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Academic year: 2018

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(1)

Development of the Concepts of Transparency and

Accountability in Japanese Administrative Law

∼日本の行政法分野における透明性と説明責任の概念の発展∼

IV 行政手続法の実施に関する評価

• 劇的な変化ではなく、ゆっくりとした変化が期待され、市民や企業が政府と対峙する場合は役に立って いる

• 「天草ガス」の事例

– 天草ガスが供給区域の拡張を申請したが、法令では必要のない「地元のプロパンガス業者と事前協 議した報告書」がないことを理由に、地元の通産局は申請を受理しなかった

– さらに、天草ガスは行政手続法第35条2項に基づいて行政指導を書面で交付することを求めた が、この要求も却下された

– 天草ガスは経団連の行政指導ホットライン(経団連行政改革推進委員会)に訴え、経団連がこの事例 を公表したことによって、すぐに受理された

• 「インターネット社」の事例

– 通関士の代理手数料が高いので、通関士を通さずに外車の輸入をしようとしたが、通関手続は通関 士に委ねるようにとの行政指導を受けた

– インターネット社は経団連のホットラインに連絡し、行政指導の書面交付を求めたが、経団連の介 入を待たず、税関は行政指導を取り下げた

• 「理由の提示」(第8条・第14条)

– 第8条(許認可を受理しない場合):審査基準が数量的指標など客観的に定められている場合以外 は、「理由の提示」が必要

– 第14条(不利益処分を下す場合):当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場 合以外は、「理由の提示」が必要

– (事例):原告は馬の登録を求めたが受理されず、東京地裁に提訴。裁判所は「十分に具体的な理 由がない」として処分を無効とした。処分の実体的側面ではなく、手続的側面で判断したという 事例。

• 「審査基準の公表」(第5条3項)

53項:行政上特別の支障がある場合以外は、「審査基準の公表」が必要

– (事例):中国人学生の原告は医師国家試験で不合格になり、提訴。東京高裁は審査基準が公表され ていないことを理由に、厚生労働省の処分を無効とした。同時に第8条「理由の提示」が不十分で あることも認めた。

• 行政手続法の知名度の低さ

– 中国人学生の事例では、原告も弁護士も第一審では情報手続法が有効な法的手段だと気づいておら ず、第二審で初めて行政手続法違反を主張した → 行政法を学ぶ弁護士や裁判官が少ないため、法 曹の間でもまだ知名度が低い

– しかし一方で、積極的に行政手続法を使う場合は、非常に有効な武器になる上に、「手続的な公平 性と透明性」という考え方が日本の行政法の重要な原則になりつつある

(2)

V 意見公募手続(パブリックコメント制度)

• ”専門家、利害関係人その他広く国民の意見を求め、これを考慮して重要な政策の決定を行う仕組み”

2005年の行政手続法改正で第6章「意見公募手続等」が追加された。本文は1998年の「中央省庁等改革基本法」 第50条2項に基づいた記述。

1. 閣議決定?(Cabinet resolution)なので、裁判規範にはなりえない→ 現在は法整備完了 2. 命令や条例などの立法的規則だけでなく、審査基準や処分基準などの非立法的規則も含まれる点は

範囲が広いが、「規則」に限られている点では範囲が狭い

3. 意見の採用・不採用に対する理由を提示することが想定されているが、法的手段に訴えることはで きないので、理由の「質」を維持するのは難しい → 現在は行政手続法第43条「結果の公示等」で制定 済み

4. 当局と意見提出者との接触が禁じられておらず、文書化する必要もないため、透明性を改善する際 の抜け道になってしまう

• 1999年度の総務省行政管理局の調査では、意見公募手続が行われた事例のうち、15.2%の原案が修正 された

• 意見公募手続を評価するのはまだ早く、改善の余地がある VI 情報公開法の制定

• 地方レベルでは1982年に山形県金山町と神奈川県で、情報公開条例が制定され、各地に普及

• 市民レベルでは1972年のロッキード事件で情報公開が叫ばれ始め、1980年にNGO団体「情報公開 法を求める市民運動(現在は情報公開クリアリングハウス)」が設立された

• 国レベルでは1993年の自民敗北後に重要な政策として位置づけられたが、連立政権が短命に終わった ため、1999年に制定され、施行は2001年になった

VII 情報公開法の内容

A 目的(1条):「政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにする」・「国民の的確 な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資する」

B 行政機関(2条):内閣官房や人事院、各省庁は含まれるが、国会と裁判所は含まれない。ただし、最高 裁は内部規則がある(衆議院は規程あり、参議院は不明)

C 行政文書(2条2項):文書、図画及び電磁的記録で、例外はあるが基本的に行政機関が保有するすべて の文書(地方の条例より広い)→ 現在では条例でも電磁的記録を含めるようになった

D 行政文書の開示義務:第5条(不開示情報)・第6条(部分開示)・第8条(行政文書の存否に関する情報) a(5条1項) 個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるもの

b(2項) 企業に関する情報や事業を営む個人の当該事業に関する情報

c(3項) 国の安全が害されたり、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれたり、交渉上不利 益を被るおそれがあるもの

d(4項) 犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支 障を及ぼすおそれがあるもの

e(5項) 審議など組織の内部の情報で、率直な意見の交換を阻害したり、国民の間に混乱を生じさ せるおそれがあるもの

f(6項) 行政機関の事務又は事業に関する情報

(3)

E 手続:開示決定等の期限(10条)・第三者に対する意見書提出の機会の付与等(13条)・開示の実施(14 条)・手数料(16条)

F 審査会への諮問(18条):行政不服審査法による不服申立てがあったときは行政機関が情報公開・個人 情報保護審査会に諮問し、理由説明書を審査会に提出する

G 訴訟の移送の特例(21条):類似の訴訟が提起されている場合、訴訟を移送できる

H 行政文書の管理(22条):行政機関の長は、行政文書の管理(分類・作成・保存・廃棄に関する基準)に 関する定めを設け、一般に公開する

I 地方公共団体の情報公開(26条):情報公開法自体は適用されないが、必要な施策の策定と実施が求め られている

J 公社の情報公開:「独立行政法人情報公開法」が2001年に制定(道路公団や郵政公社・日銀なども含む) VIII 情報公開法の実施に関する評価

• (地方レベル)日本の行政法訴訟では勝ちにくいが、情報公開法の領域では約3分の2で勝訴している – 開示請求には理由が必要ないので、市民にとって敷居が低い

– 説明責任が行政機関に転嫁されている

– 裁判所が行政側の判断に従うことがほとんどない

• (国レベル)請求された事案の90%が全部または一部開示されている。さらに、1年目は80%が、2 年目は90%が30日以内に開示されている

• 情報公開・個人情報保護審査会が答申を行った件数は、1年目の178件から、2年目の546件に急増し ている

1年目は事案の波が押し寄せるまで数ヶ月あったので、比較的少なかった

2年目は審査会の委員が経験を積み重ね、慣例ができて素早く処理できるようになった

• 官僚の秘密主義体質が急に改善されることはないが、議事録や中間報告を発表したり、「説明責任」と いう言葉が官僚の間で普及したりしつつある

IX まとめ

• 「市民参加型社会」の構築には、官僚が積極的に情報を公開することが必要であり、情報公開法は公開 が行われない場合の「セーフティネット」でしかない

• ただし、パブリックコメント制度や情報公開法は市民を「受け手」としてだけでなく、「参加者」とし ても位置付けるという行政法の傾向を加速するものである

• 政府と市民との双方向的コミュニケーションという理想像にはまだほど遠いが、確実に進歩していくだ ろう

(4)

Memo:

(5)

情報公開法制の日米比較

∼制度・理論・運用∼

1 情報公開制度の比較

• 日本・・・行政機関情報公開法(通称「情報公開法」) & 独立行政法人情報公開法

• アメリカ・・・情報自由法(FOIA)& 電子情報自由法改正法(EFOIA) – FOIA = Freedom of Information Act (1966)

– EFOIA = Electronic Freedom of Information Act Amendments of 1996 (1996)

日本 アメリカ

対象機関 網羅的で広い 大統領は除外・法人は明文なし

対象記録 差異なし

請求権者 制限なし 外国の政府機関は除外

不開示情報 「個人識別情報型」 「プライバシー情報型」・金融情報 と油井情報は除外ゆ せ い

グローマー拒否 差異なし

応答期限 30日以内 20労働日以内

第三者保護 意見聴取規定に限定なし 商業上の情報提供者に限定(大統 領命令)

開示の方法 指定された方式での提供を義務付 け

列挙されたリストの中から指定

他の法令との調整(置換法律) 規定あり 規定なし

手数料 経済事情による減免あり(詳細は

政令に委任)

公益による減免あり

行政上の不服申立て 審査会への諮問(実効性強い) 上級行政庁への審査請求(実効性 弱い)

文書管理 整備不十分 情報公開法よりも先に文書管理法

が整備

施行状況の公表 概要のみ 拒否処分を行った職員の氏名など

具体的に法定

情報提供の推進 努力目標(25条) 官報や閲覧室など具体的に法定 地方公共団体 対象外(個別の条例で対処) 州法が州内の自治体に適用

参考文献に挙げた宇賀克也氏の本の終章「情報公開法制の日米比較」をもとに作成。

(6)

2 アメリカ由来の法理論

■グローマー拒否(Glomar denial / Glomarization) たとえば、ある人の特定の病歴に関する情報などで は、請求にかかる情報があるかないかを答えるだけでプライバシーが侵害されることがある。このような場合に、 情報の存否自体の回答を拒否することができる。これを「グローマー拒否」と呼ぶ。アメリカではプライバシー情 報と国防情報の一部について限定的に認められており、日本では第8条で「当該開示請求に係る行政文書が存在 しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるとき」と広く規定されている。

■ヴォーンインデックス(Vaughn Index) 情報公開訴訟においては、非公開決定された情報を証拠として提出す ると、非公開にした意味がない。そのため、裁判所は行政機関に対し、公開することによって生ずる障害と非公開 処分の正当性を、非公開にした箇所ごとに説明した文書を提出させる。この文書を「ヴォーンインデックス」と呼 ぶ。日本では採用されておらず、情報公開・個人情報保護審査会に対しては「理由説明書」を提出することになっ ている。

■インカメラ審理(in camera inspection) ヴォーンインデックスを見ただけでは審理できない場合や、ヴォー ンインデックスが適切であるかを判断する場合に、裁判官は原告が立ち会わない裁判官室で請求された情報を見 て審理することができる。この審理方式を「インカメラ審理」と呼ぶ。日本では最高裁によって「情報公開法にイ ンカメラ審理に関する規定はなく、許されない」との判断が示されている。

ただし、本文(p.298)にもあるように、地方の条例では「インカメラ審理」が認められている。

<東京都 情報公開条例>

第24条(審査会の調査権限) 審査会は、必要があると認めるときは、諮問庁に対し、不服申立て のあった開示決定等に係る公文書の提示を求めることができる。この場合においては、何人も、 審査会に対し、その提示された公文書の開示を求めることができない。

3 運用状況について

アメリカでは1997年の時点で年間50万件前後の請求があるが、日本では2008年の時点で行政機関742件・独 立行政法人83件と、アメリカと比べると非常に少ない。

なお、日本の行政機関において請求が多いのは法務省(204件)・防衛省(177件)・厚生労働省(100件)・外務 省(77件)などがあり、独立行政法人では東京大学(17件)と都市再生機構(15件)が多く、ほかはすべて5件 以下。

一橋大学では新規の3件と持ち越し分の2件があり、「判断が妥当でない」が2件、「取下げ」が1件、「持ち越 し」が2件という状況になっている。案件は「天下り疑惑」があった副学長に関するもので、教授会でのコメント など。ちなみに、審査会のメンバーに高橋滋教授も含まれている。

(参考文献)

参照

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