直柘遺記れ化h ロ ー ル, 服従それ自 体を自 己目的 と する 権威主義的管理, き び し い規律の 内 面化の要 求と 自発性の 窒息, 形式的な規則や手続の 拘束によ る 自 主性 や イ ニ シ ャ テ ィ プ の 減退, 完成の喜び を伴わない断片的 な職務 内 容, ー 魂の生気を う ばい, 人 間の主体的涵足を阻害するル ー チ ンな ど をあ げ う る であ ろ う 。 そ こ か ら も た ら さ れる のは、 、 成員 の社会的欲求の 抑制 さ れた き わめて冷やかな人間関係だ けではない。 自 我や自 己発現の要求の 抑圧に みられ る成員の人格的主体性の 否定からは, 方向性の喪失, 逃避主義. {義礼主義, 同 調過剰, . 臆病, 保守主 義. _ 技術主義など の病理的行動が 出 て く る が, こ れ ら はいずれ も , 成員の モ ラ -;- Jレの減退を別なかた ち で示す も の に他ならない。 .. - 17.6 l( 176 D-.
(19) ここで注目 を要す る の は, 官僚制組緞にお け る か か る 傾向は, 経営組織論 において も , すでに実質的には, ア ー ジ ェ リス (C. argylis) な どに よ っ て 鋭 く 指摘されてい る こ と であろ う 2)。 人間 関 係論 も ,. 一つにはまさ に か か る. 脈絡から展開 し て き た の であって, それがモ ラ ー ルの 問題 を 提起 し て , 「イ ー ン フ ォ ー マ ル組織」 や 「参加的リ ダ ー シ ッ プ」の 意義を強調す る と き , そ. の背後には明らかに, 没人格性の原理の貫徹 す る す ぐれて メ カ ニカルな官僚 制組織の発達が ある ば か り でない。 近年, よ く 話題になる 「職務拡大」 や 「職務充実」 ある いは 「 ジ ョ ッ プ. ・. ロ ー テ イ シ ョ ン」 の 問題に し て も , 高度. の 職能的特殊化の 展開や 「組織にお け る 人間性疎外」とい う 問題との 関 連 に おいて, この官僚制組織の内在的限界と大 き な かかわ り を も って いる の は い う ま で も ない。 そ し てこのことは 「 目 標によ る 管理」や 「自主管理」 更 に は 「経営参加」 の 動 き についても, 多分に 同様であろ う。 次に, 第二の 「適応性的限界」にかかわる 官僚制組織の諸要因に目を向け れば, 成員を束縛 し , そ の 自由裁量を制約す る 多 く の 規則や規程 の類, 複雑 な 手続, ル ー チ ン, 標準化と画一性. 高度の載能的特殊化と高い機能的相互 依存性, 高度の集権化, 多 く の 管理階層, 長いコ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンの 距離 , 複雑な権限と責任の 錯綜, な どをあげ う る ばか り でない。 クロ ー ジ ェ によ れ ば. か か る 諸要 因 の 顕著 な官僚制組織では. 往々に し て , 不確実性の領域を め ぐって, パ ラ レルな権力関係が各種の下位集団間 に 展開 さ れ る が, こ れがま た, し ば し ば, 革新の導入を さまたげる 。 ま た, 「構造化 の 程度が高い」と いう 官僚制組織に固有の技術的特質 も , 諸部分間の 相互依存性の増大とい う 点に おいて その 構造 的 伸縮性を低下さすば か り でない。 組織の 「埋没原価」 の増 大とと も に大 き く な る 「組織的惰性」 も 革新 へ の抵抗の経済的要因になる。 も と よ り , こ の 適応性的限界は, 必ず し も それ自体において 自 己顕在的で はない。 す な わち, 安定的 な 環境 の下では. それは必ず し も 顕在化 し て こな い。 し か し , ひとた び環境の変化が激 し く な る や, にわかにそれが顕在化 し て く る が, 組織の官僚制化の程度が高度であればある ほど. それは尖鋭であ. - 177 ( 177 0-.
(20) ろ う。 か く て, 適応性的限界の顕在化の重大な媒介的契機が, 「環境の 不安 定性」 に あるとすれば, 高度 に官僚制化された経営組織をもつ企業であるほ ど に , その回 避の必要も大 き いのは いうまでもな いばか り でな い 。本来的に 「構造化の程度」 の高い官僚制組織では, 環境が安定的で あればあ るほど, シ ス テ ム の結合関連効果が よく発揮され,. 高い生産性の 達成が 可能となれ. ば, この面からも当然 に, 官僚制化のいちじる し い企業であるほど安定した 環境への志向は強いであろう。たとえば, よ り 安定性の高い製品市場の選択 や開発, 関 連企業との提携の強化や その他の方法に よる実質的な競争の制限 とか独占的地位の強化, あ るい は 政府への様々のかたちにおける政治的, 経 済的な 働 き かけや圧力が往々に して今日の 巨 大企業の重要な企業戦略をなし ているの も その反映に他ならな いが, そこに はもはや, 単なる環境への 「適 応」 にと どまらず, それを超越して, むしろ環境の 「支配」 に 向う動 き もみ られるの は注 目を要するであろう3) 。 いずれに しろ, 官僚制組織に顕著な安 定性志向や保守性も , も っ ぱら成員の主観 的態度の み に 帰 因 する全面的に主 観的な現象でないのは 自 明 であろう。けだしそこに は 多分に, 現代企業にお け る シ ス テ ム としての組織の客観的 な ニ ー ド や技術的特性が反映されて い る からである。 以上のよ う な官僚制組織における 2 種類の内在的限界を, 「合理性」 の諸 範疇においてとらえると, 第一の 相互性的限界が 「 目 的合理性」 と 「価値合 理性」 の統一における官僚制組織の限界を示唆して いるのに対して, 第二の 適応性的限界は, 「形式合理性」 と 「実質的合理性」 の統一におけるそれを 示 唆し て い ることは 重要であろう。 まず前者に 関 し て は 「組織の能率」 か 「 個人の 自 由」 かと いう二者択ー 的図式の 止場の実現が 現実に は 決して容易 で は な いというところに その大 き な理 由 があ る とすれば, 後者のそれ は , そ の統一を可能にする環境や条件の不変性の現実的な達成困難に それがある。 たとえば, 「疎外」 や 「 生 き が い」 な どが官僚制組織においてとかく重大な問 題となるのも前者のあ ら われに他ならな い が, 後者は, 官僚制組織それ 自 体 - 178 ( 178 ) -.
(21) もまた,そこに,内在す る 緊張やディ レ ンマによ っ て 不断の動態化がさけが たいという プ ラ ウ の指摘す る 事実にも端的に あらわれて い る 。 も ち ろん,こ れらの ことは,決 して,進歩や改善が不可能で あ る とい う ことを意味しな い が,完全な 調整や均衡の達成が困難であ る ということが, そこで意味されて い る のは明らかであ る 。 注 1 ) W. Bennis, Changing Organizations, 1966, P. 7 . [ 2 ) ア ー ジ 土 リ ス の所説と その限界については. と く に. 占部都美著, 「現代企業の 人間関係」,昭和42年, に おいて鋭い分析がな さ れてい る。 3 ) こ の よ う な 動き を 研究テ ー マ と す る 論文の 一つ と しては, た と えば 次を あ げ う る 。 K. Mtneil, 'Understanding Organizational Power.' Building on the Weber血 Leg傘y., Administrative Science Quarterly, Vol., 23, No., 1 ; March 1978, PP. 65-87 . .. 2: 企業官僚制のパ ラ ド ッ ク ス 「構造化の程度が高い」 と いう こ とが, 官僚制組織 に 固有の 内在的特質 で あ る のは,その技術的な構造概念が, 「高度 に 官僚制化された組織」 に あ る ことに てら し て も明 ら かで あ ろう。 たとえばそれは, 官僚制組織では,一元 的な権限の階層的秩序 に も と づく階層分化が多かれ少な かれ高度であること に あらわれてい る ばか り で ない。 水平的次元でも, 高度の職能的特殊化の展 開 に それがみられ る が,官僚制組織に おける 逆機能を,かか る 技術的特質に てらしでとらえ る と , その主要な構造的源泉とし ては, 更に,「 中央集権的 な管理シ ス テ ム」 や 「多くの職能的下位集団の存在」な どがあ げられねばな らない。 まず最初 に , 「構造化の程度が高い」 という 点 に みられる 官僚制組織の技 術的特質 に 関 していえば,そこにおけ る 「規律」 のもつ重要 な 意義に かんが み,これが 「 目 標の転移」 に代表 さ れ る 「 同 調過剰」の大きな 構造的源泉た る のは,官僚制の逆機能に 関 す る R . K. マ ー トンの分析 に 詳らかで あ る が, それとともに ,更 に マ ー トンが,先任順や年功,学歴な どの画ー的に適用さ. - lr/9)( lr/9 :) -.
(22) れる没入格的基準に も と づ く 昇進を も, 官僚制組織における対応性の欠如の '. ...:.因にあげ る のは, 直接的な競争の欠如 か ら く る 職員間の共通な利害意識に 根ざ す独特の集団精神の発達が, 彼 ら の既得権や利害に 反するいか な る変革 の試み にも 強 く 一致 し て 反対 した り , 顧客 と の ミ ゾを深め る作用の大 き な原 動力 にな っ て い る からであ る % 集権管理から出 て く る 問題は管理的距離の拡大に根ざ す コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンの障害ば か り で な い。 権限の上部集 中に よ る 自 由裁量の 欠如 も , 第一線 に おけ る 情況 の変化への柔軟な対応を困難に す る 。すな わ ち, 決定に時間的 ー 遅滞 が 生 じる ば か りでな い。 有効な問題解決 に 必要な情報が決定 セ ン タ に. と どき に くい こと か ら も 適切な対応の欠如が生じよ う 。その結果: 円滑な フィ. ー. ド パ ッ ク ・ プロ セ ス に よ る 矯正機能も十分に発動せず. こ こ か ら も 活. 動の有効性と能率が低下す る 。更 に , 権限の上部集 中 は 部下の志気と責任感 を そ こね企業意識を稀薄 に する。往々に し て分権化や事業部制組織が, 官僚 制 組織の逆機能に対す る 有効な解毒剤の一つと み な さ れ る の も こ の点からで あ るo 多数の下位集団の存在 とい う こ と か ら 生 じ る 官僚制組織の逆機能の主要な 発現形態 ほ 「 セ ク シ ヨ ナ リ ズ ム」 に あ る ばか り で な い。 いわゆ る 「部分的最 適化] や 「専門閉塞」 と い う 事態が, 下位集団間の利害関心の分化 と 密接な 関連に あ るの は い う まで も な いが. , そ こ に往 々 に して生 じ る の が, 組織に お け る資源の コ ン ト ロ ー ルを め ぐる 下位集団間の対立, 抗争に他な ら な い。 以上の よ う な 官僚制組殺の逆機能の, 企業にお け る も っ と も集約的 な表現 と し て注 目 を要す る の が. デイモ ッ クのいう 「企業性の後退」 であろ う 丸 ち な みに彼は ,. こ の 問題 を, 次のよ うな パラ ド ッ クス に お い て と らえ て い. る 。 すなわち , 企業性にみちたバ イ タ リテ ィの あ る 企業 は成長す る で あ ろ う 。 そ して成長は し ば し ば規模の拡大を伴 う 。 し か し , '規模が拡大す る と そ れに対応して, ど うし て もあ る程度の客観的 な統ー的基準の制定や制度化に よ る, 管理方法や手続 き の標準化. あ る い は形式の整備が秩序の維持の上か. -l80Kl80 )-.
(23) ら も さ けがた く な っ て く るであろう。 ところがそれがとか く ゆきすぎた形式 主義につながる ばか り でない。 それとと も に拡大して く る シス テムの全体的 役割と個々の成員の役割との ア ン バ ラ ンス も , 成員の杓子定規な行動や消極 性. あ る いは責任の回避を助長して, 企業性を阻害する。 ちなみに, デ イ モ ッ ク によれば, 企業性の主た る構成要素 は , 刺激, ア イ デ ア , 個性ならびに プ ロ セ ス に あ るが叫. その後退とと も にそれにと っ て代 っ て比重が大き く な. っ て く るのが 官僚制的諸原理に 他ならない。 けだ し ,. この官僚制的諸原理. は, · その安定した構造と秩序への志 向において, 多少の危険負担 も あえて辞 さ ず, つねに新奇なる も のを求め, 前進をめざして積極的に変革をこころざ す企業性の本質とはきわめて好対照な存在をなすか ら である。 か く て, 経営 組織の官僚 制 化 とと も に強い創造力と個性の下に果断なる革新の実践に よ っ て企業の成長と発展の大きな原動力 として活躍してきた, 当 初 の精気あふれ る企業家が, 次第に第一線の舞台から後退するこ と を余儀な く さ れるとと も に,. それにと っ て代るのが,. つ ねに方法的に慎重であ る こ る を 旨 と し.. 万. 事を手がた く 合理的に 処理することにつとめる 経営官僚の 登場に 他な ら な ぃ。 ちなみ に 官僚制は, その最善の意味においては,. 一. 切の 「合理的方法」. や「科学的管理」 の 同義語であるが, ひとたびその発達が一定の限度をこす と, いつのまにか本来の目標達成よ り も , 秩序の維持や手続の尊重に重点が 移 り . 規則への盲目的固執や前例 踏襲の横行に よ っ て, 組織全体の柔較性が そこなわれて く る。 も っ と も このような組織•も , 外見上は形式がよ く と と の い, かえ っ て堅実な も のにみえることがある。 しかし, ひとたび事がお こ り 状況の変化が激し く なると積極的な推進力 や弾力的適応力, ある いは革新性 の欠如という弱点が露呈 さ れて, 変化に適応できず, 市場競争に も お く れを とるようになる。 か く て, ここには, 企業活動の成果である成員が, 往々にして官僚制 化の 要因となるが, その官僚制化の進行過程において生 じ る企業性の 後退によ っ て, 官僚制との適度のバ ラ ンス が く ずれる結果, 企業はバ イ タ リ テ ィ を失 い. - 181 { 181 ) -.
(24) 破滅への 行程を た ど るという パラ ド ッ クスが 示されているが, デ イ モ ッ ク も, その 比重が適度の範囲にと どまるか ぎりにおいて, 官僚制は, 企業性と ともに, むし ろ 企業の活力の維持や発展に不可欠の要素とみなしていること は注目を要するであ ろ う。 かくて, デ ィ モ ッ クによれば, 両者の調和のとれ た均衡の維持こそが「経営活力」の 泉に他ならないが, 組織の 大規模化や複 雑化, 高令化は, ともすれば企業性の 一方 的後退の下に, 官僚制の 比重を高 め, その均衡を破壊する方 向に作用する傾向をもつ, かくてデ ィ モ ッ クは, いかにして, 企業の成長過程において, 官僚制の過度の高度化を抑制し, 企 業性の 回復をはかり, 両者の 調和 のとれた均衡を維持するかという点に, 企 業の バ イ タ リテ ィ 維持の 戦略的 ポ イ ン トを見出す立場から, 参加的 リ ー ダ ー シ ッ プや目標による管理, あるいは連邦制分権化な どに大きな意義を見出し ているが叫. それは官僚制組織の 問題が, 元来, 企業の成長, 拡大に伴う管. 理組織の適応の 問題とも, きわめて密接な関連にあることを示唆しているば かりでない。 「企業性の後退」にその 主題が あるということに うかがえる の は, 官僚制の 問題が, 本来, すぐれて組紋にお ける体質の 変化にかかわる問 題に他ならないと いうことであるが, これは 「目標の転位」 や 「目標の継 承」 が, 官僚制組織論の 重要な主題をの 一つなしているという事態からもう らづけられている。 V. A. トンプ ソ ンの官僚制組織の 逆機能への ア プロ ー チにも, 多分にデ ィ モ ッ クのそれと同様な分析視角があるといえるのは, 彼の場合もまた, デ ィ モ ッ クと 同様に, 「革新の 減退」 というすぐれて経営学的な視角 の 下に, 統 ー的に官僚制組織の 逆機能をとらえようとしているからに他ならないが, そ こには同時に, 今 日 のきわめて激しい環境の 変化を重視する オ ー プン テム論的 ア プロ. ー. ・. シス. チの 反映が みられるのは, 彼がかかる 官僚制組織の体質. に, 現代企業における組織変革の展開をさけがた く する基本的な内部要因を 見出していることからも明らかであ ろう% かかる ト ンプ ソ ンの視点からして経営組織の官僚制化を支配してきた思考. - 182 :( 182 ) -.
(25) の原型 と しての 「 生産イデオ ロ ギ ー 」がまず問題 と な る のは その発想の根底 に, 組織のみならず. その成員をも所有者の用 具 と す る 人間 用 具観の 立場が あ る か ら に 他 な ら ない。 け だしこの立場では成員の主体性に 根 ざ す革新行動 も, 組織の用 具 と しての完全性 と 信頼可能性をそこなう逸脱行動 と して否認 され る と いう点において, す で に そこには, 革新行動の抑圧をもたらす一つ の重大な論理がひそんでい る か ら であ る % また, この生産イデオ ロ ギ ー の下で は . と かく性急 に なされ る 資源の過剰 細分化もよ く 目に つ く が7) . これがまた, その用途をせま く 固定す る こ と に よ っ て, 人 々 の多様な 才能や能力の多 く を無用 に して, その発揮をさまたげ る ばか り で な い。 それはまた, 革新的プロ ジ ェ ク トに充当 し う る 自 由 な資源 の蓄積をさまたげる であろう。 高度の職能的特殊化に も その過剰細分化が反 映されてい る が, それは新 しい ア イデアの創 出 に 重要な 「投入の多様性」を 成員からうばい と る ばかりで な い。 そこでは下位単位 と 下位目標への強い一 体化もひんばんに 生 じ る が, その結果, どの単位組織の成員も, 他の単位組 織の活動に殆ん ど関知しな く な る こ と からも, 官僚制組織に お ける 隊員の偏 挟性が助 長 さ れよう。 組織におけ る 一切の権限の正当性の源泉が,. ト ッ プの一 点に しか存在しな. いと い う 単一支配的性格も, この生産イデオロギ ー に根 ざす官僚制組織の基 本的な構造的特質の一つをな す が,. ト ン プ ソ ン に よ れば, こ れまた, 革新 に. 8). と っ て は 大 き な 障害の 源泉をな す 。 まず第一に, この単一支配的構造の下 で は , そのたてまえ上, いかな る コ ン フ リ ク トも正 当 化 さ れ え な いが, ー こ れ が創造性の減退に 通じ る のは . アイデアの発揮を必要 と す る 種々 の問題や不 確実性の発生をコ ン フ リ ク トが伴うこ と に よ っ て, そ の機会が組織全体に 拡 大 さ れ る こ と がな く な る からであ る 。 ち な みに, コ ン フ リ ク トが元来, 多 元主 義を意味し, 諸力の対抗や その解決策の探求 と い う 含蓄をもつの に 対 し , 公 式的権限の行使は, 多分に, 対立意見や反対の一方的な無視に 通 じ てい る ” 。 また単一支配的構造の下では, 部下の提案が最終的に リ ス トア ッ プ さ れ,. - 183 ( 183 ) -.
(26) ト ッ プ の 認可をえて実施に移される ま でに多くの中間段階にお け る審査をヘ ねばならない。 しかるに, 上司が部下の 捉案を却下して も 部下が それに対し て異議をと なえる正式な手はずがととのえられていないの は, こ れ ま た, せ っかくの 部下の 提案が, その 途中で却下される可能性を大きくする も の であ り , 革新への 障害の 一 つにな る 10) 0 更に, 単一支配的構造の下になされる一 切の 資加への 集権的 コ ン ト ロ ー ル において, 外面的報酬 へ の 依存がさけがたいの は, それが, 所有者 の I対 心以 外に, 成員独自の 関心を容認する こ とになるという点において, そ の 用 具と しての 完全性を そ こ なう こ とに適ずる内面的報酬 の活用がなしがたいからで あるが, こ れ ま た, 成員の従属性を刺激して, 革新 の減退を招くばか り で な い。 通常, 官僚制組織には, その 職務上, 仕事それ自体における喜びや満足 にみられる内面的報酬を得る機会に恵 ま れない成員 も 多く存在してい る が. 彼 等 も ま た, 多分に, 階統制によ って配分される外面的報酬を求める こ とに よ って こ の報酬制度を補強するばか り で ない。 それとと も に, 現行の プ ロ グ ラ ムや手続きについて も とかく彼らの態度は保守的にな るが, こ れは, すで に能力的に は, 次の ポス ト ヘ の 昇進 も 十分に可能な状態にあ り な がら, なお 多くの場合.. 久しく待機をつづけ ねばならない成員にとっての 最大の 脅威. が, 現状に大きな 変更をきたす新しい解決策にある こ とに帰すると こ ろ が大 きい。 かくて. こ こ に も , 組紬の目標達成 よ り も , 組紙 内 の 権力や地位 の 配 分に よ り 大なる関心をよ せる官僚的態度が反映されているが. こ れが組織を して, 本来の , 目栢達成の 手段 から, 外画的報酬の 配分にか かわる政治的 シ ス テ ムたらしめる一大要 因 で あるの はいうま で も ない 1 1) 。 以上の如く, 新しい諸活動 の 等入に対しては強い抵抗の存在する官僚制組 織といえ ど も 今日のきわめて激しい環境の 変化にてらしていつ ま で も それを 回 避しがたい の は 自明であ ろ う。 しかし, そ の 場合 も , 既存組紬からそれを 隔離し, 更に必要とあれば, 在来の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン. ・. シ ス テ ムから も そ. れを遮 断する こ とが少くと も 当初 は 可能であ ろ う。 たとえば, 今日一般に.. - 184 ( 184 ) -.
(27) 技術革新活動の組織への導入は研究開発部門とい う独自の隔離 さ れた 部門で な さ れる こ とが多いが, そ こ では在来の単一支配的組織の そ れ と は全面的に 異 な る生産的諸条件や報酬制度の確立が必要であ ろう。. と こ ろ が, ーこ の 二重 性がまた, とかく組織に亀裂をお こ し, 従来の満足の配分を動揺さす こ とに なる。 もっとも, 単 一支配的組糀に あっても, それが き わめて創造性の 高い 人物によ っ て創 立 さ れ, その周 囲に も, 同 様 な 資質の持主が結集 さ れる な ら ば, 少くとも当初の一時期には, き わめて創造性の高い組織たることはあ り う る。 しかし,. こ の場合とても,. 規模の拡大や時 間の経過と と もに, 徐々に. 単一支配的構造のス テ ロ タ イ プが拾頭してきて, 次 第 に 官僚制化さ れていく 傾 向 がみられるのは, ウ ェ. ーバー. のいう 「 カ リ ス マの 日 常化」 と い う現象か. ら も 明らかで あ るが, これは元の創 立者の死亡や引退後にはと く に いち じ る し い12) 。. 以上の如く,. ト ン プ ソ ン は, 官僚制組織における種 々 の逆機能 を 「革新の. 減退」 という点から統一的にとらえるばか り で ない。 かかる認識にも と づ い て, 彼が組織変革を提唱するとき, そのめざす方向もまたおのずか ら明 ら か で あ ろ う 。 す な わ ち, それはよ り 大 な る専 門職業化 と , よ り 大 なる投入の多 様性, 更には, よ り 大な る分権化へ の 方 向 で あ り , 構造的に は, よ り 「ゆる やかな構造」 (stmctural losseness)とよ り オ ー プ ン な集 団過程に よ っ 色づけられ る方 向 で あ る。 さ れば それが, ク ロ ー ズ ド ン. ・. シス テムヘの, したがってまた,. バー. ン ズ=ス ト. ,x 特. ・. シス テ ム か らオ ー プ. ー. カ ー の いう 「機械的. シ ス テム」 から「有機的 シス テム」 への方向とも軌を一にするのはい う まで も な い 13) 0 注 1 ) R. K. Merton, Social Theory and Social Structure, 1949, enlarged ed., 1968, PP. 251-256 . 2 ) M. E. Diinock, Administrative Vitality, 1959, 。 3 ) ibid.'. . P. 121 . 4 ) ibid., P. 175 ff. 5 ) V. A. Thompson, Bureaucracy and Innovation, . 1968. - 185 ( 185 ) -.
(28) 6 ) ibid P. 29 . 7 ) ibid., P. 30 . 8 ) ibid., P. 1 5 . 9 ) ibid., PP. 16-17 . 10) ibid., PP. 19-20. 11) ibid., PP. 20-22 . 12) ibid., PP. 22-28 . 13) T. Burns and G. Stalker, The Management of Innovations, 1 961 . ◆,. 第四節. 企業官僚制 の動 向. 経営組織の 官僚制化の主要な内 部要因には. 一般に.. 「経営組織 の 大規模. 化」や 「 高度の 職能的特殊化の 展開」, 「経営 の 合理化. 近代化へ の志向」な どがあげられるが, ペ ロ ー はその基盤を 「専門化」. 「 メ ンバ ー に対する組織 外からの 影響力の コン ト ロ ー ル の 必要性」. 「変化する不安定な環境への 対処 の 必要性」に見出 し ている% 他方, 官僚制組織の 機能性につ いて従来一般になされてきた論議は次の 一 対 の仮説に集約 し うるであろう。 ①. 官僚制組織は安定 した環境の下における確立された常規的課業の遂行に. おいてはすぐれて機能的で合理的である。 ②. 官僚制組織は不安定な環境 の下における非常規的課業の遂行においては 多分に逆機能である。 これらの要因や基盤と仮説をてら し 合わせると, い ま や現代企業は. 一方. において. 経営組織の よ り 一層の官僚制化 の 契機に直面するとともに, 他方 ではその 企業官僚制 の よ り 尖鋭なる逆機能化の 契機にも直面 し ているという デ ィ レ ンマにあるが. これを背景に近年にわかに高 ま ってきた企業官僚制を めぐる論議の中でも, とくに注目 されるの は官僚制組織の近い 将来における 崩壊を必至と予見するベ ニスと, これへ の ペ ロ ー の 鋭 い 反論に他ならな い。 「官僚制に対する最 初 の 攻撃は, 個人目標と経営目標 の 間 の 緊張を, この シ. - 186, ( 186 ) -.
(29) ス テ ム では処理でき ない と い う 点から始ま っ た。 しか し , この葛藤をいくら かでも和らげるこ と ができたのは, 個 人の成長 と 満足――その一方 ま たは両 方ーーを含む生産性に ついて の考え方の発達である。官僚制に と っ て二番目 の, し かも最大の攻撃を加える原 因 と な っ たのは, 科 学技術の革命的発展で ある。環 境 に 適 応するとい う 要求が, この官僚制の後退を予測 し , い ま ある 2) とい う ベ ニ ス の 所 説 に 明らかであるの このマ ネ ジ メ ン ト を 崩 壊 に 導く」. は, 官僚制組織の内在 的 限界の う ちで, 最初 に 問題と し て 出 て きたのは 「 相 互性的 限界」であるとい う ことばかりでな い。 そ れは ま た, 近年, 官僚制の 問題が企業の存続 と 成長 に 対する重大な 脅威と し て に わか に 大き く ク ロ ー ズ • ア ッ プされるに いた っ た直 接的契機は, む し ろ最近の激 し い環境の変化に よ っ て ひきおこされた 「適応性的限界」の尖鋭な顕在化に あることを示すも の に 他 な らな い。 か く て ベ ニ ス が官僚制の崩壊に 関 する彼の予見の主たる論拠を, 組織活動 に おける非ル ー チ ン (non routiness) の増大 に 見 出 すとき, その根底に は , 非ル ー チ ン的情報処理に 適合する 「有機的組織」に 対 し, }レ ー チ ン的情報処 理 に 適合する 「機械的組織」の典型が官僚制組織に 他 な ら な いとするバ ー ン ズ=ス ト ー カ ー の図 式があるのはい う ま でも ないであろ う. 3). 0. ベ ニ ス が 科 学 技術の発展 に 官僚制の後退の第一の源泉を見 出 すのは, それ が組絨における職業専門家の増大をもたらすからで ある。 その結果, 分権化 や参加的管理 な どに よる彼らの強い遂行責任意欲の充足が, 組織存続上の一 つの重大要件 (imperative) に な るが, 官僚制がこれを否定する。次いでベ ニ ス はその第二の源泉の急 速 な 変化と相互依 存性の増大 に よ っ て もたらされ る環境の不安定性に 見 出すがこれは彼が官僚制の繁栄が, 高 度 に 競争的で無 差別 な , 安定的環境 に 依 存するとみるからである。更に ベ ニ ス は その第三の 源泉を 「急速な 技術的変化は,. それ自体が 新 し いス タ イルの 民主的組織を. 生み 出 す」 と い う ことに 見 出 し たが, その背後 に あるのが, かかる変 化 は , テ ク ノ ス ト ラ クチ ュ ア ー に よ り大 な る権力 をもたらす と い う 考 え に 他 な ら な - 187 ( 187 ) -.
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