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ネットワークがつくる新しい農業・農村・食

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Academic year: 2017

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ネットワークがつくる新しい農業・農村・食

大学院農学研究院・大学院農学院 助教

小林

こ ば や し

国之

く に ゆ き

(農学部農業経済学科)

専門分野 : 農業経済

研究のキーワード : 農業経済,協同組合,テロワール,農村振興 HP アドレス : http://www.agr.hokudai.ac.jp/agecon/pwiki/

何を目指しているのですか?

二十世紀の後半、世界中に食、農業を巡る様々な問題が現れました。BSEや口蹄疫など は世界中の農業のあり方に大きな課題を提起し、日本でも食品の偽装、輸入農産物の残留 農薬、遺伝子組み換え作物を巡る議論などいったい何が正しいのか、何を信じればいいの かわからないような状況となっています。

それらは、一言で「食の安全・安心」といわれることがありますが、安全と安心は異な る概念です。また、安心は個人の感情に基づくもので、「科学」では解明できない課題だと いう人もいます。わたしは、今なぜ「食の安全・安心」が大きな関心事項として世の中に 現れてきているのか、その背景には食料を生産する場面である農業・農村とそれを消費す る場所が離れてしまったことに原因があると考えています。

離れてしまった距離をどのようにして縮めていくのか、その鍵となるのはテロワールと いうフランスの概念です。日本語で言えば「風土」という意味にちかく、食料の背景にあ るそれが生産された地域の個性やそこに生きる人々の営みを表す言葉です。単に地域の個 性を生かした特産品を作っていこうということではなく、その地域にある資源をどう活用 して持続的な農業、農村を作っていくのか、ということが目的となります。

資本主義社会においては、ある製品を作るのに最も適した地域が最も競争力を持ちます。 そして競争に敗れたものはまた別の市場にチャレンジをしていくことで常に社会的に最も 幸せな状況になると考えます。しかし、農業生産は地域の自然的条件に大きく左右され、 また土地という動かすことのできない資源がその生産性に大きく影響します。さらに言え ば土地を使う農業生産は、生産の場面であるとともに農村空間を形成するという役割も有 しています。

実はこれまでの農学では、いわゆる工業的な効率性・安定性を実現することを農業の一 つの目標として、そのための仕組みを形成してきました。私はテロワールという概念を用 いながら、工業的な方向と両立可能で、かつ「農業らしさ」を前提とした農業生産、食料 流通の仕組みについて研究を行っています。

どのように研究を行っていますか?

私が行っている社会科学は研究対象が文字通り「現実社会」です。現実社会で実際に新 しい農業生産、流通の取り組みを行っている人たちに話を聞きながら、彼らの行っている ことを客観的に分析し、位置づけることが研究です。今私は、農村における人や物のつな

出身高校:北海道大麻高校 最終学歴:北海道大学大学院農学研究科

食料生産

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がりである「ネットワーク」に注目をして研究を行っています。これまでの農業生産を支 えてきた仕組み・組織とは異なり、新たな農村、農業のあり方を作っていくために人々が 形成しているネットワーク。その形成の論理や役割について研究を行っています。具体的 にはオホーツク地域における自治体や業種の枠を超えたネットワークに注目をして、これ まで市場では流通されていない「テロワール」のあふれる商品作りの事例調査などを行っ ています。殺菌していない生乳を使って製造したチーズや菌を添加しないキャベツの漬け 物、有機栽培でつくられた規格外のジャガイモの商品化などの取り組みを事例に、それに 取り組んでいる人々のネットワークが持つ役割について研究を行っています。

大学と社会の新たな関係作り

これまで見てきたような農業、食の生産流通の仕組み作りの研究において、大学がより 積極的に関わっていくこともできるのではないか。そうした考えから、2010年度より大学 院の共通授業科目の実習として「北大マルシェ」という取り組みを行っています。これは、 農家で実習をおこなった学生が主体となって企画、運営をするものです。これからの北海 道農業を担う生産者の方に全道各地から集まっていただき、農産物の直接販売や消費者と の情報交流の企画を通じて、農、食について考えるきっかけとしてもらう取り組みです。 毎年八月下旬に農学部前にて行われ、今年は全道から五十近い生産者に集まっていただき、 会場には二日間で約八千人の一般市民の方にご来場いただきました。食べ物の「値段」を 生産者と来場者で決めることを通じて、農業について考えてもらう「値段のないマルシェ」 や子供たちに農業に関心を持ってもらう企画、普段何気なく食べているトマトや牛乳の生 産方法や品種による味の違いを知ってもらう企画などを行っています。

それらを運営するのは、いろいろな分野で学ぶ大学院生達です。農家に泊まり込みで実 習にいき、そこで感じたことや発見を消費者に伝える場が「北大マルシェ」なのです。開 催直前にもなると毎晩徹夜で準備に当たる彼ら、彼女らは、この実習を通じて幅広い知識 とともに社会での実践力を身につけてくれているように思います。

北大のキャンパスは世界に誇る美しい場所です。その場所で、地域の農業者や関係者の 方々とより密接に連携をしながら、農業や食べ物について考える情報を発信し、人材を育 成し、研究を行う。そうしたあらたな知のプラットフォームを作っていきたいと思ってい ます。

北大マルシェでの学生企画「値段のないマルシェ」の様子 北大マルシェの様子

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参照

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