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マンガを描き続けた学習障害児のコミュニケーション行動

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Academic year: 2021

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(1)マンガを描き続けた学習障害児のほミュニケーション行動. 専攻 障害児教育 氏名 堀場由希子. 1 問題と目的. 歳7ヵ月に二語文が始まり、「て・に・を・は」. ことばに問題を持たないとされている非言. が抜けた喋り方をした。2歳9ヵ月にはこと. 語性学習障害(Learning Disabilities;以下. ばの真似ができるようになった。. ωと略す)児のコミュニケーションの特徴と. 小学校に入学すると、学習面よりも行動面. して、非言語情報がうまく活用できないこと. の問題や対人関係の困難さがみられた。7歳. が櫓摘されており(盆ourke, E Pり1989;竹田. 10ヵ月、市の相談所でプレイへ通う。8歳6. ら,1997)、非言語性LD児のコミュニケーショ. ヵ月、三児が友達と遊べるようになったので. ンに関する検討も必要であると考えられる。. プレイが終了した。漢宇が書けない、図形が. 本論文の筆者は、非言語性LDと診断された蕨. 苦手ということから教育センターへ通い、9. 男児と学習指導を通して長期間かかわり、そ. 歳10ヵ月のとき、二言語性LDの診断を受け. の中で、本児が5年間もマンガを創作してい. る。. ることが明らかになった。そのマンガは、三. 2方法. 児が他者との円滑なコミュニケーションをと. 本児がノートに描いたマンガ48隠のうち. るための準備の場であったのではないかと推. 入手できた28冊を形態的、意味的に分析し、. 定され、実際にマンガを通して他者とほミュ. その変容と特徴をまとめる。インタビューや. ニケーションをとるなど、コミュニケーショ. 記録から三児のコミュ.ニケーションの様相や. ン行動の拡がりもみられた。そこで、本研究. 変化をまとめる。. では、三児の描いたマンガを詳細に分析し、. 斑結果. 実生活でのエピソードやききとりからその意. 1 マンガの分析. 味を明らかにし、非言語性LD児のコミュニケ. (Dマンガの形態的特徴. ーション行動を事例的に検討することを目的. マンガはB5版ノート1冊ずつにタイトルが. とする。. っけられ、1つまたはいくつかのストーリー. H 対象と方法. で構成されていた。マンガのストーリーの部. 1対象児のプロフィール. 分はノートの見開きで、1ページは文、もう1. (1)対象児:非言語性LDと診断された男児1. ページは絵という形態で描かれていた。. 名(初回学習指導時12歳6ヵ月). (2)作成時期とタイトル. (2)生育暦:妊娠、出産時の異常はなく、定頚. 作成年齢は8歳から13歳に及んでいた。同. 4ヵ月、始歩1歳4ヶ月、始語1歳6ヵ月で、. じタイトルが繰り返し使用されていた。. 一語あるかなしの状態がしばらく続いた。2. (3)ストーリー展開の特徴.

(2) マンガの中によく出てくるものとして、カ. を切って退院する。W期では新しいデパート. セットやエレベーターがあった。詳細に描写. のオープン、せみの脱皮があった。たんこぶ. されているものや絵の中に文字がびっしり書. を作って入院する話もあった。V期は、たん. かれたものもあった。またデパート、病院な. こぶを手術して、たんこぶが治り、退院する。. どがストーリー展開の場として繰り返し出て. ラジオ番組の制作や主人公が子どもを産む場. きた。. 面がみられた。. 〈4)絵と文による相互表現. (6)書字について. ①ストーリーの展開における文と絵との相互. 片仮名と平仮名が混在した表記、鏡文字や. 表現:マンガはストーリーの流れという棍点. 誤った書字、誤った言葉の使用がみられた。. から見ても、文章と絵との相互表現によって. 3実生活とマンガ:対象児へのインタビュー. 展開していた。一つのストーり一の最初と最. と実生活でのエピソードから. 後では、登場人物に変化がみられたものがあ. マンガを描き始めたきっかけは休憩時間の. った。また登場人物の目、眉などの描写によ. 遊びの一つとしてであった。その後、マンガ. って、表情に変化をつけていた。年齢を重ね. を通して友人とコミュニケーションをとるこ. るにつれ、表情の種類が増えた。. とがあった。また描くということから、友人. ②対話下面:対話場面においても文章と絵と. との会話へ変化していった。. の相互表現がみられた。本文における対話だ. w考察. けでなく、絵の部分にもふきだしをつけての. このマンガを描き始めた頃、このマンガは. 対話場面がみられた。また思っていることと. 対象児にとって自己完結的なものであったが、. 話していることを区別するために、ふきだし. その後、対象を意識して描くようになった。. の形を変えて表現していた。. また年齢とともに、登場人物の表情の種類が. ③事物の描写:事:物の描写においても、文字. 増えるなど、マンガにおける表現が豊かにな. と絵との相互表現がみられた。また絵の中に. ってきた。対象児は日常場面でも、他者との. 音や声、音楽を文字や記号を書き込むことに. コミュニケーションがうまくいくようになり、. よって、絵の中に動きが表現されていた。. 描くという行動から話すということへ移って. ④シンボルを使った表現=マンガには、文字. いった。マンガの申でストーり一を展開する. と記号を使ったシンボル的な表現がみられた。. ことによって、実生活のコミュニケーション. 地下を「B」、屋上は「R」と記述したり、寝てい. 場面で視点を変え、非言語的な情報をうまく. る人物に「ZZZZjとつけたり、シンボルを用い. 活用できるようになり、それがマンガの変化. た表現がみられた。. として現れたと考えられる。. (5)ストーリーのテーマ. 作成年齢とタイトルからマンガを5期に分. 主任指導教官 藤田 継道. けた。1期は、エレベーターで、たんこぶを. 指導教官 鳥越隆士. 作って入院する話が3回繰り返される。H期 では、主人公が旅をする。盟期は、たんこぶ.

(3) 平成11年度学位論文. マンガを描き続けた学習障害児のコミュニケーション行動. 兵庫教育大学大学院. 学校教育研究科 障害児教学専攻. :M98325K. 堀場 由希子.

(4) 目次. 互 問題と目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・…. “・・・…. 1. 1.学習障害とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 1. 鼠学習障害研究の動向・…. 。… 。・。・・。・。・。・・… 2. a言語牲学習障害と非言語性学習障害・・・・・・・・・・・・・… 3 4非言語性学習障害児のコミュニケーションについて・・・・・・… 3. 5.本研究の目的。。。・。・・・・・・…. 。’’”●’’”●’4. 皿 対象と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 6 1.対象児のプロフィール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 6. (1)対象児・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 6. ②生育暦・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 6 〈3)これまでの検査結果…. 。… 。・・・・・・… 。… 7. 盆分析資料と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 10 皿 結果・・・・・・・… 1.マンガの分析・・・…. ●. ■. ■. ●. ・・。。… @. 。。・・・・…. ・・・・… @. 。・・・・… 。・。…. 11 。11. ■. ●. ■. o. ①マンガの形態的特徴・. ●. ●. 弊. ●. ・… @. ②タイトルと作成時期・. ●. o. ●. の. 。。。。。。・。。・・・・… @. (3)ストーリー展開の特徴. ,. ●. ■. ■. . ・ . ● 。 9 鱒 。 . . ● . 。 。 . 。13. ④文と絵による相互表現. ◎. ■. ●. ●. ・・・・… @. (5)ストーり一のテーマ・. ●. o. ●. ■. ⑥書込について・。・・. ■. ●. o. ■. a対象児へのインタビュー・. ■. ●. ●. ●. a実生活でのエピソード・・. ■. ■. ■. 嘩. 4マンガと実生活との関わり. ●. ■. ●. ●. 。…. 。・・・…. ・。。。。… @ ・・・… @. 13. 。・17. 。・・。・… 34. 。・・…. 。・・・・・… @ 。・・・… @. 。・11. 。・・。38. 。。・。。。・42. 。・。…. 。。・45. ・ 噂 。 ・ . 9 ・ ・ . ・ ・ ● 鶴 ・ 嘩 嘩47. w 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 49 V おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 54 文二. 一.

(5) 1問題と目的 1 学習障害とは 学習障害(Learn孟ag D重sabUities;以下mと略す)は、学習上の困難を. 示す子どもの治療教育における研究から生まれてきた概念であり、近年、 多くの研究がなされている(上野ら,1992;森永,1993;武田ら,1997).. アメリカ精神医学会の診断統計マニュアル第4版①S砂留,呈994)では、 「通常、幼児期、小児期、または青年期にはじめて診断される障害」の中 に、f精神遅滞」、「学習障害」、「運動能力障害」、「コミュニケーション障. 害」、「広汎性発達障害」を下位分類としてあげている議Pに関する項目と しては「学習障害」(Leaming Disorders)、「運動能力障害」、吃音を除い た「コミュニケーション障害」があげられる。「学習障害」は、読字、算数、. または書字表出において、個別実施されたその人の標準的検査成績が、. 年齢、就学、知的水準から期待されるより十分に低い状態(通常、標準検 査成績とIQが2標準偏差以上の解離している)と定義し、行為障害、反 抗挑戦性障害、注意欠陥・多動性障害、謡うつ病性障害、気分変調性障害 を伴う場合があるとしている。さらに発達一調運動障害を伴うことが多 く、成人期まで持続する可能性についても示唆している。 翻0の国際疾病分類第10版(ICD−10)では、 LDに関する項目として会 話および言語の特異的発達遅滞、学習能力の特異的発達障害、運動機能 の特異的発達障害、混合性特異的肇達障害がある.これらは、会話およ び言語の特異的発達遅滞を除き、精神遅滞と広汎性発達障害は含まれて いない。. NJCLD(艘ational Joint Committee on Learhing Disabilities, 1988). は、LDを「聞く、話す、読む、書く、推論する、討算する能力を習得、. 使用する際、著しい困難を示す特異な集団』と定めている。mの原因と して中枢神経系の機能障害と推定し、感覚障害、知的障害、重度の情緒 障害や、文化的差異、不十分あるいは不適切な養育という外的影響に付 随して生じる可能性もあるが、これらは直接的原因ではないとしている。 またし9は生涯にわたって起こる可能性があり、臼己調整行動、社会的知 覚、社会的相互交渉に関する問題を伴う可能性があるが、これらはしD の本質ではないとしている。. また一番新しいものでは、文部省の「学習障害児およびこれに類似す る学習上の困難を有する児童生徒の指導方法に関する調査研究協力者会 1.

(6) 議」(1999)があげられる。「学習障害とは、基本的には全般的な知的発達. に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力 のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指す ものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能 障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害 などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。」と定義 しているゆ. 2 学習障害に関する研究の動向. LDの概念は、中枢神経にわずかな機能偏奇を伴う微細脳機能障害 嬢沁im証Brain Dysfm¢tio鰍Syadrome;騒BD)と別の概念として、1963年 にKirkが「特異な学習障害」を提唱した。その定義は「特異な学習の障害 は、脳の機能不全、あるいは感情や行動の障害から、話す、語法、読む、 書字、作文、算数に、一つまたは複数の障害、異常、遅れがみられ、こ れは、精神遅滞、情緒障害や文化的、教育的な要因によるものではない」 というものであった。これがきっかけとなり、LDに関する研究が急速に 普及した。また同時期に、蜘klebu3t(1967)が「心理神経学的学習障害」と. いう名称を用いて、LDを、聴覚性言語(auditory lang膿ge)を聞いても 内容を理解できない「聴覚的受容性言語」(au蔚tory receptive l創nguage). と、話しことば(sρoken鴨rd)の理解と非言語的行動は可能であるが意思 表示のことばをうまく用いることができない「聴覚的表出性言語1 〈auditiory expressive language)に分類している。. 現在までのしOに関する研究として、 LDの概念や定義に関するもの、. LDの症状と原因論あるいはLDの認知特性などに関するもの、 LD児への 指導法、LD児の社会性に関するもの、高機能の広汎性発達障害や注意欠 陥他動障害など他の症状としDとの関連性に関するものなどさまざまな 角度から研究がなされている。しかし、これらの研究は総括論的なものが 多く、LDの定義や認知特性などタイプ別に事例として詳細に検討した研 究はまだ多くはみられない。. 2.

(7) 3 言語性学習障害と非言語性学習障害. 鞭yklebustは1967年にLDを脳の機能障害に関連した障害として捉え、 脳の左半球の機能障害である「言語性LD」と右半球の機能障害である「非. 言語性LDjに分類している.Rourkeら(199Dは「言語性mjは言語認知過 程の障害、知覚的認知や読み・書きの障害が主体であり、f非違語性LOj は視空樽認知や視覚的記憶、構成能力、非言語性問題解決能力、言語の 意味内容や語用面の障害であるとしている。また上野・服部(1992)はしD を情報処理特性から「言語性LO」、「鼻高語性LD』、『注意・記憶性LDj、「包. 括性LD」という4つの基本指導類型に分けている. 森永(1993)は言語性LDについて「視覚性言語である、読み・書き・計. 算といったacade面cskillは聴覚性言語と発達的に関連し、概念化に影 響しているとし、繰言語性mは視空間の認知、時周の理解、位置関係な ど日常生活や集団行動を阻害することや、運動面から表出の問題が生じ たり人の顔の認知や状況理解の困難から社会的な適応に影響を与えたり、 注意集中困難が思考に影響を与える」と述べている、. 4 非言語性学習障害児のコミュニケーションについて. LD児は、対人関係やソーシャルスキルに問題をもつことが多いことが 報告されており(服部ら」993;名越,1995)、服部(1998)はしDの社会性の. 問題に影響し得る特性をまとめ、しり児の集団適応のレベルとそのレベル ごとの特性を報告している。またしDにみられるソーシャルスキルの欠陥 については、LDの主症状とみなす意見とLDの2次的症状とみなす意見 麟あるく名越,至9§§}.. Rourkeら(1991)は、非言語性LDに関して社会的知覚の障害から対人 関係の問題や情緒の不安定をきたしやすいこと、またこのような社会心 理的問題は年齢とともに増加する傾向があることを指摘している。. 会話場面で発話者が伝えようとしていることを知るためには、発話さ れたことばと意味とを結びつけていくだけでなく、非言語的な情報を読 み取り、話し手が伝えようとしている意図を推論することも必要となる。 また良分の意図を上手く伝えるためには、相手や状況に応じてことばや 話し方をかえていかなければならない。日常何気なく行われているコミ 3.

(8) ユニケーションには、複雑なプロセスを同時に処理するカが必要となっ てくるのである。. 非言語性LD児は相手の表情や動作のわずかな動きを察知することが 困難であり、コミュニケーション場面で要求される、発話場面の情報、 話し手・聞き手の共有知識、言語脈絡・言語外の文脈等のさまざまな情 報から、発話者の真の伝達意図が何であるのか考えるという推測能力に 問題がみられる(服部,1998;竹田ら,1997)。また音の弁別力の弱さによ. る聞き間違いや、前後の文脈やその後の使用されている場面から推論し て適切な意味を選ぶことが困難であるため、ことばの使い聞違いがよく みられる(竹富,1997)語義、語用に問題があることを示唆している。. 5 本研究の目的. 森永(韮993)は、言語性mを考えるとき、どのような認知過程で問題 が生じるのかを明らかにすることの必要性を述べている。一方非言語性 LPについては、知覚と表象に影響し、社会的な生活を営む時に必要な社 会性や情緒にも影響を及ぼすことを述べている。. しかしながら、これまで知覚や表象などの認知過程の問題と社会性と の関係を具体的に示した研究はみられない。またしD児の認知過程の問題 を明らかにしても、LD児に対して有効な指導や援助を提供していくこと は困難であろう。蔦森(1992)は、単にLDの能力の問題を把握するだけ でなく、LD児のコミュニケーション行動とかかわる者の働きかけ方の両 方を検討していくことの重要性を指摘している。. 非言語性LO児のコミュニケーションの特微として、非言語情報がうま く活用できないことが指摘されており(Rourke,B. P.,1989;竹田ら,1997)、. 言語性LD児だけでなく、ことばに問題を持たないとされている縷言語性 LD児のコミュニケーションに関する検討も必要であると考えられる。 本論文の著者は、非言語則しDと診断された豆男児と学習指導を通して 長期問かかわり、その中で本児が5年問もマンガを創作していることが 明らかになった。そのマンガは、本児が他者との円滑なコミュニケーシ ョンをとるための準備の場であったのではないかと推測され、実際にマ ンガを通して他者とコミュニケーションをとるなど、コミュニケーショ ン行動の拡ぶりもみられた。そこで本研究では、本児の描いたマンガを 4.

(9) 詳細に分析し、実生活でのエピソードやききとりからその意味を明らか にし、非言語性LD児のコミュニケーション行動を事例的に検討すること を目的とする。. 5.

(10) E 対象と方法 霊 対象児のプロフィール (1)対象児. 非言語性mと診断された男児1・名:Y児と称する (初回学習指導時12歳6ヵ月) ζ爵生育暦. 在胎10カ月、正常分娩で、生下時体重は2798gであった。生まれてす ぐ、先天性内反足にて装具を付けることがあったが、現在は治癒。哺乳 は混合栄養であっ;亀。. 孟夏は0歳4カ月、始歩はi歳4カ月であった。素語は董歳6カ月で、 一語あるか無しの状態がしばらく続いた(父親のことをかとお』と言っ ていた)。本児は鍋・洗濯機など生活道具で遊ぶことが多く、電話・エレ ベーターに突進することもあったらしい。1歳10カ月に弟が生まれるが、 特に赤ちゃん返りは示さなかった.弟も先天性内反足で治療のため通院 しており(ギブスを用いていた)、弟中心の生活を送っていた。本児は弟 が泣いていると、母親を引っ張ってきて知らせることもあった。2歳ま では同年齢の子をみて泣いていた。2歳7カ月に二語文が始まり、「て・ に・を・は」が抜けたしゃべり方をした。2歳8カ月で大きい子の真似 ができるようになり、2叢9カ月にことばの真似ができるようになった。 さらに他児に自発的にことばかけをするようになった。また3歳までは 周りに同じ年頃の子どもがおらず、母親とばかり遊んでいた。そのため、 他意を見て泣くこともあった。しかし、反対にこの頃からしつこく仲間に 入れてもらおうとすることもあった。本児は日常生活の中で時計やエレ ベーターに興味を持つようになった。. 3歳児健診ではfことばのみ少し遅れてはいるが、発達はゆっくり」 と言われ、特に問題はなかった。3歳0カ月から自主保育に通うように なり、3歳7カ月、幼稚園に入園した。本児は幼稚園を気に入っていた ようで、砂場や水たまりに入って遊ぶのが好きだった。幼稚園年少クラ スの頃から、親子劇場を観に行くようになった。母親は、当時の本児に ついて、チョロチョロするので捕まえておかないといけないという感じ だったし、大きな声で笑ったりするのが恥ずかしかったと話す。3∼4歳 の時、ことばの相談へ相談に行くが、問題ないといわれる。『父ちゃん会 6.

(11) 社いったのよ」「バスバスくるよ」というような話し方や、ロを開けずに 話すという特微があった。また幼稚園から脳波をとるようにいわれたこ ともあった。. 6歳7カ月、小学校に入学する。当時の担任は本丁のことを理解して くれる先生で、本児もいきいきしていた。他児も窟由に振る舞っていたの で、本児の多動は目立たなかった。. 7歳7カ月にA市へ引越す。教室で一人ウロウロすることがあったの で、教育センターへの相談を紹介された。この頃の本児には、こだわり の強さやパニックなどがみられ、学習面よりも行動面の問題が目立ち、. 対人関係の困難さがみられた。7歳10カ月、市の相談所に週1回プレイ セラピーに通うようになり、母親もカウンセリングを受けた。母親には、 本児は甘えがないから不安定で、社会性の問題があると説明された。その. ため母親は努めて本曲を甘えさせるようにした。4ヵ月後には本児も応 えてくるようになり、母子関係の改善が認められた。一・方、学校の担任. の先生も相談所の助言を受け入れ、本児への指導を工夫した。8歳6カ 月、本塗が友達と遊べるようになったのでプレイセラピーは終了した。. 9歳7カ月、B市に引越す。ここでは、勉強面において、漢字が書け ない、図形が苦手ということから教育センターへ通う。9歳10カ月に非 言語性LDの診断を受け、週1回ソーシャルスキル訓練を目的とした教室 に通うようになる。. 10歳10カ月に、C市に引越す。本底の新しい環境での対応を考慮し、 市の教育センターを紹介される。 (3)これまでの検査結果 ㊤暇§¢一驚. Fig」に9歳10ヵ月と10歳10ヵ月に行った駅SC−Rの検査結果を示 す。9歳10ヵ月時の検査では、言語性知能指数96、動作性知能指数87、 全知能指数98であった。また10歳10ヵ月時の検査では、言語性知能指 数97、動作性知能指数87、全知能指数92であった。 言語性の検査についてみていくと、「類復』(SS 8,1Dから抽象的思考 が苦手なのではないかと推測される。「算数』(SS 7,11)からは、文章から. 大切なものを取り出すことが苦手であることが窺える.さらに、「数唱」 (SS 5,5)から数字の短期記憶が苦手であることが読み取れる。. 動作性の検査では、r組合せ」(SS 5,7)の得点が低いことから、部分か ら全部を想像する事が苦手と思われる。これは「積木模様」(SS 7,6)から 7.

(12) も同様のことがいえる。また「迷路」(SS 8,6)から衝動性、見通しの立ちに. くさが窺える。しかし、「絵画配列」(SSIL10)から、具体的な絵が示さ れていれば予測がつくと思われる。さらに「符号」(SS 9,9)から書字能力. がやや低いことが窺える。 1年後の検査で「類似」(SS 8,1D、「算数」(SS 7,11)が伸びていること. から、学習効果が示唆される。 甑3:憩〔議韮{}:1{}. 粗点SS粗点 SS 識 10 9 1i 8. ヨ知. 3類 5算 7単 9理. 1 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9 10 11 12 13 1【4 15 16 1[7 18 19露0. …’ヤ・・一…一. 似 8 8 豆3 U 数 9 7 】4 H 語 18 9 21 9. ・ン。・一・一一・ ゐ. 解 18監4 4 9 唱) 6 5 7 5. 11(数. 動作性検査 CA 9=10 CA 10:重0. 粗点SS橿点 SS 露絵画完成 垂絵画配列. 蚤7 9. 20 9. 29. 29. 6積木模様. 露5 7. 8組合せ. 12 5. 豊1. 1 2. 3. 4. 5. 6. 7 8. 9 夏⑪ t互 1a 13 14 15 慧i 17 18 19 窓0. 10. 27 6 18. 10符. 号. $韮 9. 嬢(迷. 路》. 19 8. 7. 34 9. 16 6. ・ ・ …. 0㍉. ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …. 。. CA 9:10 言語性IQ g6動作性IQ 87周頃Q g8. ●閣●CA 9:星0. CA 10:m 言語性憩89 動作性IQ 77 全IQ 81. (トOCA 10:10. Fig.1 本児の9歳10ヵ月と10歳10ヵ月における 紹SC一醗の検査結采. ②日本版K織BC Table 1にK−ABC10歳2ヵ月時の検査結果を示す、 検査結果は、同時処理尺度が副次処理に比べて5%水準で有意、同時処 理尺度と習得度尺度には有意な差がなく、習得度尺度が継次処理尺度に 比べて璃水準で有意、習得度尺度が認知処理尺度に比べて螂水準で有意 な差があった。 8.

(13) 総合尺度. 下位検査 標準得点±測定誤差 パーセンタイル. ス均司00標準偏差=15. セ点合計 @90%信頼水準. @ 顧位. 継次処理尺度. 16. 72±10. 3. 同時処理尺度. 33. 89±9. 23. 認知処理過程尺度. 49. 79±8. 8. 習得度尺度. 406. 102±6. 55. 非言語性尺度. 27. 79±9 τable 1 1⑥歳2ヵ月時のK一ABCの結果. 8. 9.

(14) 2 分析資料と方法 (D分析資料. 本児は8歳から14歳まで、B5版のノートにマンガ(本人がマンガと称 する)を描いていた。それらのマンガはストーり一をなし、タイトルも表 記されていた.このマンガは、本児によると、合計48冊描かれていた。 本論文では、そのうち入手できた28冊のマンガを分析の対象とする。 また実生活での様々な体験や本人にとってのマンガの意味を探るため、 本人へのインタビ謀一、これまでの相談i記録、母親からのききとり、X 年3月からX+1年3月までの学習指導場面における記録も利用した。 《2)方法. マンガを作成年月日に従って時系列に並べ、ストーり一ごとに文章と 絵を形態的、意味的に分析し、その特徴と変容を記述する、またインタ ビューや記録などマンガ以外の資料から、本児と家族や友人とのコミュ ニケーションの様相や対人関係の変化についても把握し、マンガとのか かわりについて検討を行う.. 垂0.

(15) 皿 結果 1 マンガの分析 (1)マンガの形態的特微. マンガはB5版ノート1冊ずつにタイトルがつけられ(Fig2)、豆つま たは幾つかのストーリーから構成されていた。28冊のマンガは全て、最 初のページがタイトルと絵による中表紙となっており、M冊のマンガの 表紙にもタイトルが書かれていた。また1冊を除き、残り27冊の最後の ページには、『つづく』窪つぎは…』『次回は…』という文章が書かれて いた。なかには、それに続けて『たのしみにしてね』などといった記述 もみられた(Fig3)。最初の5冊のマンガには、ページ番号や目次もつい ていた。. また『じ・(友人の名前) え・(Y児の名前)渥『この本のさくしゃは、Y 児です。』『じ/え・(Y児の名前)』『たんとう/(Y児の名前)』『(Y児の名. 前)作』という記述や『※なお、この本は、かってに、うりだすのは、き んしされています。』という注釈がついているなど、著作の権利に関する 記述がされているものがあった。. このマンガのストーり一の部分は、ノートの見開きで、1ページは文、 もう1ページは絵という形でかかれていた(Fig.2)。マンガというより絵. 本に近い形であった。一部、おまけとして4コママンガや5ロママンガ が描かれ、「Yのおもしろげきじょう(終)」の後半部分、「ありくんのたび. 聾⑤ たんていだんおまわりさんの子どもあんどありくん」のゼたんてい. だん」の部分、「たんていだんおまわりさんの子どもあんどありくん」1冊. が四角い枠の中に絵と台詞などをかいてストーリーが展開していく、い わゆる「マンガ」といえる形式のものもあった。それ以外のマンガは全て、 Fig.2のような文のページと絵のページという形態でストーリーが進ん でいた。. H.

(16) 文章 B5版ノート. Fig.2 マンガの形醸. 椥ノく擁噸6 昏④伽越一一 と畿 .. 麟. の,C継、. 鰯・. y祉伸. ((. 虫. 中表紙. 最後のページ. Fig.3 中表紙と最後のベージ. 呈2.

(17) {2}俸成時期とタイトル. 28冊のマンガの作成年齢とタイトルをTable2に示す。作成年齢は8 歳(小2)から13歳(中1)に及んでいた。同じタイトルのものに囲み番暑. をつけて、数冊続くというかたちになっていた.fとけいのエレベーター とくしゅう」、「ありくんのたび」、「とけいのエレベーターとくしゅう 鉦」、「Yのおもしろげきじょう」、「ありくんのたび皿』、「たんていだ. ん」と変容していた。「とけいのエレベーターとくしゅう」と「ありくんの たび」は、「皿」という字がつけられ、新しいタイトルとなっており、テー. マが繰り返されていることが特徴としてみられた。 (3)ストーり一展開の特徴. マンガの中によく出てくる物としてカセットやエレベーターがあっ た。カセットの絵は、テープの時日や「A面・B面」なども描かれていた。 エレベーターには止まる階や入れベーターが行く方向を示すランプがか かれていた。このような描写から、Yくんが興味を持っていた物や部分が 謡える。またカセットの曲名やデパートの案内表示、病院の受付けの中 に掲示されている予定表、映画館の上映情報などは、絵の中に文字:がび っしりと記述されていた(Fig.4)。先述のような曲名、案内表示、予定表、. 映画情報、本のタイトルなど、絵の中に文字がびっしりと記載されてい るものが、このマンガの中に何度か登場した。 罫とけいのエレベーター」というタイトルにも表現されているように、 このマンガでは、とけいのエレベーターがストーり一展開の舞台として 出てきた。また他のタイトルのマンガにおいても、登場人物がエレベー ターに乗っている場面が頻繁に禺てきた。さらに、デパート、病院、電 車、映画館もストーリー展開の舞台となっていた。カセットやレコード、 電話などもよく描かれていた.このマンガの中に頻繁に出てきたものを 7able 2で示した。これらのストーリー展開の場をみていくと、エレベ ーターとカセットはほとんどのマンガに出てきたといえる。. 13.

(18) τable 2 マンガの作成時期とタイトル. 作成年齢. タイトル. 麗。.. 1. とけいのエレベーターとくしゅう① とけいのエレベーターとくしゅう② とけいのエレベーターとくしゅう③. 8歳. 8∼9歳. 聾7. とけいのエレベーターとくしゅう④ とけいのエレベーターとくしゅうさいしゅう しんありくんのたび ありくんのたび③ ありくんのたび④ あ移くんのたびさいしゅう とけいのエレベーターとくしゅう丑① とけいのエレベーターとくしゅう旺② とけいのユレベーターとくしゅう韮③スペシャル とけいのエレベーターとくしゅうHスペシャル②④ とけいのエレベーターとくしゅう狂⑤ yのおもしろげきじょう Yのおもしろげきじょう② Yのおもしろげきじょう Yのおもしろげきじょうふゆのとくべつスペシャル. 18. yのおもしろげきじょう(終). 19. 9∼韮0歳. 23. ありくんのたびπ① ありくんのたび皿② たんていだん・おまわりさんのこどもあんどありくん ありくんのたび旺③ あのくんのたび丑④. 24. あ9くんのたび皿⑤. 11∼12歳. 2 3. 4 5 6 7. 8 9. 10 翻. 12 13. 14 15. 16. 20 21. 22. 25 26 27 28. 8∼9歳 8∼9歳. たんていだんおまわりさんのこどもあんどありくん しんたんていだんおまわりさんのこどもあんどありくん① ありくんのたび証⑥ ありくんのたび猛⑦ ありくんのたび彊⑳. M. 8∼9歳 9歳. 9∼10歳 9∼10歳 9∼10歳 9∼10歳 9∼10歳 9∼10歳 9∼重0歳. 9∼10歳 9∼10歳 9∼10歳 9∼10歳 9∼10歳 10歳 10歳 io歳9ヵ月 董1∼1£歳. 11∼12歳. H∼12歳 U∼12歳 13歳.

(19) ㌦. 1r} ズ 、、. ’}. @. ’. 〆. 菰▽ ムワ’ 酬 ・噛デ劉卜. 4. カセット. エレベーター. 病院の受付. 映画館のチケット売り場. Fig.4 詳細に描写・記述された絵の例. 15.

(20) τable 3 マンガの中に頻繁に出理した場所や物. タイトル. 議D.. 作威年齢. エレベーター. 8歳. Gレベーター Gレベーター Gレベーター Gレベーター. W∼9歳 W∼9歳 W∼9歳 W∼9歳 W∼9歳 X歳. スび スび スび スび GレベーターH. X∼10歳 X∼10歳 X∼10歳 X∼10歳. Gレベーター旺. X∼m歳. GレベーターH. X∼10歳 X∼lo歳 X∼10歳 X∼10歳 X∼10歳 X∼10歳 X∼10歳 X∼10歳. Gレベーター旺. Gレベーター旺 ィもしろ劇場 ィもしろ劇楊 ィもしろ劇場 ィもしろ劇場 ィもしろ劇場 スび歴 スび旺. P0歳. スび皿. P0歳9ヵ月. スびK スびH. P1∼12歳. スび証 スび旺 スび”. D. マンガに出てくる壕所・ τ 競 C. P. 凹. GOOOOOOOOOOOOO. OoOOOOOOOOOOO. 000000. P0歳. T偵団. T偵団 T偵一. E. t∼12歳 P1∼韮2歳. P1∼12歳 撃戟`12歳. t∼12歳 P3歳. 注滋:エレベーター,9=デパート,H:病院,C:カセット,T:電車,. P:電話調:映画. 16.

(21) 《4)文と絵による相互表現. ⑳ストーリー展開における文と絵の相互表現 先のマンガの形態的特微でも少し触れたが、このマンガは文章と絵に よって表現されていた。これは形態的なことだけでなく、ストーり一の 流れという視点からマンガをみていった時にもいえることであった。文 章の中でストー一り一が展開し、その横に絵を描くことでストーり一の内 容や状況がより詳しく伝わってくるように表現されていた。 絵は登場人物の目、眉、口など顔にある部分の描写によって表情に変 加をつけたり汗を描いたり、鼻ちょうちんを描くなどの表現で状況を説 瞬していた。. Fig.5に8歳時、そして斑g.6に13歳時に描かれた、1っのストーリ ーに描写された絵を示す.8歳時の表情は全て笑っているものであった のに対し、13歳時の表情は眉の描き方をかえたり欝の描き方や大きさ、 瞳の位置をかえたりすることでさまざまな表情が描かれていた。これら. を比較すると、8歳時のマンガに比べ、13歳時のマンガの方が表情の種 類が増え、表現が豊かになっていた。. 17.

(22) ‘.. 野ジ駕‘. c)(∼). 1. ノ’. ,、/ノ. 匁冒ぢ. εド. りr ●. 》 ,. . 二. .〆. 9. し. ♂之。. ”f ’2 写 珍 レ. β1助3肝 融β3聖. ..「P. ●. 團. 副袖L謡、4. 2. Fig.5 8歳時に作成したマンガの例 (はじめてのエレベーター「いいエレベーター」). 18.

(23) 、’. 韓灘 .礎堅. 多湿. “・判;. \\そ網/. {\. ’ 〃・ 愈愈【. 犠さ’. P. ④. 乱φ. 癬賜. 、. /. / ㌧. に. 信〆. 倉、 〆 」」_ η(蛋。. .六. 髪ミ、. 『冒. 〃ハ昭∩. ㈱. 一 Fig.6−1 13歳時に作成したマンガの例 (とけいのエレベーター⑳「みんなでハードな1日?!」). 19.

(24) ゾ、一〆ヒ. こ’㌧・’“. ソ勘 ’. P ’昌池. 鰹晒 い・. 『⑤,. … 11i,. =N. \ノ{. ㊥ ⊆」’. ’、、ρへ. 凱愴. 黒「 ヘ 、 ・1転・. へ. }一. ロコ. 噸. 層. ;.テ. {参.. Fひ. 圃鰹. 酬. 、. い、翁. ,1;ダ獅君、、6饗. 陣1. 1驚 越:. び敵糠. 願. 欝. 勉マ. 盤. ケい人・’、. な、. 轟 \、. ぺ・,ヒ. ’. Fig.6−2 13歳時に作成したマンガの例 (とけいのエレベーター⑳「みんなでハードな1日?!」). 20.

(25) またストーリーごとに登場人物の表現に変化がみらたものがあった。 一つのストーリーの展開を通して、登場人物の表現に変化が見られた。 例として、Fig.7ではエレベーターに乗る前と後で登場人物の表現が変 化がみられ、Fig.8に手術時の表情の変化を示した。. Fig.7では、登場人物であるY児は、デパートのエレベーターに乗る. y児がエレベーターガールとエレベーターに乗ると、眉や瞳が描かれ、 服には模様が描かれた。他の客が乗るとY児は帽子をかぶった。屋上ま で行き家へ戻ると、Y児の髪が立っていた、という変化がみられた。. あるひ、とけいのえれベーた一が、. ある、でパートへいきました. Yくんが、「たのしみだな。」とい いながら、いきました、. はじめてのえれべ一た一. %∩ ◎ ’キ. ρ. 」、. 、. ∼. Fig.7−1 とけいのエレベーター「はじめてのエレベーター」1頁目. 21.

(26) さっそくのって、「Rへおねがい ください」といって、えれべ一た. 一わ、5かいへいきました。「う θ. えへまいりま一す、1」. く. 7. o 」. .圖. 、、. “. “. 〈. \、 、. Fig.7−2 とけいのエレベーター「はじめてのエレベーター」2頁目. まだきてない。. ‘ ム. 働. ▽. ㊨. r. Fig.7−3 とけいのエレベーターrはじめてのエレベーター」3頁目 22.

(27) うれしくなて、「もうすぐRに、. つく。」といって、5かいから、R にむかいました。「うえへまいり. 9. ま一す。おのりの人は、おいそぎ くださ一い、,」. 『. Fig.7−4 とけいのエレベーター「はじめてのエレベーター」4頁目. まだっかない。. 1. 回. 1グへ)‘ .ジ.支。づ. Fig.7−5 とけいのエレベーターrはじめてのエレベーターj5頁目 23.

(28) 「わ一い」「したへまいりま一す。」 \. 4. ゲ. 6. 多. ク. ユ1. 窃. 鶏・. r Fig.7−6 とけいのエレベーター「はじめてのエレベーター」6頁目. 「きんこ一ん」と7かいにっきまし た1、. .一潮一P 一、‘. =\. ’亀. ム!7 ワ. 「. lz Fi,,7.7とけいのエレベ_タ_・1抗めてのエレベ_タ_、震r. 24.

(29) Yくんは、いえへ、かえっていき ました。. 4’「 ’ 〈). 吻怖氣た一鞠 } Fig,7−8 とけいのエレベーター「はじめてのエレベーター」8頁目. Fig.8は、たんこぶの手術中に表情の変化がみられたので、これを示す。. 「ちりょうします。たんこぶを、は りで、きって、なかを、みます。」. 凋. フ ’覧 ’. Fig.8−1 とけいのエレベーターとくしゅう巫③スペシャル. rたんこぶびょういんでのせいかつ証」1頁8. 25.

(30) 「むむ!!!!これは、たんこぶを、. ながもちさせる、はりだ!すぐに、. きろう詞. Fig.8−2 とけいのエレベーターとくしゅうH③スペシャル 「たんこぶびょういんでのせいかつ五」2頁目. 「バサ!」. Fig.8−3 とけいのエレベーターとくしゅう皿③スペシャル 『たんこぶびょういんでのせいかつ豆」3頁目 26.

(31) ?. loρ. レ 1. “. Fig.8−4 とけいのエレベーターとくしゅう皿③スペシャル. 「たんこぶびょういんでのせいかつπ」4頁目. へやにもどって、レコードをきき だした。. 「. Fig.8−5 とけいのエレベーターとくしゅう皿③スペシャル 「たんこぶびょういんでのせいかつ皿」5頁目 27.

(32) ②対話場面. 文章と絵による相互表現はマンガにおける対話場面にもみられた。 登場人物の気持ちを表情で表現したり吹き出しの中に台詞を書き、 本文だけでなく絵の中でも対話が見られた(Fig.9)。またFig」oに. 示すように、ふきだしは発話や音楽を表現する時と思っていること を表現する時とで区別して使用されていた。Fig.11に示すようにマ ンガの中で吹き出しの区別をするだけでなく、「あたまの中」と記述 することで読み手にその区別を伝えていた。. ノ. 嘩. ,碍. 1 酵1 糖. ’奮. ¢鱗 ぐ(. .\.◇. 〆ノ戸=. Fig.9 文章と絵の中での対話場面 28.

(33) 思っていること. 発話・音. Fig.10 ふき出しの区別. 宴心靴 8ψ. グ. ’. 一 ●. ⑦ρ’. o. Fig.11 マンガの中にみられたふきだしの区別 29.

(34) ③:事物の描写. またFig,12に示すように、事物の描写においても文字と絵との相. 互表現が見られた。描画の部分に文宇を書き加え、本児が何を描い ているのか説明しているようであった。またFig」3のように、聞こ えてくる音や声、流れている音楽を表わす音符などを描き込むこと によって、絵の中に動きが表現されていた。. 鮨’』 Dご1. 穿櫻1. ・、. .Eギ1. し. 儲. ず. 乙一つ. 入. τ. Fig.12 描画の中に説明的に書かれた文字 30. ←.

(35) ・、づ’・〆官 隔(い. 赤1館艇A〃源. 鱒“亀v. 夷 F一”. 轡. ザんロロ. ,や’・. ヌロ. 薙 喝. ・’. ノ し. ・←・,ノニ,‘吐. 100午1. 。. 〉. ’. 馨. Φ. ”フ々 も 小 愚舷袖、 ヲ立クス. Fig.13 絵の中に書き込まれた声や音. 31. ,7べ》タ乏.

(36) ④シンボルを使った表現. マンガの中には門戸と記号を使ったシンボル的な表現がみられた (Table4).エレベーターの描写場面において、地下をr均と記述 し、地下1階は『田」と表記されていた。また屋上は「驚記述されてい. た。状態描写としては、寝ている人物の頭の辺り「ZZZZjといった表 現や向かい合っているカップルの魚の問に「ハトマーク』が描かれて. いた。流れている音楽や歌は音符を幾つか描くことで表現されてい たりふきだしの中に電球を描いて何かひらめいたり思いついた状態 を表現していた。「⑨』「△」「☆」『x」r?」などの記号を使って、思っ. ていることやはっきりと言葉では表現できないことを表現していた。 また描画部分にもシンボル的な表現がみられた(Fig」4)。. τable 4 マンガの中で用いられたシンボル例とその意蘇 シンボルの意味. シンボル. 記号. BR. ZZZZZ. 状態. n・一トマーク. 音声. ♪♪♪. 地下. ョ上 寝ていることを表現 Jップルの関係を表現するとき 流れている音楽(楽器・カセット・スピーカーなどから). フっているとき 頭の中. ◎☆O ?H●☆ロ @ ?. @二二. @電球 感清. @. 目が覚めたとき. C持ち ェからないとき カ章で表現しきれないとき カ章で表現しきれないとき ミらめいたとき. ♪♪♪. うれしい気持ち. ♪♪(るんるん). 、れしい気持ち エ動したとき 数の多さで表現. 1. 32.

(37) そ蓄、’. ゴロ. .7. を. 鰍’. Fig.14 描画の中にみられたシンボル的表現. 33.

(38) (5)ストーり一のテーマ. ストーり一のテーマや流れをみていくために、作成年齢とタイト ルからマンガを次の5期に分類した。 互期. 「とけいのエレベーターとくしゅう」. ∬期. 「ありくんのたび」. 一期. 「とけいのエレベーターとくしゅうH』. 夏v期. 「おもしろげきじょう」. V期. 「ありくんのたび孤」「たんていだん』. まず各期ごとの主な登場人物をみていく。. 1期では、始めのストーリーにYくん自身が登場するが、その後 「おまわりさん」と「おまわりさんの子ども』が出てきて、「おまわりさ. んの子ども」を中心にストーり一が展開していた。∬期では、「あり くん」と『せみくん」が登場し、ガありくん」が中心となっていた。また. 次のストーリーではおおきなありの「ジャンボさん」が登場、1期に 出てきた「おまわりさんの子ども」も登場し、「ありくん」と共に行動 していた。皿期では、「おまわりさん』と「おまわりさんの子ども」、. おまわりさんの「助手』が登場し、「ありくん」が少し登場する。W 期はストーリーによって「ありくん」や『おまわりさんの子ども』が. 出てきた。V期も「ありくん』を中心にしたストーり一と「おまわり さんの子ども」を中心にしたストーリーがあり、「おまわりさん」と ∫助手」、『せみくん』、いろいろなありも出てきた、. マンガ全体をみていくと、ストーリーによって中心になるものが 代わっているが、話が進むにつれて登場人物が増えたり、前に出て きたものがまた登場したり、同じメンバーが繰り返し出てきた。 次に三期ごとのストーり一に着目し、Fig.15にその流れと特徴を まとめた。. 1期では、デパートのエレベーターを舞台にストーリが一展開し 34.

(39) ていた。最初にデパートのエレベーターにYくん自身が乗って楽し んでいるストーり一が展開され、次にデパートに勤める『おまわりさ ん」ののストーリーが始まり、「おまわりさんの子ども』がエレベータ. ーの中で頭を打ってたんこぶを作り、病院へ行った。入院生活を送 り、たんこぶは治った.しかし、またたんこぶを作ってしまうとい. うストーリーが展開されていた。このストーリーは3回繰り返され ていた。. 孤期では、「ありくん」の旅を中心に話が展開していた。冬に食べ. 物がなくなったことからありくんの旅が始まり、旅をする中で食べ 物を手に入れた。そして自分の巣に戻って旅が終わった.また「あり くん」が「ジャン:ボさん」、『おまわりさんの子ども」と遊園地へ行き、. 逃げていくソフトクリームを追いかけていた。その他に「ありくん』 と「おまわりさんの子ども」が海へ行くといった話もみられた。海で 眠ってしまった時に大きな月の罫おおがたつき」が登場し、月の国へ 行く夢をみるというストーリーもあった。fありくん」と「おまわりさ んの子ども」は一緒に登揚するが、『ありくん」の世界に「おまわりさ. んの子ども」が登場している印象を与えた。. 皿期は、新しい助手を募集し、日常生活場面を中心にストーリー が展開された。ここでも「おまわりさんの子ども」がたんこぶを作っ. てしまい、病院に入院、たんこぶを切って治るという話が展開され ていた。この話の申にも「ありくん」は登場するが、「おまわりさんの 子ども』の生活に「ありくん」がくっついているという感じであった。. W期は、ストーリーによって主人公が変わっていた。それぞれの ストーリーのなかで各々の登場人物の世界を描いていた。E期同様、 「ありくん」と「おまわりさんの子ども」が海で眠り、月の国へ行く夢. をみるというストーリーがあれば、「ありくん」の学校生活も繰り広. げられたもの、クリスマスやお正月のイベントを盛り込んだストー リーがみられた.新しいデパートのオープンやせみの脱皮といった 生まれ変わるテーマもみられた。しかし、最後はギおまわりさんの子 ども」がたんこぶを作って入院した。 35.

(40) V期は、W期の続きであり、「おまわりさんの子ども」がたんこぶ を作って病院に入院し、手術をして治るというストーリーがまた繰 り広げられた。またその後、U期やW期と同様に、「ありくん」と「お まわりさんの子ども」が海で眠り、月の国へ行く夢をみるというスト ーり一もあった。『ありくん」が「あり子」と旅行をするものもあった。. さらに「おまわりさん」と「おまわりさんの子ども」がラジオ番組を制 作する、「ありくん」の学校の授業で「家を作る」、「ありくん」が子ど. もを産むなど、生産的なストーリーが展開されていた。最後は、デ パートを改装工事し、「おまわりさん』と「おまわりさんの子ども』と 「助手」が忙しく仕事をしていた」おまわりさん」と「おまわりさんの 子ども」そして『助手」の生活に「ありくん」に「ありくん」も加わって. いるように描かれていた。. 36.

(41) E. 1. ・主人公がたびをする. ・主人公がエレベーターに乗る ↓. ↓ 食べ物を手に入れる. 上下移動 人の出入リ. 自宅へ戻る. エレベーターの中で頭を打つ ’遊園地へ行く. ↓ たんこぶ. 食べ物を追いかける. 病院へ行く. レントゲン ↓ 診察 入院. 。海へ行く. 寝る 月の国の夢. たんこぶが治る. 髪の毛ぶ生える ・他の登場人物の看病 ・エレベーターの故障. w ・新しいデパートのオープン. 皿 ・海へ行く. 寝る 月の国の夢. ・助手の募集. 新しい生活. ・学校生活. ・たんこぶをつくる. 授業の中で家を作る. ↓. 病院へ行く(入院). レントゲン ↓ 注射 たんこぶを切る. ・イベント. クリスマス お正月. たんこぶ力胎る(退院). ・せみの脱皮. ・たんこぶをつくる. 入院. v ・海へ行く. 。薪しい助手の募集. 寝る 月の国の夢. ・たんこぶをつくる(入院) ↓. レントゲン 手術. ・主人公が赤ちゃんを産む. たんこぶが治る(退院). ・主人公の恋愛. 。ラジオ番組を作る ・デパートの改装工事 ↓. 。学校生活. 新しい生活. 授業の中で家を作る. Fig.15 雨期におけるストーリーの流れ. 37.

(42) (6)書宇について. ①「カタカナ」と「ひらがな」が混在した表記. Table 5に示すように、マンガの中にはカタカナとひらがなが混 在した表記がいくつかみられた。「でパート」「そふとくり一ムjrじ ゃんボ」「えれべ一ター』「あいすくり一ム」は、始めの部分がひらが な、後ろがカタカナ表記になっていた。『コインロッか一』「プレぜん. と」「バーゲん」は、始めの部分がカタカナ、終うがひらがな表記に なっていた。「コーヒーかっプ」「プレぜんと』『サーきット」「りもコ. ン」などは、真ん中の部分がひらがな表記になっていた。. τable 5 「カタカナ」と「ひらがな」が混在した表観例. 時期. 単語. 1. でパート. 亙. コーヒーかっプ. Rインロツか一 サふとくり一ム カゃんボ ヲれベーター 皿. プレぜんと. vレぜント. oーゲん ?「すくりーム. w. ゲームせんター. Tーきット 鰍焉Fコン. 38.

(43) ②誤った表記. マンガの中で誤って書かれていた例をFig.16に示す.本児の書字. は漢字が苦手ということから文章のほとんどが平仮名であり、その 文章中に鏡文字がみられた。鏡文字になっていたのは、平仮名の「ま」 「せ」「ん』、片仮名の「オ」であった。. 同音による書き閥違い こ:おり. →. こうり. しずかに. →. しつかに. では とはいっても おわり. → → →. でわ とわいっても おはり. 聞き取り、あるいは、書字の際に聞違えたと思われるも・ どあ. おいわい たいいん たいいん まちがい おしお ろてんぶろ ビアガーデン しゅくだい ディナー. → → → → → → → →. → →. どわ. おいあい たあいん たんいん まちがえ おしよ どてんぶろ ピアガーデン しくだい デナー. 文字の間違い せんたく ビアガーデン. →. せんさく ピアガーヂン. スケジュール. →. スケジュルー. ファックス ポット ドーナツ. → → →. フアシクス ポシト ドーナシ. ロックンロール→. ロシクンロール. ベット. 縛. ベシト. 入口. →. 人口. Fig.16 マンガの中の誤った認述 39.

(44) 本児の書字をFig.17に示す。マンガの中には、文字と文字との間 隔を正しくとることができず、「ほ」が「し」「ま」にみえるといったよ. うに、1つの文字が分離して2つの文字にみえたり、「かっ」が「カう」. のように、前の文字の一部分が、次の文字と一緒になってみえたり することがあった。また「い」と「り」、「わ」と「れ」、「ん」と「く」. が類似している場合もあった。対象児の書く「R」という文物は、「丸 (O)」の下に「はち(八)」がついたように書かれていた。Fig.18に示 すように、「記」という漢宇が「ごんべん(言)」と「れ(L)」になってい. た。このような本児の書字も年齢を重ねるにつれ、バランスよく書 かれるようになっていった。. ・{ 1. 洩く叙、貿へ. 納なて・鴇’織. 醜. しぐつく 珈・し、八・物 イ1曳\ 喚’る. 1㌧. 彪・監. 一. 、さ・斜、賃麓之蟻. 勧い的 Fig,17 本児の書字. モ. ,望. し樗%. C藍マ1 ・=訟ゴ袈㍍;温_. Fig.18 誤って書かれた宇 40.

(45) ③ことばの使用に関して ストーり一の中で幾度か、「1じご」「2じご」などといった表現が. 出てきた。これはストーリーから読み取ると、1時過ぎ、2時過ぎを 意味していると思われた。また言葉の使い方では、「おまわりさん2 の妻であり、「おまわりさんの子どもの」母親である人物が「おまわ りさんの子どものかないです」と表現されていた。また「1たば10人」 「ラジオはことわってない」という表現もあった。このようなことか. ら、言葉の意味が十分に理解されていないまま使用されていること があると推測された。その他、「しゅやく」fふくしゅやく」「ふくふく しゅやく」「ふくふくふくしゅやく」といった表現みられた。. 41.

(46) 2 Yくんへのインタビュー. X+2年11月4日(木)璽8:30∼19=30Y児宅にて 事前にY児にインタビューを行うを約束をしていた。この日、Y 児はマンガを全て用意し、マンガについて話すことを考えてくれて いた。. 『これが「とけいのエレベーターとくしゅう」っていう2年忌(8歳). の時に描いた一番最初の物語です。これは最初のところはストーリ ーとかは決まっていないように見えるんだけど、一応結びつけ性、. ストーり一が結びついているような感じじゃなくて、普段のエレベ ーターを描いているような感じになっているんです』.. Y児は、8歳の時に描いたマンガをみながら、書宇や表現、その当 時描かれたマンガのストーリーについて語った。. 『これは、まあ、読みにくい字があるっていうことはお分かりでし. ょうね。僕もこれ何て読むんかなっていう時もあります。特に字の 間違いなんかもあります。面白いのが、(マンガの中でYくんがエレ. ベーターに乗った場面で、本当なら「Rへお願いしますjと言うとこ ろ)「早速Rにお願いください」という表現なんか、今見ると全然違っ. ていたり、内容も色々と自分で描いているという感じでストーリー の結びつけ性がないなって思う。まあ2年生ということで… 』.. このマンガを書き始めたきっかけを尋ねると、『マンガを描き始 めたのかは休憩時衙にすることがなかったから、休憩時間の時間つ ぶしに自由帳に(マンガを)描いていた』という応えが返ってきた。. そして、本膳はマンガを描き始めた頃のことを思い出しな漢ら、 『「とけいのエレベーターとくしゅう」は1巻と書いていないから多 分、僕が予測すると物語にしょうと考えてない』『おまわりさんが登. 場してからが物語になっているかなと自分では考えていて、これで 42.

(47) 続いていくという感じです。』と話した。このコメントから、このマ. ンガは本児が描き続けようと思って描いたものではなく、マンガを 描いていく中でストーリーが作られていったものだと推測される。 また『マンガは、タイトルを先に決めて、「こんな話が描きたいな」. と思って描いている。ストーリーを描いていると、次のストーリー を思いつく事があるんです。そのときは、描いているストーリーを 強制終了し、次のストーリーを描き始めている。だから、強制終了 したものが沢山ある』と、マンガのタイトルとストーり一が描かれ ていく流れを語った。さらに、『「とけいのえれべ一た一とくしゅう ②」でたんこぶ病院に行くストーリーが登場する。このたんこぶ病院. に行くというストーり一は、これ以降、リメイクした感じで何度か 出てくる。「ありくんのたび②」が初めてのリメイクだと思う』とス トーリーが繰り返されている部分にも触れていた。. 描画については、『たんこぶ病院に行く話が出てきているところ を見たら分かると思うんだけど、医療設備がだんだん高度になって く。それを見ていったら結構楽しい。いつもと一緒のたんこぶ病院 だけど、少しずつ変わっていく。呼び出し機が最初の医療設備だと 思う。医療設備は本当にある物と、こんなのがあったらいいなと思 うものが描かれている』『ありくんは最初、6本足だったんだけど、. いつのまにか2本足になっている。2本足にみえるんだけど、片面 だけ見えているので本当は4本足。何でかこんなに短縮しているん だとも思う。そのうち友達にも6本足でしょって言われた』と語っ ていた。. 次に登場人物の表情についても語ってもらった。文章中で「ありく ん」が石につまずいてこけたというストーリーが展開しているとき、. ありくんの目が「X」になっていた。この表現は、文脈から読み手に は「痛い」という表現によみとれた。この点について本児にききとり. を行ったところ、本訴もr痛い」を表現していることが分かった。ま た汗や怒っている表現についても読み手と本児との間で一致した。 43.

(48) マンガにはY児と友人が共同で描いている部分や友人・知人が感 想を書いている部分が幾つかあった。共同で制作した部分について は、『一部、字が違うのは、友達との共同作田だと思ってください。 文は友達が書いて、(ストーリーを)考えたのと絵は僕です。(Y児が). 転校したので、「ありくんのたび③」で友達との共同の部分は終わっ ている』『友人が(マンガを)読んで、(友人の「こんな話が描いて欲し. い」という)リクエストに応えて描いたものもある』と話していた。. また、このマンガを作成する際に、誰か特定の人に読んでもらうこ とを前提にしていたかどうかを質問したところ、その時に興味を示 してくれた何人かの友人、知人が読んでくれたが、読んでくれる相 手が特定されていたわけではないということ、またマンガを読んで もらったら嬉しいという応えが返ってきた。. Y児にこのマンガのPRをしてもらったところ、『これらは、マン ガというよりは絵本に近いお話だと思う。でも、マンガとして描い ている。このマンガは、あったらいいなというもの(医療器具など)、 その時にあった出来事(テレビで報道されていた電車の脱線事:故)、. 実際に見たもの(とけいのエレベーター、脳放送の収録場面など)、 が出てきます。そして、このマンガを読むことによって時代(映画の 上映情報)やマイブームが分かるようになっています』と、マンガの 特徴を語った。. さらに、『学校の休憩時間に描いていたのが、家でも描くようにな った。小学校2年生から現在も描いている。しかし、中学に入ると、 時間がなくて、最近ではあまり描いていない。』『(今まで描いてき. たマンガは大切であることと)僕にとって、このマンガはやめよう と思ってもやめられないものです。多分、ずっと描きつづけると思 う。渥『最後に、このマンガはノンフィクションではなく、フィクシ ョンです。』と、本児にとってマンガが大切な存在であることを示唆 するコメントが返ってきた。 44.

(49) 3 実生活でのエピソード. 母親からのききとりによると、病児は幼児期、デパートのエレ ベーターが好きでエレベーターの側から離れなかったそうだ。ま. た本児がカセット好きだったことから、7歳10ヵ月からプレイセ ラピーに通い始めた頃、学校の授業に担任の配慮でカセットを取 り入れてもらったこともあったようだ。カセット好きは幼児期か ら13歳まで続いていた。また電車も好きで、時刻表や電車の名 前を詳しく知っている、電車での旅を体験したということがあっ た。映画も好きで、いつも新しい映画情報を入手していた。. 人間関係においては、10歳10ヵ月の転校はこれまでに比べて なじみにくかったようで、いたずらをされることもあったようだ。 この時、心理士の助言のもとに母親と担任の先生との話し合いの 機会が持たれ、詠出に合った指導が行われた。その後、11歳3ヵ 鍔には元気になった。. 12歳になると学校のクラブへ入って友人と下校するようにな った.興味が広がり、習い事へ継続して通うようになった。また クラス役員など自分でやりたいことを選ぶ、あるいは決められる ようになった。13歳になると、友人と登下校するようになった。 学習指導場面においては、12歳時、学習面での算数の計算が苦手. で、筆算になると列が崩れてしまうので、2桁以上の計算は電卓を 使用しての学習を進めていた。計算自体に問題はなかったため、列 を崩さないで書く練習をしていくことで電卓の使用が不要になって いった。また童児は漢字が苦手なため自分なりに覚えようと努力し ていた。. 中学へ入学すると英語が教科に加わり、入学当初はアルファベッ ト「p」「切「d』「“」の区別が難しかったようだ。そこで、それぞれの違. いを丁寧に説明していくという学習指導を行ったところ、その混乱 も少なくなった。しかし、英単語を読めるようになっても書けない、. 実際の英単語を貝の前にするとなんとなく感覚で覚えてはいるが読 45.

(50) めないなど、理解はあるのに定期テストの点に反映しないというこ ともあった(Table 6)。. τable 6 12歳の時にみられた学習困難の状況 教科. 学習困難の状溌. 算数・数学 桁数の多い計算ができない(筆算が苦手) }形問題ができない. 英語. 「ajと「dj、「bjと「dj、 rp」と「qjを間違える. Xペルが似ている英単語を問違えてしまう P語は読めるのにスペルが覚えられない P語と単語がくっついてしまう 国語. 漢字が書けない. 豊2歳時、学習を進めるにあたって、例えば、教科書や板書の中で、. どこが大切なのか、あるいは課題をやり遂げるのに自分ならどのく. らい時間がかかりそうなのかといった、見通しが立ちにくいことか ら、β々の学校からの課題をこなすのが精一杯であった。しかし、. 13歳になると、毎日の学習計画をたてる、定瑚テストに向けて自分 で目標・計画を立てることができるようになり、またそれを実行で きるようになった。. 46.

(51) 4 マンガと実生活との関わり 生育歴、インタビュー、実生活でのエピソードから分かるように、. マンガにはエレベーターやカセット、エレベーター、映画といった 本児の好きな場所や物、本証が興味を持っているものがよく出現し、 乞児の体験も一部含まれていた。. マンガの中には、友人・弟と共に書いた部分、友人が描いたマン ガのページがあったり、本児がマンガの中に「感想コーナー』を作っ. て、友人・知人によるマンガを読んだ感想を書いてもらったり、実 際にこのマンガを通して他児とコミュニケーションをとっていた。 また友人のリクエストに応えてストーリーを作成することもあった。 さらに、マンガの中に「しろいところにすきなうたをかいてね」と余 白を作っていた。. 本児は自分からマンガを紹介することもあった。添削テキストの 自己紹介の蘭に、自分が「ありくん」の出てくるマンガを書いている. ことを説明し、fありくん」の絵を描くという行為もみられた。また. この論文の著者が、マンガの存在を知り、興味を示すと、次から次 へとマンガを貸してくれ、「どうでしたか?」と感想を求めてくると いうことがあった。またそのことを知った三児の家族が、本児に『よ かったね」と声をかけることもあった。. 本児がマンガを描き始めたきっかけは休憩時間の時間つぶしだっ たが、次第にマンガを描くことが本児の楽しみとなり、家庭におい てもマンガを描くようになったようだ。豆2歳になると友人との交流. が増え、学校でマンガを描くことが少なくなった。その後、マンガ は家庭で描かれるようになった、中学に入学すると、やらなくては いけないことの増加や興味の広がりから、家庭でもマンガを描く時 暇ぷ減っていっ詫.. 同時に12歳になると友人と作り話をしながら下校するという行 動も見られ、マンガを描くことによって行われていた作話が、友人 47.

(52) との会話の中で行われていた。描くという行為から人との会話に変 化していったことが窺える。. 48.

(53) IV 考察 1 対象児にとってのマンガの意味. 対象児は、8歳から13歳までの5年間で、ノートにして48冊の マンガを描いており、このマンガは、作成年齢と生育歴から考える. と、対象児に対人関係の困難さがみられ、市の相談所に週1回、プ レイセラピーに通い始めた頃に描き始められたと思われる。また9. 歳7ヵ月と10歳10ヵ月には引越しによる環境の変化もあったが、 マンガは描き続けられている。. これらのマンガは対象児が学校生活場面での休憩弔問に、遊びの 一つとして描き始めたもので、対象児霞身も始めはマンガを描き続 けるとは思っていなかったようである。対象児からのインタビュー によると、読み手が特定されていなかったが、「おもしろげきじょう」 というタイトルや「次回は∼だよ」という次のマンガの予告、「楽しみ. にしててね」という語り口から、このマンガは読み手を意識して描か. れるようになったと思われる。またマンガの中に設けられていた感 想コーナーや友人のリクエストに応えてストーリーを作ったという 対象児の証言からも、読み手を想定して描かれていたことが窺える.. このことから、このマンガは、はじめ対象児にとって目己完結的に 描かれていたものが、次第に対象に向けて描かれるようになったと 思われる.. 2 表現についての検討 子どもにとって「書く・描く」ということは、語りや身振りと区別さ れていない。茂呂(1998)はこれを「癒着した表現」と呼び、この表現. 特徴として、①ことば、描画、身振りなどのシンボルが未分化した 49.

(54) まま全体として複合した表現になっていること、②意図された意味 を先に持つのではなく、活動の最中、あるいは事後発見的に意味を 生成することだと述べている。また表現の癒着の背景には、このよ うな活動全体を指し示すようなシンボル使用があると考えられてい る。対象児のマンガは、文(文字)と絵による表現形態をとり、スト. ーリーにおいても文と絵による相互表現として展開している。 また我々が普段「マンガ」と呼ぶものも、文と絵との相互表現の形 態をとっている。マンガは文と絵によって複合表現されており、文だ. けでは面白さを伝えきれないし、絵だけではストーり一の展開がみ えにくくなってしまう。マンガにおいて文章と絵とのどちらか一方. を切り離すことは不可能であり、この点からすると、我々がよく目 にするマンガと本児の描いたマンガでは形態は違なってはいるもの の、対象児のマンガは我々が普段「マンガ」と呼ぶものと同じである と考えられる。. 3 ストーリーについての検討 次に、マンガに描き表される人や事柄について検討する。マンガ のタイトルにもなり、マンガの中に頻繁に出現するデパートにある エレベーターは、対象児が幼児期に興味を示していたものであった。. またカセットや電車も対象児が好きなものである。さらに、テレビ で報道されていた電車の脱線事故をストーリーに取り入れる、映画 上映の情報を絵の中に描きこむなど、対象児がみたり聞いたりした こともマンガの中に取り込まれている。マンガに描き表された人や 事柄は、対象児によって創り出されたファンタジーだけでなく、生 育歴、インタビュー、エピソードから、対象児の日常生活を通した 体験、対象児が見たり聞いたりした出来事、対象児の願望や想像が 含まれていると考えられる。 50.

参照

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