2008
年 度研 究報告 :経 営・ 産業グ ルー プま とめ
経営・産業グル ープは 、研究対象国8ヵ国の中小企業・関連機関へのイ ンタビュー調査
を中心に「現場主義」に 基づく研究を進めてきた 。また個別のインタビュ ー調査では把握 が 困 難 な 各 国 の 中 小 企 業 の 全 体 像 は 、 ア ン ケ ー ト 調 査 な ど に よ っ て 補 完 し て き た 。 最 終
2008年度は調査の不足していた国を中心にインタ ビュー調査を行ったほか 、5年間の研究
の取りまとめのため、実 施したアンケート調査の 分析、海外研究者の意見 の取り入れ、モ ノグラフ・シリーズとし て研究成果の集大成をお こなった。なお、研究者 それぞれが雑誌 などで個別に研究成果を 発表していることは言う までもない。
1.調査活動
2008年2月~3月、2008年8月~9月にかけて、これまでインタビューを 行ってこなか
った産業分野や国際機関 等にも訪問し、研究対象 としてきた産業を取り巻 く経営環境につ
いて異なる視点からの情 報を取り込む活動を行っ た。対象国、対象先件数 は以下の通りで ある。
日本29件、韓国11件、 台湾20件(台北市18件 、台南市2件)、中国23件(成都市8
件、重慶市3件、武漢市6件、上海市1件、北京市5件)、タイ9件、マレーシア13件、
ベトナム8件。
2.研究交流
2008年8月に国際コンファレンスを神田校舎にて 開催し、本調査研究に協力をお願いし
ている海外研究者や同様 の研究テーマを行ってい る内外の研究者を集め、 当グループがそ れまで取りまとめた研究 についてコメントを付す との視点から、それぞれ の報告を受け、
また海外研究者間で意見 交換を行ってもらった。 このような意見交換の成 果を取り込みつ
つ、当グループの研究成 果を発展させることに努 めた。
また 7 月 26~27 日にバンコクの泰日工業大学に おいて、泰日工業大学、 タマサート大
学の研究者、タイ外務省 、泰日経済技術振興協会 の関係者と研究交流を行 った(黒瀬、大
倉)。
3.研究成果
(1)モノグラフ・シリ ーズ
業グループは以下の5冊を作成中である。
「中小企業の理論的分析 」、「日本の産業発展と中小企業」、「中国の産業発展と中小企業」、
「台湾の産業発展と中小 企業」、「韓国およびアセ アンの産業発展と中小企 業」
(2)図書、雑誌、ディ スカッション・ペーパー 等
①中小企業共通
雑誌
・黒瀬直宏「企業の本質 は情報発見システム」『中小公庫マンスリー』Vol55 No44平成20年4月
・黒瀬直宏「小規模企業 の情報戦略第1回」『国民生活金融公庫調査月報』No.567平成20年7月
・黒瀬直宏「小規模企業 の情報戦略第2回」『国民生活金融公庫調査月報』No.568平成20年8月
・黒瀬直宏「小規模企業 の情報戦略第3回」『国民生活金融公庫調査月報』No569平成20年9月
②アジア横断
雑誌
・ 黒 瀬 直 宏 「 東 ア ジ ア 中 小 企 業 の 経 営 体 と し て の 発 展 段 階 - 情 報 共 有 を 尺 度 と し て 」『 三
田学会雑誌』101巻4号 平成21年2月
③日本
図書
・根岸秀行「岐阜アパレル産地構造の変容と縫製 メーカー」『朝日大学産業 情報研究所記念
誌』成文堂平成21年3月
雑誌
・黒瀬直宏「情報共有の薦め―アジアから日本企 業を見直す」『商工金融 』第59巻第1号
平成21年3月
・吉見隆一「諏訪地域の工業集積と地域経済活性 化への取り組み」『商工 金融』第58巻第
6号 平成20年6月
・吉見隆一「中小企業と受注先の多角化―中小機 械・金属工業にみる多角 化への対応と課
題―」『商工金融』第59巻第1号 平成21年1月
④中国
図書
・ 大 橋 英 夫 他 「 中 国 経 済 の 高 度 成 長 は い つ ま で 続 く ? 」21 世 紀 中 国 総 研 編 『 中 国 情 報 源
[2008-2009年版]』蒼蒼社 平成20年5月
・大橋英夫他「米国の景 気後退と中国経済――『 連動性』と『非連動性』 をめぐる論争」
21世紀中国総研編『中国情報ハンドブック[2008年版]』蒼蒼社 平成20年6月
・小林守他「我が国の東 アジアFTA/EPA形成の在り方」日本機械輸出組合 平成20年5月
・湯進『東アジアにおける二段階キャッチアップ 工業化-中国電子産業の 発展』専修大学出
版局 平成21年2月
・根岸秀行他『東アジア の中の日本―環境・経済 ・文化の共生を求めて』 富山大学出版会 平成20年10月
・李東勲他「中小企業-東アジア8ヵ国・地域の 課題」『東アジアと経営 学』ミネルヴァ書
房 平成21年3月 雑誌
・金光日「奇瑞汽車の発 展プロセスについて」『専修ビジネスレビ ュー』Vol.3 平成21年3月
・小林守「中国における 外国工作機械製品の競合 状況と我が国工作機械メ ーカーの事業展 開」『アジア経営研究』No.14 平成20年6月
・駒形哲哉「中国調達で 変わる業界の担い手」『 商工金融』平成20年5月
・駒形哲哉「国防費の増 大と国防工業体制改革」『東亜』(491号)平成20年5月
・駒形哲哉「中国の対日 イメージと日本市場の特 殊性」『東亜』(494号)平成20年8月
・駒形哲哉「中国の中小 企業の現状と発展課題」『日中経協ジャーナル』 平成20年11月
・駒形哲哉「転機迎える 中国の輸出型中小企業」『東亜』(497号)平成20年11月
・駒形哲哉「東アジア内分業の構図-天津自転車 産業の台頭をどう位置づ けるか-」『三田
学会雑誌』101巻4号 平成21年1月
・駒形哲哉「中国・中小 企業分析の視角―民営企 業論か中小企業論か」大 阪経済大学中小
企業・経営研究所 『中 小企業季報』平成21年1月
・湯進「温州・台州地域 の金型産業集積と中小企 業産業」JETRO『中国経 済』No.509 平成
20年6月
・ 湯 進 「 所 有 構 造 改 革 と 持 続 的 成 長 - 中 国 大 手 電 子 企 業 の 事 例 を 中 心 に 」『 証 券 経 済 学 会
年報告』No.43 平成20年7月
・林松国「地域経済発展の義烏モデルに関する一 考察:雑貨卸売市場と産 業集積の視点か
ら」『中国研究論叢』第8号 平成20年8月
ディスカッション・ペー パー
・湯進「蘇州の工業化と 中小企業の育成」2008年7月専修大学社会知性開発研究センター
中小企業研究センター(No.0015)
・林松国「中国中小企業 の課題―資金調達とイノ ベーションの問題を中心 に― 」2008 年
(3)学会発表等
・荒井久夫「台湾産業のスピン・オフ形態の創業事例-IT、機械・金属産業を中心として-」
日本台湾学会設立10周年記念第10回学術大会 東京大学平成20年6月
・甘超宏「中国における コストマネジメントの発 展」中国経営管理学会 流通科学大学 平
成20年9月
・甘超宏「中国における 企業業績評価論ーABC/ABMの視点から」専修大学緑鳳学会 専修大
学 平成20年10月
・甘超宏「中国環境コス トマネジメントにおけるABCの応用」日本社会関連会計学会第2
1回大会 関西大学 平成20年11月
・金光日「奇瑞汽車の発展プロセスと課題につい て」専修大学商学研究所 研究会 専修大学
平成20年10月
・黒瀬直宏「アジアの中 小企業を分析する」専修 大学社会知性開発研究セ ンター主催 5t
hSMEs in a Global Economy Conference 2008専修大学 平成20年8月
・小林守「我が国におけ る本社ー海外現地法人間 の金融的関係の動向につ いて」アジア市
場経済学会第12回全国大会 愛知大学 平成20年6月
・小林守「中国のFTA政策の特徴と華南地方に進 出する日系企業の対応に ついて」アジア
経営学会第15回全国大会 福岡大学 平成20年9月
・チャールズ・ハービイ"Australian SMEs:contemporary challenges and opportunities" 専修大学社会知性開発研 究センター主催5th SMEs in a Global Economy Conference 2008
専修大学 平成20年8月
・チャールズ・ハービイ"Perceptions of Business Challenges Facing Malaysian SMEs:Some
Preliminary Results"専 修 大 学 社 会 知 性 開 発 研 究 セ ン タ ー 主 催 5th SMEs in a Global
2008
年度研究報告:経営・産業グループ
●
氏名・所属
黒瀬直宏・専修大学商学部教授
●
研究目的の概要
①研究対象各国の中小企業の経営体としての発展性と問題性、国民経済発展における役 割と問題を把握する。
② 国 民 経 済 の 発 展 段 階 の 相 違 に よ る 中 小 企 業 の 特 殊 性 と 発 展 段 階 の 相 違 に も か か わ ら ず 存 在 す る 共 通 性 を 明 ら か に し 、 ア ジ ア 中 小 企 業 論 の 構 築 を 目 指 す 。
③各国中小企業政策の推移と現状を把握し、今後の方向を提言する。
●
2008
年度の研究実施内容
1. 研究成果の発表
(1)上記②に関するとりまとめが遅れていたが、本年度に本格的な分析にとりかかるこ とができた。以下で触れるような不十分な点もあるが、先行研究には見られない成果が上
げられた。その基礎となったのは、8 カ国の中小製造業に対する統一質問項目によるアン
ケート調査である。対象業種は、機械製造業・金属製品製造業、繊維製造業・衣服その他
繊維製品製造業で、2004年10月から2007年3月にかけて調査・集計を行った。アジア各
国でのアンケート調査は見られるが、各国を横断する統一アンケート調査の例は少ないと 考える。この調査結果と現地でのインタビュー調査を基に、次の3点を明らかにした。
①まず、東アジアにおける中小企業発展のダイナミズムが具体的に明らかになった。日
本では1990年代以降設立された企業は5.1%しかないのに東アジア各国では30%~90%も
ある。また、98年~03年の売り上げ伸び率2倍以上という企業の割合は、日本の2.5%に
対し東アジア各国では17%~57%もある。そして、ほぼ、市場経済化・工業化の歴史が若
い国ほど近年の開業が多く、売上伸び率も高いことが、データを基に具体的に把握された。
ただし、市場経済化・工業化の歴史の浅い国でも中国のように、広大な国内において地域 により市場経済化に時間差が存在するところでは、地域間の特徴の差異も大きく、各国間 比較では国内格差の存在を認識しておく必要がある。
報共有的労働管理(労働者の自立的包摂)」と高度化する。市場経済化・工業化の歴史の 最も新しい国々での中小企業の発展は急だが、経営体としては「粗放的労働管理」、「統 制的労働管理」という低位の発展段階にある。
③日本の中小企業問題の中心は「販売価格」の低下に象徴される大企業の圧迫であるの に対し、東アジアでは資金と人材の不足であることが明らかになった。しかし、これらの 問題が中小企業の急速な成長に促拍されているのは確かだが、その背後にある仕組みは、
まだ、総合的には把握されていない。ただ、中国における資金調達の制約条件に関しては、
民営中小企業への融資の法・制度的諸条件が未整備であることが考えられる。中央政府の マクロ政策の必要から設定される金融機関の融資条件が煩雑で、民間金融(非正規金融) に依拠したほうが簡便であるか、もしくは個別地域の中小企業の返済能力の実態に沿わな いことも、現在の中国の中小企業の資金調達を困難にしている面がある。
以上は「東アジア中小企業の経営体としての発展段階―情報共有を尺度として」として、
2008年度内に発表される(『三田学会雑誌』101巻4号)。
(2)上記①に関する基礎理論として、すでにディスカッション・ペーパとして、「新・
複眼的中小企業論」(2008年2月)をまとめていたが、これをさらにブラシュ・アップし、
モノグラフ・シリーズに採録することとした。本考は他の論考とあわせて、2009年度に『中
小企業発展の理論』として同友館より発刊予定である。
2. 実態調査
今まで行っていなかったベトナムを対象に実態調査を行い(08年8 月6日~13日)、
以下の所見を得た。
① ベトナム経済の変調と中小企業経営
ここ数年、韓国を筆頭に海外から投資が加速し、8%台の経済成長が続いていたが、本年
に入って変調が現れ、1~5月の貿易赤字は前年同期比の3.4倍増加、6月の消費者物価指
数は前年同月比26.8%と急上昇、最低賃金の月 7000円程度の月給で暮らす労働者を直撃、
賃金引上げを要求する労働者によるストライキも発生した。政府は金融引き締めに転じ、
現地でのヒアリングによると銀行の貸出金利は 24.5%に上昇、中小企業は借り入れが困難
化している。また、バブル状態にあった土地価格と株価も暴落、銀行の不良債権が拡大し、
これも銀行の貸し渋りを呼んでいる。このようにマクロ経済の足下の状況はよくないが、 これが中小企業に経営危機をもたらしているかというと、そういう感じではなかった。金 利の上昇については、そもそも銀行借り入れに依存している中小企業はそう多くはなく、 工場拡大のために銀行借り入れを予定している企業も、いずれ金利は下がるだろうから、 そうしたら借り入れると、比較的落ち着いていた。賃金上昇と原材料価格上昇は企業経営 上の重大問題だが、売上自体は拡大しているため、何とか凌いでいるようであった。
②ベトナムの中小企業の問題は、短期の経営環境の変化より構造的な問題にある。
年設立、ハノイの北東ニンビン省)を訪問した。ベトナムでは5番目ぐらいに位置する企 業だが、その製品は中国製品をモデルとしていた。部品もコードを読むものなど「難しい 部品」は中国から輸入していた。賃金は月10000円(150万ドン)~17000円(250万ドン)
で、ざっと中国の賃金の半分だが、価格は中国製100に対し120 になるという。では中国
製にどう対応するかというと保証期間を1年とし、故障があればすぐ直す、アフターサー
ビスのよさでアピールするという。
ただ、DVD は利幅が低いので、1 年後には生産をやめ冷蔵庫やエアコンを作る。冷蔵庫
などを作っている企業は日本や韓国との合弁会社など大手4社、中小企業は多数あるが、
ベトナムではまだこれからの市場であるので、合弁企業とは違う中級品を狙えばチャンス
はある。しかし、この 場合も中国の候補企業3社のうち1社から技術導入をする。2年間、
部品はすべて中国から購入し、その後内作化し、価格の引き下げを図る。
この企業の 35 歳の社長は大学で電子や機械を学び、ベトナムでは近代的経営をしてい
る方だが、以上の企業内容にベトナムの中小企業の問題性が示されている。
第1にこの企業は、製品は中国製品の模造で、部品も中国に依存している。独自製品の
開発が困難なのはやむをえないとしても、部品のベトナム・ローカル企業による生産が困 難なのはベトナム人の足になっているオートバイでも見られた。ベトナム商工会議所の話 だと、日本企業(ホンダ)のオートバイ工場向けの部品メーカーを育成しようとしたが、 品質が悪く日本企業は採用しなかった。中国から安い部品を輸入できるので、部品メーカ ーの育成は難しいとのことだった。機械関係だけでなく、機械に比べればそれほど技術の 必 要 の な い 衣料 品 な ど の 日 用 品 で も 事情 は 似 て い る 。 紳 士 服 既製 品 を 製 作 し て い る 企業
(VANVU、従業 員100人、1985年設立、ハノイから40分のバクニン省)では、生地はすべ
て中国、イギリス、フランス、イタリア、インド製であった。糸を購入し、製織し、T シ
ャツ・Yシャツを生産し、60%を輸出している国有企業(GIA DINH-DHONG PHU TEXTILE AND
GARMENT CORP. 従業員500人、2008年1月2会社合併により設立、ホーチミン市)でも、
糸や染料などは中国、台湾、EU、日本から輸入し、国内で調達しているのは、アクセサリ
ーだけだった。
製品が物まねの上、部品や部材を国外に依存していると付加価値率を高めることができ
ない(台湾は日本製品を真似ても部品は自分で作った)。DVD の利益率が低いのはこのた
めだろう。
第2に、賃金は中国より低い、それにもかかわらず中国製より価格が高くなる。これに
ついても日用品も同じで、日用品市場
いちば
に行くと中国の衣料品があふれており、ベトナム製 品は中国製品に価格競争でも負けている。それはベトナムの物的生産性が低いため、低賃 金の有利性が打ち消されてしまうからである。物的生産性が低いのは、機械化・自動化が 遅れているためで、紳士服工場では型紙をはさみで切って作るなど、昔ながらのやり方で あった。
工業化の歴史が浅いことに由来しており、外国技術の導入、人材教育など、時間をかけて 解決していくしかない。
③現代においてはこういう大量生産型産業の育成は避けてとおることはできないが、ベト ナムでは工芸的なハンドメード製品が地域社会を支えていることも重要である。
刺繍を中心に(80%)かご製品、漆器、しめ縄などを手作りし、輸出している企業を訪
ねた(PRIMEXCO NINH BINH、 従業員125人、1968年国営企業として設立、2006年株式会
社化、ハノイの南西のニンビン省)。この企業では、デザイナー4 人を抱え自社デザイン
の刺繍製品(テーブルクロスなど)のほか、顧客指定のデザイン、素材で注文生産にも応
じていた。機械を用いず針一本で刺繍を施す完全なハンドメードで、40センチ×30センチ
四方のテーブルに置く敷物でも一週間かかる。この企業では周辺の刺繍村から従業員を雇
っているというので、行ってみた(ラン村、車で10分)。その村では500軒の家が刺繍を
行っている。そのような村は他にもあり(南西へ60㌔)、この企業は生産量の40%を村の
1000軒の外注先に依存している(原材料支給)。ある一軒を訪ねたところ、一部屋に5人
ほどの娘さんが集まって刺繍をしていた。近所の人が集まっているのかと思ったが、皆姉 妹で、他人を雇わず家族労働が原則のようだ。「男は役に立ちそうもないですね」といっ たところ、そんなことはないと、ご主人自らがやってみせた。この村では誰でも子供の頃 から刺繍をやっており、刺繍のできない人はいないそうである。家族労働というと前近代 的で貧困という印象が付きまとうが、この家族からはそのような印象は受けなかった。こ
の村は風光明媚な観光地でもあり、観光客に製品を売る店も多かった。当地では100年ま
えから刺繍が始まったようだが、工業化と共に地域を支える手作り製品が消えていかない ような振興策も必要だろう。
④人材派遣とソフトウエア製作を行っている企業(CICS、ホーチミン市)について。
人材派遣は人材がいわば商品であり、ソフトウエア制作は労働集約的事業であり、共に 鍵は「人材」である。
人材派遣業
今回調査で訪問した企業でのワーカーの月給は、ハノイの近くのバクニン省で紳士服の
縫製を行っている企業では8,100円~20,000円(出来高払い制)、ニンビン省でDVDプレ
ーヤーを作っている企業では10,000~17,000円(基本給:40%と出来高払い:60%)、ホー チ ミ ン 市 の 織 布 と ワ イ シ ャ ツ な ど を 縫 製 し て い る 国 有 企 業 で は 14,000 円 ( 基 本 給 ほ ぼ
100%)、というように、一時期と比べ上昇しているが、中国の半分近くという印象でまだ
まだ安い。一方、従来からベトナムの識字率が高いということが評判だったが、現在では
中国から高校へは40%、高校から大学へは30%(日本52.8%)が進学し、高等教育も発展途
上国としては普及している。ある日本人経営者はベトナム人の勤勉さには目を見張るもの があると語っていたが、勤労意欲に関しても評判がよい。
business」という言葉が新聞などで見られる。ベトナム政府の認可を受けた会社は全国で
181社あるようで2社以外は国営企業。うち、14社が日本向けで、CICSもその一社である。
この企業の前身は国営放送局(VIC)の一部門で、14年前から派遣事業を始め、3年前に
日本向けに技術研修生・実習生を派遣する事業を開始、08年1 月、独立して民営化した。
といっても、株の51%は政府が持ち、49%は日系企業(バックアップの子会社のサンビック)
が出資している。年間300人を派遣し、現在日本に469人滞在している。事業のシステム
は次のとおりである。
日本にベトナムからの研修生受け入れ希望をする企業(中小企業が多い)の組合がある
((協)関西経営開発センター50社、精密金属部品製造協同組合23 社、(協)アジアクリエ
イティブネットワーク15社)。(組合はバックアップが組織した。)企業はこの組合を通
じて研修生の派遣を申し込む。この派遣会社が派遣候補者を用意し、企業が面接をして、3
~4 倍の候補者から選ぶ。合格した人たちはこの企業の作った教科書で日本語教育を受け
る。6週間を単語習得、次の7週間を文法の勉強、8週間を会話に当てる。一日8時間21
週の教育で、これが終わると日本に派遣される。教育現場を見学したが、若い人たちが片
言の日本語で挨拶してくれたのが印象的だった。この企業は組合から1年目は一人当たり
月4万円の手数料を受ける(2年目3.5万円、3年目3万円)。
ところで、日本では自動車会社の下請け企業が最低賃金以下でベトナム人実習生を雇用 し、労基法違反に問われるなど、外国人研修・実習制度には問題も多い。その点、この企
業では最低の金額として、1年目の研修生で月額69,000円の生活手当て、2年目からの実
習生では月額80,000円、3年目では90,000円の賃金を支給することを条件としている。
賃金収入に関しては残業でこの2倍ぐらいになる。今までのところ賃金に関して問題が起
きたことはないという。また、派遣したら終わりではなく、派遣者の家族会も作り、派遣 者と家族との連絡を取り持っている。日本にいったままその後の行方がわからなくなる失 踪者がいるのが現実だが、失踪率は他の派遣機関が12~15%あるのに対し、この企業
では1.9%(07 年)、今年は1%以下におさえるのを目標としている。この企業では帰国し
た人材をベトナムの日本企業に紹介することもしている。日本企業の考え方がわかってい るので歓迎されるという。人材育成の成果をあげていると言えよう。
ソフトウエア制作
こ の 研 修 生 派 遣 企 業 に 出 資 し て い る 日 本 企 業 は ベ ト ナ ム で ソ フ ト ウ エ ア の 技 術 者 の養 成とソフトウエアの受託制作を行っている。日本で受注し、日本でソフトの基本設計をし
たあと、詳細設計をベトナムで行う。コストは日本で行う場合の半分から3分の1になる。
ベトナムは中国より賃金が低いのに、生産性が低いため、製造業のコストは中国を上回っ てしまう。生産性の低い原因の一つが機械が旧式のためとされているが、ソフト制作の場 合はコンピュータ使用のため、このような不利がなく、賃金コストの低さが、コストの低
下をもたらす(中国の7割のコストですむという人もいる)。また、コストが低いだけで
う。このような有利性があるためか、ベトナムは国としてもソフトの技術者育成に力をい
れ、現在の32,000人から2010年には5万人にする計画を持っている。ある広島の企業(柏
工業)はホーチミン市で2次元の設計データを三次元データに変換する作業をしていたが、
それもこのようなソフト技術者のコストの低さと能力の高さがあるためだろう。日本企業 のベトナムでの「オフショア開発」は盛んになると思われる。
2008
年度研究報告:経営・産業グループ
●
氏名・所属
大西勝明・専修大学商学部教授
●
研究目的の概要
特に、韓国、ベトナムの電気機械工業の発展の考察を軸に、関連産業の展開、国際分業、 中小企業の実態等の把握を目的とし、平成20年度、以下の活動を実施しました。
・活動内容
1.韓国(馬山・昌原市)での実態調査の実施
2008年8月19日(火)より8月23日(土)にかけて、韓国慶南馬山市、昌原市に おいて、実態調査を実施しました。
釜山を中心とした地域が、一部、馬山市にみられるように、相対的に成熟化、比重低下を する中で、新た産業集積が、昌原市で形成されてきたり、電子機械工業の定着が起きてい る等多様な変化を確認してきた。スニーカーといった国際競争力を持ちえなかった製品の
産地は衰退し、低賃金を条件とした外資依存も韓国では、存続することにはならなかった。
前者は、ベトナム等に移転し、かつて、馬山市に進出してきた日系企業もほとんど移転を している。代わって、財閥系企業と関連する機械加工業、財閥系企業への部品供給を担う
企業が台頭してきている。そして、機械加工の集積が、動揺しながらも、形成されている。
関連して、造船業および船舶部品加工業が、一定の集積をしている。多様な取引関係が形
成され、韓国造船業の展開を支えている。また、造船部品製造業においては、人的な面で、
外国人の活用を進め、制度化を進めている。つまり、実態調査により、以下の諸点を確認 してきた。
① 産業の衰退化の経緯
② 新たな産業集積の形成・財閥依存
③ 機械加工の国内的伝播と国際化(一部業績悪化のため回帰)
④ ベンチャー企業の台頭
⑤ 外国人労働者の拡大とその制度化
2.ベトナム(ハノイ市、ホーチミン市)での実態調査
大学を訪問し、学術交流も進めた。特に、以下の諸点についての考察を試みてきた。
① ベトナムでの電気機械工業の台頭
② ベトナムにおける政府、産業政策の役割
③ ベトナムにおける財閥系企業の形成
④ ベトナムにおける地場企業(地域・刺繍)の活躍
⑤ ベトナムにおける日系企業の現状
3.香港での日本産業に関する聞き取り
8月13日(水)から8月14日(木)にかけ、香港を経由し、日系企業の現状や機械輸 出状況の聞き取りを行った。
●研究成果の公表・モノグラフシリーズの発表
今年度が5年目にあたることから、韓国とベトナムの関し、以下をモノグラフシリーズと
して発表している。これらは、別途、公表することになる。なお、これらモノグラフシリ ーズは、いずれも2008年前半までを前提に作成されたものであり、2008年後半以 降の深刻な事態を反映していない。韓国電子機械工業にしても、ベトナム産業も、輸出お よびアメリカ経済に大きく依存しており、より厳しい事態に陥っている。そのことを明記 しておきたい。
1.「韓国の産業発展と電子機械工業の躍進」:英訳(The development of Industries and
the Remarkable Progress of the Electronic Machinery Industry in Korea)
骨子は、以下の通りである。 ① 目的
急速な発展を遂げてきた韓国産業に影響を与えた諸要因を指摘し、1997年の金融危 機への対応、その後の特に、電子機械工業の動向を考察し、それに関する所見を明確に示 す。
② 概要
韓国の急速な産業発展を支えた要因は、政府の産業政策、財閥の拡大戦略、輸出志向的工 業化にあった。1997年アジア通貨危機に際し、韓国経済は、深刻な危機に瀕し、財閥 再編を余儀なくされてきた。それでも、なおも、再編を経て、電子工業等は、躍進を続け ている。ただ、電子工業にしても、コンピュータ等は低迷、衰退化をし、電子部品は健闘 している。また、中小企業のウエイトも大きく、貿易赤字から貿易黒字に転換している。 国際化を指向し、競争力を強化しているのである。
③ 展望
2 .「 21 世紀 のベト ナム 産業 と企業 改革 の課 題」:英 訳(Vietnamese Industry in 21st
Century and the Task of Enterprise Reform )
骨子は、以下の通りである。 ① 目的
注目されているベトナム産業の現状を分析し、今後の課題を明確にしていく。 ② 概要
ベトナムの産業発展は、市場経済化の促進、外資の導入とそれへの依存、輸出拡大によ り実現されてきた。そして、なおも、工業化や近代化が、国有企業改革、民間企業育成に より推進されている。また、中小企業に託されている役割も大きい。政府主導で、国際的 な動向を見据えて、積極的な産業発展が追求されている。ただ、21世紀に突入し、ベト ナムをめぐる国際環境は大きく変化しており、計画通りに事態が推移していくとは、理解 されえない。
③ 課題
1
2008
年度研究報告:経営・産業グループ
●氏名・所属
大橋英夫・専修大学経済学部教授
●研究目的の概要
中小企業研究センター経営・産業グループ中国・台湾班では、次のような観点から研究 を進めてきた。
第1は、中小企業の発展過程であり、中国・台湾の経済発展と中小企業の役割に関する 歴史的考察である。
第2は、中小企業を取り巻く経済環境の変化であり、中国・台湾の中小企業に重大なイ
ンパクトを与えた近年の経済・ビジネス環境の変化を考察している。具体的には、中国で あれば経済改革、台湾であれば両岸関係が考察されている。
第3は、中小企業の実態であり、産業別・地域別にみた代表的な中小企業と産業集積を
実態分析している。経営・産業グループの最重点研究項目であり、中国・台湾の現地調査 の成果が最大限活用されている。
第4は、中小企業の課題であり、中国・台湾の中小企業が抱えている課題、それに対す
る政策対応を考察している。また考察内容は、必ずしも明示的ではないが、中国・台湾の 中小企業政策に対する若干の政策提言となっている。
以上の観点に基づき、また中国・台湾の中小企業調査を通して、中国・台湾反では次の
ような最終論文をまとめることができた(具体的な研究活動については、別途刊行中の『中
小企業等実態調査報告書』や『中国の産業発展と中小企業』及び『台湾の産業発展と中小
企業』を参照されたい)。
1.中国
本研究プロジェクトの期間を通して、中国は 2 桁の経済成長を維持し、「世界の工場」
として急速な工業化を達成した。この高度成長の過程において、中小企業は長足の進歩を 遂げ、また急速な工業化の担い手として高度成長に多大な寄与をなした。とはいえ、中国 はいまだ市場経済体制の構築に向けての移行期にある。改革・開放期に誕生した中小企業 は、急速な工業化のみならず、経済体制の転換を促す担い手でもある。中国の中小企業研 究は、日本などの中小企業との比較研究にとどまらず、中国の急速な工業化、内発的発展 と国際分業、さらには経済移行の観点から、中国の経済発展を理解するうえでも欠かせな い作業といえよう。
このような問題意識から、本研究プロジェクトでは、現地調査を含めて中国の中小企業
の実態把握に努めた。そこで本報告書では、まず中国の経済発展における中小企業の役割、
態の把握に努め、最後に中小企業政策、中小企業評価、中小企業が抱える問題点を考察し ている。報告書の構成は次の通りである。
第1部 中小企業の生成と発展
第1章 産業発展と中小企業(駒形哲哉)
第2章 経済改革と中小企業(雷新軍)
第2部 中小企業と地域経済
第3章 天津の自転車産業(駒形哲哉)
第4章 蘇州の産業発展と中小企業(湯進)
第5章 温州の金型産業(湯進)
第6章 紹興の繊維産業(顧懿)
第7章 義烏市の経済発展(林国松)
第8章 奇瑞汽車の発展プロセス(金光日)
第9章 珠江デルタの専業鎮と産業集積(大橋英夫)
第3部 中小企業の課題と展望
第10章 中小企業政策の展開(駒形哲哉)
第11章 中小企業の業績評価(甘超宏)
第12章 中小企業の課題(林国松)
2.台湾
台湾は戦後急速な経済成長を遂げたアジア新興工業経済(NIEs)のひとつとして知られ
ている。その台湾の経済発展と産業高度化は、大企業の集積によって達成されたというよ りは、数限りない中小企業が新たな機会を求めて新規市場に参入することによって実現さ れたといってよい。しかも多くの中小企業は大企業の系列下に入ることなく、独立性を維 持しつつ企業間のネットワークを形成し、国際経済・産業発展の激しい変化に対応してき た。台湾の中小企業研究は、日本などの中小企業との比較研究にとどまらず、台湾の経済 発展を理解するうえでも欠かせない作業といえよう。
このような問題意識から、本研究プロジェクトでは、現地調査を含めて台湾の中小企業
の実態把握に努めた。そこで本報告書では、まず台湾の経済発展における中小企業の役割、
変化する両岸経済関係と台湾企業の対応を取り上げ、次いで具体的な産業分野(金属、電 子、繊維)における産業発展の実態の把握に努め、台湾の中小企業政策と中小企業が抱え る問題点を考察している。報告書の構成は次の通りである。
第1章 経済発展と中小企業の役割(陳振雄)
第2章 両岸経済関係の深化と台湾企業(大橋英夫)
3
第4章 IT産業の発展を支える部品製造業(荒井久夫)
第5章 新たな発展を模索する繊維製造業(荒井久夫)
第6章 中小企業政策の変遷と背景(荒井久夫)
第7章 中小企業の課題(大橋英夫)
●
2008
年度の研究実施内容
1.現地調査
2008年度は、台湾と中国の現地調査に各々1回参加することができた(インタビューの
詳細は「実態調査報告書」を参照)。
(1) 台湾
2008年8月24~30日に台湾の中小企業調査の一環として、2008年3月に引き続き、
いまだ十分な情報が集まっていない繊維産業へのインタビューを行った。台湾の繊維産業 は典型的な中小企業中心の産業分野である。台湾の高度成長を牽引してきたものの、近年 では伝統産業として国際競争力を急速に低下させている。その結果、中国大陸への生産拠 点の移転を急速に進めた産業でもある。今回は、台湾の繊維産業の生産現場を含めた実態 調査を行い、繊維産業で進行している中国大陸との生産棲み分けについても、その実態を 限られた範囲内であるあるが把握に努めた。
今回の訪問企業も、特殊な繊維や特殊な商品を扱っている企業、またユニークな海外展 開を行っている企業が多く、世界的な景気後退が迫っているなか、経営者の強力なリーダ ーシップのもとで、順調な成長を遂げている企業が少なくなかった。しかし訪問した伝統 的な織布業の企業は、今年に入ってからの原糸価格の高騰、景気減速による同業者間の競
争激化により受注の減少が響き、稼働率が50%までに低下していた。織布業界は、今年に
入り、倒産、廃業が続出している状況にあり、苦境のなかインタビューに応じていただき、
問題点を的確に指摘していただいた企業に感謝したい。
なお、今回の訪問企業は、合博実業有限公司、永大針織有限公司(8月25日)、協隍企
業有限公司、造南興業有限公司(8月26日)、政霖針織公司、世堡紡織公司(8月27日)、
新繊実業有限公司、永利晟有限公司(8月28日)、康那香企業公司、仁美商標工業公司(8
月29日)である。また今回の現地調査も中華経済研究院の協力をえた。
(2) 中国
2008年9月7~14日に中国の中小企業調査の一環として、中国の中部地域を代表する
に、自動車部品産業分野における中小企業の成長を目の当たりにすることができた。しか し武漢市に相応しい企業訪問は、やはり重厚長大企業であり、経済改革の進展に伴うこれ ら大企業の推移はきわめて興味深かった。なお、今回の調査では武漢市の帰途に北京に立
ち寄り、中国の中小企業研究のセンターである中国社会科学院工業経済研究所に立ち寄り、
意見交換をすることができた。北京訪問も大きな成果であった。
なお、今回の訪問企業・団体は、中国国際貿易促進委員会武漢市分会、武漢重型機床集
団有限公司、東風汽車有限公司、東風富士湯姆森調温器有限公司(9月8日)、山緑農産品
集団有限公司、武漢市科達雲石護理材料有限公司(9月9日)、瑞穂実業銀行(中国)有限
公司北京分行、中関村科技園区石景山園管理委員会(9月11日)、中国社会科学院工業経
済研究所、北京責創科貿有限公司(9月12日)、北京国通鑫秀国際物流有限公司である。
2.報告書の執筆
本年度最大の研究活動は最終報告書の執筆である。これまでの現地調査で得られた知見
に基づき、報告書の「中国編」と「台湾編」に合計 3 本の論文を寄稿することができた。
主要な内容は次の通りである。
(1)珠江デルタの専業鎮と産業集積
本稿で取り上げた広東省の中央に位置する珠江デルタは、上海を中心とする長江デルタ
とともに、いまや「世界の工場」の一翼を担う存在となっている。この珠江デルタは、1970
年代末の中国の経済発展戦略の大転換後、改革・開放の最前線として位置づけられてきた。
中国が改革・開放に転じると、広東・福建両省に対して「特殊政策・弾力措置」が講じら れ、経済計画、価格、賃金、財政、企業管理、対外経済、外貨管理などの諸分野において 大幅な自主権が認められた。こうして中国の他の地区に先駆けて、深 圳・珠海の2つの経 済特区を有する珠江デルタでは、市場経済化に向けて多様な実験が実行に移された。その 成果のひとつとして、珠江デルタでは、私営・民営企業などと称される非公有制の経済主 体が逸早く誕生したことがあげられる。
5
はじめに
第1節 珠江デルタの外向型発展
1.珠江デルタの経済発展
(1)広東経済の台頭
(2)珠江デルタの地域経済
(3)珠江デルタの主要産業
2.香港と珠江デルタの経済融合 3.珠江デルタにおける香港企業 4.香港と珠江デルタの経済関係 5.香港と珠江デルタの分業関係 6.香港企業の現地化
7.香港ビジネス・モデルの普及
第2節 専業鎮と産業集積
1.専業鎮とは何か
2.専業鎮形成の契機 3.専業鎮の発展 4.専業鎮の分類 5.産業集積の発展過程 6.内生・外生型産業集積
第3節 東莞市の電子情報産業
1.経済発展の経緯
(1)外生型産業発展
(2)経済成長の成果
2.電子情報産業の発展 3.東莞市石龍鎮のケース 4.東莞市石碣鎮のケース 5.電子情報産業の課題 おわりに
(2)両岸経済関係の深化と台湾企業
本稿で取り上げる台湾経済は、数十年間にわたり持続的な成長を達成し、半世紀足らず
の間に、先進国に匹敵する所得水準と産業構造をもつ経済に変貌した。しかも、その経済
成長は大きな格差を伴うことなく達成された。さらに 1980 年代半ばまでに、台湾は開発
志向の強い権威主義体制からの脱却を図り、民主化を実現した。その後は世界経済を一変
させた情報技術(IT)産業を効果的に取り込み、台湾経済は IT 産業の世界的なセンター
として相対的に高い成長率を維持した。このような成功経験から、台湾は発展途上国の「優
等生」、また外向型経済発展のモデルとみなされてきた。
しかしながら、1980年代半ばから、台湾経済は対米黒字と経常黒字の拡大、急速な脱工
業化・サービス経済化に直面し、1990年代には先進国型経済に向けての構造転換を遂げた。
台湾経済の構造転換は中小企業の経営環境を激変させ、生産・輸出環境の悪化に直面した 多くの中小企業は海外生産に新たな活路を見出した。なかでも、対外開放に転じた中国大 陸は台湾企業の格好の進出先となった。その後、中国経済の急成長に伴い、中小企業を含 む多くの台湾企業が中国大陸での生産と市場に大きく依存することになった。
本稿では、台湾経済を牽引してきた製造業に従事する中小企業の近年の動向を、台湾の
経済発展のなかに位置づけ、その外向型戦略に基づく企業行動を考察している。まず 1980
はじめに
第1節 経営環境の変化
1.国際環境の変化 2.米国との貿易摩擦 3.生産コストの上昇
4.後発途上国の「追い上げ」
第2節 産業構造の変化
1.伝統産業の衰退 2.産業技術の高度化 3.台湾経済の構造転換
第3節 台湾企業の対外投資
1.対外投資の推移 2.国・地域別構成 3.業種別構成
第4節 大陸政策の変化
1.緊張緩和の動き
2.中国経済への依存度の上昇
3.政府と企業の選択肢
第5節 両岸経済関係の深化
1.両岸貿易の拡大 2.両岸貿易の商品構成
第6節 大陸投資の展開
1.投資の動機
2.伝統産業の展開
(1)珠江デルタ期
(2)長江デルタ期
3.IT産業の展開
(1)サプライチェーン投資
(2)IT投資の特徴
4.両岸分業体制
(1)分業体制とネットワーク化
(2)産業集積の効果
(3)大陸投資のインパクト
第7節 大陸投資の現地化
1.購買
(1)機械・設備
(2)原材料及び部品・半製品
2.販売 3.人的資源 4.財務 5.R&D
第8節 大陸投資と中小企業
1.中国大陸での事業展開 2.台湾と中国大陸の分業関係 3.中小企業の経営状況 おわりに
(3)中小企業の課題
中小企業が抱えている問題は多岐にわたる。ただし、国民経済・産業構造の相違により、
7
関係を構築したりして、いわば非公式な戦略的アライアンスを形成している。このような 台湾の中小企業の特徴は、なによりもその「起業文化」に端を発する。台湾企業の起業形 態としては、従来の勤務先からのスピンオフ型が圧倒的に多く、またそれが当然とされる 土壌・企業文化がある。現在の台湾経済・産業を代表する民間大企業といえども、その多
くは「白手起家」(裸一貫での起業)に原点を求めることができるのである。
したがって、台湾の中小企業が抱える課題は、当然のことながら、日本の中小企業が直 面している問題点とは大きく異なる。しかし中小企業が、大企業と比べて、資金や人材面 で明らかに不利な立場にあることには変わりはない。本論では、経済部統計処の編纂資料 や現地調査でのインタビューに基づき、まず台湾の中小企業の資金問題と人材問題を検証 している。次に企業経営上の問題を考察したうえで、台湾の中小企業に対する政策につい ての評価が行われている。なお、本稿の構成は次の通りである。
はじめに
第1節 資金問題
1.資金調達源 2.資金調達難の理由
第2節 人材問題
1.人材不足分野
2.外国人労働者の導入
第3節 経営問題
1.企業経営の課題 2.競争戦略 3.技術戦略
第4節 政策問題
●研究成果の公表
必ずしも中小企業論ではないが、2008年度には中国経済に関して以下の論評を発表した
(近刊を含む)。
第1に、単行本所収論文は次の通りである。
(1)「構造化する経常黒字・収支不均衡問題」関志雄・朱建栄・日本経済研究センター・
清華大学国情研究センター編『中国は先進国か』勁草書房、141~170頁、2008年
11月。
第2に、今年度、参加した各種研究会の報告書は次の通りである。
(1)「中国の対外進出(「走出去」)戦略」、「中国 経済の現状と課題」『IIST 国際情勢研
究会報告書』貿易研修センター、近刊。
第3に、雑誌・年鑑等の定期刊行物所収論文は次の通りである。
(1)「中国経済の高度成長はいつまで続く?」21世紀中国総研編『中国情報源[2008-2009
年版]』蒼蒼社、58~67頁、2008年5月。
(2)「直接投資」中国研究所編『中国年鑑2007年版』毎日新聞社、212~214頁、2008
年5月。
(3)「米国の景気後退と中国経済――『連動性』と『非連動性』をめぐる論争」21世紀
(4)「国際金融危機と米中経済関係」『東亜』第499号、20~27頁、2009年1月。
(5)「中国:新興国の役割と責任」『外交フォーラム』第249号、近刊。
第4に、国際会議等への提出論文は次の通りである。
(1) “Effective Multilateralism for Achieving Economic Growth and Stability: Asian
Cases and Perspectives,” a paper presented at the International Conference of “The Challenges to Effective Multilateralism: Comparing Asian and European Experiences” organized by Stockholm Peace Research Institute and the Stanley Foundation, Sigtuna: Sweden, July 8-11, 2008.
2008
年度研究報告:経営・産業グループ
●氏名・所属
小林 守・専修大学商学部准教授
●研究目的の概要
ベトナムへの外資企業の進出の動向とベトナムの産業政策との関係の変化について現状 の把握に努めた。加えて、ベトナムへの進出に影響を及ぼしている周辺各国の投資環境の 変化についても状況の把握を行った。特に域内貿易・投資について近年、大きな影響を及
ぼしているFTA(自由貿易協定)の観点から投資環境の動向に着目した。
●
2008
年の研究実施内容
ベトナムにおける地場企業の実態を引き続き把握するとともに、外資政策・産業政策に ついて現地調査(現地資料収集およびインタビュー調査)を行い、加えて中国華南地域に おける外資製造業企業がベトナムへのシフトをしつつある現状について華南に隣接する香 港で専門家からの意見徴収を行った。
こうしたベトナムと中国華南地域間の製造拠点の移転はコスト要因に加えて、両国政府
のFTA(自由貿易協定)への取り組みの進展や国境交通インフラ等物流面での投資環境とも
かかっていることがわかった。
なお、中国のベトナム等ASEAN諸国ベトナムおよび香港への現地出張(大西研究員、小
口研究員、黒瀬研究員、小林)は2008年8月6日~8月14日である。
●研究成果の公表
上記の研究成果の一部を2008年9月13日~14日に開催されたアジア経営学会第15回全
国大会にて「中国のFTA政策の特徴と華南地方に進出する日系企業の対応について」と題
して報告を行った。
●今後の予定
2009年3月までに、ASEAN、中国等の東アジアにおける産業政策と密接に関連する投資環
2008
年度研究報告:経営・産業グループ
●
氏名・所属
姜 徳洙・専修大学商学部非常勤講師
●
研究目的の概要
これまでに訪問調査してきた馬山・昌原市に所在している中小企業の経営状況、類似 業態との競争優位に立つため独自に行われている経営戦略など中小企業の現状をより 具体的に把握する調査を実施した。
・実態調査期間:2008年8月18日~25日
●
2008
年度の研究実施内容
《I・W精工株式会社》 1.会社概要
①設立:1979年
②従業員:約200人(東南アジア系の外国人:30人)
→1工場(60人)、2工場(140人)。正社員は約40人 ③主な取引先:船舶関係の韓国大企業
(STX Enpaco、現代重工業、斗山エンジン・重工業の3社)の1次ベンダー ④主要製品:船舶エンジン部品製作(特に、当社は大型船舶エンジンを製作)
・エンジン部分(Cylinder Cover,Cylinder Frame,Camshaft Frame)
・発電部門(Exh frame, Bearing Housing, End shield)
2.事業内容および現状
①2008年1月から2工場がスタート:
・以前より大型エンジン部品を製作することが可能となった。
・作業の効率化を高める一環として1工場と2工場での作業を細分化している。 (1工場:加工、2工場:鉄板の切断→加工→磨き→検査→包装)
・船舶エンジン部門で大手の現代重工業への100%納品
・売り上げ目標:720億ウォン
②作業の細分化
・第1工場:加工のみ
・第2工場:原材料の切断、加工、完成品の組み立て工程のすべて
・加工作業の割合:韓国製品(80%)、日本製品(20%)
・大企業の新エンジン開発会議には参加している。しかし、現段階では、独自でのエ ン
ジン開発はしてない。
・完成品までの工程期間を短縮するため技術開発は工夫をしている。
・船舶エンジン関連部品は、精密度を要求する部分が多くて、当社ならでの精密度に
ついては高度な技術を追求している。
⑤設備投資の資金:自己保有資金(20%)、銀行の融資(80%)
3.総合コメント:
①同社の社長は女性である。女性社長は、強いリーダーシップを発揮している。社長 は、作業生産の効率性を高める一環として設備投資を積極的に行っている。その際 に、中間担当者の意見などを一重視しながら、新たな経営戦略を追及している。
②同社の強み(1次ベンダー):船舶エンジン関連部品市場のシェア率が非常に高い
→その理由:設備システムの充実、独自のノウハウを保有している。
(独自のノウハウで切断から完成品まで:他社との違う一元化されている工程)
③ 外国人労働力の必要性:コスト面での考慮(国内従業員より安い賃金 )、
人材(技術者)の不足
④現在、原材料の高騰による原材料の購入には困難である。
⑤今後の課題:人材育成に様々な対策を考えているが、まだその具体的な対策案はな い。
《YOUNG/ET》
1.会社概要
① 設立:2004年3月
②売り上げ:31億ウォン(2007年度)
③従業員:39名(開発設計担当には3名)
④取引先:三星SDI
⑤主要製品:携帯電話の部品(独自で開発した部品は50個、すべて特許を取った物)
2.事業の内容と現状
①近年、当社と同様の業態(携帯電話部品製造業)の間には競争が激しくなってきた。
:例えば、2008年5月までに受注は200万個、現在は 100万個までに減っている。
→打開策:新モデルを開発している(画像の鮮明度を高める)。
②携帯電話のモデルのサイクルは以前より短縮されている(2年→6ヶ月~1年未満)。
→その理由: 顧客ニーズの変化(一つの商品を長く使用しないで、モデルを変わ
③同社では、特に外注はしていない。全ての作業は内部で(金型も含む)を行っている。 ④大企業から当社への要求事項:高い品質、不良品のゼロ化、納品期間の短縮等 ⑤設備投資状況:銀行からの融資(中小企業対象の安い利子を利用)
・機械購入←2007年:6億ウォン、2008年:2億ウォン
3.総合コメント
①当社の経営者は金型設計士の出身である。
②同社は独自の技術ノウハウを持っていることで、新モデルに対する工程作業には迅速 に対応している。
③人材は企業の無形資産であるから、従業員の育成には力を入れている企業の一つであ る。例えば、当社では、大企業主催の人材育成教育イベント等には従業員を定期的に 参加させる。
④今後の課題
・ 大企業から受注が減っていることを想定して、その対策案を慎重に検討している。
→現在は、独自の技術ノウハウを保有している関係で、競争優位を保っているとは いえ、携帯電話の市場がますます激化している。したがって、多数の新商品の開発 に努力する。
・ 経営方針(取引先の開拓)
:日本との取引をするために4月から日本市場担当の営業理事を採用。
《T・S産業》 1.会社概要
①設立:第1工場(1991年)、第2工場(2007年)
②売り上げ:20億~25億ウォン(2007年度)
③従業員:30名(男子:28名、女子:2名、平均年齢は40代)
④事業:船舶エンジン部品加工の2次ベンダー
⑤資金面の割合:自己資金(30%)、銀行機関の融資(70%)
2.事業の内容の現状
①当社の取引先(受注先)は、3社である。
②船舶エンジン部品加工は製品の種類によって作業工場を決めている。その理由は、二 つの工場の特徴をいかして工程の効率性と製品の精密性を高める経営方針。
・第1工場:100種類、第2工場:20種類
③取引先から注文を受けて納品までは二日間、当社からの外注はしてない。 ④当社の売り上げに関しては、年間15%伸びている。
←作業の生産力を高めるため新機械の購入には優先的に投資を行う。
⑤第2工場の位置選定に失敗している。第1工場と第2工場との距離が離れすぎて運送
がある昌原市では土地の価格が高くて購入する投資金額が不十分であった。そのため 現在の第2工場の土地を購入したわけである。
⑥当社では第1工場と第2工場の勤務時間は異なる。作業の効率性を高める一環として
細分化している。
・第1工場:08:00~20:00
・第2工場:24時間(08:00~19:00、19:00~05:00)
3.総合コメント
①経営者は船舶関係の部品製造業に勤務してきた技術者であった。経営者は一人で独立 して現在の規模までに育てきた努力家であった。
②当社では熟練工の従業員が多くて、人件費の支出が多い。したがって、当社では機械
化を進めているが、第1工場では特殊な作業を行うことが多くて現段階では、熟練工
の技術力を頼るしかないと担当者は指摘している。←熟練工の人材確保が難しい。
③成長のきっかけは、1997年金融・通貨危機に倒産した企業からの良い機械を安く購入
した結果、1998年以降売り上げが伸びた。
④当社では、設備面では積極的に投資しているが、設計、開発といった中心的な人材教 育・育成には投資を行われていない。この問題は、韓国の中小企業が抱えている共通 な問題であると社長は指摘している。資金面で、余裕があれば長期的な視点から経営 を考慮すれば、後者を優先的にやらないといけないが、それより受注を考えた時には どうしても設備(機械・土地購入)に資金を投資している。
⑤今後、事業の転換を考えている。船舶のエンジン部品の加工から将来性を考慮して風 力発電関係の部品加工を主な事業として計画を立てている。
《NAM/KWANG》 1.会社概要
①設立:2001年
②従業員:70名のうち外国人は35名、29才~59才まで
③売り上げ:80億ウォン
④事業:船舶エンジンケースの熱処理加工、塗装、表面処理(磨き)等 ⑤品質方針:顧客に提供する製品の品質の信頼性を保証する。
2.事業の内容の現状
①当社は2008年4月から中国にも進出している。現地工場には本社から3人を派遣し
すべての管理を行っている。また、現在は斗山エンジンだけの受注をもらっているが、
今後大手STXからの受注がある予定。現段階では、中国の現地工場での問題は生じて
いない。
③当社では、第1工場と第2工場での作業工程は同じであるから、二つの工場での作業 時間を比較して問題点を見つけ効率性がある作業工程を取り入れている。
④当社では原油高の影響を多く受けている。塗装に使われているペイント、油は欠かせ ない物である。価格が急騰しても品質を保つためには質の良い物を使わなければなら ないからである。
3.総合コメント
①経営者は、企業組織内部で、共通のコミュニケーションができるような環境作りも大 切であると認識している。内部での危機感共有・現状の問題点把握と共通の理解・問 題解決案の提示と共通の理解のための明確なコミュニケーションが必要であると強調 している。特に、同社は、外国人の従業員が多く、勤務していることで、円滑なコミ ュニケーションが可能な体制を構築しようと工夫している。
その結果、企業価値(売り上げ)は明らかに伸びている。設立したわずか 10 年も経
たない内に新市場(中国)への開拓にも成功している。
②当社では、品質管理の向上の一環として検査は1回で終わることはなくて、必ず2回
の検査を実施している(損失の最小化)。
③今後の課題は技術力を持った熟練工の確保である。特殊な分野であるから技術者を育
成するには約10年はかかっている。
④長期的な経営方針:
生産力を高めるために設備投資(機械の購入)より、人材の育成と人材の確保に資金 投資している。←加工品の精密度を高めるために
《W/S航空》 1.会社概要
①設立:2001年
②資本金:10億ウォン
③従業員:42名(設立当時は7名)
④設立動機:現社長は 1997 年までに航空関連部品企業の部長として勤務していたが、
勤務先の企業が1997年に倒産したので、現社長をはじめ6人が運用資金を
集めて倒産した企業から一部の機械を購入し新会社を設立した。社長以外の
6人は技術力を持った熟練工であった。
⑤事業:航空機の全般的な部品製造、加工
⑥売り上げ:35億ウォン(2007年度)
2.事業の内容の現状
①当社では、原材料は購入しないで、取引先からも供給された材料で加工作業だけをし ている。
ている。
毎年売り上げが伸びているもう一つの理由は、作業工程の自動化し、生産力をあげて
いる。
③現在、競争相手は、1~2 社がある(取引先:発注先はリスクを最小化するために複
数の発注先を確保している)。
④取引先から受注を受けてから納品までには約20日かかる。
⑤当社から外注はしていない(信頼性を維持する)←品質性を保つため(社内の厳しい 管理体制)
⑥売り上げの多くは、設備投資と社員の福祉施設などに投資している(経営の長期的な
視点から)。
・ 設備投資(新機械):航空産業の傾向→部品の軽さを重視(新素材の開発)
・ 人材確保:専門学校を卒業した技術者
⑦大手航空会社から供給される原材料の価格が高いため不良品を出すと損失は大きい。 ⑧グローバル化に伴う航空を理由するビジネス関係の人々は益々増える。他業態に比べ
て安定的に成長していくだろう予測している(因みに、航空機のサイクルは 20 年~
30年であるが、韓国国内では2008年以降、その時期が集中している)。
3.総合コメント
①経営方針:長期的な視点から経営計画を立てる。 ②リスクマネジメント:無形資産を重視
企画(設計、開発)部門の人材数を増やし、独自の技術開発を強化している。 ③企業文化:
・事業(新製品の開発といった戦略)に関する意思決定は経営者が先に提案して各部 門の責任者と意見交換を十分にした下で、決定している。
→狙いは:コミュニケーションを重視して戦略リスクを最小化
・作業者が不良品を出した場合、担当者からの報告書を作成して提出するように求め ている。
→報告書作成の理由は:報告書を書きながら、自らが認識して改善させる。その結
果、不良品は年間0.05%出て、今後0を目指している。
④今後、工程過程を変える計画をしている:工程を単純化し、コストダウンを狙う。
《ダイ一由圧》 1.会社概要
①設立:1990年11月
②売り上げ:43億ウォン(2007年度)、2008年度予想(70~80億ウォン)
③事業:建設用の掘削機の部品加工、 ポンプの部品の製作と完成品の販売
2.事業の内容の現状
①当社は主に建設用の掘削機の部品、ポンプの部品を修理する専門企業だったが、2006
年から建設用の掘削機の部品加工、 ポンプの部品等を製作することになった。
②売り上げは2007 年度に比べて2008 年度は大幅に増加する予想している理由:2007
年度までは、建設用の掘削機の部品加工、 ポンプの部品の製作だけを顧客(代理店)
に提供したが、2008年からは単品の販売以外に完成品販売など事業内容の拡大が主な
理由である。
③現在、発売している完成品は当社が開発した製品である(2008年6月に開発)
④当社が製作している製品は海外(代理店を通じて)にも輸出されている。
⑤競争相手は、3~4社がある。その内、協力会社は1社もない。競争の中で、当社の 強みは大手企業の建設用の掘削機の部品、ポンプの部品をすべて扱っている。
⑥国内市場のシェア率は20%~30%である。
⑦部品と完成品の提供先は、国内の貿易代理店である。
⑧当社の外注先は15~20社位ある。
3総合コメント
①経営者は釜山に所在している建設用の掘削機の部品加工、ポンプの部品製作会社に勤 務した経営を生かして当社を設立した。設立当時は、社長が自ら技術指導を行った。
②経営者の方針:組織内部での団結力を重視している(内部での信頼性を高めるために)
←従業員の意見、要求はできるだけ応じる。
③経営戦略:
・当社は、開発した完成品を市場に普及させる一環として営業面での力を入れている。
・当社が直接に海外市場を開拓するために市場調査を実施している。
・新製品の開発には、社長をはじめ技術力を持っている熟練工が必ず参加させる。 ④従業員に関する教育:現在は技術力向上のために教育・指導は特にしていない。 ⑤工場の移転を計画:資本金より金融関係の資金援助を受けて設備の投資する予定(銀
行からの80%~90%の融資)←融資の総合評価基準:人材、技術
力、信用度等
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研究成果の公表
専修大学商学研究所、叢書 8号「企業価値向上と企業文化‐韓国企業の事例を中心に