作るために壊す・壊すために作る

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作るために壊す・壊すために作る

大学院工学研究院・大学院工学院 准教授

小熊

おぐま

博幸

ひ ろ ゆ き

(工学部機械知能工学科機械情報コース)

専門分野 : 材料強度学

研究のキーワード : 金属,強度,破壊,真空,安全性・信頼性

HP アドレス : http://mech-me.eng.hokudai.ac.jp/~material/

モノは何故壊れるのか?

-安全性・信頼性向上のための基盤研究-

「今後の航空機開発における鍵の一つは材料だ。まずは材料の特性について知らなくて は。」と考えて入った「破壊」の世界。その後、国内外でグライダー製造会社、旅客機製 造会社、材料試験会社において仕事をしてきて、「破壊の本質に迫りたい」という想いが強 まり、今日に至っています。「発想」を実際の「形」にできるのが技術者の魅力であり、自 分が関わったモノにより世の中が大きく変わる可能性もあります。そのモノづくりにおい て破壊は、時として人の命に係わることもあり、極めて重要な問題の一つです。研究室で は機械構造用材料(金属、高分子材料、複合材料)を対象として、機械的特性を中心とし た材料特性の把握ならびに強度・機能の向上方法について日々研究を進めています。

まずは壊す・そして見る

-超高サイクル疲労に関する研究-

疲労破壊。一回だけ負荷されても壊れない程度の大きさの荷重であっても、繰返して負 荷されると材料に割れ(き裂)が生じて破壊に至る場合があります。これが「疲労」と呼 ばれる現象です。機械構造物の破損の7割以上に疲労は関係していることから、疲労に対 する対策は技術者にとって切実な課題です。一方、高強度の金属材料などにおいて、従来 の疲労に対する設計手法が適用できないような現象が生じることが明らかになっています。 この現象は「超高サイクル疲労」と呼ばれ、名前の通り負荷繰返し数が107回 = 1,000万回 を超えるような極めて長い寿命域で見られます。超高サイクル疲労においては破壊が材料 の内部から生じるという特徴があります(図1)。その破壊が生じる過程の詳細は明らかに なっておらず、強度・寿命評価手法に関する統一的な見解は得られていません。

図1 疲労試験結果(Ti-6Al-4V 合金)

負荷繰返し数が1,000万回を超えたところで材料の内部から破壊

図2 大気中疲労試験装置

負荷繰返し速度は最大で1秒間に300回!

出身高校:渋谷教育学園幕張高校(千葉県) 最終学歴:北海道大学大学院工学研究科

電気・機械/マテリアル

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図3 破面写真(左:表面から、右:内部からき裂が進展) 破壊起点周辺の様相(模様)が両者で異なった

図4 真空中疲労試験装置 到達圧力:10

-7

Pa (圧力は宇宙空間レベル!)

まず、実際に壊すところから研究は始まりました。図2に示すような専用の試験装置を 開発・設計し、チタン合金を対象として繰返し負荷試験(疲労試験)を行いました。そし て、破壊した部分(破面)について電子顕微鏡を用いて詳しく観察をしました。図3が破 面写真の例になります。その結果、材料の表面からのき裂と、内部からのき裂で「進み方」 が異なるということが明らかになりました。

材料内部の環境は?

-真空環境を用いて破壊機構に迫る-

何故、き裂の進み方が異なったのか。ここで、き裂が曝される環境に着目しました。す なわち、材料の表面にあるき裂は「大気」に曝されていたのに対して、材料の内部にある き裂は大気からは遮断され「真空」に曝されていたと考えました。このように真空環境に 着目して材料の内部からの破壊へ迫る点がこの研究における最大の特色であり、世界でも 類を見ない試みです。そして、この考えを基に真空中で疲労試験を行い(図4)、破面を観 察しました。すると、真空中で材料の表面からき裂が進んだ場合に、材料の内部からき裂 が進んだ場合と同じ特徴が破面に見られたのです。このことは両者においてき裂の進み方 に共通点があることを示しています。すなわち、真空中でのき裂の特性を明らかにするこ とにより、材料の内部からのき裂の特性を明らかにできることが示唆されました。

無いものは作れば良い

-評価手法確立から新技術開発へ-

今後は真空中で起きる現象についての詳細を明らかにすることにより、材料の内部から 発生する破壊の機構を解明することを目指します。並行して、強力なX線を用いて材料の 内部における破壊の過程を追いかけることも試みます。そこに解析的手法を交えて、新し い強度・寿命評価手法の確立を目指します。さらに、破壊において明らかになった現象を 応用して、新たな接合技術、表面改質技術や材料の開発などへと展開をしていきます。

未知の領域へ踏み込むには独自の装置が必要となります。研究室では実験装置の開発・ 設計を学生が中心となって行っています。また、実験にはやってみないと分からない、口 頭や文章では伝えきれないような技術が含まれます。皆さんも世界中のモノづくりの土台 となる安全性・信頼性の向上の一翼を担う技術者・研究者を目指し、自分で設計した独自 の装置で実験を行い、未知の領域を切り開いてみませんか?

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参照

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