学校管理職に求め ら れる危機管理能力 に関す る一考察
A Study about Risk M anagement Capacity Demanded of School Leaders
當 山 清 実*
小 川 雄 太**
TOYAM A Kiyosane
OGAWA Yuta
本稿では, 学校危機管理の重責 を担う 管理職の能力向上 を企図す る研修の在り 方 を検討す る ため, 彼 ら の経験や意識に 関す る質問紙調査 を基に分析 を試みた。 得 ら れた知見から次の点 を指摘す るこ と がで き る。 第 1 に, 児童 ・ 生徒の 「問題行動」 や 「学校事故」 に関す る危機経験率が相対的に高 く , こ れら の事象に対す る危機管 理の優先度が高い と 考え ら れる。 教職員 の 「服務」 や学校全体に関わる 「業務妨害」 な どの危機管理は, 影響の大き さ を 考慮 し た対応が必要であ る と 考え ら れる。 第 2 に, 小学校では 「学習活動」 な どの学校内, 中学校では 「暴力行為」 な どの生徒指導, 高校では 「部活動」 や 「交 通」 な どの課外や学校外での危機経験率が相対的に高 く , 危機管理の優先度が高い と 考え ら れる。 第 3 に, 「児童 ・ 生徒に関わる危機」 は危機経験率が相対的に高 く , 「危機管理に対す る自信」 と 「研修の必要性」 も高 く 認識す る傾向 にあ る。 他方, 「教職員 に関わる危機」 と 「学校全体に関わる危機」 は危機経験率が低い こ と で 「危機管 理の自信」 に乏 し く , 「研修の必要性」 を高 く 認識す る傾向にあ る と 考え ら れる。 第 4 に, 危機経験率 を踏ま え る と と も に, 校種の特性やニ ーズに応 じ た危機管理に関す る管理職研修の強化が求めら れ る . キ ーワ ー ド : リ ス ク ・ マネ ジメ ン ト , 危機管理, 学校管理職, 教育行政, 管理職研修
Key words : risk management, crisis management, school leaders, educational administration, management training
I
研究の背景 と 目的
学校は本来的 に, 子 ども たち に と っ て安全 な場所であ る こ と が求め ら れてい る。 学校保健安全法第一条 には, 学校におけ る教育活動が安全 な環境におい て実施 さ れる べき こ と が明示 さ れてい る。 中央教育審議会答申 「子 ど もの心身の健康 を守 り , 安全 ・ 安心 を確保す るために学 校 全 体 と し て の取 組 を 進 め る た め の方 策 に つ い て」 (2008) におい て も , 「学校は, 心身の成長発達段階にあ る子 ど も が集い, 人 と 人 と の触れ合いによ り , 人格の形 成 を し てい く 場であ り , 子 ど も が生き生き と 学 び, 運動 な どの活動 を行 う ためには, 学校 と い う 場におい て, 子 ども の健康や安全の確保が保障 さ れる こ と が不可欠の前 提 と な る」 ') と 指摘 さ れてい る。 し かし ながら , 学校教育活動において, 100% の安全 を保障す る こ と は困難であ る。 実際には, 多種多様な危 機が学校内外 で発生 し てお り , 教職員 にはあ ら ゆる事象 に的確に対応す る危機管理能力の向上が求めら れてい る。 文部科学省 「 学校 におけ る防犯教室等実践事例集」 (2006) では, 危機管理 を 「人々の生命や心身 な どに危 害 を も た ら す様々な危険が防止 さ れ, 万が一, 事件 ・ 事 故が発生 し た場合 には, 被害 を最小限にす る ために適切 かつ迅速に対処す る こ と」2) と の説明 が な さ れて い る。 危機管理には事前の危機管理であ る リ ス ク ・ マネ ジメ ン ト と 事後の危機対応 で あ る ク ラ イ シス ・ マネ ジメ ン ト がある。 坂田 (2016) は, 事故発生の予防と し てのリ ス ク ・ マ ネ ジ メ ン ト に ど れだけ努 め た と し て も , 事故の発 生 を ゼロ にす る こ と は不可能に近い こ と や, 学校現場の 危機管理に対 す る認識は未だ不十分 な状態にあ る こ と を 指摘 し てい る 3)。 2017年 3 月 には, 栃木県那須町におい て登山訓練中の 高校生 ら が雪崩 に巻 き込ま れて 8 人が死亡す る事故が発 生 し た。 事故に関す る検証委員会がま と めた最終報告書 におい て, 根源的かつ最 も重要な要因 と し て, 栃木県高 等学校体育連盟及び登山専門部の 「計画全体のマネ ジメ ン ト 及び危機管理意識の欠如」4) が指摘 さ れて い る点 が 学校現場の実情 を示す端的 な例 と いえ る。 し たが っ て, 教職員 の危機管理能力 を向上 さ せ る ため の方策が求めら れ, 下地 (2017) が指摘す るよ う に, 研 修 を通 し ての教職員 の危機管理に対 す る知識や実践力 の 向上 を図 る必要が あ る 5)。 ま た, 前田 (2009) は, 学校の危機管理に関 し て, 設 備 な どのハ ー ド面 よ り も , 教職員 の危 機意識 な どの ソ フ ト 面への対策が効果的 であ る こ と を明 ら かに し てい る 6)。 以上のこ と を踏まえ る と , 研修 を通 し て, ソ フ ト 面で あ る教職員 の危機管理能力 の向上 を図 る こ と が有効 で あ る と 考え ら れる。 * 兵庫教育大学大学院教育実践高度化専攻学校経営 コ ース 准教授 * * 兵庫県立視覚特別支援学校 平成30年 4 月13 日受理さ ら に, 阪根 (2016) ら は, 「市町村教育長が最 も 重 視す る職務遂行能力は 『危機管理能力』 であ り , 危機管 理は重要な日常業務で あ る と 認識 さ れてい る」7) こ と を 指摘 し てい る。 危機管理 を日常業務 と 捉え る観点から , 教職員の危機管理能力の向上は喫緊の課題であ る と いえ る o 一方で, 文部科学省 (2016) の調査においては, 学校 におけ る危機管理体制の中核 と な る教職員 と し て, 副校 長 ・ 教頭が50.9%, 校長が34.5% と い う 結果が示 さ れて い る 8)。 し たが っ て, 危機管理能力 の向上は全 て の教職 員 に求 め ら れる も のの, 特 に管理職の危機管理能力 の向 上は, 学校の危機管理体制 を構築す るための最重要課題 と し て位置付け ら れる。 管理職は学校の責任者と し て, 学校内外 で発生す るあ ら ゆる危機への対応が求め ら れ, 一教職員 と し てよ り も は るかに多種多様 な危機 を経験す る こ と に な る。 こ の こ と に関 し て, 廣嶋 ら (2015) は, 管理職と し て小 さ な事 案に も丁寧に対応 し , 常に危機管理意識 を持つ重要性 を 指摘 し てい る 9)。 ま た, 大林 ら (2016) は, 管理職への 調査 を通 じ て, 管理職自身が危機管理能力 を こ れま で以 上に身 につけ る必要性 を認識 し てい る こ と を明 ら かに し てい る'o)。 危機管理に対 し て不十分 な認識の管理職の下 では, 盤 石 な危機管理体制 を構築す る こ と は難 し い。 ま た, こ の よ う な状態 に あ っ ては , 危 機に対 し て , 管理 職自身 の経 験 だけ に依拠 し た対応 と なり , 未経験の危機には的確に 対応で き ない事態が起こ り 得 る。 管理職は, それま での 学校現場で様々な経験 を積 んで き てい る と はいえ , 危機 に関す る経験の個人差に よ り , 危機管理能力 におい て も 格差が生 じ てい る実態にあ る と 考え ら れる。 その問題解決のためには, 管理職の危機管理能力 を向 上す る ための研修の強化が求 め ら れる。 研修に際 し ては, 限 ら れた条件の中で実施 さ れる ため, 広範多岐 にわた る 危機管理の対象項目の焦点化が必要と なり , 危機の発生 状況や損害規模 を考慮 し つつ, 優先的に取り 組むべき課 題 を明確化す る こ と が不可欠 と な る。 すなわち, 発生頻 度が高 く , 損害規模が大き い と 想定 さ れる危機管理は, よ り 優先度が高い と い う 捉え方であ る。 本稿は以上 を踏ま え , 危機管理の先頭に立つ管理職の 能力向上に資す る研修の在 り 方 を検討す る ため, 彼 ら の 教職生活におけ る危機の経験 と 管理職と し ての危機管理 の意識に関す る質問紙調査の結果 を基に分析 を試みる こ と と す る。 II 調査の概要 と 分析の方法 1 調査の概要 (1) 時期及び方法 自記式質問紙によ る調査 を2016年 6 月に実施 し た。 (2) 対象 兵庫県の学校管理職 ・ 教育行政職特別研修'') の受 講 者235人と し た。 (3) 回答状況 単数校種勤務者のう ち, 小学校82人, 中学校85人, 高 校26人, 特別支援学校 3 人と いう 結果と な っ た。 複数校 種勤務者は39人であ っ た。 単数校種勤務者と 複数校種勤 務者 を合わせた各校種での実際の総勤務年数は表 1 のと お り で あ っ た。 表 1 校種別の総勤務年数 人数 校種 単数校 ( ) 総勤務年数 小学校 中学校 高校 特別支援 2 5 6 3 8 8 2 4 4 2 8 2 2 1 1 2245 2499 746 166 計 196 78 5656 2 調査項目 ・ 内容 本研究 におけ る 「危機」 につい ては, 管理職に昇任す る前の年度末までの時期に限定 し, 警察や救急車の出動, 教育委員 会への報告やマ ス コ ミ 報道 を伴 う 事件 ・ 事故 な どに直接的 ・ 間接的に関わっ た経験と し て定義 し た上で 質問 し た。 ま た, 加害 ・ 被害の全てについて, 「 A 児童 ・ 生徒に関わ る危機」 及 び 「 C 学校全体に関わる危機」 に関 し ては, 死亡や重傷と い っ た比較的規模の大 き い事 案に対応 し た経験の有無, 「 B 教職員に関わる危機」 に 関し ては, 懲戒処分 を伴う 事案の発生状況に基づ く 回答 を求 めた。 表 2 に示すと おり , 危機経験の場面 を 3 つの大分類か ら な る30項目 を設定 し た。 大分類 「 A 児童 ・ 生徒に関 わる危 機」 には, 5 つの中分類 を設定 し た。 「①学校事 故」 は 「学習活動」 「特別活動」 「部活動」 「 その他」 , 「②安全」 は 「交通」 「不審者」 , 「③健康」 は 「感染症」 「給食」 「薬物」, 「④問題行動」 は 「暴力行為」 「い じめ」 「自傷」 「 その他」 , 「⑤犯罪」 は 「凶悪犯罪」 「粗暴犯罪」 「 その他」 に区分 し た。 ま た, 大分類 「 B 教職員 に関わる危機」 には, 2 つ の中分類を設定 し た。 「①服務」 は 「体罰」 「交通問題」 「 セ ク ハ ラ」 「 その他」 , 「②管理」 は 「公金管理」 「 情報 管理」 「健康管理」 に区分 し た。 さ ら に, 大分類 「 C 学校全体 に関わ る危機」 には, 4 つの中分類 を設定 し た。 「①災害対応」 は 「警報対応」 「避難所運営」, 「②業務妨害」 は 「脅追」 「不当要求」, 「③対外 ト ラ ブル」 は 「保護者 ト ラ ブル」 「地域 ト ラ ブル」, そ し て 「④ メ デ ィ ア」 に区分 し た。 加 え て, 上記の中分類 ご と に, 「危機管理に対す る自
表 2 学校危機の調査項目 と 総経験件数
B
教職員
に関わ る 危機 大分類 中分類 小分類A
児童 ・ 生徒 に関わ る 危機 ①学校事故学習活動
特別活動
部活動
危機の内容授業中 (運動, 実習) , 校外活動中の事故
修学旅行, 現場実習等での事故 部活動中の事故 その他 学校施設利用中の事故交通
登下校中の交通事故
②安全 不審者 不審者によ る殺傷, 略取等感染症
新型イ ンフルエ ンザ, 胃腸炎等の集団感染
③健康 給食 食中毒, ア レル ギーに よ るアナ フ イ ラ キシ一等 薬物 薬物乱用暴力行為
校内暴力 (生徒間, 対教職員)
い じ め い じ めに よ る諸問題, ネ ッ ト 上の誹謗中傷④問題行動
自傷
自殺企図 その他家出, 行方不明, 被虐待等
凶悪犯罪
殺人, 強盗, 放火, 強姦
⑤犯罪
粗暴犯罪
暴行, 傷害, 脅迫, 恐喝, 凶器準備集合
①服務 その他窃盗, 器物損壊等
体罰 体罰等の暴力行為 交通問題 セ ク ハ ラ その他 飲酒運転等の交通問題 セ ク ハラ , わいせつ等の性犯罪 その他の非違行為 総経験件数
0 5 13
6
1
3 3102
1 4 0 13
8 8 7 71
42374
1 81
7
3
206
32
161
362
124
4 3 4 9 2 0 一 18 5 5②管理
公金管理
情報管理
健康管理
不適正支出, 不正受給, 部費の不適切執行等個人情報の不適切な取扱 (紛失・ 流出・ 漏洩)
バー ン ア ウ ト , 精神疾患に よ る休退職 警報対応 警報等の不適切 な判断に よ る被害発生 ①災害対応避難所運営
火事, 地震等によ る学校の避難所運営
学校全体 に関わ る 危機脅迫
脅迫電話等
②業務妨害 不当要求 不当要求, 過剰 ク レー ム等に よ る居座 り③対外
保護者 ト ラ ブル 訴訟等の重大 ト ラ ブル
ト ラ ブル 地域 ト ラ ブル 訴訟等の重大 ト ラ ブル ④メ デ ィ ア 上記に関す る T V の記者会見, 取材等5
59
一
28
91
一
31
3
56
信」 と 「研修の必要性」 につい て, 「 1 . ま っ た く ない」 から 「 5 . 大いにあ る」 までの 5 件法での回答 を求めた。 3 分析の方法 表 1 に示 し たと おり , 単数校種勤務者の勤務年数と 複 数校種勤務者の各校種におけ る実際の勤務年数を合算 し, 校種別の総勤務年数 を算出 し た。 ま た, 表 2 に示 し た と おり , 複数校種勤務者の実際の勤務年数に基づ く 校種別 の危機経験件数を按分 し , 単数校種勤務者の危機経験件 数と合算 し , 校種別の総経験件数を算出 し た。 次に, 総経験件数と 総勤務年数に基づい て, 1 年間当 たり の危機経験の確率 (以下, 危機経験率) を校種別に 算出 し て比較を行 っ た。 危機経験率の算出方法は, 総経 験件数÷総勤務年数 x 100と し た。 調査項目別の危機経 験率 を校種別に集計 し た結果を表3 1 から表3 3 に示 し た。 なお, 特別支援学校につい ては, 他校種に比較 し てデー タ数が極端に少 ないため, 分析の対象から 除外 し , 参考 表示 に と どめ る こ と と し た。 ま た, 「 表 4 危機管理に 対す る自信」 と 「表 5 研修の必要性」 につい ては, 単 数校種勤務者のみの集計 と し た。習活動 に直接及ぶと い う 点 におい て, 優先度の高い危機 管理の対象 と 考え ら れる。 ま た, 「体罰」 につい ては, 文部科学省 によ る実態調査 におい て も , 今 なお発生率が 高い と い う 同様の傾向が確認で き る'2)。 こ れら の教職員 の非違行為 は個人や学校の レベルに と どま ら ず, 公教育 全体の信用失墜にも関わる可能性 も指摘で き る。 信用の 回復は容易 なこ と ではな く , 教育活動の再開や再発防止 に も多 大 なエ ネ ルギーが費 や さ れ る と い う 点 に おい て , 損害規模が大 き い と 認識で き る。 し たが っ て, 管理職と し ての指導能力 を高める研修 を重点的に実施す る必要が あ る と 考え ら れる。 (3) 学校全体に関わる危機 表3
-
3に示す と お り , 「②業務妨害」 の危機経験率に つい ては, 過剰 ク レ ームな どによ る居座り を含 む 「不当 要求1.6%」 が相対的に高い結果と な っ た。 「不当要求」 は, 教職員が単独で対応す る こ と が難 し い危機であ る と いえ る。 例え ば, 保護者から のク レ ーム に適切に対応 で き ない こ と が原因 と な っ て, 教職員 の校 務に も 支障が出た り , 場合によ っ ては休退職に追い込ま れたり す る事態が発生す るこ と で, 学校全体に影響 を及 ぼす こ と に も な り かねない。 し たが っ て, 学校 と し て組 織的 に対応す る こ と が肝要で あ り , 責任者で あ る管理職 によ る的確 な指示が求め ら れる。 管理職が即時に対応 で き ない場合 には, 全教職員 の足並 みを揃え た対応 を可能 にす る危機管理マ ニ ュ アルの整備が不可欠で あ る。 「 C 学校全体 に関わる危機」 におい ては, 危機経験 率自体は高 く ない も のの, 実際の対応には専門知識 も欠 かせ ない と い う 点 か ら , 特に管理職に必要な能力 と し て 定期的 に研修 を積 んでお く 必要があ る と 考え ら れる。III 結果と 考察
1 危機の経験に関す る状況 (1) 児童 ・ 生徒に関わる危機 表3-
1 に示す と お り , 「①学校事故」 の危機経験率に ついては, 授業中 (運動, 実習) や校外活動中の事故を 含む 「学習活動5.8%」 と 「部活動5.5%」 が相対的に高 い 結果 と な っ た。 「 ②安全」 につ い ては , 登下校中 の 「交通5.3%」 が相対的 に高い結果 と な っ た。 「③健康」 につい ては, 新型イ ン フ ルエ ンザや胃腸炎 な どの 「感染 症3.1%」 が相対的に高い結果と な っ た。 「④問題行動」 につい ては, 校内暴力 (生徒間, 対教職員) な どの 「暴 力行為6.6%」 , い じ めによ る諸問題やネ ッ ト 上の誹諾中 傷 を含 む 「 い じ め5.5%」 が相対的に高い結果と な っ た。 「⑤犯罪」 に つい ては, 窃盗, 器物損壊な ど を含 む 「 そ の他6.4%」 が相対的に高い結果と な っ た。 以上の結果か ら , 「 A 児童 ・ 生徒に関わる危機」 につ いては, 特に 「④問題行動」 の 「暴力行為」 や 「⑤犯罪」 の 「 その他」 に関す る危機経験率が相対的 に高い点 を踏 まえ, 生徒指導の充実 ・ 強化に向け た組織体制づ く り に 関す る管理職研修の充実が求め ら れる と いえ よ う 。 (2) 教職員に関わる危機 表3-
2に示す と お り , 「①服務」 に関す る事案の危機 経験率 につい ては, 全体的 に低い傾向 と な っ た も のの, その中では教職員 によ る 「体罰2.2%」 が相対的に高い 結果 と な っ た。 「 ②管 理」 に つい ては, バ ー ン ア ウ ト や 精神 疾患 に よ る休退 職 な ど を含 む教 職員 の 「 健康管 理 4.5%」 が相対的に高い結果 と な っ た。 以上の結果か ら , 「 B 教職員 に関わる危機」 に つい て は, 心身の 「健康管理」 に関す る影響が児童 ・ 生徒の学 表3-
1 A 児童 ・ 生徒 に関わる危機経験率 ⑤犯罪 ④問題行動 ①学校事故 ②安全 ③健康 校種 習 別 部活動 その他 交通 不審者 感染症 給食 薬物 .暴力 い じ め 自傷 その他 凶警 粗 その他 活動 活動 了為 犯非 犯非 2. 7% 10. 4% 4. 2% 5. 9% % % % % 3 3 4 5 0 5 2' 1 % % % % 3 6 0 5 0 0 1 1 % % % % 2 3 3 5 2 5 2 3 % % % % 3 1 3 4 0 2 2' 1 % % % % 1 9 9 1 4 6 5' 2 2. 0% 11. 7% 3. 7% 5. 5% % % % % 1 3 7 2 0 1 0 1 % % % % 3 2 3 2 1 1 2 1 % % % % 4 5 3 4 3 2 3 8 % % % % 3 3 0 0 0 0 0 0 3. 2% 5. 4% 12. 4% 1. 9% % % % % 6 5 7 9 2' 1 0 0 0. 6% 8. 2% 12. 2% 1. 7% % % % % 9 2 6 7 0 1 1 1 % % % % 9 2 5 8 4 6 7 5 小学校 中学校 高校 特別支援 全体 5. 8% 1. 1% 5. 5% 1. 8% 5. 3% 0. 2% 3. 1% 1. 4% 0. 7% 6. 6% 5. 5% 1. 4% 3. 6% 0. 6% 2. 8% 6. 4% 表3-
2 B 教職員に関わる危機経験率 表3-
3 C 学校全体に関わる危機経験率 ④ テ' イア ①災害対応 ②業務妨害 ③対外 ②管理 ①服務 校種 体罰 交通 セクハラ その他 公金 情報 健康 校種 長装
所 脅迫 不当 保護者 地或 問題 管理 管理 管理 対応 連 呂 要求 トフフ ル トフフ ル % % % % 6 5 4 3 0 1 0 1 % % % % 0 1 0 0 0 0 0 0 % % % % 4 6 5 1 0 0 0 1 % % % % 1 9 1 4 1 1 2 2 % % % % 2 7 5 8 0 0 0 0 % % % % 3 0 5 0 1 1 0 1 % % % % 1 0 1 1 0 0 0 0 小学校 中学校 高校 特別支援 3. 4% 4. 1% 7. 3% 11. 2% % % % % 6 3 0 4 0 1 1 0 % % % % 2 3 6 2 0 0 0 0 % % % % 2 4 8 5 0 0 0 0 % % % % 3 8 2 0 0 0 2 3 % % % % 5 0 8 2 0 1 0 0 % % % % 8 2 9 5 0 3 2' 1' 小学校 中学校 高校 特別支援 全体 2. 2% 0. 8% 0. 9% 0. 3% 0. 3% 1. 0% 4. 5% 全体 0. 1% 1. 0% 0. 5% 1. 6% 0. 5% 0. 1% 1. 0%2 校種別の状況 (1) 小学校 小学校では, 「 A 児童 ・ 生徒に関わる危機」 におけ る 「①学校事故」 の 「学習活動4.9%」, 「②安全」 の 「交通 3.2%」 , 「③健康」 の 「感染症3.4%」 , 「④問題行動」 の 「 い じ め4.1 %」 の危機経験率が相対的に高い結果と な っ た。 「 B 教職員 に関わる危機」 におい ては, 「②管理」 の 「健康管理3.4%」 が相対的に高 く , 「 C 学校全体に関 わる危 機」 におい ては, 「①災害対応」 の 「避難所運営 1.3%」 が相対的に高い結果 と な っ た。 し たが っ て, 小学校におい ては, 「 A 児童 ・ 生徒 に関 わる危機」 におけ る 「①学校事故」 の 「学習活動」 や 「④問題行動」 の 「 い じ め」 な どの学校内 で発生が想定 さ れる危機, つま り , 日常の学校生活におけ る危機管理 に加え, 地域の拠点 と し ての 「①災害対応」 の 「避難所 運営」 に関す る危機経験率が他校種よ り も相対的 に高い 点 を視野に入 れた取組 も重要であ る と 考え ら れる'3)。 (2) 中学校 中学校 では, 「 A 児童 ・ 生徒に関わる危機」 におけ る 「①学校事故」 の 「部活動8.2%」, 「②安全」 の 「交通5.4 %」, 「④問題行動」 の 「暴力行為11.7%」 と 「い じめ6.9 %」, 「⑤犯罪」 の 「粗暴犯罪5.3%」 と 「その他10.4%」 の危機経験率が相対的に高い結果と な っ た。 「 B 教職員 に関わる危機」 におい ては, 「①服務」 の 「体罰3.2%」 , 「②管理」 の 「情報管理1.3%」 が相対的に高 く , 「 C 学 校全体 に関 わ る危 機」 に お い て は, 「 ②業務妨害」 の 「不当要求1.9%」 と 「④メ ディ ア1.5%」 が相対的に高い 結果 と な っ た。 し たが っ て, 中学校におい ては, 「 A 児童 ・ 生徒に関 わる危機」 におけ る 「④問題行動」 の 「暴力行為」 , 「い じ め」 をは じ め と す る学校内外 におけ る生徒指導 に関連 し た危機管理の優先度が高い と 考え ら れる。 独立行政法 人日本 ス ポー ツ振興 セ ン タ ー (2016) は, 中学校におけ る事故防止の留意点の中で, 事故原因 と し て数多 く 見 ら れる悪ふ ざけ やけ んかに対 す る生徒指導が不可欠 であ る こ と を指摘 し てい る'4)。 ま た, 危機経験率が相対的に高 い 「①学校事故」 の 「学習活動」 や 「部活動」, 「⑤犯罪」 の 「粗暴犯罪」 な どは, 生徒指導上の問題 と の関連が濃 密 であ る と いえ る。 そのため, 生徒指導に関連す る危機 管理につい ては, 学校内の指導体制のみな ら ず, 外部専 門機関 と の連携に関す る具体的 な方策に重点 を置い た管 理職研修の実施が求め ら れる。 (3) 高校 高校 で は , 「 A 児 童 ・ 生徒 に関わ る危 機」 に おけ る 「①学校事故」 の 「学習活動7.5%」 , 「部活動12.2%」 , 「②安全」 の 「交通12.4%」 の危機経験率が高い結果と な っ た。 「 B 教職員 に関わ る危 機」 に お い ては, 「①服 務」 の 「体罰2.9%」 と 「②管理」 の 「健康管理7.3%」 が相対的 に高 く , 「 C 学校全体に関わる危機」 におい て は, 「②業務妨害」 の 「不当要求2.1%」 が相対的に高い 結果 と な っ た。 し たが っ て, 高校におい ては, 「①学校事故」 の 「部 活動」 と 「②安全」 の 「交通」 と い っ た事故に関す る危 機管理の優先度が高い と 考え ら れる。 と り わけ, 運動系 部活動におけ る指導の一環と し て, 事故発生時の対処要 領につい て生徒 を交え て確認す る な ど, 管理職と し て校 内研修計画の策定の主導が求めら れる。 ま た, 独立行政 法人日本ス ポーツ振興セ ン タ ー (2016) は, 高校生の運 転す る自転車と 車と の衝突事故が目立つこ と を指摘 し て い る'5)。 通学時の安全 におい ては, 地域や保護者の協力 を得 る こ と も 必要で あ り '6), 連携 ・ 協力体制づ く り を含 む管理職研修 を実施す る こ と が求め ら れる。 3 「 危機管理に対 する自信」 と 「研修の必要性」 (1) 全体的な傾向 表 4 に示す と おり , 「危機管理に対す る自信」 につい て, 「 A 児童 ・ 生徒に関わる危機」 におけ る 「①学校事 故3.34」 , 「④問題行動3.33」 が相対的に高い結果な っ た。 逆 に, 「 C 学校全体に関わる危機」 におけ る 「③対外 2.56」 , 「④ メ ディ ア2.50」 は相対的に低い結果と な っ た。 他方, 表 5 に示す と お り , 「研修の必要性」 については, 「 A 児童 ・ 生徒 に関わる危機」 におけ る 「④問題行動 4.66」, 「 B 教職員に関わる危機」 におけ る 「①服務4.49」, 「 C 学校全体に関わる危機」 におけ る 「①災害対応4.38」 が相対的 に高い結果 と な っ た。 「 A 児童 ・ 生徒に関わる危機」 におけ る 「④問題行 動」 や 「①学校事故」 な どについ ては, 「危機管理に対 す る自信」 と 「研修の必要性」 の両方が共通 し て相対的 に高い結果 と な っ た。 その理由 と し ては, 教職経験 を通 じ て比較的多 く 経験 し てき たため, 発生時の対応に自信 があ る と 回答 し てい る一方 で, 適切に対応で き ない事例 を も 経験す る こ と に よ っ て, 研修の必要性 を強 く 認識 し て い る と 考 え ら れ る。 し たが っ て , 「 ④問題行動」 や 「①学校事故」 な どの個別 ・ 具体的な事例 を多 く 盛り 込 んだ組織対応の在 り 方に関す る管理職研修の実施が重要 で あ る と い え る。 「 B 教職員 に関わる危機」 におい ては, 「危機管理に 対す る自信」 は高 く ないのに対 し , 「研修の必要性」 は 比較的高い結果 と な っ た。 いず れの項目 も危機経験率は 高 く ない も のの, 発生時の影響の大 き さ と と も に, 管理 職と し て取 り 組むべき役割の重要性 を意識 し た回答傾向 で あ る と 認識で き る。 「 C 学校全体 に関 わ る危 機」 にお い て は, い ず れの 項目 も共通 し て 「危機管理に対す る自信」 が低いのに対 し , 「研修の必要性」 が相対的 に高い結果 と な っ た。 危 機経験の乏 し さ と 損害規模の大 き さ や危機 レ ベルの高 さ
表 4 危機管理に対 する自信 (複数校種勤務者を除 く ) A 児童 ・ 生徒に関わる危機 B 教職員に関わる危機 C 学校全体に関わる危機 校種 校 故 ① 学 事 ② ③ 安全 健康 題 動 ④ 問 行 ⑤ ① ② 犯罪 服務 管理 務 害 ② 業 妨 i 害 応 ① 災 対 ③ ④ 対外 テ' イア 小学校 中学校 高校 特別支援 3. 30 3. 39 3. 28 3. 00 3. 10 3. 24 2. 96 3. 00 3. 11 3. 09 2. 68 4. 50 3. 25 3. 43 3. 12 3. 50 2. 66 2. 92 2. 68 2. 50 3. 09 3. 20 2. 80 4. 00 3. 07 3. 10 2. 58 3. 50 2. 93 3. 10 2. 21 3. 00 2. 85 2. 96 2. 63 2. 50 2. 47 2. 73 2. 08 2. 50 2. 42 2. 64 2. 08 3. 00 全体 3. 34 ※ 5 件法によ る平均値 3. 17 3. 07 3. 33 2. 80 3. 12 3. 01 2. 94 2. 87 2. 56 2. 50 表 5 研修の必要性 (複数校種勤務者 を除 く ) A 児童 ・ 生徒に関わる危機 B 教職員に関わる危機 C 学校全体に関わる危機 校種 校 故 ① 学 事 ② ③ 安全 健康 題 動 ④ 問 行 ⑤ ① ② 犯罪 服務 管理 務 害 ② 業 妨 l 害 応 ① 災 対 ③ ④ 対外 テ、 ィア 小学校 中学校 高校 特別支援 4. 53 4. 42 4. 52 4. 67 4. 47 4. 38 4. 40 5. 00 4. 52 4. 45 4. 44 4. 00 4. 59 4. 70 4. 69 5. 00 4. 26 4. 03 4. 32 4. 00 4. 49 4. 50 4. 44 4. 67 4. 46 4. 36 4. 31 4. 00 4. 41 4. 32 4. 54 4. 33 4. 35 4. 20 4. 38 3. 67 4. 42 4. 36 4. 32 4. 00 4. 41 4. 42 4. 32 3. 67 全体 4. 48 4. 41 4. 47 4. 66 4. 18 4. 49 4. 37 4. 38 4. 28 4. 35 4. 34 ※ 5 件法に よ る平均値 に対 す る意識が, 「研修の必要性」 と し て反映 さ れた結 果であ る と 考え ら れる。 以上の結果 を踏ま え る と , 「 A 児童 ・ 生徒に関わる危 機」 の 「④問題行動」 については, 危機経験率 と研修ニー ズの双方が高い と い う 点 におい て, 優先的に研修 を実施 し てい く 必要があ る と 考え ら れる。 他方, 「 B 教職員 に 関わる危機」 の 「 ①服務」 及 び 「 C 学校全体に関わる 危機」 の 「①災害対応」 につい ては, 「危機管理に対す る自信」 が低いのに対 し , 「研修の必要性」 が相対的に 高い結果 と な っ た。 当該項目の経験が少 ない こ と によ る 自信の乏 し さ に加え , その対応の成否の影響は広範に及 ぶこ と から も , 当該研修の重要性は高い と 考え ら れ, 優 先的 に実施す る こ と が望ま れる。 (2) 校種別の特徴 以下に校種別の分析 を試みるが, 既述のと お り , 特別 支援学校につい ては単数校種勤務者が 3 人 と 極端に少な い ため, 参考表示 に と どめ る こ と と す る。 小学校におい ては, 「危機管理に対す る自信」 は全校 種の平均値 よ り も 低 く , 「研修の必要性」 は比較的高い 結果 と な っ た。 と り わけ, 「 A 児童 ・ 生徒に関わる危機」 に おい て, 全般的 に高い研修ニ ーズ を有 し てい る実態が 明 ら かに な っ た。 中学校におい ては, 「危機管理に対 す る自信」 が相対 的 に高い傾向 と な り , 「研修の必要性」 は相対的に低い 結果 と な っ た。 た だ し , 「 A 児童 ・ 生徒に関わる危機」 におけ る 「④問題行動4.70」 の研修ニ ーズは高 く , 中学 校での当該項目の重要性に関す る認識が示 さ れる結果と な っ た。 高校におい ては, 「危機管理に対す る自信」 が校種別 で最 も 低い結果 と な っ た。 他の校種 よ り も比較的大規模 で所属す る生徒や教職員 も多 い と い っ た事情が反映 し た 結果であ る と いえ よ う 。 他方 , 「研修の必要性」 は相対 的 に高 く , と り わけ 「 C 学校全体に関わる危機」 の 「①災害対応4.54」 の研修ニ ーズが相対的に高い結果と な っ た。 さ ら に, 「③対外」 「④ メ デ ィ ア」 につい て も , 「研修に対す る自信」 が極端に低い傾向が示 さ れた。 以上の結果 を踏まえ る と , 校種によ っ て対応に自信の ない項目, そ し て研修ニーズの高い項目 を総合的に勘案 し つつ, 当該校種におけ る優先度の高い危機に関す る管 理職研修の検討が求めら れる。 4 管理職の危機管理能力の向上 を図 る研修への示唆 近年, 学校で発生す る事件 ・ 事故の深刻化が進むにつ れて , 危機管理の重 要性が叫 ば れる よ う に な っ て い る。 2018年 3 月には, 新たに 「現代的な諸課題」 を も取り 上 げ た上で 『学校の危機管理マ ニ ュ アル作成の手引』'7) が 大幅に改訂 さ れた。 学校におけ る危機管理の目的は, 児童 ・ 生徒だけ で な く 教職員 も含む生命や心身の安全 を守 る こ と , 児童 ・ 生 徒や保護者に加え 地域社会 と の信頼関係 を保つこ と , 児 童 ・ 生徒の心理的不安 を防 ぎ, 学校を安定 し た状態にす る こ と で あ る。
と り わけ管理職は, 学校の責任者と し て, 多種多様 な 教育課題に的確に対応 し てい く こ と が求めら れてい るが, 当然のこ と と し て, 管理職自身が経験 し たこ と のない危 機への対応 も含 ま れてい る。 し たが っ て, 研修 を通 じ て 管理職の危機管理能力 の向上 を企図す る こ と が必要であ る。 し か し ながら , 学校で発生す る危機は広範多岐にわ た っ てお り , 研修によ っ て万遍な く 危機管理能力の向上 を図 る こ と は容易 ではない。 ま た, 実際の研修は, 時間 ・ 予算 をは じ め様々な制約 を受け ながら実施 さ れており , その中で効果的 ・ 効率的 に危機管理能力 を向上 さ せ る こ と が求め ら れる。 そのた めには, 関係者の研修ニ ーズ を踏まえ つつ, 本研究で明 ら かと な っ た危機経験率 と 損害規模 を考慮 し た リ ス ク の 調査 ・ 分析 を行い, その結果に基づい て優先度 を明確に す る こ と によ り , 校種の特性に応 じ た実効性の高い管理 職研修の実施が求め ら れる。