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第12回研究会資料 原因論 原因論研究会

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Academic year: 2018

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(1)

原因論 第二十一章 改訂版1

小林 剛

166 第一原因は、[第一原因が]それによって名付けられるところの名前すべてを超え ている1

Causa prima est super omne nomen quo nominatur.

167 なぜならそれ[第一原因]に減少2は相応しく3なく、ただ補完されただけのもの4

が相応しいのでもないからである。というのも、減少しているものは完全なものではな く、減少すると、完全な働きをする5ことができない。また、我々において6完全なも のは、それ自身で十分である7けれども、しかし何か他のものを創造することも、自身 から何かを流入させる8ことも全くできないのである。

Quoniam non pertinet ei diminutio neque complementum solum; quoniam diminutum est non completum et non potest efficere operationem completam, quando est diminutum. Et completum apud nos, quamvis sit sufficiens per seipsum, tamen non potest creare aliquid aliud neque influere a seipso aliquid omnino.

168 だから、もし我々においてそのようであるならばその場合、我々は次のように言

9。すなわち、第一のもの10は、減少しているものでもなければ、ただ完成している だけのものでもなく、むしろ完成しているもの11を超えている。

Si ergo hoc ita est apud nos12, tunc dicimus quod primum non est diminutum neque completum tantum, immo est supra completum,

1 アラビア語原文のライデン写本では、nominaturに当たる語はyusammāであり、こ

の動詞の主語は「名前」で、「第一原因は、名付けられる名前すべてを超えている」と なる。一方イスタンブール写本では、nominaturに当たる語はtusammāであり、この 動詞の主語は第一原因で、ラテン語訳と同内容となる。

2 アラビア語原語には「欠如」「不完全」という意味もある。

3 アラビア語原語はyalīquで、意味は「相応しい」。

4 アラビア語原文は「ただ完成だけ」。

5 アラビア語原文は「完全に働きをする」。

6 「我々において」はアラビア語原文のライデン写本には存在しないが、イスタンブー

ル写本には存在する。

7 アラビア語原語はmuktafiy。第20章で、第一原因が充足していると語られるときに 使われる語であるmustaghnなどとは区別されている。

8 アラビア語原語は「流出させる」。以下「流入」と訳した部分はすべて、アラビア語

原語では「流出」。

9 アラビア語原文のイスタンブール写本ではこのようになっているが、ライデン写本で

は、「我々において」のところが、イスタンブール写本のようにʻinda-ではなく、 ʻudnā(我々は戻る)となっており、「もしそのようであるならば、我々は戻って次の ように言う」となっている。

10 アラビア語原文のイスタンブール写本ではこのようになっているが、ライデン写本

では「第一原因」となっている。

11 アラビア語原文では「完成」。

12 Pattinapud nosにカギ括弧を付けているが、これに当たる語がアラビア語原文の イスタンブール写本にあるので、Taylorに従ってカギ括弧を外す。

(2)

169 なぜなら[第一のものは]諸事物を創造し、それらの上に諸々の善性を完全な流入

によって流入させるものだからである13。というのも[第一のものは]それに限界も諸次 元もない14善性だからである。

quoniam est creans res et influens bonitates super eas influxione completa, quoniam est bonitas cui non est finis neque dimensiones.

170 それゆえ第一の善性は諸々の善性によってすべての時代15を満たす。ただし、時

代すべてがこの善性16から受け取るのはただその[時代の]能力の在り方に即してのみで ある。

Bonitas ergo prima implet omnia saecula bonitatibus; verumtamen omne saeculum non recipit de illa bonitate nisi secundum modum suae potentiae.

171 したがって第一原因は、[第一原因が]それによって名付けられるところの名前す

べてを超えており17、名まえよりも上位、高位のものであるということがすでに明らか に示された18

Iam ergo ostensum est et manifestum quod causa prima est super omne nomen quo nominatur et superior eo et altior.

13 この一文は、アラビア語原文のイスタンブール写本には存在するが、ライデン写本

には存在しない。

14 「諸次元もない」の部分は、アラビア語原文のイスタンブール写本では「次元がな

い」lā abʻādとなっているが、ライデン写本では「枯渇がない」lā nafādとなってい る。

15 アラビア語原語はawālim(世界)。この単語がなぜ「時代」saeculaと訳されたのか は不明。

16 アラビア語原文のイスタンブール写本では「善性」となっているが、ライデン写本

では「これ」としか書かれていない。

17 註1と同じ。

18 本章の内容、特に166節と171節の内容は、プロクロスに由来するものではなく、 プロティノスに由来する思想である。Cf. Enneades, V 2, 1.1-18; 3, 13. 4-14.19.

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