ゲノム進化から生命を理解する

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ゲノム進化から生命を理解する

大学院情報科学研究科 准教授

小柳

こ や な ぎ

香奈子

か な こ

(工学部情報エレクトロニクス学科生体情報コース)

専門分野 : 分子進化学,バイオインフォマティクス

研究のキーワード : ゲノム,DNA,配列比較解析,進化

HP アドレス : http://genome.ist.hokudai.ac.jp/

何を目指しているのですか?

ゲノムとはある個体がもつ全遺伝情報のことで、生命の設計図ともいわれます。この遺 伝情報をになう化学物質であるDNAは、4種類のヌクレオチドとよばれる物質がつながっ たものです。これらがどんな順序でどれだけ並んでいるか(=ゲノム配列)が、その生物 らしさ、その個体らしさを決めています。このゲノム配列を解読するのにはシーケンサー とよばれる装置を用います。約30億文字からなるヒトのゲノム配列は、十数年という時間 と数千億円をかけて解読されました。近年では新型シーケンサーが次々に登場し、ヒトゲ ノム配列を解読するのに必要な時間は数日、コストは数十万円程度にまで短縮されていま す。みなさん個人個人のゲノムが解読される日も遠くないかもしれません。このようにゲ ノム解読のスピードは速まりましたが、ゲノムが解読される=ヌクレオチドの並びが明ら かになる、にすぎません。次にゲノム配列が意味するところを理解する必要があります。 私は「進化」という観点からゲノムをとらえることで、ゲノムとゲノムが意味するところ (表現型)の関連を理解することを目指しています。

どんな研究を行っていますか?

「地球の歴史は地層に、生命の歴史は染色体(ゲノム)に刻まれる」という北大出身の 木原均博士の言葉があるように、様々な生物のゲノム配列を比較すると、その類似性や違 いがそれぞれの生物の進化にどのような影響をもたらしているかを推定することができま す。私達の研究室では様々な生物のゲノム配列を比較解析することで、特定の表現型に関 わるゲノム領域の特定や、進化過程の解明を行っています。

図1 ゲノム領域の比較 図2 ウィルスゲノムの進化過程

顔写真

出身高校:女子学院高校(東京都) 最終学歴:京都大学大学院理学研究科

生体工学/生命進化

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ヒトとチンパンジーのゲノム配列を比較することで、ヒトに特異的な表現型に関連する ゲノム領域が特定されることが期待されます。例えば、ヒトでは脳に機能的左右差が存在 しており、言語を司る領域が左脳にあると言われています。そこで、右脳よりも左脳でよ く使われることが知られているRABL2B遺伝子周辺のゲノム領域を、ヒトとチンパンジー で比較してみると、大きな違いがみられる箇所が見つかりました【図1】。このような箇所

に、RABL2B遺伝子の左右の脳での使われ方の違いをもたらす変化が進化の過程で蓄積し

たのではないかと考え、より詳細な研究を進めています。

また、医学部の先生方との共同研究ではアデノウイルスの研究も行っています。アデノ ウイルスは肺炎や結膜炎などの原因となるウイルスで、暑い時期に流行する「はやり目(流 行性角結膜炎)」を引き起こすタイプは感染力が強いのが特徴です。日本で発見された新型 のアデノウイルスと既存のアデノウイルスの全ゲノム配列を比較したところ、新型は他の アデノウイルスと遺伝子組換えを多数行って進化したことが分かりました【図2】。

どんな装置を使って研究をしているのですか?

ゲノム配列解読には新旧のシーケンサーを用いています【図3】。またインターネット上 には世界各国の大学や研究機関で解析されたゲノム情報等のデータベースが多数存在して おり、それらも利用します。膨大な量の情報の解析は人間の目ではとても無理です。そこ でコンピューターの力が欠かせません【図4】。研究室では必要に応じてソフトウェアの開 発なども行っています(【図1】はその例)。

図3 シーケンサー 図4 コンピューター

この分野の面白さは何ですか?

現存の生き物のゲノム配列の比較から、過 去を推定できる、というところがもっとも面 白い点です。また、ゲノムという共通言語を 用いて様々な生物、生命現象を研究できると ころも魅力です。実際私達の研究室で研究対 象としている生物はウイルス・酵母・イネ・ ヒト、また注目する生命現象も病原性・突然 変異発生機構・言語能力など多岐にわたって います。医学や農学など多方面の分野との共

同研究ができることも魅力です。 図5 研究室の集合写真

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参照

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