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全国の看護系大学,短期大学,専門学校に所属する新人看護学教員が役割遂行上直面する問題の解明

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Academic year: 2021

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15 13 巻:15∼30,2018  原  著 連絡先:〒371─0052 群馬県前橋市上沖町 323─1 群馬県立県民健康科学大学 髙橋美穂子

全国の看護系大学,短期大学,専門学校に所属する

新人看護学教員が役割遂行上直面する問題の解明

髙橋美穂子,山 下 暢 子,松 田 安 弘 群馬県立県民健康科学大学 目的:新人看護学教員が役割遂行上直面する問題を明らかにし,その特徴を考察する. 方法:全国の看護系大学,短期大学,専門学校に所属する2年目,3年目の教員543名を対象に,郵送法 により質問紙を配布し,330名(回収率60.8%)から回答を得た.このうち,自由回答式質問に回答して いた231名の記述を,Berelson.B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析を用いて分析した. 結果:【教育・看護実践経験の乏しさによる学生への指導難航】【教育と研究の両立困難】など42カテゴ リが形成された. 結論:新人看護学教員が役割遂行上直面する問題を表す42種類が明らかになった.また,これらの問題は, 《教育・看護実践・研究経験の乏しさ》など8つの原因により生じるという特徴を示した.本研究の成果は, 新人看護学教員が自身の直面している問題を客観的に理解し,問題解決の方向性を自ら見出すための資料 となる.    キーワード:新人看護学教員,役割遂行,直面する問題 Ⅰ.緒  言  新人看護学教員は,学生の教育目標達成に向け て支援をしている一方で,学生の質問に対して分 かりやすい言葉で回答することが難しい1),学生 のレベルに合わせた実習指導ができない2)など, 教育役割に伴う困難を抱えている.また,実習指 導者との調整ができず学生を混乱させる3),研究 時間を確保できず予定通りに進行することができ ない4),組織を管理的な視点で考えたことがない5), などの悩みや困難も感じている.これらは,教育 の場へと職場を移した新人看護学教員が,教育役 割のみでなく多種多様な役割を求められ,その遂 行上,様々な問題に直面している現状を示す.  このような新人看護学教員が,効果的な役割遂 行に向けて,問題解決の方向性を見出すには,ま ず,自身がどのような問題に直面しているのかを 客観的に理解する必要がある.また,問題を客観 的に理解するためには,教育の場へと職場を移し た,全国の看護系大学,短期大学,専門学校に所 属する新人看護学教員が役割遂行上直面する問題 を網羅した研究成果が有用である.問題を網羅で きた時,それは,すべての新人看護学教員の問題 理解に活用できる.  現在,新人看護学教員が感じる困難や悩み,困っ ていることなどを明らかにした研究は複数存在す る6─9).これは,新人看護学教員が何らかの問題 に直面し,それにより困難や悩み,困っているこ

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とを感じてしまう現状があることを示す.  また,経験年数を問わず看護学教員が直面する 問題を包括的に明らかにした研究10)も存在する. この研究が明らかにした問題のいくつかは,新人 看護学教員にも共通する可能性が高い.しかし, この成果のみでは,新人看護学教員が役割遂行上 直面する問題を詳細に理解するには限界がある.  以上に基づく本研究は,臨床から教育の場へと 職場を移した,全国の看護系大学,短期大学,専 門学校に所属する新人看護学教員が役割遂行上直 面する問題の解明を目ざす.この研究成果は,新 人看護学教員が自身の役割遂行上直面する問題を 客観的に理解することに役立つ.また,効果的な 役割遂行に向けて,問題解決の方向性を自ら見出 すために活用できる知識となる. Ⅱ.研究目的  新人看護学教員が役割遂行上直面する問題を明 らかにし,その特徴を考察する. Ⅲ.用語の定義

1.新人看護学教員(novice nursing faculty member)  新人看護学教員とは,看護師免許を取得し,看 護基礎教育機関に所属して看護学に関わる学科目 の教授活動を展開する者であり,教員となって1 年未満の教員である11). 2.役割遂行(role performance)  役割遂行とは,ある状況の中で役割を担ってい る人がとる実際の行動をいう12).役割とは,集団 や社会のある地位に付随し,その集団や社会に よって期待され,行為者によって取得される行動 様式のことである13). 3.問題(problem)  問題とは,ある目標に到達しようとしている, あるいは現在の状況を変更して,現在とは異なる 状況にしようとしているものの,その試みがうま くいかないという事態14,15)である. Ⅳ.研究方法 1.研究対象者  全国の看護系大学,短期大学,専門学校に所属 する経験1年以上3年未満の看護学教員を研究対 象とした.「経験1年未満の教員」は,問題直面 の渦中にあり,自身の問題を十分に言語化できな い可能性が高い.これは,対象者を「経験1年以 上を有する教員」とする必要を示す.しかし,過 去に遭遇した出来事,人々,物事などに関する記 憶は,1年間に5%ずつ忘れ去られる16).これは, 経験の累積に伴い,問題の想起が困難になってい く可能性を示す.そこで本研究は,対象者を経験 1年以上3年未満に限定した.それは,経験3年 未満に限定することで,「経験1年未満」に直面す る問題の90%程度の想起を可能にするためであ る.  また,本研究は,多様な背景から構成される新 人看護学教員を対象とするため,教育機関やその 種類,職位は限定しないこととした. 2.測定用具  測定用具は,以下の①②により構成される質問 紙を作成した.  ①新人看護学教員が役割遂行上直面する問題を 問う質問.  具体的には,まず,直面した問題の有無を問う 選択回答式質問に対し,「ある」「ない」の選択回 答を求めた.  次に,選択回答式質問に「ある」と回答した対

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象者に対し,その内容を問う自由回答式質問を用 いた.具体的には,「その時のあなたが直面した問 題は,どのような問題でしたか.できるだけ具体 的にお書き下さい.いくつお書きいただいても結 構です.」とした.  ②対象者の特性を問う質問.  測定用具の内容的妥当性は,専門家会議とパイ ロットスタディにより確保した. 3.データ収集  文献検討に基づき,研究結果の一般化が可能な 範囲のデータを得るため,全国の看護系大学,短 期大学,専門学校から層化無作為抽出法を用いて 610校を抽出した.抽出した学校の教育管理責任 者に往復はがきを用いて研究協力を依頼し,承諾 を得た234校の教育管理責任者宛に,質問紙等を 送付した.質問紙は,返信用封筒を用いた個別投 函により回収した.データ収集期間は,平成28 年5月22日から平成28年7月28日であった. 4.データ分析 1)「全国の看護系大学,短期大学,専門学校に 所属する新人看護学教員が役割遂行上直面する 問題に関する質問紙」への回答の分析  分析には,Berelson, B.の方法論を参考にした 看護教育学における内容分析17)を用い,次の通り 行った.まず,「研究のための問い」を「新人看護 学教員は,役割遂行上どのような問題に直面して いるのか」と設定した.また,「問いに対する回答 文」を「新人看護学教員は,役割遂行上( )と いう問題に直面している」とした.  次に,新人看護学教員の自由回答式質問に対す る記述全体を文脈単位とし,『新人看護学教員が役 割遂行上直面する問題』を表す1内容を1項目と して含む単語,フレーズ(句),文章を1記録単 位として分割した.次に,同一の表現の記録単位, 表現は異なるが意味内容が同一の記録単位を集 約・整理し,同一記録単位群とした.この際,研 究のための問いに対応していない,あるいは,表 現が抽象的かつ意味が不明瞭な記録単位は理由を 明記し,除外した.さらに,個々の同一記録単位 群を意味内容の類似性に基づき分類し,その類似 性を的確に表す表現をカテゴリネームとして置き 換えた.最後に,各カテゴリに包含された記録単 位の出現頻度を数量化し,カテゴリ毎に集計した. 2)対象者の特性を問う質問への回答の分析   対 象 者 の 特 性 を 分 析 す る た め に,Microsoft Excel 2013を用い,記述統計値を算出した. 5.カテゴリの信頼性の確認  Berelson, B.の方法論を参考にした看護教育学 における内容分析を用いた研究経験,教員経験を 持つ看護学研究者2名に,カテゴリへの分類の一 致率算出の協力を依頼した.Scott, W.A.の計算 式18)を用いて一致率を算出し,信頼性の確保の基 準を70%以上とした. 6.倫理的配慮  対象者の負担を最小限にするため,専門家会議 の実施により質問紙の内容的妥当性を検討した. また,対象者の情報を得る権利を保障するため, 研究の目的と意義,質問への対応方法,研究結果 の公表予定などを書面にて説明した.対象者の自 己決定の権利を保障するため,個別投函により質 問紙を回収した.また,質問紙の返送を以て研究 協力に同意が得られたものとすることを明記した. さらに,対象者に関する個人情報を守秘するため, 回答内容を分析する際は,統計処理およびデータ を記号化した.なお,本研究は,群馬県立県民健 康科学大学倫理委員会の承認を得て実施した. Ⅴ.研究結果  研究協力の承諾が得られた234校の教員543名

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に質問紙を配布し,330名より返送があった(回 収率60.8%).研究対象者の条件を満たし,新人 看護学教員が役割遂行上直面する問題を問う自由 回答式質問に回答した231名の回答を分析対象と した. 1.対象者の特性(表1)  本研究の対象の特性は,次の通りであった. 臨床経験年数は,1年以上から36年の範囲であり, 平均14年(SD=7.6)であった.また,所属し ていた教育機関の種類は,専門学校2年課程,専 門学校3年課程,短期大学3年課程,大学等であっ た.さらに,教員経験1年目の職位は,専任教員, 助手,助教,講師等であった. 2.新人看護学教員が役割遂行上直面する問題 (表2)  対象者231名の記述は,231文脈単位,624記 録単位に分割できた.624記録単位のうち,233 記録単位は,新人看護学教員自身以外の問題,抽 象的な記述,意味不明な記述であり,新人看護学 教員が役割遂行上直面する問題を記述していな かった.そのため,これら,233記録単位を除く 391記録単位を分析対象とした.  分析の結果,新人看護学教員が役割遂行上直面 する問題を表す42カテゴリが形成された.  以下,42カテゴリのうち,記録単位数の多い ものから順に結果を論述する.なお,【 】内はカ テゴリを表し,〔 〕内は各カテゴリを形成した記 録単位数とそれが記録単位総数に占める割合を示 す.また,「 」内は,記録単位を表す. 【1.授業設計と展開方法不明瞭】 〔49記録単位:12.5%〕  このカテゴリは,「授業計画案の立て方がわから ない」などの記述から形成された. 【2.学生の個別性把握とそれに応じた指導難航】 〔32記録単位:8.2%〕  このカテゴリは,「学生の個別性を考えて看護学 実習ができない」などの記述から形成された. 【3.業務内容不明瞭なままでの業務遂行】 〔28記録単位:7.2%〕  このカテゴリは,「毎日の勤務の中,自分が何を すべきか分からない」などの記述から形成された. 【4.他教員からの適切な支援獲得困難による円 滑な業務遂行不可】 〔19記録単:4.9%〕  このカテゴリは,「教員としての業務のあり方を 誰も教えてくれない」などの記述から形成された. 【5.業務量過剰による私的時間での余儀なき業 務遂行】 〔16記録単位:4.1%〕  このカテゴリは,「プライベートが仕事の時間に なる」などの記述から形成された. 【6.臨床看護師とは異なる教員としての業務へ の適応困難】 〔15記録単位:3.8%〕  このカテゴリは,「臨床と異なる教員としての業 務内容の把握が難しい」などの記述から形成され た.  表1 対象者の特性 n=231  対象者特性項目 項目の範囲・種類・度数・平均・標準偏差・百分率 臨床経験年数 1年以上36年未満 平均14年(SD=7.6) 看護教員養成研修受講有無 受講した受講していない 14780名 (名 ( 34.663.6% )% ) 記載なし 4名( 1.7% ) 所属する教育機関 専門学校2年課程 26名 ( 11.3% ) その他 3名( 1.3% ) 専門学校3年課程 112名 ( 48.5% ) 大学 80名( 34.6% ) 短期大学3年課程 8名 ( 3.5% ) 記載なし 2名( 0.9% ) 教員経験1年目の職位 専任教員 131名 ( 56.7% ) 講師 6名( 2.6% ) 助手 39名 ( 16.9% ) その他 6名( 2.6% ) 助教 49名 ( 21.2% )

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 表2 カテゴリと記録単位数 n=391  番号 カテゴリ名 記録単位数(%) 1 授業設計と展開方法不明瞭 49( 12.5%) 2 学生の個別性把握とそれに応じた指導難航 328.2%) 3 業務内容不明瞭なままでの業務遂行 28( 7.2%) 4 他教員からの適切な支援獲得困難による円滑な業務遂行不可 194.9%) 5 業務量過剰による私的時間での余儀なき業務遂行 16( 4.1%) 6 臨床看護師とは異なる教員としての業務への適応困難 153.8%) 7 教育に関する必要知識不足下での余儀なき授業実施 15( 3.8%) 8 実施した指導と評価の適切性への確信不可 15( 3.8%) 9 他教員との接触機会稀少による必要な教示獲得困難 14( 3.6%) 10 教授活動の改善に活用可能な他教員からの支援獲得困難 14( 3.6%) 11 学生との適切な距離感維持困難 133.3%) 12 上司からの理不尽な業務配分の受理 12( 3.1%) 13 実習目標達成に向けた看護スタッフとの連携困難 102.6%) 14 新人看護学教員のための組織的な支援獲得不可 10( 2.6%) 15 教育・看護実践経験の乏しさによる学生への指導難航 92.3%) 16 自身の専門分野とは異なる授業の実施難航 9( 2.3%) 17 教育と研究の両立困難 92.3%) 18 学校組織特有の慣習への円滑な適応困難 7( 1.8%) 19 学生に教えるべき水準不明瞭と自身の思考伝達困難 71.8%) 20 多様な業務担当による優先度と時間の調整方法不明瞭 7( 1.8%) 21 看護師国家試験対策の補講内容提供困難 7( 1.8%) 22 他者との教育観・看護観の不一致 7( 1.8%) 23 実習指導者とは異なる教員としての実習指導困難 6( 1.5%) 24 授業準備と自己学習に投入すべき時間の過剰 6( 1.5%) 25 学生が主体的に学習できるような指導困難 6( 1.5%) 26 教育機関での年間予定把握不可による計画的な業務遂行困難 61.5%) 27 グループワーク中の学生への効果的な助言不可 5( 1.3%) 28 看護学生として備えるべき態度の指導方法不明瞭 51.3%) 29 指導力不足による学生・院生への申し訳なさ 4( 1.0%) 30 教員としての自身の役割遂行状況の自己評価難航 41.0%) 31 上司・先輩との関係形成困難 3( 0.8%) 32 実習期間の多様な業務重複による心身の苦痛 30.8%) 33 上司への適切な報告困難 3( 0.8%) 34 学生の看護現象の理解に結びつくような説明困難 30.8%) 35 教育理念やカリキュラムをふまえた指導への確信不可 2( 0.5%) 36 臨床の工夫の説明欲求と学習内容強化義務との葛藤 2( 0.5%) 37 担当グループ学生への公平な実習指導不可 2( 0.5%) 38 実習中の不利益からの学生擁護不可 2( 0.5%) 39 成績不振学生の保護者への対応不明瞭 20.5%) 40 実習施設の既知のスタッフとの関係性変化による適切な距離感維持困難 1( 0.3%) 41 授業計画案作成への時間投入による他教員への余儀なき業務依託 10.3%) 42 研究業績不足による研究指導役割担当不可 1( 0.3%) 記録単位総数 391100.0%)

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【7.教育に関する必要知識不足下での余儀なき 授業実施】 〔15記録単位:3.8%〕  このカテゴリは,「教育というものがどういうも のか分からないまま,授業を行わなければならな い」などの記述から形成された. 【8.実施した指導と評価の適切性への確信不可】 〔15記録単位:3.8%〕  このカテゴリは,「他の教員がどのような視点で 成績を出しているのか分からないため,他の教員 が担当した学生と成績の差異が出るのではないか と迷う」などの記述から形成された. 【9.他教員との接触機会稀少による必要な教示 獲得困難】 〔14記録単位:3.6%〕  このカテゴリは,「分からないことについて聞き たいが,他の教員も忙しいためあまり聞けない」 などの記述から形成された. 【10.教授活動の改善に活用可能な他教員からの 支援獲得困難】 〔14記録単位:3.6%〕  このカテゴリは,「演習を自身が主で行うが,終 了後,学生にとってよかったか,不足のところは ないかなどアバイスは一切ない」などの記述から 形成された. 【11.学生との適切な距離感維持困難】 〔13記録単位:3.3%〕  このカテゴリは,「学生との距離感が難しい」な どの記述から形成された. 【12.上司からの理不尽な業務配分の受理】 〔12記録単位:3.1%〕  このカテゴリは,「一切説明がないまま業務を言 いつけられるため,分からないまま仕事を行う」 などの記述から形成された. 【13.実習目標達成に向けた看護スタッフとの連 携困難】 〔10記録単位:2.6%〕  このカテゴリは,「実習指導者と学習環境を整え るための調整で,教育指導など,どこまで依頼し てよいか判断に困る」などの記述から形成された. 【14.新人看護学教員のための組織的な支援獲得 不可】 〔10記録単位:2.6%〕  このカテゴリは,「新人教員の指導プログラムが ない」などの記述から形成されていた. 【15.教育・看護実践経験の乏しさによる学生へ の指導難航】 〔9記録単位:2.3%〕  このカテゴリは,「看護学実習を行う際,自分の 臨床看護師時代に経験できていない処置に対して 学生指導が効果的にできないため困る」などの記 述から形成された. 【16.自身の専門分野とは異なる授業の実施難航】 〔9記録単位:2.3%〕  このカテゴリは,「臨床経験のない領域のため, 自分が何を授業すればいいのか全くわからない」 などの記述から形成された. 【17.教育と研究の両立困難】  〔9記録単位:2.3%〕  このカテゴリは,「教育と研究との両立が困難」 などの記述から形成された. 【18.学校組織特有の慣習への円滑な適応困難】  〔7記録単位:1.8%〕  このカテゴリは,「学校組織特有の慣習に慣れる のに時間がかかる」などの記述から形成された. 【19.学生に教えるべき水準不明瞭と自身の思考 伝達困難】 〔7記録単位:1.8%〕  このカテゴリは,「学生への実習指導時,何をど こまで教えてよいのか,実習指導方法に悩む」な どの記述から形成された. 【20.多様な業務担当による優先度と時間の調整 方法不明瞭】 〔7記録単位:1.8%〕  このカテゴリは,「研究も含め時間の使い方が分 からない」などの記述から形成された. 【21.看護師国家試験対策の補講内容提供困難】 〔7記録単位:1.8%〕  このカテゴリは,「看護師国家試験対策として, 何を指導すべきかわからない」などの記述から形 成された. 【22.他者との教育観・看護観の不一致】

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〔7記録単位:1.8%〕  このカテゴリは,「教員毎に教育観が異なり戸惑 う」などの記述から形成された. 【23.実習指導者とは異なる教員としての実習指 導困難】 〔6記録単位:1.5%〕  このカテゴリは,「看護学実習での学生指導場面 で,実習指導者と教員との役割の区別(ちがい) がうまくつかめず,教員としての指導方法に困る」 などの記述から形成された. 【24.授業準備と自己学習に投入すべき時間の過 剰】 〔6記録単位:1.5%〕  このカテゴリは,「授業資料の作成に時間を要し, 自己学習が進められない」などの記述から形成さ れた. 【25.学生が主体的に学習できるような指導困難】 〔6記録単位:1.5%〕  このカテゴリは,「学生が,看護学実習などつま づいている時にそれが理解できるように答えを教 えるのではなく,学生が主体的に学習するよう関 わり方が難しい」などの記述から形成された. 【26.教育機関での年間予定把握不可による計画 的な業務遂行困難】 〔6記録単位:1.5%〕  このカテゴリは,「学校の流れ(1年間の予定や 行事)が把握できず,先を見据えた計画を立てる ことができない」などの記述から形成された. 【27.グループワーク中の学生への効果的な助言 不可】 〔5記録単位:1.3%〕  このカテゴリは,「学部生の演習時,効果的な助 言ができない」などの記述から形成された. 【28.看護学生として備えるべき態度の指導方法 不明瞭】 〔5記録単位:1.3%〕  このカテゴリは,「看護学生として備わっていて ほしい姿勢や態度についてどのように指導してよ いのかわからない」などの記述から形成された. 【29.指導力不足による学生・院生への申し訳な さ】 〔4記録単位:1.0%〕  このカテゴリは,「看護学実習時,他のグループ は慣れた教員が担当していて,私は新人のため, 教育力に差があり,学生に申し訳ない気持ちにな る」などの記述から形成された. 【30.教員としての自身の役割遂行状況の自己評 価難航】 〔4記録単位:1.0%〕  このカテゴリは,「授業終了後,自分自身で授業 を振り返り自己評価する時,どのような形で評価 するべきか分からない」などの記述から形成され た. 【31.上司・先輩との関係形成困難】 〔3記録単位:0.8%〕  このカテゴリは,「先輩教員との距離感がわから ない」などの記述から形成された. 【32.実習期間の多様な業務重複による心身の苦 痛】 〔3記録単位:0.8%〕  このカテゴリは,「授業と看護学実習が重なった 時,看護学実習に身が入らない」などの記述から 形成された. 【33.上司への適切な報告困難】 〔3記録単位:0.8%〕  このカテゴリは,「上司へどこからどこまで報告 しておかないといけないのか判断ができない」な どの記述から形成された. 【34.学生の看護現象の理解に結びつくような説 明困難】 〔3記録単位:0.8%〕  このカテゴリは,「看護学実習という授業をどの ように展開すればよいのか.現象を構造的に伝え る事の難しさ」などの記述から形成された. 【35.教育理念やカリキュラムをふまえた指導へ の確信不可】 〔2記録単位:0.5%〕  このカテゴリは,「学校の教育理念や方針と自分 の考え方が合っているか不安なまま行動する」な どの記述から形成された. 【36.臨床の工夫の説明欲求と学習内容強化義務 との葛藤】 〔2記録単位:0.5%〕  このカテゴリは,「臨床の工夫も指導するのか, 基礎教育での学習を強化するのか戸惑う」「特に

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看護学実習の時に,専門性をどれだけ詳細に伝え て良いのか分からない.(私自身は,伝えていき たいという気持ち)」という記述から形成された. 【37.担当グループ学生への公平な実習指導不可】 〔2記録単位:0.5%〕  このカテゴリは,「初めてひとりで看護学実習を 担当した時,支援が必要な学生ばかり気になり, 他の学生から,私たちの記録等の指導もして欲し いと言われる」などの記述から形成された. 【38.実習中の不利益からの学生擁護不可】  〔2記録単位:0.5%〕  このカテゴリは,「実習指導の時,実習指導者と うまく調整ができないため,学生の思いや悩みが 看護師に伝わらず学生が非難される」などの記述 から形成された. 【39.成績不振学生の保護者への対応不明瞭】  〔2記録単位:0.5%〕  このカテゴリは,「再実習学生の親への対応がわ からない」などの記述から形成された. 【40.実習施設の既知のスタッフとの関係性変化 による適切な距離感維持困難】 〔1記録単位:0.3%〕  このカテゴリは,「実習指導の際に,以前所属し ていた病院での看護学実習であるため,教員の立 場でスタッフと接する距離感がなかなかつかめな い」という記述から形成された. 【41.授業計画案作成への時間投入による他教員 への余儀なき業務依託】 〔1記録単位:0.3%〕  このカテゴリは,「授業の構成に悩み,多くの時 間がかかるため,他の業務は他の教員に任せ負担 をかける」という記述から形成された. 【42.研究業績不足による研究指導役割担当不可】 〔1記録単位:0.3%〕  このカテゴリは,「研究実績が足りないため,指 導に十分あたれない」という記述から形成された. 3. カテゴリの信頼性  カテゴリへの分類の一致率は,96.6%,87.2% であった. Ⅵ.考  察  本研究の結果は,新人看護学教員が役割遂行上 直面する問題を表す42カテゴリ,すなわち直面 する問題42種類を明らかにした.そこで,明ら かになった42種類の問題と文献を照合し,新人 看護学教員が役割遂行上直面する問題がどのよう な原因により生じるのかという特徴を考察する. 以下,問題を【 】,特徴を《 》により表す.  第1着目した問題は,【16.自身の専門分野とは 異なる授業の実施難航】である.教員の本務は, その教授活動によって学生の学習目標達成を支援 すること19)である.その過程は,教育目標達成を 目指し,目的的,計画的に展開される20).教員は, 授業を通して教育目標の達成に必要な内容(教育 内容)を伝えること21)を求められるため,教育内 容に精通していなければならない22)ことを示す. 【16.】は,新人看護学教員が,自身の専門とは異 なる授業の実施の実施に困難を来たすという問題 を表す.これは,【16.】が,教育内容に関する知 識の乏しさにより生じる問題であることを示す. 先行研究23)は,新人を含む看護専門学校教員の約 7割が,自身の専門分野とは異なる授業を担当し なければならないことを明らかにした.これは, 新人看護学教員が【16.】に直面していることを示 す.  一方,看護学教員は,教育内容に精通していて も,それを伝える方法を修得していなければ,必 要な内容を伝えられない.そのため,教員は,授 業成立に向けて,次の要件を求められる24).それは, 上記の「①教育内容への精通」とともに「②授業設 計に必要な基礎的知識の修得」「③授業展開に必 要な技術の修得」「④授業評価のための知識と技

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術の修得」「⑤学習理論,レディネスの把握,教 育評価に関する理解」である.  次に着目した問題は,【1.授業設計と展開方法 不明瞭】【35.教育理念やカリキュラムをふまえ た指導への確信不可】【28.看護学生として備え るべき態度の指導方法不明瞭】である.【1.】の「授 業設計の方法不明瞭」は,新人看護学教員が,授 業設計の方法が分からないという問題を表す.授 業設計とは,授業の実施に先立って行われる授業 についての準備活動25)である.また,【35.】は, 教育理念やカリキュラムに沿った指導に自信が持 てないという問題を表す.教育理念26)とは,その 教育機関の教授・学習の本質についての考え,カ リキュラム27)とは,学校の教育目的に即して望ま しい成長・発達(変化)を遂げるために必要な諸 経験を,彼らに提供する意図的,組織的な教育内 容の全体計画である.さらに,【28.】は,看護学 生として備えるべき態度の指導方法が分からない という問題を表す.教育目標分類学は,教育の目 標を情意領域,認知領域,精神運動領域28)に分類 され,このうちの情意領域は,態度の発達に関わ る教育目標を取り扱う領域29)である.これは,教 育目標分類学の知識が,授業設計の目標設定に必 要であることを示す.これらは,【1.】【35.】【28.】 が,上述の授業成立の5要件のうち,「②授業設計 に必要な基礎的知識の修得」の充足不十分により 生じるという特徴を持つことを示す.  次に着目した問題は,【1.授業設計と展開方法 不明瞭】【38.実習中の不利益からの学生擁護不 可】【34.学生の看護現象の理解に結びつくよう な説明不可】【37.担当グループ学生への公平な 指導不可】【27.グループワーク中の学生への効 果的な助言不可】である.【1.】の「授業展開の方 法不明瞭」は,新人看護学教員が,授業展開の方 法が分からないという問題を表す.また,【38.】 【34.】は看護学実習中の必要不可欠な教授活動を 展開できていないという問題を表す.先行研究30) は,教員の『予測される危険からの学生擁護』『抽 象化・具象化反復による看護現象の解説と原理へ の統合』という教授活動が,看護学実習中の目標 達成に必要不可欠であることを明らかにした.さ らに,【37.】は,新人看護学教員が,学生に公平 な指導ができないという問題を表す.「どの学生 にも平等に接する」という行動は,看護学生が実 習過程を評価する際の1基準31)である.加えて, 【27.】は,学生への効果的な助言ができないとい う問題を表す.グループワーク中の助言は,学生 の目標達成に必要かつ重要な教員の行動32)である. これらは,【1.】【38.】【34.】【37.】【27.】が,「③授 業展開に必要な技術の修得」の充足不十分により 生じる問題であることを示す.  次に着目した問題は,【8.実施した指導と評価 の適切性への確信不可】【25.学生が主体的に学 習できるような指導困難】【2.学生の個別性把握 とそれに応じた指導難航】である.【8.】は,新 人看護学教員が,自身の指導や評価に確信を持て ないという問題を表す,【25.】は,新人看護学教 員が,学生が主体的学習につながる指導に困難を 来たすという問題を表す.主体性33)とは,自ら進 んで責任を持ち行動し得る能力であり,学習意欲 と深く関係している.学習意欲34)とは,自発的, 能動的に学習しようとする意欲・意志であり,学 習に関する理論 的知識であ る.これ らは,【8.】 【25.】【2.】が,「⑤学習理論,レディネスの把握, 教育評価に関する理解」の充足不十分により生じ る問題であることを示す.   以 上 は,【16.】【1.】【35.】【28.】【38.】【34.】 【37.】【27.】【8.】【25.】【2.】という問題が,《授業 成立に向けて教員に求められる要件「①教育内容 への精通」「②授業設計に必要な基礎的知識の修 得」「③授業展開に必要な技術の修得」「④授業評 価のための知識と技術の修得」「⑤学習理論,レ ディネスの把握,教育評価に関する理解」の充足 不十分》により生じるという特徴を持つことを示

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す.  第2に着目した問題は,【6.臨床看護師とは異 なる教員としての業務への適応困難】【3.業務 内容不明瞭なままでの業務遂行】である.【6 .】は, 新人看護学教員が,教員として何をすればよいか を理解できず,業務への適応に困難を来たすとい う問題を表す.また,【3 .】は,新人看護学教員が, 仕事内容を理解できないまま,業務を遂行してい るという問題を示す.これらは,教育の場の「業務」 の理解不足により生じるという共通性を持つ.  次に着目した問題は,【23.実習指導者とは異な る教員としての実習指導困難】である.これは, 新人看護学教員が,教員としての実習指導の展開 に困難を来たすという問題を表す.看護学実習は, 看護目標達成に向かいつつ,学生の学習目標達成 を目指すという目標の二重構造を持つ授業35)であ る.そのため,新人看護学教員は,自己の役割が, 学生の実習目標達成支援へと移行していることに 気づきにくい36).これは,23.】が,「役割」の理解 不足により生じる問題であることを示す.  次に着目した問題は,【19.学生に教えるべき水 準不明瞭と自身の思考伝達困難】【36.臨床の工 夫の説明欲求と学習内容強化義務との葛藤】【30. 教員としての自身の役割遂行状況の自己評価難航】 である.教育目標は,何をどこまで学ぶのか,教 えるのかを決定し,設定される37).【19.】は,新 人看護学教員が,学生に何をどのように教えるの かその水準が分からないという問題を表し,【36.】 は,学習内容を強化する必要性を知りながらも, 臨床での工夫も説明したいという問題を表す.さ らに,【30.】は,教員としての役割を遂行出来て いるのか評価も難航するという問題を表す.これ らは,【19.】【36.】【30.】が,「目ざすべき目標」の 理解不足により生じる問題であることを示す.  次に着目した問題は,【26.教育機関での年間予 定把握不可による計画的な業務遂行困難】である. 先行研究38)は,新人看護学教員が,教員になった 当初は,業務内容や役割を理解できずに業務を滞 らせるものの,一年間の学事進行に伴い,教員の 業務とその遂行方法への理解を深めることを明ら かにした.これは,【26.】が,教員としての「年間 予定」の理解不足により生じている問題であるこ とを示す.  以上は,【6 .】【3 .】【23.】【19.】【36.】【30.】【26.】 という問題が,《教員としての「業務」「役割」「目 ざすべき教育目標」「年間予定」の理解不足》に より生じるという特徴を持つことを示す.  第3に着目した問題は,【11.学生との適切な距 離感維持困難】【39.成績不振学生の保護者への 対応不明瞭】【31.上司・先輩との関係形成困難】 である.【11.】は,新人看護学教員が,学生と適 切に関わることが難しいという問題を表す.また, 【39.】は,保護者への対応方法が分からないとい う問題を表す.新人看護学教員は,これまでとは 異なる対象者との相互行為を求められる.先行研 究39)は,新人看護学教員が,学生や保護者への対 応に困難を抱えていることを明らかにした.さら に,【31.】は,上司や先輩との相互行為の展開が 難しいという問題を表す.看護学教員の離職に関 する論文は,教員人数が,病院の時と違い非常に 少ない40)と悩んでいることを明らかにした.これ は,職場内に気軽に相互行為を展開できる対象者 の人数が少ない現状を示す.  これらは,【11.】【39.】【31.】が,新人看護学教 員が教育の場への移行に伴う相互行為の対象者の 変化により生じる問題であることを示す.  次に着目した問題は,【22.他者との教育観・看 護観の不一致】【13.実習目標達成に向けた看護 スタッフとの連携困難】【40.実習施設の既知の スタッフとの関係性変化による適切な距離感維持 困難】である.【22.】の,「観」とは,ものごとに 対する考え方41)であり,教育や看護に対する考え 方を示す.これは,考え方の異なる他者との相互 行為の展開に問題を感じていることを表す.これ

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は,【22.】が,臨床の場から教育の場への移行に 伴う相互行為の対象者の変化により生じる問題で あることを示す.また,【13.】は,新人看護学教 員が,実習施設の看護スタッフと実習目標達成に 向けて連携することが難しいという問題を表す. 連携42)とは,同じ目的で何事かをしようとするも のが,連絡をとり合ってそれを行うことである. しかし,新人看護学教員の役割が,学生の実習目 標達成支援へと移行しているため,看護スタッフ との連携に困難を感じていることを示す.さらに, 【40.】は,実習施設の知り合いの看護スタッフと の適切な関わりが難しいという問題を表す.これ らは,【13.】【40.】が,臨床の場から教育の場への 移行に伴う相互行為の目的変化により生じる問題 であることを示す.  以上は,【11.】【39.】【31.】【22.】【13.】【40.】と いう問題が,《臨床の場から教育の場への移行に伴 う相互行為の対象者・目的の変化》により生じる という特徴を持つことを示す.  第4に着目した問題は,【18.学校組織特有の慣 習への円滑な適応困難】である.慣習43)とは,あ る社会においてその成員が反復した結果,自然発 生的に規則性を持つにいたった社会的行動様式で ある.これは,単に職場を移すことではなく,臨 床の場とは異なる学校組織の慣習への移行を示す. これは,【18.】が,臨床の慣習から学校組織特有 の慣習への移行により生じる問題であることを示 す.  次に着目した問題は,【33.上司への適切な報告 困難】である.報告は,情報を共有していくため の基本的活動44)の1つであり,臨床看護師の看護 行為の大部分を占める45)ことを明らかにした.こ れは,臨床看護師が,役割遂行上,報告を日々行っ ていることを示す.しかし,先行研究46)は,新人 看護学教員が「臨床で出来ていたことも出来ない」 などの困難を感じることを明らかにした.これは, 臨床看護師が日々行ってきた報告であっても,学 校組織の慣習に基づいた時,出来なくなるという 状況を示す.これは,【33.】が,新人看護学教員が, 上司に報告すべき内容が分からず困難をきたすと いう問題を表す.  以上は,【18.】【33.】という問題が,《臨床の慣習 から学校組織特有の慣習への移行》により生じる という特徴を持つことを示す.  第5に着目した問題は,【21.看護師国家試験対 策の補講内容提供困難】である.国家試験の合格 率は,受験生が受験する学校を選択する重要事項47) となり得る.教員は,合格率を高めるため,看護 師国家試験の担当としてその対策を講じている48). 先述した通り,新人看護学教員は,【1.授業設計 と展開方法不明瞭】という問題に直面しており, さらに困難をきたしているという問題を表す.  以上は,【21.】という問題が,《看護師国家試験 担当という付加的役割の余儀なき遂行》により生 じるという特徴を持つことを示す.  第6に着目した問題は,【4.他教員からの適切 な支援獲得困難による円滑な業務遂行不可】【10. 教授活動の改善に活用可能な他教員からの支援獲 得困難】【9.他教員との接触機会稀少による必 要な教示獲得困難】【14.新人看護学教員のため の組織的な支援獲得不可】である.教示49)とは, 知識や方法を教え示す.これは,新人看護学教員 が,業務を遂行し,学生指導の方向性を決定する ための知識や方法に関し,先輩教員から教えを受 けることである.これらは,【4 .】【10.】【9 .】が, このような支援の獲得が難しいという問題を表す. また,【14.】は,新人看護学教員が,臨床のよう な組織の体制や新人プログラムの提供がなされな いという問題を表す.これは,【14.】が,新人看 護学教員が,組織からの支援がないことにより生 じる問題であることを示す.  以上は,【4 .】【10.】【9 .】【14.】という問題が, 《他教員や組織からの支援獲得困難》により生じ るという特徴を持つことを示す.

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 第7に着目した問題は,【15.教育・看護実践経 験の乏しさによる学生への指導難航】【42.研究 業績不足による研究指導役割担当不可】【29.指 導力不足による学生・院生への申し訳なさ】であ る.【15.】の「教育経験の乏しさ」は,授業方法 に関する知識50)不足につながりやすく,「看護実践 経験の乏しさ」は,授業内容に関する知識51)不足 につながりやすい.【15.】は,教育・看護実践経 験の不足により学生指導に難航するという問題を 表す.  また,【42.】は,研究経験が乏しく研究指導に 困難をきたすという問題を表す.大学院設置基準 52)は,修士課程を担当する教員の満たすべき1 件を「博士の学位を有し,研究上の業績を有する もの」としている.これは,研究指導役割を担う ためには,研究経験が不可欠であることを示す. これらは,【15.】【42.】が,教育・看護実践経験・ 研究経験の乏しさにより生じる問題であることを 示す.  さらに,【29.】は,教育経験の不足により生じ る問題を表す.先行研究53)は,新人看護学教員が, ベテラン教員と自身の指導の違いを自覚し,担当 学生に申し訳ないと感じることを明らかにした.   以 上 は,【15.】【42.】【29.】 と い う 問 題 が,《 教 育・看護実践・研究経験の乏しさ》により生じる という特徴を持つことを示す.  最後に着目した問題は,【24.授業準備と自己学 習に投入すべき時間の過剰】【7.教育に関する 必要知識不足下での余儀なき授業実施】【12.上 司からの理不尽な業務配分の受理】【20.多様な 業務担当による優先度と時間の調整不明瞭】であ る.先行研究54)は,新人看護学教員が,教育内容 の精選や授業方法の難しさを感じ,授業計画案作 成に多くの時間を費やすことを明らかにした. 【24.】は,授業準備や自己学習に多くの時間を要 するという問題を表す.また,【7 .】は,新人看 護学教員が,知識不足のまま授業を実施するとい う問題を表す.さらに,【12.】は,新人看護学教 員が自分の力量を超えた業務や具体的な説明がな いまま仕事を受理するという問題を表す.加えて, 【20.】は,新人看護学教員が,業務を調整できず, 時間を作れないという問題を表す.これらは, 【24.】【7 .】【12.】【20.】 が, 担 当 す る 業 務 の 時 間を調整し,時間を捻出する方法の修得不十分に より生じる問題であることを示す.  次に着目した問題は,【17.教育と研究の両立困 難】【5.業務量過剰による私的時間での余儀な き業務遂行】【32.実習期間の多様な業務重複に よる心身の苦痛】【41.授業計画案作成への時間 投入による他教員への余儀なき業務依託】である. 【17.】は,新人看護学教員が,研究の時間を取れ ず予定通りに進められない55)ため,【5 .】は,仕 事を持ち帰り,私的時間を投入することを示す. また,【32.】は,看護学実習期間中に多様な業務 が重なり精神的・肉体的に辛いことを示し,【41.】 は,やむを得ず他教員へ自身の業務を依託するこ とを示す.これらは,【17.】【5 .】【32.】【41.】が, 時間を捻出する方法の修得不十分に起因して生じ る影響という共通性をもつ.   以 上 は,【24.】【7 .】【12.】【20.】【17.】【5 .】 【32.】【41.】という問題が,《担当する業務の時間 を調整し,時間を捻出する方法の修得不十分》に より生じるという特徴を持つことを示す. Ⅶ.結  論 1.本研究の結果は,新人看護学教員が役割遂行 上直面する問題42カテゴリ,すなわち42種類 の問題を明らかにした.また,Scott,W.A.の式 によるカテゴリへの一致率は,96.6%,87.2% であり,カテゴリが信頼性を確保していること を示した. 2.全国の新人看護学教員が役割遂行上直面する 42種類の問題は,次の8つの原因により生じ

(13)

るという特徴を持つことを示した.それは,《Ⅰ. 授業成立に向けて教員に求められる要件「①教 育内容への精通」「②授業設計に必要な基礎的 知識の修得」「③授業展開に必要な技術の修得」 「④授業評価のための知識と技術の修得」「⑤学 習理論,レディネスの把握,教育評価に関する 理解」の充足不十分》《Ⅱ.教員としての「業務」 「役割」「目ざすべき教育目標」「年間予定」の 理解不足》《Ⅲ.臨床の場から教育の場への移 行に伴う相互行為の対象者・目的の変化》《Ⅳ. 臨床の慣習から学校組織特有の慣習への移行》 《Ⅴ.看護師国家試験担当という付加的役割の 余儀なき遂行》《Ⅵ.他教員や組織からの支援 獲得困難》《Ⅶ.教育・看護実践・研究経験の 乏しさ》《Ⅷ.担当する業務の時間を調整し, 時間を捻出する方法の修得不十分》により生じ るという特徴である. 3.本研究の成果は,全国の新人看護学教員自身 が自身の役割遂行上直面する問題を客観的に理 解することに役立つ.また,効果的な役割遂行 に向けて,問題解決の方向性を自ら見出すため に活用できる知識となる. 謝  辞  本研究の結果は,全国の看護基礎教育機関に所 属する教員の皆様からいただいた貴重なデータに 支えられている.本研究に関わった全ての皆様に 心より感謝申し上げる. 【引用文献】 1)橋本笑子,加藤かすみ,伴藤典子他(2011): 新人看護教員の講義,実習,生活指導で困って いることの実態,中国四国地区国立病院附属看 護学校紀要,7:105-112 2)伊藤良子,大町弥生(2009):看護系大学の 新人教員が看護学実習指導において感じた困難 の要因,看護教育,50:414-422 3)前掲書1),105-112 4)片岡三佳,西山ゆかり,千葉 進他(2009): 看護系大学に勤務する新人教員の教育・研究活 動に対する悩み,JNI:The Journal of Nursing Investigation,7:23-29 5)西田敦子,中江秀美,山下久美子他(2011): 新人看護教員が役割遂行をする上で感じる困難 性の分析,中国四国地区国立病院附属看護学校 紀要,7(12):113-124 6)前掲書2),414-422 7)前掲書5),113-124 8)前掲書1),105-112 9)前掲書4),23-29 10)村上みち子,野本百合子,舟島なをみ(2005): 看護学教員が職業上直面する問題の解明,日本 看護学教育学会第15回学術集会講演集:181 11)金谷悦子,鈴木美和,舟島なをみ(2005): 看護系大学・短期大学に所属する新人教員の職 業経験に関する研究―5年以上の看護実践経験 を持つ教員に焦点を当てて―,看護教育学研究, 14(1):23-36 12)森岡清美,塩原 勉,本間康平編(2006): 新社会学辞典「役割遂行」の項,1433-1434,有 閑社,東京 13)見田宗介,栗原 彬,田中義久編(2006): 社会学事典,「役割」の項,878,弘文堂,東京 14)梅津八三他監(2004):心理学事典,「問題解決」 の項,789-791,平凡社,東京 15)中島義明,子安増生,繁枡算男他編(1999): 心理学辞典,「問題解決」の項,847-848,有斐閣, 東京

16)Neisser,U. (1982): Memory Observed: Reme-bering in Nutural Contexts, W.H. Freeman and Company, 85,;冨田達彦訳(1991):観察され た記憶(上)―自然文脈での想起,103,誠信書

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房,東京 17)舟島なをみ(2010):看護教育学研究―発見・ 創造・証明の過程 第2版,227-248,医学書院, 東京 18)前掲書17),227-248 19)前掲書17),227-248 20)舟島なをみ監修(2013):看護学教育におけ る授業展開 質の高い講義・演習・実習の実現 に向けて,3,医学書院,東京 21)前掲書20),5 22)前掲書20),5 23)安藤真美,三浦弘恵(2014):看護専門学校 教員の講義準備に関する研究―臨床経験と専門 性の異なる領域の講義を担う教員を対象として, 福島県立医科大学看護学部紀要16:57-67 24)前掲書20),5 25)細谷敏夫,河野重男,奥田真丈他編(1990): 新教育学大事典4,「授業設計」の項,69,第一 法規出版,東京 26)Torres, G., Stanton, M.(1982);近藤潤子他訳 (1988):看護教育カリキュラム―その作成過程, 31,医学書院,東京 27)前掲書25),2,「カリキュラム」の項,40 28)Marilyn H.0ermann, Kathleen B.Gaberson,;

Evaluation and Testing in Nursing Education:舟 島なをみ監訳(2009):看護学教育における講 義・演習・実習の評価,14-23,医学書院,東 京 29)前掲書28),17-18 30)松田安弘,中山登志子,亀岡智美他(2005): 看護学実習の目標達成に必要不可欠な教授活動 の解明:質的研究3件のメタ統合を通して,看 護教育学研究,14(1):51-64, 31)中谷啓子,亀岡智美,鈴木美和他(1999):[看 護系大学自己点検・評価のための測定用具]看 護 系 大 学 授 業 過 程 評 価 ス ケ ー ル〈 実 習 用 〉, Quality nursing,5(5):45-52 32)舟島なをみ監修(2015):看護実践・教育の ための測定用具ファイル―開発過程から活用の 実際まで―第3版,222,医学書院,東京 33)前掲書25),3,「自主性・主体性」の項, 416-418 34)前掲書20),5 35)前掲書20),5 36)前掲書20),5 37)前掲書20),5 38)前掲書11),23-36 39)前掲書4),23-29 40)上山悦代(2010):看護教員が辞めたくなる とき その5つのケース,看護教育,51(11): 948-953 41)見坊豪紀,市川 孝,飛田良文他編(2001): 国語辞典 第五版,「観」の項,246,三省堂,東 京 42)西尾 実,岩淵悦太郎,水谷静夫編(2011): 国語辞典 第7版 新版,「連携」の項,1364,岩 波書店,東京 43)前掲書13),「慣習」の項,167-168 44) 小 山 眞 理 子 編(2012): 看 護 学 基 礎 テ キ ス ト 第4巻 看護の機能と方法,163,日本看護 協会出版会,東京 45)大場 薫,佐々木由紀,長能みゆき他(2016): タイムスタディによる看護業務量調査,東邦看 護学会誌,1315-22 46)前掲書5),113-124 47)石井秀宗,椎名久美子,柳井晴夫(2003): 看護大学生の学習活動と学習意欲等に関する研 究,Quality Nursing 9(11):48-61 48)尾田 恵(2014):合格へ導くために教員全 員で支援,看護教育,55(6):494-496 49)日本国語大辞典 第二版 編集委員会 小学館 国語辞典編集部編(2001):日本国語大辞典 第 二版 第四巻「教示」の項,438,小学館,東京 50)前掲書20),23

(15)

51)前掲書20),23 52)解説教育六法編集委員会(2016):解説教育 六法平成28年度版,大学院設置基準 第3章, 「教員組織」の項,第九条,300,三省堂,東京 53)前掲書5),113-124 54)前掲書5),113-124 55)前掲書4),23-29

(16)

Clarification of Problems Encountered by Role Performance

Novice Nursing Faculty Member Belonging to Nursing Colleges,

Junior Colleges and Vocational Schools in Japan

Mihoko Takahashi, Nobuko Yamashita, Yasuhiro Matsuda

Gunma Prefectural College of Health Sciences

Objectives: This research aimed to clarify the problems faced by novice nursing faculty member who transferred from

clinical to educational setting and to discuss their characteristics.

Methods: Questionnaires were distributed by post to 543 nursing faculty member in charge of classes at nursing

universities, junior colleges, and diploma programs across Japan. A total of 330 responses were received (response rate: 60.8%). The remaining 231, which contained responses to open-ended questions, were analyzed by using content analysis for nursing education based on Berelson's methodology.

Results: 42 categories were formed, including “education/nursing practical experience lacks guidance for students” and

“difficult to balance education and research.”

Conclusion: A total of 42 types of problems encountered by novice nursing faculty member in educational settings were

revealed. These problems were characterized by eight factors, including “lack of education/nursing practice/research experience”. The results of this research provide material for objectively understanding the problems faced by novice nursing faculty member, and can help them solve these problems on their own.

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