2017/11/23 入門物理学B 1
入門物理学 B
第 9 回 (11/23) 相対性理論 (2)
・マイケルソン・モーリーの実験 (復習)
・マイケルソン干渉計の重力波検出への応用
・アインシュタインの相対性理論
・ローレンツ変換
・ローレンツ変換からの結論 (同時とは、ローレンツ収縮、速度の足し算)
第 10 回 (11/30) 相対性理論 (3)・原子説 (1) (古代と中世の化学)
・ニュートン力学の変更
・万物の根源とは?(自然哲学の始まり)、四元素説、古代原子説
・錬金術の時代
法政大学 市ヶ谷リベラルアーツセンター兼任講師 福川 賢治 (https://sites.google.com/site/kfukukawa00/hosei2017)
2017/11/23 入門物理学B
前回の復習
マイケルソン・モーリーの実験 (1887年)
d
a
b
c c
b
a
ac = ab = ad = D d
画像はWikipedia Michelson-Morley
experiment (英語版) から改変、Picture by Stigmatella aurantiaca
(4th November 2013), CC-BY-SA 3.0 ライセンス
光の地球上での見かけの速度が 地球が動いているかどうかに よって変わるとすると、
a→c→a と移動する距離は、 a→b→a と移動する距離より、 わずかに長い。
従って、光の干渉による縞模様 が移動して現れるはず。
実際には、縞模様は移動しなかった。
1. エーテルの影響は検出できなかった。
2. 光の速さは動いている人から見ても一定の光速 c (速度の素朴な足し算が成り立たない)
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マイケルソン干渉計
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マイケルソン干渉計 の重力波への応用
重力波 (2017 年ノーベル物理学賞)
・一般相対性理論によると、質量がある物体が時空の歪みの原因となる。 質量を持つ物体が運動すると、時空の歪みが光速 c で伝わる。
アインシュタインが 1916 年に予言。
・重力波は非常に小さいと考えられているため、人間が検出可能な重力波は ①ブラックホールの衝突
(理論発表からほぼ 100 年の2016 年 2 月米 LIGO により発表) や、 ② 連星中性子星の合体
(2017 年 8 月 米 Advanced Ligo ・仏・伊 Advanced Virgoによる観測)、 ③ 超新星爆発
など大質量・エネルギーの放出を伴う変化が考えられている。
・その他、現在ある重力波検出器としては日本のKAGRA
(2016 年3月試験運転開始)や、独・英の GEO600 がある。
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レーザー ビーム
スプリッター
光検出器 鏡
腕 鏡
マイケルソン干渉計の重力波への応用 (続き)
干渉計に重力波が到着すると、時空の歪みにしたがって、
一方の腕の長さが伸び、もう一方の腕の長さが縮み、光の干渉が起こり、 光検出器に入る光の強度をモニターすることで重力波の検出が可能。
非常に精密な感度が必要。
(地球と太陽の間の分子一個分の伸び縮みを計測できる感度)。
腕
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世界初の重力波観測
The LIGO Scientific Collaboration, the Virgo Collaboration
Observation of Gravitational Waves from a Binary Black Hole Merger Phys. Rev. Lett. 116, 061102 (2016)
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ローレンツ収縮 (1892年)
マイケルソン・モーリーの実験結果は、物理学会に大混乱をもたらした。 ローレンツは物体が運動している方向に「エーテルの風」を受け
長さが縮めば、実験結果は説明出来ると考えた。
エーテルに対して静止している人から見た ac の長さを D0 速度 v で動く地球上の人から見た ac の長さを D,
とすると、 ただし、 という式を提案した。 D = D0
γ
γ = ! 1 1 − "v
c
#2
ガリレオの相対性原理
全ての等速度運動している空間で、力学の法則は同じ
→ ただし、電磁気学の方程式はガリレイ変換で形が変わる
(つまり電磁気学の法則は動いている人にとっては変わる)。 アインシュタインの相対性原理 (1905年)
全ての等速度運動する空間では、物理法則は同じであるべき。
→ エーテルの存在を否定し、物理の持つ(時空間の)性質から、現象を捉えた。 この法則を満たすようにマックスウェルの電磁気学の法則ではなく、
ニュートン力学の法則の方を変更すべき !
(※)γは英語の g に対応する ギリシャ文字でガンマと呼ぶ。
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アインシュタインの特殊相対性理論
(1905年、奇跡の年) 基本原理1. 光速度不変の原理
真空中の光速度 c は全ての等速度運動する空間で等しい。 2. 相対性原理 (前ページ)
全ての等速度で運動する空間では、物理法則は同じであるべき
Hendrik Antoon Lorentz (蘭、1853 -1928)
1902 ノーベル物理学賞 (ゼーマン効果の理論的解明) 理論電磁気学、電子論、
相対性理論に主要な業績 電磁気学の法則を変えない 時空の対応として、
ローレンツ変換を発見
画像は Wikipedia より
Albert Einstein (1879-1955)
「現代物理学の父」
1921年 ノーベル物理学賞 (光量子仮説による光電効果の 理論的解明)
相対論、宇宙論、光量子仮説、 統一場理論、物性理論等
画像は Wikipedia より
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2. ローレンツ変換
世界線 (物体の運動を表す方法)
縦軸に時間 t を、横軸に位置 x を取って物体の運動を表す (図1)
。
O x
t
10 km 1s
この縮尺では光の運動を記述すると非常に遠くまで行ってしまう。 そこで時間 t に光速 c をかけて、長さ ct を縦軸にとる。
静止した人を基準にする場合、
光の世界線は x 軸と 45 度と 135 度をなす直線になる (図2)。 つまり、光は x = ct と x = ct と言う世界線上を進む。
古典物理学の立場では、
c/2 の速度で前方に飛ぶ宇宙船の中でも、時間は同じ。
宇宙船から見た光の速度は c/2=15万km/s と 3c/2 = 45 万km/s になるはず(図3)。しかし、これは光速度不変の原理に反する。
図1 10 km/s で 動く物体の世界線
O
x[km] ct
[km]
30万 30万
-30万
図2 静止している座標系で
前後に進む光の世界線 O
x[km] ct [km]
-30万 15万30万
図3 図 2 に 15万 km/s
で動く宇宙船の世界線 (緑色) を書き加えたもの
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ローレンツ変換の図的イメージと数式
相対論では、光速度不変の原理を仮定して、時空の軸が傾いても良い
止まっている人にとっての世界線: ct 軸と x 軸を 2 つの軸とする平面上の線とする。 動いている人の時空の軸: ct 軸 (x =0) を考える。
動いている人の原点 x = 0 は止まっている人にとっては x = vt という線の上であるので、 ct 軸は速度 v に応じて傾いている。
光 (赤色) は静止した人にとっては (黒の軸) ct = x, ct = x という世界線上を進むし、 一定速度 v で動く人にとっても (緑の軸) ct = x , ct = x という世界線上を進む。 したがって、時間と空間の軸は光の世界線に関して対称(折り返すと重なる) なので、 動いている人の x 軸も傾く。 (下図の緑の軸)。
光は静止した人にとっては x2 ー(ct)2 = 0
動く人にとっては x 2 ー(ct )2 = 0 の世界線上を進む。 以下の一般的な点の対応を考える。
つまり 点(x, ct) と 点(x , ct ) は同一の点を表すとする。
x = vt の点は x = 0 であるべきなので、
x = k[x(v/c)(ct)] (k>0)
ct = ax+b(ct) (b>0) の形になる。
(k >0, b > 0 は 軸の方向が っていることを表す)
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x軸 ct軸 ct 軸
x
光の世界線 ct x 軸
ct
x
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ローレンツ変換の図的イメージと数式 (続き)
光の世界線 静止している人にとっては x2 (ct)2 = 0 運動している人にとっては x 2 (ct )2 = 0
x2 - (ct)2= x 2 - (ct )2 … ① を満たすように点 (x,ct) と点 (x, ct ) が対応すると する。
x = k[x-β(ct)] (k>0) …② (β=v/c は光速を1とした時の速度) ct = ax+b(ct) (b>0) …③
速度 v (つまりβ)が与えられた時、k, a, b が決まると、変換が決定できる。
①の右辺に, ②と③を代入して k, a, b を決めると、k=b=γ, a =βγ 従って、ローレンツ変換は
x =γ[xβ(ct)]=γxβγ(ct), ct = βγx +γ(ct) となる。 ただし、 (>1)
(※) βは英語の b に対応するギリシャ文字でベータと呼ぶ。
γ = 1
!1 − β2
時間と空間は関係のないものではなく、 お互いに混ざり合うもの
→ 4 次元時空という新しい概念
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ローレンツ変換の相対性
点 (x, ct)と点 (x , ct ) の関係 x = γx -βγ(ct), ct = -βγ x +γ(ct)
ct 軸
x 軸 x軸 ct軸
逆に (x,ct) について解くと、 x = γx + βγ(ct')
ct = βγx +γ(ct )
これは、上の式で β→ β, x x , ct ct としたものであり、静止している人は
動いている人から見て速度 v で動くことを表す。
注意: 日常の世界 (非相対論) では v は c に比べて極めて小さいので、
β=v/c はほぼ 0 であり、βc = v, はほとんどの場合 1 と考えて良い。 点 (x, ct) と点 (x ,ct ) の関係はローレンツ変換で与えられるが、
日常の世界では、x = xvt, t = t となり通常のケース (ガリレイ変換)に戻る。 このことは、世界線の言葉で言うと、
日常では時空の軸の傾きがあまりに小さく気づかないことに対応している。
γ = 1
!1 − β2
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3. ローレンツ変換からの結論
3-1. 同時は人によって違う
長さ 2c の静止した宇宙船の中央に人 A がいて、 そこから前後に光を発すると、
光は 1 秒後に同時に壁に到達する。
前方に向かって動いている人 B が眺めるとどうか? 光速は誰にとっても c なので、人 B にとっては、 前方の壁には光が到着する時間が早くなり、
後方の壁に到着する時間が遅くなるはずである。
したがって、B にとっては光が前後の壁に到着する時間が異なる。 一見奇妙な現象であるが、
世界線を書いてみると青と紫の点は 人 A にとっては同時であるが、
人 B にとっては座標軸が傾いている効果で、 異なっていることがわかる。
c
c 0
v=cβ x
x軸 ct軸
ct 軸
x 軸
c
c c
人 A
人 B
光の世界線
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3-2. ローレンツ収縮
相対性理論では、ローレンツ収縮 (動いている時の長さ) は自然に導出される。 静止している人が見て静止している棒を考える。この棒の長さは、
時間によらず L0 = x2 x1 となる。L0を棒の固有長さ (静止長さ)と呼ぶ。 この棒を速度 v で運動している人が計測する。
運動している人にとっての同時刻で測った長さが問題である。 つまり、静止している人とっての点(x2,t2), 点(x1,t1) が
動いている人にとっての 点(x2 ,t ),点(x1 ,t ) と同一であるとして、 長さ L= x2 -x1 を求めてみる。
ローレンツ変換を考えると、 x1=γx1 +βγ(ct ),
x2=γx2 +βγ(ct ) となる。
したがって、x2x1=γ(x2 x1 ) であるから、 L0=γL L = L0/γ γは 1より大きいので、
運動している人にとっての棒の長さ L は L0 より小さくなる。
x1 x2
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3-3. 速度の足し算
静止している人にとっては、ロケット B は時刻 t = T で位置 x = vBT にいる。 これをローレンツ変換で速度 vA で動いている人の目盛りに対応させると、
ロケット A の乗客から見たロケット B の位置(x , ct ), すなわち、速度 β合成 = x /(ct ) = v /c が分かる。
点(x, ct) = (vBT, cT) と 点 (x , ct )との間のローレンツ変換は x =γA (vBT)+βAγA (cT)=γAT(vB+βAc)
ct =βAγA (vBT)+γA(cT)=γAT(βAvB+c)
[速度に がついているので、ローレンツ変換の公式で β= βA とすることに注意]
したがって、速度を足し算した時の β合成は、
となる。
速さ vA で左向き (速度 -vA)
ロケット A ロケット B
速さ vBで右向き
O
原点(静止)
ロケット A からロケット B を見るとどうなるか?
β合成 = x
!
ct! =
γAT(vB + βAc) γAT(βAvB + c) =
vB + βAc βAvB + c =
βA + βB 1 + βAβB