クォークと原子核
発見されているクォーク
クォーク 記号 Q S C B T アップ u +2/3 0 0 0 0 ダウン d -1/3 0 0 0 0 ストレンジ s -1/3 -1 0 0 0 チャーム c +2/3 0 1 0 0 ボトム b -1/3 0 0 -1 0 トップ t +2/3 0 0 0 1
陽子のスピンとクォークのスピン・フレーバー 陽子のスピン ½
スピン1重項 (antisymmetric)
1
2 −
1
2 u d −d u
フレーバー非対称
u
d
−u
d
− d
u
−d
u
2粒子でスピン0の 状態を作る
残りのuを加える
u
d
−u
d
−d
u
d
u
u
1
182 uud 2 udu2 duu−uud −udu−duu−uud −udu−duu
クォーク模型と陽子・中性子の磁気モーメント
p=2.792847356±0.000000023
N
n=−1.9130427±0.0000005
NN= e
2 mp=3.1524512326 45×10−14 MeV /T 核磁子(Nuclear magneton)
1/2, 1/2=
23 1,11/ 2,−1/2−
13 1,01 /2,1/2
u u d u u d
陽子の波動関数
p= 2
3 2
u−
d
1
3
d=
4
3
u−
1
3
d
p= 2
3 2
d−
u
1
3
u=
4
3
d−
1
3
umu=md=mn eu=−2 ed
u=−2d
p
n =−
3
2
実験結果は
−1.46 ....
2.79
N=−3
dm
n=m
p/2.79=938 MeV /2.79=336 MeV
Λバリオンに関する考察から
m
s=509 MeV
バリオン8重項の磁気モーメント
p 4
3 u− 1
3 d 2.79 2.793 n 4
3 d− 1
3 u −1.86 −1.913
0 s −0.61 −0.614±0.005
4
3 u− 1
3 s 2.68 2.64±0.01
− 4
3 d− 1
3s −1.04 −1.16±0.03
0 4
3 s− 1
3 u −1.44 −1.25±0.014
− 4
3 s− 1
3 d −0.51 −0.65±0.01
3 s −1.84 −2.02±0.05
バリオン クオーク模型 計算値 実験値
基準値
m
u=m
d=336 MeV
m
s=509 MeV
クォークの質量: ハドロンの質量差から
素粒子 記号 質量(MeV) Q I
3 B S Y J
陽子 p+ 938 1 +1/2 1 0 1 ½
中性子 n0 940 0 -1/2 1 0 1 ½
ラムダ粒子 Λ0 1116 0 0 1 -1 0 ½
シグマ粒子 Σ+ 1189 1 +1 1 -1 0 ½
Σ0 1193 0 0 1 -1 0 ½
Σ- 1197 -1 -1 1 -1 0 ½
グザイ粒子 Ξ0 1315 0 +1/2 1 -2 -1 ½
Ξ- 1321 -1 -1/2 1 -2 -1 ½
パイ中間子 π+ 140 1 +1 0 0 0 0
π0 135 0 0 0 0 0 0
π- 140 -1 -1 0 0 0 0
ケイ中間子 K+ 494 1 +1/2 0 1 1 0
K0 498 0 -1/2 0 1 1 0
K0 498 0 +1/2 0 -1 -1 0
K- 494 -1 -1/2 0 -1 -1 0
エータ中間子 η0 548 0 0 0 0 0 0
m =m−≈m0
m K=m K−≈m K0=m K0 m =m −≈ m 0
m K∗=m K∗−≈m K∗0=m K∗0 m p≈mn0
m ≈m 0≈m − m0≈m−
m≈m≈m0≈m− m ∗≈m∗0≈m∗ −
m∗0≈m∗−
mu ≈m d m −m ∗=139 MeV
m ∗−m ∗=149 MeV m ∗−m=152 MeV
m s−m u≈m s −m d ≈ 150 MeV
クォーク間の力とスピンの向きを考慮にいれると
m
u=m
d=363 MeV
m
s=538 MeV
スピン2/3 バリオン ベクトル メソン
m0−m K∗=126 MeV m K∗−m0=112 MeV スピン1/2
バリオン m
0−m∗=77 MeV
S =1
S =1
S =1
S =1
S =1
S =0 uとdのスピンの向きによる違い
クォーク 記号 Q S C B T アップ u +2/3 0 0 0 0 ダウン d -1/3 0 0 0 0 ストレンジ s -1/3 -1 0 0 0 チャーム c +2/3 0 1 0 0 ボトム b -1/3 0 0 -1 0 トップ t +2/3 0 0 0 1
新しい自由度: カラー(色電荷)
u u u
S
3= 3
2
クォークはフェルミオン
→ 同じスピンのアップクォークは存在できない
→ 別の自由度が必要: 3成分必要
カラー自由度:
クォークは 赤(R)、青(B)、緑(G) のカラー(色電荷)を一つ持つ 反クォークは補色(反色):反赤(R)、反青(B)、反緑(G) を持つ ハドロンは、白色となるようなカラーの組み合わせをとる
R B G バリオン
R B G
反バリオン メソン
R R B B
G G
colorbaryon= 1
6 R G B − R B G G B R − G R B B R G − B G R
coloranti-baryon= 1
6 R G B − R B G G B R − G R B B R G − B G R
colormeson= 1
3 R R G G B B
他の白色になる組み合わせ テトラクォーク qqqq ペンタクォーク qqqqq
等々
新しいハドロン形態を持つ粒子が発見された SPring-8、Belle 等
クォーク間の相互作用: 強い相互作用の理論、量子色力学(Quantum Color Dynamics: QCD)
クォーク同士を結ぶもの = グルーオン → 「強い相互作用」 量子色力学 電子と原子核を結ぶもの = 光子 → 「電磁相互作用」
量子電磁気学
u u
近距離 遠距離 ポテンシャル 電磁相互作用: 強い 弱い 距離に反比例 強い相互作用: 弱い 強い 距離に比例
クォーク:
・ 陽子内部では「自由粒子」(漸近的自由性)
・ 陽子内部に「閉じ込め」られている
グルーオンの色電荷
R
R B
B RB(またはRB)の色電荷をもつ グルーオンを交換
R B R G G R G B B R B G
R R − G G
2
R R G G −2 B B
6
R B B
B R
R
グルーオンも色電荷をもつので、グルーオン間にも相互作用が起こる
←→ 光子同士は相互作用しない(電磁相互作用) GB
G R
RB
真空偏極・Running Coupling Constant
e-
e+ e-
e+ e- e+
e- e +e -
e+ e- e +
e -
e+e- e+
e- e- 低エネルギー(長距離)では、真空分極の影響で
電荷は小さく観測される
低エネルギー = 長距離 = 弱い結合 高エネルギー = 短距離 = 強い結合 電磁相互作用: 真空偏極によ電荷の遮蔽
sQ2= s
2 1−
2
3 log
Q22
QCDの漸近的自由性(Asymptotic Freedom)
q
q q
q q q q
q q qq
q q q q q
低エネルギー = 長距離 = 強い結合 高エネルギー = 短距離 = 弱い結合
QCD: グルーオン同士で
相互作用する
sQ
2= 12
33−n
flog Q
2/
2
=0.1~0.5 GeV
クォークがハドロンに閉じ込められエネルギースケール
= 摂動的計算の限界
強い相互作用のポテンシャル
クーロンポテンシャル 距離に反比例
→ 遠距離では力が弱わまる
強い相互作用のポテンシャル 遠距離では距離に比例
→ 一定の力
→ クォークを「閉じ込める」
束縛エネルギー以上の エネルギーを与えれば 電子は電離する
クォークは束縛から逃れられない
裳華房テキストシリーズ・物理学 素粒子物理学(原 康夫著)より抜粋
重いクォーク間のポテンシャル 格子QCDによる数値計算
q
q
強い相互作用のポテンシャルと「クォークの閉じ込め」 QCDポテンシャル
q クォークを陽子の外に取り出そうと、
強くたたき出すと
q
q q
q
q q q q
与えられたエネルギーで、
新しくクォーク・反クォーク対が生成される。
→ クォークはつねにハドロンの中に「閉じ込められる」
たたき出すエネルギーが強ければ、与えられたエネルギー分 ハドロンが形成される。
電子・陽電子対消滅でのジェット生成
e e−
q q
hadrons hadrons
t
粒子は、クォークの運動量方向 まわりの円錐内に生成される。
→ ジェット
e e−
電子・陽電子対消滅でのクォーク対生成
e
e
−c c
e
e
−bb
カラー(色電荷)の実験的検証
R= e
e
− qq hadrons
e
e
−
−
電子・陽電子対消滅の断面積比の測定
R~2
R~3.1
R~3.5
Q2 アップ (2/3)2 ダウン (-1/3)2 ストレンジ (-1/3)2
R= e
e
− qq hadrons
e
e
−
−
R= ∑
q e
q2 e
q2e
q2
e
2e e−
q q
e e−
q q
e e−
q q
R= ∑
q3 e
q2
e
2nf=3 R = 3⋅
2 3
2
−1 3
2
−1 3
2
= 3⋅69 = 2R = 3⋅
2 3
2
−1 3
2
−1 3
2
2 3
2
= 3⋅109 = 3.33R = 3⋅
2 3
2
−1 3
2
−1 3
2
2 3
2
−1 3
2
= 3⋅119 = 3.66nf=4
nf=5
原子の構造: ラザフォード散乱
シンチレータ
金の薄膜 アルファ線 (4He原子核)
ほとんどが突き抜ける アルファ線が金の薄膜で大角度に散乱される
→ 原子中の重い点状の粒子存在
原子中に均一に分布している場合(トムソン模型)は大角度に散乱されない
d
d =
4 m
2 Z
1Z e
2
2q
4 q=2 p sin 2
入射粒子の運動量 p 実験室系での散乱角 θ 入射粒子の電荷 Z
1e
入射粒子の質量 m 標的粒子の電荷 Ze
陽子・中性子(核子)の構造: 形状因子 陽子は「大きさ (~fm)」をもつ
電荷分布 ρ(r)
点状粒子との散乱からのずれ 陽子の形状因子 F(q)
d =d 0⋅
∣
F q ∣
2 F q=∫
dV r e−i q⋅r電荷分布
電子
陽子 ~ fm
The structure of the nucleon,
A. W. Thomas, W, Weise, Wiley-Vch
F q~
1
0.71 GeV1q
2
2 r ~e
− 0.71 GeV r~e
−r 0.28 fm
陽子の形状因子:
フーリエ 変換
精度(fm)
→ 数百MeVの光で測定
F q=
∫
dV r e−i r⋅q∫dV =2∫−1 1
d cos ∫0∞dr r2
=2
∫
0∞ dr r2∫
−11
d cos r e−i r q cos
=2
∫
0
∞
dr r2r
[
1−i r qe
−i r q cos
]
−11=2
∫
0
∞
dr r2r 1
−i r q
e−i r q
−ei r q
∫
0∞dr r r eiqr=−
∫
−∞0 dr r r eiqr= 2
−iq
∫
−∞∞
dr r r e−i r q
xn f x i n d
n f p
dpn
=2
−q
d q dq
e−ax 2a a2x2 形状因子と電荷密度
フーリエ変換
r ~e
−ar F q~ 1
1Q / a
2
2電荷分布は他の形をとれば、形状因子も変化
r ~r F q~C
陽子・中性子(核子)の構造: パートン(部分子)模型 深非弾性散乱実験(1960年代~)
SLAC 20 GeV電子ビームによる実験
陽子中に点状粒子(パートン:部分子)を発見 d
d =
4 m2Z12 Z2e4
q4 ∝
∑
q Zq2
測定された電荷の自乗和 陽子 1
中性子 2/3 クォーク模型:
23
2
23
2
−13
2=1 2 3
2 −1 3
2 −1 3
2= 2 3
陽子 中性子
・ 陽子はパートンから構成されている
・ パートンは陽子内部で自由に動く 漸近的自由性
・ 電子とパートンは電磁相互作用で 弾性散乱する
・ 散乱されたパートンは残りのパートンと 相互作用せずに陽子の外にはじかれる
・ 電子と陽子との散乱断面積は、電子と パートンとの散乱断面積の和に等しい
→ だるま落とし
クォーク・パートン模型 四元運動量移行 Q2=−q2=− k −k ' 2
~ 1
Q2 Q2=4 GeV2 ~0.1 fm Q2=400 GeV2 ~0.01 fm
k
k '
q
陽子・中性子(核子)の構造: パートン分布関数
運動量比 x の運動量をもつクォークとの散乱 散乱された電子のエネルギー・運動量測定から
P
x
1P
x
2P
x
3P
x= Q
2
2 P⋅q=
Q2
2 M E −E '
Q2=−q2=− k −k ' 2=4 EE ' sin2 2
k
k '
q
が決まる。
測定された微分断面積からクォークの運動量比分布
(パートン分布関数)を決定できる
断面積がQ2に依存しない
ブジョルケンのスケーリング
パートン模型の検証
陽子構造関数
特に小さな運動量比で エネルギーが上がると
パートンの数が増えているように見える
スケーリングの破れ
(グルーオン輻射にともなうクォーク対の生成)
パートン分布関数(運動量比分布)
エネルギー スケール(低)
エネルギー スケール(高)
陽子構造関数
クォーク同士はグルーオンにより結合
→ 近距離で相互作用は弱くなる
→ クォークは「自由」に振る舞う
色電荷が「白色」になる組み合わせで存在
→ クォークは陽子の中に閉じ込められている
グルーオン輻射によるクォーク・反クォーク対生成
→ 運動量比の小さいクォーク・グルーオンの生成
→ 陽子の運動量の半分はグルーオンが担う
お まけ
K中間子崩壊でのCP非保存 中性Kメソン
K
0ds K
0sd K
0K
0
−K
0
− K
0K0K0 振動
実験では
K
s0
−K
L0
−
0K
L0
0
0
0K
s0
0
02個のπ中間子に崩壊する短寿命粒子 3個のπ中間子に崩壊する長寿命粒子
K
s0
−K
L0
−
0K
L0
0
0
0K
s0
0
0P C CP +1 +1 +1 +1 +1 +1 -1 +1 -1 -1 +1 -1
C : K
0− K
0C : K
0−K
0 と選ぶとCP : K
0 K
0 K
0 K
0
CP : K
0− K
0− K
0− K
0
K
s0= K
0
K
0 2 K
L0
= K
0
− K
0 2
二つの中性Kメソンの混合状態K
s0= K
0
K
0 2
K
L0= K
0
− K
0 2
K
0= K
s0
K
0L 2
K
0= K
s0
−K
0L 2
K
0: K
s0
K
L0
K
s0
K
0L
K
0L
K
s0
−K
s0
0
0K
L0
−
0K
L0
0
0
0Cp不変性が成り立てば
長時間崩壊しなかったK0粒子(KL0)はπ中間子対に崩壊しない K中間子崩壊でのCP非保存
K中間子崩壊でのCP非保存: クローニン、フィッチ等 (1964) J. H. Christenson, J. W. Cronin, V. L. Fitch, and R. Turlay,
Phys. Rev. Lett. 13, 138–140
K
L0
−K
0Lall charged mode =2.0±0.4×10
−8K中間子崩壊でのCP非保存とクォークの世代混合: 小林ー益川理論 クォークフレーバーの「混合」
d'L=Vud dLVus sLVubbL
u c t
d s b
∣Vud∣2 ∣V ∣Vut∣2
us∣ 2
d'L=d L (クォークの質量が0の場合) W-の吸収
b d s'LL''L = V V Vudtdcd V V V
csusts V V V
ubcbtb d b s
LLL
V V V
csustsV V V
ubcbtb d b s
LLL
カビボー小林ー益川 (CKM) 行列
CPの破れには(ユニタリー)行列要素が 位相をもつ必要がある。
→ 2行2列ユニタリー行列は位相を含まない
→ 最低3成分を必要とする
→ クォークは3世代以上するべき
U
iL D
jLW
UiL: uL, cL, tLDjL: d L, sL, bL
U
iR D
jRW
−AUiL DjLW=gV ij
CP変換
A UiR D jRW−=gVij∗ CKM行列: 3つの混合角(θ12, θ23, θ13)と1つの位相(δ13)
V =
c
12c
13s
12c
13s
13e
−i 13−s
12c
23−c
12s
23s
13e
i13c
12c
23−s
12s
23s
13e
i13s
23c
13s
12s
23−c
12c
23s
13e
i13−c
12s
23−s
12c
23s
13e
i13c
23c
13
c
ij=cos
ijs
ij=sin
ijCP保存 CP非保存
V
ij=V
ij∗
13=0
V
ij≠V
ij∗
13≠0
(クォークの世代数は3世代以上) u d c s b t
第1世代 第2世代 第3世代
e
e
クォーク
レプトン クォークとレプトンの世代数
CKM行列