財政・金融政策と国際政策協調(3)
<国際資本移動を伴うケース:M=Fモデル>
参考文献:『国際経済学入門Ⅱ [ 国際マクロ経済学編 ] 』日本経済新聞社
原書: “ World Trade and Payments: An Introduction”(9
thEdition)
Caves, Frankel and Jones ; HarperCollins Publishers
2. 国際資本移動がある場合の財政・金融政策
( Mundell-Fleming Model )
1. IS-LM モデルの代数分析
(国際資本移動なし、貿易収支均衡)
3.為替レートの変化を式に入れたIS-LM分析
1
●開放経済で、長期の資本移動が無い場合の
財政・金融政策 (前回のまとめ)
(1)財政政策
ΔY = ΔG / (s + m)
ΔCA = -mΔG / (s + m)
(2)金融政策
①円安誘導政策
(マーシャル・ラーナー条件
が満たされている場合)
ΔY = ΔX / (s + m)
ΔCA = sΔX / (s + m)
②金融緩和政策
(マネーサプライ増加)
ΔY = ΔC / (s + m)
ΔCA = -mΔC / (s + m)
2
1. IS-LM モデルと総需要曲線の代数分析
(国際資本移動なし、貿易収支均衡)
①IS曲線
国民所得の恒等式 Y=C+I+G に関して
消費関数を C= a + b(Y-T) --- 1>b>0
投資関数を I= c - dr --- c>0, d>0
消費関数と投資関数を
国民所得の恒等式に代入すると
Y=[ a + b(Y-T) ]+ c - dr +G
Y
IS 曲線
r
3
Yを整理すると、
Y-bY=(a+c)+(G-bT)-d
r
Yに関して解くと、IS曲線を代数的に表した
次の式が得たれる
Y =(a+c)/(1-b)+ G /(1
-b) +(-b T )/(1-b)+
(-d r)/(1-b)
したがって、整理すると IS 曲線は:
(1-b)Y = a + c + G – bT - dr
4
この式から、
財政政策(G,T)を一定と
すると、利子率(r)が高け
れば高いほど所得(Y)は低
くなる ことがあきらかである。
G(政府支出)の係数は正な
のでGの増加はIS曲線を右
シフト、T(租税)の係数は
負なので 増税はIS曲線を左シフトさ
せることがわかる。
IS 曲線
r
Y
(1-b)Y=a+c+G–bT-dr
ここで、
C= a + b(Y-T)
I= c - dr
r
0Y
05
練習問題 3-1 : IS曲線による財政政策
マクロ経済の均衡式を以下の通りとします ;
Y = C + I + G, C = α + c(Y-T), I = β – bi
ここで、
Y = 500t \, C = 300t \, G = 80t \, T = 150t \
α = 55t \, c = 0.7, β = 160t \, b = 800t \, i = 5% (0.05)
A. 10兆円の追加的財政政策が行われたとします(物価の変動はないとします)。
(1) ケインジアン・クロス・モデル (閉鎖経済)に基づいて考えると、 GDP の増加額
および GDP はいくらになるか計算しなさい。
(2)IS-LM モデルの考え方に基づいて、 10 兆円の財政政策の結果、金利が 0.5%
上昇したとすると、 GDP の増加額および GDP はいくらになるか計算しなさい。
(3) 上記( 1 )および( 2 )の結果がなぜ異なるかについて「クラウディング・アウト」、
「金利」、「投資」の言葉を使って説明しなさい。
6
B. 均衡予算を保つために、 10 兆円の財政追加政策と 10 兆円の
増税が同時に行われたとします(物価の変動はないとします)。
(1) ケインジアン・クロス・モデル(閉鎖経済)に
基づいて考
えると、 GDP の増加額、および GDP はいく
らになるか計
算しなさい。
(2) IS-LM モデルの考え方に基づいて、財政政策の結
金利が 0.5 %上昇したとします。 GDP の変化 果、
GDP はいくらになるか計算しなさい。 、および
(3) なぜ( 2 )のような結果が生じるか説明しなさ
い。
(4) この財政政策によって GDP を増加させるために
の上昇は何%以下でなければならないか計算 は金利
しなさい。
7
②LM曲線
LM曲線(貨幣市場の均衡条件)は、
M/P=L(r,Y)である
貨幣需要関数を線形関数とすれば、
L(r,Y)=eY-fr と表すことができる
(e>0,f>0)貨幣市場の均衡は、
貨幣需要 eY-fr と貨幣供給 M/P が等しいので
M/P=eY-fr となる
整理すると、
LM 曲線(直線): r= ( e/f ) Y - (1/f) ( M / P ) となる
(LM曲線はこの式を、M/Pを一定として横軸をY、 縦軸をrとしてグラフにしたものである)
M/P
貨幣需要曲線
r
貨幣供給曲線8
この式から、
● 実質貨幣残高(M/P)の符
号は 負であるので、 M の増加はL
M曲 線を右方シフト、 M の減少は
左方 シフトさせる
● e が小さければLM曲線の
傾き は緩やか(利子率の Y への感
応 度が大きい)
● f が小さければLM曲線の
傾き は大きい(急勾配:利子率の
変化 による Y の変化は小さい)
● f が小さければ、貨幣供給
( M) の変化は大きいので、 LM 曲
線の シフトは大きい
r= ( e/f ) Y - (1/f) ( M /P )
ここで、
M/P=eY-fr
LM 曲線
Y 0
r
09
練習問題 3-2: 金融政策
実質貨幣需要関数: (M/p) d = 1,000 – 100r
貨幣供給残高: M = 1,000
物価水準: p = 2.0
とします
(1) 実質貨幣需要直線と実質貨幣供給直線の図を作成
してください。
(2) 均衡利子率は何パーセントになりますか?
(3) 中央銀行が貨幣供給残高を 1000 から 1200 に増加させ、
物価水準が変化しないとすると、均衡利子率は何パーセント
になりますか?
(4) 中央銀行が均衡利子率を 7 %にしたいとします。
物価水準が変化しないとすると、貨幣供給残高(M)を
いくらにすればよいですか?
10ケインズ・モデルに国際資本移動を導入
経常収支 (CA) = - mY + X – M
資本収支 (KA) = KA + k (i – i*) k: 資本移動係数
国際収支 = CA + KA = 0
-mY + X – M +KA + (i – i*) = 0
(i-i*) = m/k ・ Y – (X-M+KA)/k
(Balance of Payment line)
(i-i*)
Y
BP line
Slope (傾
き) =m/k
k=0
k=infinity (無限大)
(notes) Y= GDP
X= export, M=import
i= interest rate in Japan i*=interest rate in USA
m=marginal propensity of import to Y
k= capital mobility coefficient to interest rate differential ( 金利差に対する資本移動係数)
2. 国際資本移動がある場合の財政・金融政策
k が大きくなれば、
すなわち金利差に対する
資本移動の感応度が高くなれば
少しの金利差がGDPの変化に大きく影響する
11
変動為替レートにおける
貿易
(経常収支)取引市場 と 資本取引市場
貿易取引市場 資本取引市場 両市場合計
S
D
S
D
S
D
E(\/$) E E
S,D S,D S,D
E0
財政政策
貿易赤字
ドル需要増加
¥円安
財政政策 金利上昇
資本流入
ドル供給増加
\ 円高
貿易赤字によるドル需要が
資本流入による
ドル供給増加によって
円安が相殺される
¥円安の程度が小さくなる
12
資本移動係数 k の違いによる円安効果の違い
財政拡大政策
貿易赤字 金利上昇
貿易市場における為替取引
E S
D
円安
D’
資本取引市場における為替取引
k=0のとき k小さいとき が k大きいとき が
為替変化なし
少し円高 大きな円高
効果の合計
円安 少し円安 円高s s s
13
資本移動下における財政政策
( 小さい効果 )
i
GDP
LM
IS
Y
0i
oIS’
i’
TB - then 円安
IS”
IS 曲線がシフトバック
(k の程度によって効果は異なる)
小さい効果
資本取引市場
高金利により円高
14
資本移動下における 金融政策
( 大きな効果 )
i
GDP
LM
IS
LM’ 金融政策によるシフト
IS’ 貿易取引市場の円安効果によるシフト
大きな効果
IS’’ 資本取引市場の低金利・資本流
出・円 安効果によるシフト
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財政政策の 国際的影響 ( 他国へプラスの影響 )
A 国(自国) B 国(他国)
LM
AIS
AY
Ai
LM
BIS
BY
B資本流出 通
貨安
i
wIS 曲線シフトバック IS 曲線シフトフォワード
金利上昇 資本流入 円高
自国の効果は 減殺 他国には プラスの効果
16金融政策の 国際的影響 ( 他国へマイナスの影響 )
A 国(自国) B 国(他国)
LM
AIS
Ai
Y
AIS 曲線は B 国との金利が等し
くなるまで拡大シフトする IS 曲線は A 国との金利が等し
くなるまでシフトバック
i
i
Y
LM
BIS B
A 国の金融政策によって GDP 減
少
A 国の金融政策は B 国に対して マイナスの影響を与える
したがって、国際間で政策協調が必要
金利低下 資本流出 円安
資本流入 通貨高(価値増
加)
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3.為替レートの変化を式に入れたIS-LM分析 参考資料「マンキューマクロ経済学(第2版)Ⅰ 入門篇」
第10章「開放経済下の総需要」10-1 マンデル=フレミング・モデル
前提:資本の完全移動、小国開放経済(自国の利子率は世界利子率に影響を与えない) r = r* (r は自国の利子率、 r* は世界利子率 )
を前提にした IS-LM モデルがマンデル=フレミングである。
財市場とIS曲線 IS曲線は Y=C(Y-T)+I( r* )+G+NX( e ) NX( e )=純輸出(輸出-輸入)
r = r*
e =為替レート
e
NX(e) e1
e2
NX(e1) NX(e2)
① 円安になると
② 純輸出が増大する ( M-L effect holds)
純輸出曲線 ケインジアンの交差図
E
Y ΔNX
③ 輸出の増加分 Δ NX だけ上方にシフト
Y1 Y2
④ 所得(GDP)が増加する
18
これまでのIS曲線
( r と Y の関係)
IS r
Y
マンキュー第 10 章のIS * 曲線 ( e と Y の関係 )
e
Y e1
e2
Y1 Y2
⑤円安になると
純輸出が増加して 所得が増加する (M-L holds)
貨幣市場とLM曲線
M/P=L( r*, Y ) r=r* P= 一定
r=r*
Y
r LM LM* LM*
e IS*
Y
e
Y
①完全資本移動下では 貨幣市場の均衡条件と
②世界利子率の
水準によって均衡所得 が決まってしまう
③所得水準が決まってしまう のでMFモデルにおける
LM* 曲線は為替レートと 無関係に一定である
Y Y
IS* : M=F モデルの IS 曲線になる
④IS * とLM * の交点で 均衡 e, Y が決まる
e
19
まとめると、
MFモデルにおけるIS * 曲線は、Y=C(Y-T)+I( r*) +G+NX (e) MFモデルにおけるLM * 曲線は、M/P=L( r*, Y )
となり、Y と e が内生変数で、T、 r* 、 G、M、P が外生変数(一定)である
これまでの IS-LM モデル: 縦軸 金利 (r) ( IS 右下がり、 LM 右上がり)
M=F モデルの IS*-LM* モデル:縦軸 為替レート (e) ( IS 右上がり、 LM 右下がり)
再度:為替レートの理解
\/$ = ドルの価格(円で表示)
ドル高(円安) ドル安(円高)
20
● 変動為替レート制下の財政政策
(完全資本移動、小国開放経済)
e 財政政策
Y LM* IS1*
IS2*
①拡張的財政政策はIS * 曲線を 右にシフトさせて
①
②為替レートが円高(増価)となる
②
Y
③所得は不変である
(財政政策は所得に影響を与えない)
③ 21
● 金融政策
e
Y LM1* LM2*
IS*
①拡張的金融政策は
LM* 曲線を右にシフトさせて
②為替レートが円安(減価)
になり輸出が増加するので
③所得を増加させる
①
②
③
22
● 貿易政策
e
LM*
IS1*
IS2*
Y e
NX NX1
NX2
①貿易制限(関税や輸入割当)
輸入が減るのでNX (e) を増加させ NX1は右シフトする
②純輸出NXの増加は計画支出
を増やすのでIS曲線は右シフトする
③LM曲線は変化しないので 貿易制限で為替レートが 円高(増価)になる
④所得は一定にとどまる
(輸入が減少した分、円高によって輸出も減少 するので最終的にはNXもYも変化しない)
e1
e2
e1
e2
NX
⑤NXはシフトするが為替レートが
円高(増価)になるので、輸入の減少
と同じ額だけ輸出が減ってNXは変わらない 23
1992 年以降の財政政策はなぜ効き目が無いのか ?
i
GDP
LM
IS
i
0Y
0IS’
1. G I and C
2. 政府の見解
潜在成長率が低下した
3. 将来に対する不安
40 代および 50 代 ~~ 年金不安
30s 代および 40 代 ~~ 雇用不安
企業 ~~ 終身雇用の問題 , 中国問題(低コスト生産)
4. あなたはどう思います
か?
国債が民間貯蓄を吸収してしまう
消費を減らして貯蓄を増加
( 少子高齢化問題 )
( バブル崩壊に対する過剰反応 )
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金融政策はなぜ効かないか ?
i
GDP
LM
IS
Y
0i
0LM’
1. マネタリー・ベース(HC
+日銀当座預金)は増加し
マネーサプライが増えな ているが
いのはなぜか?
2. 政府の見解
銀行の不良債権が
原因
3. 信用創造が減少(貨幣乗数の低下)
企業が萎縮して投資(銀行貸出)が減少
原因は将来に対する悲観的見方
(消費減少、中国問題)
4. あなたの見解は ?
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記号を、 Y (国民所得) C (消費) I(投資) B (貿易収支) r(国内利子率) e (為替レート) M (貨幣供給量) r※(外国の利子率<一定>)とする 変動為替相場制における開放マクロ経済が下記の式で示されているとする。
Y = C + I+ B C = 20 + 0.8Y I= 40 - 50r
B=40 - 0.1Y + 0.2e 0.8Y - 300r=M
r=r※
貨幣供給量 M を増加させると、国民所得 Y と為替レート e はどのように変化するか。
(1)縦軸を為替レート、横軸を国民所得YとしてLM曲線とIS曲線、およびMを増加 させた後のLM曲線を描きなさい
(2)いまGDPが 100 兆円で為替レートが 1 ドル= 100 円であるとき、Mを 2 兆円増加
させると為替レート e はいくらになり、GDP(Y)はいくらになるか計算しなさい。
練習問題 3-3 :国際資本移動を伴う金融政策
(マンデル・フレミング・モデル)
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練習問題 3-4 :国際資本移動を伴う財政政策の問題
(マンデル・フレミング・モデル)
記号を、 Y (国民所得) D (国内需要) G (政府購入) B (純輸出)
i(国内利子率) e (為替レート 邦貨建) M (貨幣供給量<一定>)とす る
変動相場性における解放マクロ経済が下記の式で表わされているとする。ただし、 資本移動は完全であり、国内利子率 iは外国利子率 i※[ 一定 ] に等しいものとする。 Y=D + G + B
D = 180 + 0.6Y - 2000i B= - 90 + 2e - 0.2Y
M=0.9Y - 1000i
政府購入 G が 10 増加すると国民所得 Y と為替レート e はどのように変化するか。
(1)縦軸を為替レート、横軸を国民所得YとしてLM曲線とIS曲線、および政府購入が 増加した後のIS曲線を描きなさい。
(2)政府購入が10増加したときのYと e の変化を計算しなさい。
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