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(1)

住民参画 Web プラットフォームの地域社会における実応用

に向けた考察

A Consideration towards Practical Application of e-Participation

Web Platform in Regional Societies

大囿忠親

1∗

白松俊

1

新谷虎松

1

Tadachika Ozono

1

Shun Shiarmatsu

1

Toramatsu Shintani

1

1

名古屋工業大学 大学院工学研究科

1

Graduate School of Engineering, Nagoya Institute of Technology

Abstract: We developed O2, an e-participation web platform, that facilitates public involvement by utilizing background information behind regional social issues gathered from Web. The platform is developed on the basis of a Linked Open Dataset called SOCIA, which contains web news articles, tweets, and meeting minutes related to geographic regions. Since Japanese regional communities face complicated and ongoing social issues, there is an urgent need to develop technology for sharing background information and facilitating public debate. This paper presents a roadmap to practical application of our platform in regional communities and discusses remaining requirements.

1 はじめに

2013年現在,多くの地域社会が災害リスク,過疎高 齢化,インフラ老朽化などの複雑に絡み合った社会問題 に直面しており,公的な議論を通じた住民参画(Public Involvement)の重要性が増している.特に東日本大震 災からの地域社会再生のために,住民が積極的に参画 できる体制作りが重要視されている[1].しかし,地域 社会に貢献できる知見や気づきを持つ多くの住民は,当 該地域でどのような社会問題についてどのような背景 情報があるかを充分に把握してはいないため,議論に 参画する上での心理的障壁が存在する.

本 研 究 で は ,地 域 社 会 に 関 す る 背 景 情 報 を 共 有 し , 公的な議論の間口を広げることができる住民参画Web プラットフォームの開発を目指している.この目標は, 米オバマ政権のOGD (Open Government Directive) が掲げるオープンガバメント三原則,すなわち透明性 (Transparency), 参画(Participation), 協働 (Collabo- ration) [2] のうち,特に地域社会が抱える問題の透明 性を確保するシステム開発を目指していると言い換え ることもできる.我々は,そのようなe-Participation (電子参画)の基盤技術を確立することが,情報工学や 人工知能の研究コミュニティに課せられた社会的な急 務であると考えている.

近年普及してきたFacebook等のSNSは,私的なコ

連絡先:名古屋工業大学大学院工学研究科情報工学専攻

 〒466-8555名古屋市昭和区御器所町名古屋工業大学つくり領域 E-mail: ozono@nitech.ac.jp

ミュニケーションだけでなく公的な協力関係を築くた めにも使われ始めているが,元来,公的な議論を共有 するためのシステムではないため,本研究で目指すよ うな地域社会の背景情報共有機能は持たない.そのよ うな情報共有を実現するため,我々は,組織横断的な オープンイノベーションをもたらす技術として近年注 目されているLinked Open Data (LOD) やクラウド ソーシング (crowdsourcing) を用いたアプローチをと り,以下の3つの研究課題に取り組んできた. 課題 1 地域の問題に関する背景情報および意見の自動

構造化システムの開発

課題 2 意見入力を誘引する地域関連情報配信システム の開発

課題 3 議論を通じて問題を構造化する手動構造化シス テムの開発

これらのシステムを開発するため,地域関連情報配信 のためのLODデータセットSOCIA (Social Opinions and Concerns for Ideal Argumentation)を設計・構築 し,これを核として次ページ図1のような住民参画Web プラットフォームO2を開発・公開してきた

1

.図中(1) では,Web上に分散して存在する地域関連コンテンツ がクローリングされる.これを図中(2)で「議論の種」 として活用しやすい形に自動構造化し,図中(3)の様々 なアプリケーションで住民参画に活用する.また,本

1http://open-opinion.org/

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1: 住民参画WebプラットフォームO2概要

2: O2の運用サイクル

プラットフォームの運用サイクルとして,図2のよう なものを想定している.すなわち,SOCIAに構造化し た背景情報や意見を情報提示に用いて参加者の意見入 力を補助し,入力された意見をSOCIAに構造化する ことでこれも情報提示に用いるというサイクルである. このようなサイクルを実現できれば,同じ議論の繰り 返しを避けたり,議論を深める方向へ向かわせる効果 が期待される.

本稿では,本プラットフォームを地域社会で実応用す るに至るまでのロードマップを示し,進捗を報告する と共に,さらに必要となる要件を洗い出して考察する.

2 関連動向

住民参画の段階的な指針として,先に述べたOGD によるオープンガバメント三原則の他にも,IAP2 (In- ternational Association of Public Participation; 国際 市民参画協会)が提案するSpectrum of Public Partic- ipationが存在する[4].図3は,それら住民参画のレ ベルと,オープンデータの有効範囲の対応関係を示し ている.オープンデータは特に透明性や情報提供のた めに重要な役割を果たし,参画や協働などのより深い レベルにおいてもやはり有用であると予想される.た だし,組織を超えて協働する場合,RDF等で意味的に

3: 住民参画の深さのレベルとオープンデータの有 効範囲

リンクされていないオープンデータよりも,意味的リ ンクによってコンテキストを提供しているLODの方 が,より有効にデータを活用できると期待される.特 に,組織横断的に複数のデータをマッシュアップして 新たな傾向を発見したり,協力関係を構築していく際 に,LODによるコンテキスト共有が効果的に働くと考 えられる.

国レベルの住民参画のためには,米政府によるオー プンデータ・プラットフォームData.govをはじめとし て,世界20カ国以上で同様のオープンデータ・プラッ トフォームが整備されつつある.Data.govでは,交通, 環境,犯罪,公衆衛生等,多岐に渡る分野の生データ, 分析ツール,地理データが公開されており,複数のデー タセットを統合(マッシュアップ)できる環境が提供さ れている[5].また,各政府機関から寄せられた社会的課 題の解決アイディアを募るWebサイトChallenge.gov が2010年に開設された.これらの取り組みでは,国 民全体にアイディアを募り(Brainstorming,議論を 深め(Discussion),案を作る(Drafting)という3段 階から成る公的討論が試みられており[6]Web上で のマクロな公的討議とオープンデータを組み合わせて PIに活用しようという先駆的な事例である.日本でも, 2010年に経済産業省がオープンガバメントラボ を開 設し,情報公開や意見収集のためのWebサイトを試験 運用している.また,20127月には政府の高度情報 通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)が

「電子行政オープンデータ戦略」 を取りまとめ,経済産 業省による「IT融合フォーラム/公共データワーキン ググループ」の開催や,総務省による「オープンデー タ流通推進コンソーシアム」の設立など,日本版オー プンデータ・プラットフォームの実現に向けた動きが 加速している.

また,電子政府や住民参画に関連するオントロジー として,様々な用途のものが提案されてきた[7].その 中の一つ,eGTPM (electronic Government Transfor- mation Project Management)オントロジー[8]は,電 子政府に関連するプロジェクト管理のために設計され たオントロジーであり,プロジェクトの利害関係者,目

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標,行動等の構造が定義されている.また,住民のコ ミュニティでオントロジを共同構築するプロセスとし て,SOBE (Social Ontology Building and Evolution) [9]という手法が提案されている.

これらの関連システムや関連研究は,e-Participation あるいはe-Governmentと呼ばれる研究分野と深く係 わっており,これら以外にも数多くの事例が存在する. しかし,本研究で目指しているような地域社会での問 題背景を共有化することで公的な議論への参画を促進 する技術は,筆者らが知る限りにおいては,充分に研 究が進んでいるとは言えず,注力すべき研究課題であ ると考える.

3 地域の背景情報と意見の構造化

表明される意見数の増加はコミュニティ活性化の必 要条件だが,それだけでは意見の質が保証されない.入 力される意見の質を高めるために,Web上のコンテン ツを収集し,地域の問題に関する背景情報や意見の自動 構造化を行うことで,議論に活用しやすい構造のLOD を構築するという研究課題を設定した(課題1).その ために,意見集合と多様なコンテンツの構造化(課題 1-a),および,ノイズとなる意見入力のフィルタリン グ(課題1-b)が必要であった.

(課題1-a)の意見集合と多様なコンテンツの構造化と は,大量の意見を関連付け,概観を俯瞰的に把握できる ように可視化することを意味する.意見収集システム によって得られた意見のみならず、Web上の関連コン テンツを収集するためには,Webページの解析を行い, 特定の部分(ニュース記事の場合はタイトルと本文な ど)を取得する必要がある.本研究では,図4左側のオ ントロジーが示すような,地域とイベントを核とした 情報の構造化手法を実現した.そのためにSOCIAオン トロジー

2

を設計し,これに則ったLODデータセット SOCIAを構築し公開した3.図5左側のように,Web 上に分散して存在していた地域関連情報と発言に関し, SOCIA上では右側のような構造化を施し,議論支援に 活用しやすく加工した.意見とニュース記事は,地域と 出来事を基点とする構造でSOCIA 上に蓄積されてい る.時系列を考慮して類似ニュース記事をクラスタリン グし,得られたクラスタにURLを与え,これを出来事 のデータリソースと見なすアプローチを採用した[10]. 地域を表すデータリソースとしては,国立情報学研究 所によるプロジェクトLODAC Locationのデータセッ トを用い,リンクを張っている.LODAC Location データは,世界的に利用されている地名データセット GeoNamesへの意味的リンクを有する.これらのLOD

2http://data.open-opinion.org/socia-ns

3http://data.open-opinon.org/

に基づく意味的なリンクにより,芋づる式に情報をマッ シュアップすることが可能になると期待され,より詳 細なコンサーン・アセスメントに活用できると考える.

6SOCIA中で構造化された意見の実例を示す. 実際は地域と出来事だけでなく,発言者,議題,関連 コンテンツとも紐付けられている.

4: 出来事と地域を基点としたコンテンツ構造化の ためのオントロジーとインスタンス

5: 従来の状態とSOCIAで目指す構造化

6: SOCIAで構造化された意見の例 (課題1-b)のノイズとなる意見入力のフィルタリング とは,特定の地域コミュニティに関連の高い意見のみ をフィルタリングすることを意味する.必ずしも特定 の地域に関連の高い情報だけが参考になるとは限らな いが,膨大な量の情報から地域に関連のある情報のみ

(4)

を選別する技術は必要である.本研究では,大量のツ イートを継続的に分析可能な並列分散処理システムを 実現した.具体的には,ツイートやコンテンツによって 言及されている地域を特定するための分類システムを 開発し,どの地域やイベントにも紐付けられなかった ツイートをフィルタリングする機構を開発した.分類 には,Hadoop用の機械学習のライブラリであるMa- houtを用い,Apache Hadoop上に実装されたアルゴリ ズムTWCNB (Transformed Weight-normalized Com- plement Naive Bayes)を利用した.並列分散環境であ るApache Hadoopを採用することで,大量のデータ に対するスケーラビリティを確保し,実用的な処理時 間での学習が可能となった.また,Yahoo! Japanの地 域ニュース

4

を訓練データとして用いたところ,地域ご との不均衡が精度低下の原因となったため,オーバー サンプリングにより訓練データを均衡させる前処理を 行った.これにより,都道府県レベルの分類について は90%を超える実用的な分類精度を実現した[11]

さらに,コンサーン(社会的な懸案事項)に関連する ハッシュタグを用いて収集したツイートを学習データ として用い,ハッシュタグのみに頼らないコンサーン 抽出のための形態素N-gram抽出手法を開発した[12]. この特徴抽出手法は,入力ハッシュタグに依存する標 本選択バイアスに頑健であり,Twitter上でつぶやかれ ているコンサーンでは引用/リツイート,主張/提案, 事実,疑問/質問等のモダリティを持つ形態素N-gram が特徴的に表れるという分析結果を得た.コンサーン

/非コンサーンの判別およびフィルタリングを更に高 精度化するためには,今後,コンサーンを述べたツイー ト(正例)とそうでないツイート(負例) から成るコン サーン・コーパスを構築する必要がある.

4 地域関連情報の配信

地域事情にあまり詳しくないユーザの意見表明を支 援するために,SOCIAで構造化した地域関連情報を効 果的に配信するという研究課題を設定した(課題2).そ のために,ユーザの意見入力を誘引する情報配信(課題 2-a),および,簡便かつリアルタイム性を持つ意見入 力インタフェース(課題2-b)が必要であった.

(課題2-a)のユーザの意見入力を誘引する情報配信 とは,何に関する意見を表明すれば良いかわからない ユーザに意見表明の動機を与えるための情報提示を意 味する.地域住民の多くは,日々の生活の中で地域の 時事問題を追う手間暇をかけられず,地域の公的な懸 案事項を共有し難い.この解決のためには,意見入力 を誘引するために,地域の公的な懸案事項(コンサー ン)を把握可能な情報を提示する必要がある.このよう

4http://headlines.yahoo.co.jp/hl?c=loc

7: デジタルサイネージへの地域関連情報配信

図 8: citispe@k上での地域関連情報配信

な,ユーザの意見入力頻度を向上させる地域情報提示 のため,地域と出来事を基点とする構造を持つSOCIA 中 の コ ン テ ン ツ を 利 用 し た 情 報 提 示 手 法 を 開 発 し た . SOCIAに蓄積された地域関連イベントは,サイネージ システムWisdom Web Attendant (7) や議論支援 システムcitispe@k

5

(図8)に配信される.

7 右 側 は ,担 当 者 が 配 信 コ ン テ ン ツ を 選 択 す る Companionというシステムであり,この操作によって 図左側のようなiPad上のサイネージシステムAtten- dantへと配信される.このようなデジタルサイネージ は公共の場に設置することを想定している.また,図 8の議論支援システムcitispe@kの左側には出来事一覧 が表示され,選択された出来事に関する情報が右側に 表示される.左側上部のプルダウンメニューでの選択

(出来事,議題,質問,Googleの急上昇ワード,Kizasi での急上昇ワード,Buzztterでの急上昇ワード)によっ て,表示する情報を選択できる.また,地域フィルタに よって,特定の地域に関する情報のみを表示すること

5citizenspeakを組み合わせた名称であり,シティスピークと 読む.

(5)

ができる.右側の表示されるイベントに関する情報と は,イベントそのものが持つ期間や関連単語や,イベ ントに関係するニュース記事やツイート,関連する別 イベントである.これにより,ユーザが地域での公的 な懸案事項(コンサーン)を把握できるようにし,地 域の問題に詳しくない住民でも意見入力できる意見入 力支援機構を提供した.

(課題2-b)の簡便かつリアルタイム性を持つ意見入 力インタフェースとは,アイディアや問題に気付いた 時点で即座に簡便に意見を入力できるインタフェース を意味する.意見表明のための余計な労力は,意見表 明の意欲を減退させる.また,ある意見に思い至った 時点で即座に表明できないと,その意見を忘れてしま う可能性が高くなる.よって,アイディアや問題に気付 いた時点で即座に簡便に入力できるインタフェースが 必要である.そのために,デスクトップPCだけでな くスマートフォン,タブレットPCからも入力可能に し,多様な入力手段を試作した.具体的には,iPad端 末等からも利用可能なWebプッシュ配信技術を用いた アンケート機能を試作した.これを発展させれば,会 議中の簡便かつリアルタイムな意見収集を誘引・促進 する効果が期待される.

5 議論を通じた手動構造化

合意形成のためには,前段階として関係主体が問題 をどのように捉えているかという構造を共有する必要 がある.よって,議論を通じて手動で構造を付与する 機構を開発するという研究課題を設定した(課題3).そ のために,合意形成を導く議論の構造を明らかにし(課 題3-a),組織を超えて問題を共有するための外部公開 用API(課題3-b)が必要であった.

まず,(課題3-a)の合意形成を導く構造を明らかにす るために,同意発言が後続する確率の高いパターンを実 際の議論データから調査した[14]Web上での議論の 進行を円滑にする技術を実現するためのコーパス分析 を行い,合意形成に至りやすい議論構造と至り難い議論 構造が存在することを示した.また,実際のWikipedia の編集方針に関する議論データを用いて議論コーパス を構築し,同意に至る確率が高くなる議論パターンを 発見する手法を開発した.ここで得た知見の応用とし て,会議資料上の特定個所を指し示した質問と,それ に対する回答としての案のリスト、および各案に対す る賛成意見,反対意見という議論の構造を定めて可視 化するシステムを試作した.

この知見を踏まえ,前述した議論支援システムcitispe@k でタグ付け機能を試作した[13]. citispe@kでの議論の 過程を図9に示すが,タグ付け機能は最後の収束フェー ズで必要となる.ユーザは,まず最近の出来事や議題を

図 9: citispe@k上での議論

地域でフィルタして閲覧し,それらに関連付けられて いるニュース記事やツイートのリストの提示と,それら を参考にした意見入力,議論の根拠となる地域関連コ ンテンツの手動アノテーション,および,発言意図タグ や評価基準タグの手動アノテーションをサポートして いる.citispe@kから入力された意見は,ハッシュタグ を含むツイートとして発信され,それと同時にSOCIA に構造化される.この意見も,地域関連コンテンツと して情報提示の対象になる.

citisp@kWebアプリケーションとして構築されて いるため,汎用のWebブラウザにより利用することが 可能である.すなわち,一般的な住民ユーザにとって利 用のための敷居が低い.citispe@kの構築において,標 準仕様のWeb技術(HTML, CSS, JavaScript)による システム構築を可能な限り進めた結果,標準技術に準 拠したWebブラウザへの対応が容易になっている.研 究期間内ではシステムの実現を最重要視して,WebKit を基盤とするブラウザとしてSafariおよびChromeに 焦点を当てた.標準技術の利用により,若干の修正で FirefoxおよびInternet Explorer 9以降に対応すること は可能である.今後の研究開発において,本システムの 完成度を高めつつ,対応ブラウザの種類を広げることも 重要であると考えている.最終的には,ブラウザのシェ アに対して90%のブラウザに対応可能であると考えて いる(ただし,エンドユーザによるInternet Explorer のアップグレードが順調に進むと期待している).

収束フェーズで必要となるタグ付け機能については, 名古屋市の弥富相生線に関する学術検証委員会が策定し た,QOLに関わる評価軸に基づく意見分類表「弥富相 生山線の建設の効果に対する評価と対策」

6

を参考にし, 評価基準タグのオントロジーを設計した.citispe@kで はこれを用い,表1の例のように,発散した議論を評 価基準ごとに分類・整理するコンサーン・アセスメント

6http://www.city.nagoya.jp/ryokuseidoboku/cmsfiles/ contents/0000015/15685/tennpushiryou23456.pdf

(6)

1: TPP参加交渉問題に関する評価基準で意見を分 類する表の例

支援機構を実装した.具体的には,評価基準タグや発 言タグの付与機構を提供し,資料や意見を観点ごとに 分類する枠組を提供することで,表1のようなフォー マットへの変換を可能にした.今後,変換を自動化す るためには,複数の類似意見を要約する手法の開発が 必要となる.

さらに,LODデータセットSOCIAを議論コーパス として洗練化するため,プロパティがアノテーションさ れた状況に関するメタデータを管理するオントロジーを 設計し,導入した.例えば,意見をイベントに関連付け ようとするとき,socia:targetEventというプロパティ をアノテーションするが,このアノテーションが行なわ れた状況を管理するためにsocia:AnnotationInfo とい うクラスを導入した(10).これにより,ニュース記事 をイベントに関連付けたのが「誰(socia:annotator で,「いつ(dc:date)」なのかという情報や,ニュース 記事とイベントの「関連度(socia:wieght」などの情 報を付与可能にした.つまり,関連付けを行ったのが 人間の作業者なのか,自動処理のシステムなのか,も し自動処理ならばそのアルゴリズムの精度はどの程度 で,アノテーションの確信度はどの程度か,といった 情報を管理し,これによりコーパスの品質向上が図れ ると考える.

(課題3-b)の組織を超えて問題を共有するための外部 公開用APIとは,入力パラメータと出力データの意味 的スキーマが公開され,システム間の相互可用性が保障 されたデータ処理を可能にするAPIである.これを実 現するため,システム間の相互可用性が保障されたデー タ処理を可能にするLODを採用し,設計したSOCIA

10: アノテーションの品質管理用クラスAnnotation- Info

11: 実応用に向けて対応すべき範囲

オントロジーを公開するとともに,SPARQL Endpoint を公開した

7

.さらに,議論支援システムcitispe@kの 開発にあたり,SPARQLを直接操作しなくてもJSON 形式でSOCIAのデータを操作できるよう,SOCIAに 特化したSOCIA Web APIを開発した.

6 実応用に向けた考察

これまで説明してきた住民参画プラットフォームO2

は,特に地域社会での社会問題の透明性確保および参 画の促進に焦点を当てたものであった.地域社会での実 応用に向けての今後のロードマップを定めるにあたり, 最初のマイルストーンは,協働をカバーすべく機能を 拡張することとする.なぜなら,関係主体間の協力関 係までサポートしない限り,地域社会での合意形成や 問題解決に真に役立つ技術には成り得ないと考えるか らである.特に,東日本大震災からの復興促進という 社会的課題は協働が不可欠であり,本プラットフォー ムの拡張を検討する上で重要なケーススタディになり 得る.そのために,復興目標をゴールの階層構造とし て記述できるようSOCIAを拡張し,類似した目標を持 つ主体同士をマッチングする機構を検討中である[15]

11は,本プラットフォームが対応している範囲と, 地域社会での実応用に向けて対応すべき範囲を示して いる.横軸は住民参画の深さのレベルを表し,縦軸は 対応する地域コミュニティの大きさを表している.ま ずは住民参画の深さのレベルに関して,上述したよう に各主体のゴールを記述できるようSOCIAを拡張し, 協働までサポートする機構を設計・試作していくのが 最初のマイルストーンとなる.地域の大きさに関して は,現状のコンテンツ自動分類で充分な精度を実現し ているのは都道府県レベルおよび大きな都市までであ り,小さな市町村になると分類精度が低下する.小さ な市町村ではWeb上の記事の絶対数が多くないため, 再現率を犠牲にして適合率を上げるというアプローチ は適さない.よって実応用に向けては,自動処理だけ

7http://data.open-opinion.org/socia-sparql.html

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でなく,地域住民による人手のタグ付けが必要になる. このようなタグ付けを地域社会でのクラウドソーシン グによって行う機構を,次段階のマイルストーンと定 めて設計・試作して行きたい.また,これらの研究項目 と並行して,実際の地域社会の問題を取り上げたワー クショップを企画し,本プラットフォームの改良へと フィードバックできる体制を構築していくことも残さ れた課題である.

7 おわりに

本稿では,地域社会での問題背景を共有するための LODデータセットSOCIAと住民参画Webプラット フォームO2の概要を示した.3つの研究課題として, Webコンテンツ間の関係の自動構造化システム,情報 配信システム,議論を通じた問題の手動構造化システ ムについて述べ,その現状を示した.また,地域社会 での実応用に向け,これまでに扱ってきた透明性と参 画だけでなく,協働を視野に入れたロードマップの概 要を示した.今後は復興促進など地域社会が実際に直 面している課題を取り上げ,実応用に向けた取り組み を継続していく予定である.

謝辞 本研究は,総務省戦略的情報通信研究開発推進制度 (SCOPE)地域ICT振興型研究開発プログラムと,JST 興促進プログラム(A-STEP)の支援を受けたものです.

参考文献

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図 1: 住民参画 Web プラットフォーム O 2 概要 図 2: O 2 の運用サイクル プラットフォームの運用サイクルとして,図 2 のよう なものを想定している.すなわち, SOCIA に構造化し た背景情報や意見を情報提示に用いて参加者の意見入 力を補助し,入力された意見を SOCIA に構造化する ことでこれも情報提示に用いるというサイクルである. このようなサイクルを実現できれば,同じ議論の繰り 返しを避けたり,議論を深める方向へ向かわせる効果 が期待される. 本稿では,本プラットフォームを地
表 1: TPP 参加交渉問題に関する評価基準で意見を分 類する表の例 支援機構を実装した.具体的には,評価基準タグや発 言タグの付与機構を提供し,資料や意見を観点ごとに 分類する枠組を提供することで,表 1 のようなフォー マットへの変換を可能にした.今後,変換を自動化す るためには,複数の類似意見を要約する手法の開発が 必要となる. さらに, LOD データセット SOCIA を議論コーパス として洗練化するため, プロパティがアノテーションさ れた状況に関するメタデータを管理するオントロジーを 設計し

参照

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