鳥のラブソングを読み解く

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図1 研究室で飼育されているカエデチョウ科鳥類のつがい。(a)文鳥、(b)十姉妹、(c)セイキチョウ。

鳥のラブソングを読み解く

大学院理学研究院・大学院生命科学院 准教授

相馬

そうま

雅代

まさよ

(理学部生物科学科(生物学専修分野))

専門分野 : 行動生態学,動物行動学

研究のキーワード : コミュニケーション,進化,鳴禽類,認知,発声学習 HP アドレス : http://www.sci.hokudai.ac.jp/~msoma/index.html

何を目指しているのですか?

「人間はなぜことばを持つようになったのか?」という問いには、現代においてすら、

いまだ明確なひとつの解が得られていません。ことばによるコミュニケーションを支える ヒトの認知機能には様々な要素がありますが、中でも重要な、耳から聴いた音を学習に よって獲得し自ら発することができるようになる、という発声学習(音声学習)の能力は、 ごく限られた動物にのみ備わっていることが分かっています。発声学習能力はなぜ進化し たのか-この問題を下敷きとして、私は小鳥を材料にコミュニケーション行動の機能と進

化の解明を目指しています。

なぜ鳥を研究しているのですか?

コミュニケーション行動の研究に鳥類を用いる、これには幾つかの理由があります。

発声学習能力をもつ代表的な動物は、コウモリ、クジラ、鳥の仲間で、ヒトの近縁種で

ある霊長類には発声学習能力をもつものはおらず、鳥類では、スズメの仲間(鳴禽類)、 オウムの仲間、ハチドリの仲間、という3分類群のみが発声学習能力をもつことが分かっ

ています。特に飼育下での行動研究が容易な鳴禽類は、発声学習のよいモデル動物といえ

るでしょう。

また、音声コミュニケーションの進化を考える際、そもそも音信号のやりとりが何に役

立つためにそなわったのか、という、機能から淘汰圧を考える視点が重要になってきます。

鳥は、他の脊椎動物とくらべて一夫一妻制の繁殖システムを持つ割合が高く、親が育雛へ

寄与し家族生活が営まれる点や、その社会の複雑さなどといった特徴から、家族・つがい

を基本要素とする社会関係とコミュニケーションとを対応づけて考えるのに適しています。

出身高校:フェリス女学院高校(神奈川県)

最終学歴:東京大学大学院総合文化研究科

(a) (b) (c)

いきもの

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何を研究しているのですか?

現在主な研究対象として飼育しているのは、鳴禽類の中でもカエデチョウ科に属する鳥

種です(図1)。鳴禽類一般に、発声学習によって獲得した歌(さえずり)は、なわばり防

衛や求愛のために用いられますが、ことカエデチョウ科の場合には、ほぼ求愛のためだけ

に主にオスが発声することがわかっています(図2)。この歌はメスに何を伝えているので

しょうか?

近年の研究では、鳴禽類の歌が発達初期の学習臨界期に獲得されることを根拠に、歌の

「質」、特にメスに好まれるような華麗で複雑な音響構造は、発達期のオスのコンディショ

ンを反映しているのではないか、と予測し、検証がすすめられています。また、メスの側

は、単につがい相手を選り好みするだけでなく、好ましいオスとつがった場合に、産卵や

育雛への投資量を増加させることも分かってきました。このような雌雄間の相互作用が淘

汰圧となって、鳴禽類の音声コミュニケーションは進化してきたと予測されます。

しかし、まだまだ多くの未解明な点が残されています。たとえばヒト同士では、発話に

加えて身振り手振りや顔表情などが組合わさり様々なメッセージが伝達され、鳴禽類の求

愛ディスプレイでは、音にダンスが組合わさっているように、視覚情報と聴覚情報はとも

にコミュニケーションに欠くことのできない役割を果たしています。このような視聴覚モ

ダリティーにまたがるコミュニケーション行動は、なぜどのように進化したのかについて

も、考えていきたいと思っています。

参考書

(1) 相馬雅代,「第8章親子関係・発達」,『行動生態学』,沓掛展之・古賀庸憲編,pp166-178,

共立出版(2012) 図2 研究材料とデータ

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参照

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