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誘いの会話の構造展開における駆け引きの分析―日本語母語話者同士の断りのロールプレイとフォローアップ・インタビューをもとに―: 東京外国語大学学術成果コレクション

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誘いの会話の構造展開における駆け引きの分析

―日本語母語話者同士の断りのロールプレイと

フォローアップ・インタビューをもとに―

An Analysis of Tactics Used in Invitation Conversations

based on Observation of a Roleplay Improvising the

Declining of an Invitation between Japanese Native

Speakers and on Follow-up Interviews

中井 陽子

NAKAI Yoko

東京外国語大学大学院国際日本学研究院

Institute of Japan Studies, Tokyo University of Foreign Studies

はじめに

1. 誘いの会話とは

1.1. 誘いの会話の定義と特徴

1.2. 誘いの会話の展開構造と発話機能

2. 誘いの会話における駆け引き

2.1. 駆け引きとは

2.2. 誘いの談話におけるストラテジー

2.3. 非言語行動による駆け引き

3. 誘いの会話データ収集

4. 誘いの会話データの分析

4.1. 開始部~主要部(先行部~誘い部:都合確認部)

4.2. 主要部(誘い部:事情説明・確認部~勧誘部)

4.3. 主要部(誘い部:事情説明・確認部~断り・弁明部)

4.4. 主要部(誘い部:事情説明・確認部)

4.5. 主要部(終結部:前終結部~関係再確認部)

4.6. 終了部(別れの挨拶)

おわりに

キーワード:誘いの会話、断り、駆け引き、気配り発話、思いやり発話、非言語行動

本稿の著作権は著者が保持し、クリエイティブ・コモンズ表示4.0国際ライセンス(CC-BY)下に提供します。

(2)

Keywords: invitation, declining, tactics, caring utterances, considering utterances, nonverbal behavior

【要旨】

本研究では、大学の後輩男性が先輩女性を誘うという日本語母語話者同士の誘いのロールプ レイ会話において、気配り発話、思いやり発話などのストラテジー(ザトラウスキー1993)を 用いながらどのように「駆け引き」をしつつ誘いの会話を展開させているのか分析した。分析 の際、会話データの言語行動・非言語行動を詳細に見るとともに、各参加者が会話中に考えて いた意識も参考にした。分析の結果、誘い手は気配り発話を用いて、誘いの内容を押し付けな いようにし、誘われ手も思いやり発話を用いて、誘いに肯定的な態度を示しつつ、陳謝や代案 提示を行っていた。このように、互いに瞬間瞬間の相手の出方に注意を払いつつ、「間合い」 を読んで誘いの会話を展開させていく駆け引きの様子が見られた。特に、後輩男性が誘いを切 り出しにくくしている際、先輩女性が促して、誘いの会話を展開させていた。さらに、目線や うなずき、姿勢の変化、笑いといった非言語行動を駆使して自身の態度を示し、また、それを 互いに読み取り合って、誘いの駆け引きを行っている様子が見られた。

The purpose of this study is to analyze how a conversation involving an invitation between

Japanese native speakers develop, with par ticular attention paid to their use of verbal and

nonverbal tactics (kakehiki). The participants participated in a spontaneous roleplay in which a

younger male invited an older female to go to an amusement park with him but was declined. In

follow-up interviews, the participants were asked individually about what they had been thinking

during the conversation.

Subsequent analysis of the roleplay and follow-up interviews showed that the male participant

utilized “caring utterances (kikubari hatsuwa) while avoiding imposing an obligation on the part

of the female participant to accept his invitation. In declining the invitation, the female participant

took advantage of “considering utterances (omoiyari hatsuwa) that included apologies and

suggestions of alternatives. Notably, the female participant made a conscious effort to help the

male participant feel relaxed, and prompted him to make his invitation. As a result, the invitation

conversation developed to the next stage.

Moreover, each participant was obser ved utilizing nonverbal behavior (e.g., gaze, nodding,

posture changes and laughter) which was interpreted by their counterpart, as well as utilizing

(3)

はじめに

日常生活の中で我々は何かの行動を共に行いたいと思って人を誘うことがあるが、これは、 人間関係を深めたいという人間の欲求の1つであり、人間関係を構築していく上で欠かせない 行為である。また同時に、誘われた際の受け答えの仕方によっては、互いの人間関係を危うく してしまう可能性もはらんでいる。そのため、日本語学・日本語教育の分野などでも、誘いの 会話とはどのようなものかについて多くの研究がなされてきている。その中には、誘いの会 話の展開構造や用いられる表現形式、発話機能、ストラテジーなどを分析するもの(ザトラウ スキー1993、姫野1998、川口ほか2002、筒井2002、鈴木2003、高澤2004、武田2006、蒲谷

2007、倉本・大浜2008、李2010、伴野2011など)、日本語母語話者と日本語学習者の誘いの 会話の違いや特徴を分析するもの(生駒・志村1993、藤森1995、1996、徐2006、タブンティナー・ 加藤2010、吉田2010、文2011、マスデン2011、鎖2012、黄2014など)など、様々な研究がある。 さらに、性別、先輩・後輩の上下関係、親疎などによる誘いの断り表現の相違については、ア ンケート調査によって内省で得られた作例を分析するもの(清水ほか2011)などもある。だが、 実際に会話参加者がやり取りを行っている会話データを用いて、上下関係のある誘いの会話や そこでの性別の違いの特徴について、会話参加者の会話時の意識をもとに言語行動・非言語行 動の面から詳細に分析したものは、管見の限り見当たらない。殊に、後輩男性が惹かれる先輩 女性を誘う際の「駆け引き」的なやり取りを詳細に分析したものはない。後輩男性が先輩女性 を誘うという状況は珍しいかもしれないが、実際にそのような両者の「駆け引き」がどのよう に展開するのか興味を持つ者は少なくないであろう。そして、こうした上下関係のある男女の 駆け引き的なやり取りが実際にどのように行われているかを明らかにすることで、我々の人間 関係構築がいかに行われているかを知る1つの手がかりとなるであろう。

そこで、本研究では、大学の後輩男性が好意を寄せる先輩女性を誘うという日本語母語話者 同士の誘いの会話をデータとし、その中で互いの人間関係を保とうとしながらどのような「駆 け引き」をしつつ誘いの会話を展開させているのかという点に焦点を当てて質的に分析する。 分析の際は、会話の中で実際に何が起きているのかを見るために、会話データの中に現れる言 語行動・非言語行動を「駆け引き」という観点から分析するとともに、各参加者が会話中に考 えていた意識も参考にする。これにより、上下関係のある男女の誘いの会話における「駆け引き」 の特徴の一端を明らかにすることを目指す。

1. 誘いの会話とは

1.1. 誘いの会話の定義と特徴

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あると認識した表現」であるとしている。そして、誘う際は、自分にとっては利益があるが相 手にとってはどうか分からないという認識を持って、相手の都合を確認し、無理な誘いはする べきではないとしている(蒲谷2007)。また、蒲谷(2007)は、誘われた際は誘ってもらったこ とに感謝し、興味や喜びを表すのがよいとし、断る際は、相手と行動を共にしたくないのでは なく、自分の都合が悪いだけなので、今後の関係を維持したいため再度誘って欲しいというこ とを表明した方がよいとしている。一方、断られた方は、相手に無理はしなくてもよいという ことを伝え、断らせて嫌な思いをさせてしまって申し訳ないという気持ちを表すとしている(蒲 谷2007)。

このように、誘いの会話においては、誘い手、誘われ手の双方が自身と相手の利益を考慮に 入れつつ、相手を不快にさせないようにやり取りすることが求められると言える。本研究では、 こうした誘い手と誘われ手の意識がどのように発話や非言語行動に現れていたのかを詳細に分 析する。以下、1.2.で本研究の分析の枠組みとする、誘いの会話の展開構造と発話機能につい て概観する。

1.2. 誘いの会話の展開構造と発話機能

誘いの会話の構造は、ザトラウスキー(1993)、藤森(1995)、筒井(2002)、高澤(2004)、徐 (2006)、黄(2014)などが分析している1)。これらを参考に、ウィモンサラウォン・中井(2017

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表 1 誘いの会話の展開構造(ウィモンサラウォン・中井 2017:144 ※一部加筆)

誘いの会話の展開構造の各段階 定義 各段階に現れる発話例

開始部 挨拶・雑談部 会話を開始する挨拶や雑談な どを行う段階

あ、おはよう。/やっほー。/久しぶり。 /早いねー。/授業?

主要部 先行部 誘いの予告や、会話時間の有 無を確認する段階

ちょっとお話がありましてですね。/お 誘いなんですけど。

誘い部 勧誘部 誘いの表現を用いて誘う段階 デ ィ ズ ニ ー ラ ン ド 行 か な い?/ 行 か な い?

事情説明部 事情確認部

誘いに至ったきっかけや事情 を説明したり、確認したりす る段階

ねえ、そう言えばさっきテレビで見たん だけど、/なんかチケット2枚手に入って、 /なんで突然ディズニーランド?/他に 行く人いないの?

都合確認部 誘いの日時や場所が適当か確 認する段階

今週の日曜とか空いてたりする?/日曜 ちょっと遊ぶ約束してるんで。

承諾部 誘いを受け入れる段階 全然空いてる。/行きたい、ディズニー ランド。

断り・弁明部 誘いを断る。また、その理由 を述べる段階

行けないや。/バイトだよー、それ。/ 今月がさ、お金全然ないんだよ。 相談部 会合場所・時間の決定を行う

段階

何 時 か ら に す る?/ 入 場 料 い く ら だ っ け?/近くなったらまた連絡でいいかな。 終結部 前終結部 誘いの会話の終結を示唆し、

それに同意する段階

よしよし。/うん、オッケー。/あー、 よかったー。/予定合わないね。

関係再確認部 今後の良好な関係の継続を互 いに確認し合う段階(感謝、 謝罪、将来の接触への言及な ど)

またの機会に行きますか。/なんかごめ んね。/俺も行きたいっすけどね。

終了部 別れの挨拶部 会話を終わらせて別れるため の挨拶を行う段階

じゃあ、ちょっとそろそろ行かなきゃだ から。/じゃあねー。/お疲れ様です。

さらに、表1の誘いの会話の展開構造を特定するために、その中でやり取りされる発話機能 を分析する必要がある。そこで、ウィモンサラウォン・中井(2017)では、筒井(2002)をもとに、 武田(2006)、徐(2006)、生天目他(2012)の発話機能も追加して、表2の誘いの会話の発話機 能をまとめている2)

表 2 誘いの会話の発話機能

筒井(2002) 前提条件の確認、肯定的な応答、勧誘、承諾、断り、受け入れ、提案、同意、不同意、 情報要求、情報提供、確認要求、確認、課題提示、保留、謝罪、同意要求、否定、事情説明、 代案提示

武田(2006) 希望、意見、遺憾

徐(2006) 終結開始、将来の接触への言及、別れ 生天目他(2012) 前置き

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2. 誘いの会話における駆け引き

2.1. 駆け引きとは

「駆け引き」とは、「交渉などの他者とのコミュニケーションの中で、相手の出方や状況に応 じて自分に有利になるよう振る舞うこと」であり、「周囲の環境を解釈すること」と「周囲の環 境に働きかけること」という2つの要素から成るとしている(西山・諏訪2012:1)。そして、こ の駆け引きという行為には、「物事をはじめるのに適した時期」といった「間合い」が重要で、 空手などの競技では、「間合いを読んで相手の意図を予測し、自らの身体を用いて自身に有利 な間合いをつくり出すことが求められる」とされている(西山・諏訪2012:1)。

こうした駆け引きの行為は、対戦相手のあるスポーツ競技だけでなく、対話相手とやり取り を行う誘いや依頼などの会話の中でも行われていると言える。1.1.で見たように、誘いの会話 では、誘い手は自分にとって利益になる場合に誘いの行為を行い、誘われ手は自分にとって利 益になる場合に誘いを承諾し、利益にならない場合に今後の関係を維持しつつ断らなければな らないのである。誘いの会話での誘い、承諾、断りといった行為において、誘い手と誘われ手 がお互いの出方を観察しつつ、間合いを取りながら、自身に有利な状況になるように意識しな がら、言語的、非言語的に働きかけ合っていると言えよう。

そこで、本研究では、誘いの会話における駆け引きの特徴について分析することとする。さ らに、駆け引きの仕方の男女の違い、先輩・後輩の違いなども考察する。以下、まず、2.2.で 言語的な駆け引きとして「誘いの談話におけるストラテジー」について、次に2.3.で「非言語行 動による駆け引き」について概観する。

2.2. 誘いの談話におけるストラテジー

ザトラウスキー(1993:2)は、Gumperz (1982)のdiscourse strategyの定義に従い、「ストラ テジー」について、「談話のやりとりの中で目標(goal)を達成しようとする方法」と定義し、勧 誘の談話を分析している3)。そして、表3のように、日本語の勧誘とそれに対する断り、曖昧

な応答、承諾などがどのように展開するのかを知るために、勧誘の談話の下位単位として「勧 誘の話段」と「勧誘応答の話段」に分け4)、その中で勧誘者と被勧誘者が用いるストラテジーを

分析している。さらに、ザトラウスキー(1993)は、勧誘の談話におけるストラテジーの中に 「気配り発話」と「思いやり発話」が見られたとしている。「気配り発話」とは、勧誘者が被勧誘者 に気を配り、断りやすくするために、断る理由や否定的な評価をする発話であり、一方、「思 いやり発話」とは、被勧誘者が勧誘者の立場を気遣い、断る可能性が高いものの肯定的な態度 や承諾する可能性を示したりする発話だとしている(ザトラウスキー1993)。

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例の中でどのように駆け引きが行われているか分析する。特に、「気配り発話」と「思いやり発話」 には、具体的にどのようなものがあるのか、詳細に見ていくこととする。

表 3 勧誘の談話におけるストラテジー(ザトラウスキー 1993:76-82)

勧誘者の発話 被勧誘者の発話

勧誘の話段 A1. 勧誘の達成に肯定的な発話

a. 誘導発話:承認する理由や「勧誘」の 達成に好ましい情報を表す肯定的な 評価を含む発話

b. 肯定的な共同行為要求 A2. 軌道を修正する発話 A3. 勧誘の達成に中立的な発話 A4. 勧誘の達成に否定的な発話

a. 気配り発話:被勧誘者が断りやすくす る発話

i. 前置きの気配り発話

ii. 情報提供、同意要求による気配り

発話

iii. 否定的な共同行為要求 iv. 責任逃れの発話 v. 勧誘を諦める発話 b. 笑い

c. 勧誘の正当化を表す発話 d. 次回の勧誘を表す発話

B1. 勧誘に対する肯定的な態度を示す発話 a. 肯定的な評価を含む発話

b. 興味を示す相づち的な発話 c. 新情報を要求する発話

B2. 勧誘に対する中立的な態度を示す発話 B3. 勧誘に対する否定的な態度を示す発話 a. 勧誘に不利な情報/否定的な評価を

含む発話

b. 勧誘に対する否定的な態度を示す相 づち的な発話/沈黙

c. 旧情報を確認する発話 B4. 思いやり発話

a. 勧誘に対する肯定的な評価を含む発 話

b. 興味を示す相づち的な発話 c. 新情報を要求する発話

d. 次回の勧誘/代案に対する肯定的な 態度を示す発話

e. 勧誘者の気持ちを忖度する発話 勧誘応答の話段 C1. 断わりを促す発話

a. 断わり/断わる理由に関する気配り 発話

b. 相づちによる気配り発話 c. 接続表現による気配り発話

d. 陳謝/感謝/残念な気持ちを表す気 配り発話

C2. 中立的な態度を示す発話 C3. 断わりを先に延ばす発話 a. 新情報を要求する発話 b. 旧情報を確認する発話 c. 肯定的な評価を含む発話

D1. 勧誘に対する肯定的な態度を示す発話 a. 承諾/承諾する理由の発話 b. 承諾に有利な情報からなる発話 D2. 勧誘に対する中立的な態度を示す発話 D3. 勧誘に対する否定的な態度を示す発話 a. 断わり/断わる理由の発話 D4. 思いやり発話

a. 勧誘に対する肯定的な評価を含む発 話

b. 勧誘者の気持ちを忖度する発話 c. 陳謝/感謝の発話

d. 気配り発話を打ち消す発話

e. 次回の勧誘/代案に対する肯定的な 態度を示す発話

2.3. 非言語行動による駆け引き

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になり、囁き合う、同時に笑うなど、両者の行動が似通った「鏡のイメージ(mirror images)」

(Kendon 1990)になっていたという。

このように、「依頼」の会話において、依頼者と被依頼者が瞬間瞬間にやり取りされるお互 いの言語行動・非言語行動に注意を払いながら、依頼の駆け引きを行っていると言える。そし て、このような駆け引きの言語行動・非言語行動は、「依頼」の会話だけでなく、「誘い」の会 話にも見られるのではないかと考えられる。そこで、本研究では、「誘い」の会話における駆 け引きの特徴について、言語行動・非言語行動、および、会話参加者の意識から詳細に探るこ ととする。

3. 誘いの会話データ収集

誘いの会話データを収集するために、日本人学生2名にロールプレイを行ってもらった(全

2分9秒間)。図1のように、祥悟(S:学部2年生)と多恵(T:学部4年生)は、大学の演劇部の 部員で後輩と先輩の関係である5)。ロールプレイは、普段の部活の上下関係や性格のままで行っ

てもらった。会話設定は、後輩の祥悟が入室し、座っている先輩の多恵をディズニーランドに 誘い、多恵が断るという大まかな設定だけ二人に指示し、後は即興で演じてもらった。なお、 祥悟は、演じる際、好意を寄せる先輩の多恵を誘うという設定を自分で決めて演じたという。 一方、多恵は祥悟が自分に好意を寄せているという設定であったことは知らなかった。ロール プレイとは言っても、シナリオを準備したわけではないため、会話参加者が即興で自然に話せ たのではないかと考えられる。

ロールプレイは、全てビデオ撮影し、会話終了後に 会話感想シート(参加した会話の全体的な印象、会 話相手の印象、会話でうまく行った点・難しかった 点など)に自由記述で記入してもらった。そして、そ の1週間以内に、会話ビデオを視聴しながら、祥悟 と多恵に個別にフォローアップ・インタビュー(FUI)

を行った。FUIでは、Erickson and Shultz(1982)と中井(2002)を参考に、会話時に考えていた こと、行った言語行動・非言語行動の理由、違和感を持った・面白いと思った瞬間とその理由、 沈黙・笑いの理由などを聞いた。

会話データは、ザトラウスキー(1993)、中井(2012)を参考に、表4の文字化表記方法で全 て文字化した。また、発話の単位は、杉戸(1987:83)の 「 ひとりの参加者のひとまとまりの音 声言語連続(ただし、笑い声や短いあいづちも含む)で、他の参加者の音声言語連続(同上)と かポーズ(空白時間)によって区切られる 」 という「発話」の単位を基本とした。そして、文法

図 1 誘いの会話のロールプレイ参加者 T: 多恵(仮名)

先輩、誘われ手

S: 祥悟(仮名)

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的に文が切れているところ、あるいは、下降イントネーションで後ろにポーズが少し入ってい るもの(例:うん。)は、1発話として1行に表記するようにした。

表 4 文字化表記方法

。 下降調か平調のイントネーションで文が終了することを示す。

、 ごく短い沈黙、あるいはさらに文が続く可能性がある場合の「名詞句、副詞、従属節」 等の後に記す。

? 疑問符ではなく、上昇調のイントネーションを示す。 ー 「ー」の前の音節が長く延ばされていることを示す。

// //の後の発話が次の番号の発話と同時に発せられたことを示す。 ( ) 沈黙の秒数(ストップウォッチで計ったもの)

{ } { }の中の行動は非言語的な行動の「笑い」等を示す。

4. 誘いの会話データの分析

誘いの会話の展開構造の各段階(1.2.の表1)における後輩男性(祥悟)と先輩女性(多恵)の 駆け引きの特徴について分析する。その際、会話例に現れる誘いの会話の発話機能(1.2.の表2)、 勧誘の談話におけるストラテジー(2.2.の表3)、非言語行動による駆け引き(2.3.)について詳 しく見ていく。なお、会話例中の右側には、該当する発話機能、および、勧誘の談話における ストラテジーを記し、勧誘の談話におけるストラテジーに網掛けを付す。本文中では、太字で 示す。

さらに、FUIでの語りをもとに、会話時に会話参加者がどのような意識で会話に参加してい たのかも探り、誘いの会話での駆け引きの際、会話参加者の言語行動・非言語行動にどのよう な意識が現れていたかも分析する。

4.1. 開始部~主要部(先行部~誘い部:都合確認部)

会話例(1)は、まず、開始部の挨拶・雑談で始まっている。部屋に入ってきた祥悟に対し、 多恵が1Tで「久しぶり。」と笑いかけ、2Sで祥悟が「あ、お久しぶりです。」と挨拶を返している。

4Sで祥悟は「やー。」と言いながら、多恵の向かいの席に座り、会話を開始する姿勢を見せる。 この際、祥悟は、沈黙状態を避けるために何となく「やー。」と発したとFUIで語っていた。そ して、二人は次に授業があるか確認する雑談を行っている。

次に、主要部の先行部で、祥悟が10S「うーん。」と 誘いの要件を切り出そうとするが、下を向いて、2.3

秒の沈黙が起きる(図2)。この間、多恵は祥悟からの 話の切り出しを待っていたため、気まずい間が空い てしまったとFUIで述べていた。多恵はこの気まず

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する発話(情報要求)でどうしたのか質問し、祥悟が話を切り出すように促している。そして、 祥悟は、多恵を見て両手をさすりながら、12Sで「ど、ど、どうですかね。」と質問して、話を 切り出そうとする。FUIによると祥悟は、気まずさを打破するため少しコミカルな感じで話し かけたと述べていた。この質問での切り出し方に多恵はやや戸惑い、眉毛を上げて驚いた様子 で13Tで「え?」と聞き返している。この開始部~主要部の先行部について、祥悟は、多恵の 表情が少し固く警戒されているように感じたため、会話の始め方があまりうまくできなかった とFUIで語っていた。

これに対し、2.3秒の沈黙の後、祥悟は14Sで「てか、」とこれから話を切り出すことを示唆 するために言い出し、誘い部を開始し、16Sで「多恵さん今週の日曜って、空いてたりします?」 と前提条件の確認を行い、都合確認部へと展開させている。16Sについて、祥悟は、回りく どい誘いは嫌いなので単刀直入に聞いたとFUIで述べていた。この祥悟の都合伺い6)に対し、

多恵は、急に話題が予想もしていない方向に行ったため何を言い出すんだろうと思い、17Tと

19Tで「今週の日曜?」と笑いながら2回繰り返したという。祥悟は、20Sで「はい、今週の日曜。」 と言いながら、両肘を後ろの椅子と机に載せて、多恵の返事を待つ。そして、多恵は、21Tで 「今週の日曜、は、予定確認しないと分かんないけど、」と後傾姿勢で上を見ながら考え、「多 分、多分空いてる、確か。」と前傾姿勢に戻って、肯定的な応答で予定が空いている旨を伝える。 多恵は、この時点で祥悟から誘いが来るのはある程度察しており、誘いの内容によって行くか 行かないか検討しようと思っていたため、予定は空いているが確認しないと確約はできないと いう、いざとなったら断ることができるような逃げ道を作っていたとFUIで述べていた。

ここでは、祥悟と多恵は、お互いの出方を観察し、間合いを見ながら、多恵が祥悟の発話を 促したり、祥悟が話を切り出し、単刀直入に誘ったり、多恵が祥悟の出方を見てから誘いを承 諾するか断るかを判断しようとしたりするという駆け引きが見られた。

会話例(1)開始部

挨拶・雑談 1T: 久しぶり。{笑い} 2S: あ、お久しぶりです。 3T: はい。

4S: やー。{椅子に座る} 5T: あれ、授業?

6S: いや、{壁掛け時計を見上げる}今ないです。 7T: あ、そうなんだ。{壁掛け時計を見上げる} 8S: 次、あるんですけど。

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主要部

先行部 10S: うーん。(2.3){下を向く}

11T: ん? 新情報を要求する発話(情報要求)、促し

12S: {Tを見て両手をさすりながら}ど、ど、どうですかね。 情報要求(切り出し)

13T: {眉毛を上げて}え? 聞き返し

誘い部

都 合 確 認部

14S: (2.3)てか、 15T: うん。

16S: 多恵さん今週の日曜って、空いてたりします? 前提条件の確認

17T: 今週の日曜?{笑い} 繰り返し(確認)

18S: はい。

19T: 今週の日曜?{笑い} 繰り返し(確認)

20S: はい、//今週の日曜。{両肘を後ろの椅子と机に載せる} 繰り返し(確認)

21T:      今週{後傾姿勢で上を見る}の日曜、は、予定確認しないと分かんないけど、

多分{前傾姿勢に戻る}、多分空いてる、確か。 肯定的な応答

22S: //ほんとですか。

23T: 確か空いてると思う、うん。 肯定的な応答

4.2. 主要部(誘い部:事情説明・確認部~勧誘部)

会話例(2)では、会話例(1)の都合確認部で祥悟が多恵の都合を聞いてきたため、多恵が

24Tで「何かあった?」と笑って新情報を要求する発話で質問し、祥悟に事情説明を促している。 この部分について、祥悟は、多恵の予定を聞いた後、本題の誘いを切り出すのに勇気が必要だっ たとFUIで語っていた。だが、24Tで多恵に事情説明を促されることで、祥悟は、25Sで、下 を向きながら、ディズニーランドのチケットが二枚手に入ったことを説明している(誘導発話)。 それを聞いて、多恵は、29Tで「そんなことあんの?ディズニーランドの、」と笑いながら質問 した。多恵は、誘われるということより、ディズニーランドのチケットが偶然手に入ったと いう状況への驚きが隠せずに質問したとFUIで述べていた。この多恵の笑いながらの発話で、 祥悟も30Sで「そうなんですよ。」と明るい顔になって多恵を見て、32Sで「なんか、マ、マン ガみたい。」と笑いながら言い、二人で目を合わせて笑い合っている。

そして、祥悟は、また下を向きながら、38Sで「まあ、ベタな、あれですけど。」と誘った事 情説明をしようとするが、「あれですけど」とはっきりと誘いの言葉を言い出さないため、多 恵が41Tで「行かないの?」と新情報を要求する発話(確認)で質問をしている。この質問につ いて、多恵は、祥悟が誘ってくることはある程度

予想できているので、祥悟が誘いやすいように呼 び水的に発したとFUIで語っていた。

すると、祥悟は、42Sで下を向きながら「いや、 誰 と 行 こ う か な と 思 っ て。」と事 情 説 明を 続 け、

44S、47Sで「で、もしよろしければ、多恵さん。」

(12)

きながら、肯定的な共同行為要求を行い、多恵を誘っている。つまり、多恵の41T「行かないの?」 という質問の発話によって、会話が勧誘部に展開していくのである。この誘いに対し、多恵は

48Tで笑い、祥悟は49Sで「もし日曜空いてるのであれば。」と条件を限定して相手の負担を軽 減しながら誘う気配り発話を行う。これに対し、多恵は、52T「ディズニーランド?」、54T「ディ ズニーランドかー。」と上を見て後ろにもたれかかりながら繰り返し、考える素振りを見せる(図

3)。

ここでは、多恵は、祥悟に誘いの事情説明を促したり、笑って目を合わせながら明るい雰囲 気を作ろうとしたり、祥悟が誘いやすいように呼び水的な質問をしたりして、誘いの会話を積 極的に展開させようとしていた。それとともに、多恵は、発話を繰り返しながら考える素振り を見せたりして、祥悟の出方を見つつ、駆け引きを行っていた。一方、祥悟は、多恵に促され て、目線とうなずきを多恵に送りつつ、相手の負担を軽減するように気配りしながら誘いを行っ ている様子が見られた。ここで祥悟が用いている気配り発話(条件を限定して相手の負担軽減) は、表3のザトラウスキー(1993)の勧誘者のストラテジーには見られなかった7)

会話例(2)主要部 誘い部

事 情 説 明・ 確 認部

24T: 何かあった?{笑い} 新情報を要求する発話(情報要求)、促し

25S: {下を向きながら}いや、なんか、ディズニーランドのチケット{笑い}

//二枚手に入って、 誘導発話(事情説明)

26T: うん。

27T: あー、ディズニーランド。

28S: {下を向きながら}で、{両肘を後ろの椅子と机に載せる}

29T: そんなことあんの?{笑い}ディズニーランドの。

30S: そうなんですよ。{多恵を見る} 31T: //へー。

32S: なんか、{笑い}マ、マンガみたい。 33T: //{笑い}マンガみたい。

34S: 映画みたい。{笑い}

35T: へー、{笑い}そんなことあるんだ。 36S: {下を向きながら}え、すげえ、 37T: うん。

38S: {下を向きながら}まあ、ベタな、あれですけど。 事情説明

39T: へー。

40S: {下を向きながら}でー、

41T: 行かないの? 新情報を要求する発話(確認)、促し

42S: {下を向きながら}いや、誰と行こうかなと思って。 事情説明

(13)

主要部 誘い部

勧誘部 44S: {下を向きながら}で、{両肘を下ろしながら}//もしよろしけれ//ば、

肯定的な共同行為要求

45T:      ね。

46T:       うん。

47S: {多恵を見て軽くうなずきながら}多恵さん。 肯定的な共同行為要求

48T: {笑い}

49S: もし日曜空いてるので//あれば。 気配り発話(条件を限定して相手の負担軽減)

50T:         {笑いながら}日曜日? 51S: はい。

52T: {笑いながら}ディズニーランド? 繰り返し(確認)

53S: はい。

54T: ディズニーランドか-。{上を見ながら後ろにもたれかかる}繰り返し(確認、保留)

4.3. 主要部(誘い部:事情説明・確認部~断り・弁明部)

会話例(3)では、多恵がディズニーランドに行けるかどうか考える素振りをしつつも、55T

で「え、他にいないの?誘う人。」と祥悟に新情報を要求する発話(情報要求)で質問している。 そして、56Sで、1.2秒の沈黙の後、祥悟が目線を外しながら「いや、てか多恵さんがいいなっ ていう、はい。」と誘う人が他にいないのではなく、多恵と一緒に行きたいから誘ったのだと 誘いの事情説明・希望を述べている。この部分について、多恵は、先の44S、47Sで祥悟にはっ きりと誘わせた上に、55Tでなぜ誘ったのかもあえて言わせるという女性特有の駆け引き的な やり方を用いた可能性があるとFUIで述べていた。この55Tの多恵の質問の発話により、誘 い部は、事情説明・確認部へと展開する。一方、祥悟は、他に誘う人がいない寂しい人に思わ れるのは嫌だし、自分が動揺したのをごまかした

いのもあり、56Sで「いや、」という否定の表現を大 きな声で言ったとFUIで述べていた。

この祥悟の56S「いや、てか多恵さんがいいなっ ていう、はい。」に対して、多恵は直接的な返答は 行わず、57Tで上を見ながら「ディズニーランド?」 と繰り返し、再度行く場所を確認し、返事を保留

する。これについて多恵は、「多恵さんと行きたい」 と言わせておいて、あえてそれを無視して直接的 に答えないというのは、照れからかもしれないが、 駆け引き的なものだと思われるとFUIで語ってい た。

そして、多恵は、58Tで「えー、ディズニーラン ド、ディズニーランド行きたいんだけど、今月がさ、

図 5 60S: あー。

{両肘を後ろの椅子と机に載せて下 を見る}

図 4 58T:{机の上に伏せながら}

(14)

お金全然ないんだよね、もう。」と、頭を上げてか ら机の上に伏せ込んで遺憾を表しながら断る理由 の発話をし(図4)、誘い部は断り・弁明部へと展 開する。これに対し、祥悟は、59S「はい。」、60S

「あー。」と、両肘を後ろに載せながら、相づちによ る気配り発話(受け入れ)で多恵の事情を受け入れ て、あきらめる姿勢を見せている(図5)。しかし、

多恵は、チケットが無料で手に入ったことを思い出したが、やはりディズニーランドで遊ぶに はお金が必要なため、今月はお金がない事情を述べ、断る理由の発話で弁明している。祥悟も

65Sで相づちによる気配り発話(受け入れ)を用いて、多恵の弁明を受け入れる姿勢を示して いる。この部分で、祥悟は、きまり悪く感じているがそれを察されないように冷静に同意する ことに努めたとFUIで述べていた。そして、多恵が68Tで両手で顔を覆いながら「だからさ、 ほんとごめん。」と陳謝の思いやり発話(謝罪)をし(図6)、祥悟が69Sで下を向きながら「確か にそれはあるんですよ。」と断る理由に関する気配り発話(受け入れ)をして、多恵の断りを受 け入れている。

ここでは、多恵は、祥悟に自分を誘った理由を言わせるように促し、その理由を言わせた後 は直接それに答えず、断る理由の発話をして、陳謝するというように、相手の出方を見つつ駆 け引きを行っている。一方、祥悟は、多恵の断りの弁明に対して相づちや同意をしながら気配 りをし、受け入れようとする姿勢を見せている。

会話例(3)主要部 誘い部

事 情 説 明・ 確 認部

55T: え、他にいないの?誘う人。 新情報を要求する発話(情報要求)、促し

56S: (1.2){目線を外しながら}いや、てか多恵さんがいいなって//いう、はい。

事情説明・希望

57T: {上を見ながら}ディズニーランド? 繰り返し(確認・保留)

断 り・ 弁明部

58T: //{目を閉じて頭を上に上げながら}えー、ディズニーランド、

 {机の上に伏せながら}ディズニーランド行きたいんだけど、{髪を掻き上げなが  ら}今月がさ、お金全然ないんだよね、もう。 断る理由の発話

59S:  はい。

60S: あー。{両肘を後ろの椅子と机に載せて下を見る}

相づちによる気配り発話(受け入れ)

61T: うーーーん、あ、でもそっか。

62T: チケットはタダなんだもんね。

63T: いや、でもねえ、//駄目だわ、あの、行ったらさ、いろいろさ、使うもんね。

断る理由の発話

64S:           そう、そう、そうなんですよ。 同意

65S: いや、//そう、そうですよ。 相づちによる気配り発話(受け入れ)

66T: {両手で顔を覆いながら}ほんとにお金ないん//だよね、今月。 断る理由の発話

(15)

主要部 誘い部

断 り・ 弁明部

67S: {下を向きながら}確かにそれは、それはあるんです。

断る理由に関する気配り発話(受け入れ)

68T: //{両手で顔を覆いながら}だからさ、ほんとごめん。 陳謝の思いやり発話(謝罪)

69S:  {下を向きながら}確かにそれはあるんですよ。

断る理由に関する気配り発話(受け入れ)

4.4. 主要部(誘い部:事情説明・確認部)

会話例(4)では、会話例(3)の弁明の後、多恵が70Tで「うん、なんかさ、英語科の友達と かいないの?」とディズニーランドに一緒に行ってくれる友人が他にいないのか祥悟に確認し、 他の友人と行けないかという代案提示(思いやり発話)をしている。この部分について、多恵 は、チケットが無駄になってしまうことを心配している面もあるが、もう一度「多恵さんがい いので」といった発話を祥悟から引き出そうとしている駆け引き的な発話をした可能性がある とFUIで述べていた。この代案に対し、祥悟は、71Sで0.9秒の沈黙の後、「いや、いますよ、 はい。」と答えている。祥悟は、多恵に友達がいない人と思われたくないのが反射的に強く表 れたため、「いや」という否定の表現を大きな声で言ったとFUIで述べていた。

これを聞いて、多恵は、72Tで「うん、ちょっとごめん。」と陳謝の思いやり発話(謝罪)で、 祥悟と一緒に行けないことを詫びている。祥悟も73Sで下を向きながら「あーっすね。」と相づ ちによる気配り発話(受け入れ)で残念な気持ちを示したという。そして、多恵は、74Tで「行 けないや。」と明確な断りの発話をし、75Tで他にも一緒に行きたい人がいるはずだと代案提示 (思いやり発話)をしている。これによって、多恵は、話をまとめようとしたとFUIで述べていた。

これに対し、祥悟も76S、78Sで「そうっすね。」と同意し、できるだけその場が気まずくなら ないように、自身が多恵の事情を納得していることを伝えようとしたとFUIで述べていた。

ここでは、多恵は、祥悟に自分を誘った理由を言わせるように促し、その理由を言わせた後 は直接それに答えず、断る理由の発話をして、陳謝するというように、相手の出方を見つつ駆 け引きを行っている。一方、祥悟は、多恵の断りに対して相づちや同意をしながら気配りをし、 受け入れようとする姿勢を見せている。

会話例(4)主要部 誘い部

事情説明・ 確認部

70T: うん、なんかさ、英語科の友達とかいないの? 代案提示(思いやり発話)

71S: (0.9)いや、いますよ、はい。

72T: うん、ちょっとごめん。 陳謝の思いやり発話(謝罪)

73S: あーっすね。{下を向く} 相づちによる気配り発話(受け入れ)

74T: 行けないや。 断りの発話

75T: うーん、なんか多分、行きたい人いると思う、うん。 代案提示(思いやり発話)

76S: {下を向きながら}あー、そうっすね。{両肘を下す} 同意

77T: うん。

(16)

4.5. 主要部(終結部:前終結部~関係再確認部)

会話例(5)は、終結部の前終結部に入る部分から始まる。祥悟が79Sで「いやまあ金かかり ますからね。」と断る理由に関する気配り発話(受け入れ・同意)で、多恵が断る事情を理解し ていること示している。この際、祥悟は、後ろに寄りかかりながら下を向いていることから、 祥悟が多恵への誘いをあきらめ、二人の誘いの会話が終息に向かうことを予期させていると考 えられる。

そして、次の関係再確認部で、多恵が81Tで「ほ んとごめん。」と再度、陳謝の思いやり発話(謝罪)を し(図7)、これに対して、祥悟が82Sで「いやいやい や、いやいやいや、」と否定表現を繰り返して強く否 定し、両手を膝に置いてかしこまった姿勢をとって いる(図8)。ここでは、祥悟は、相手が謝ってきて空 気が悪くなりそうだったため、それを払拭するため に謝る必要がないことを伝えたとFUIで述べていた。 そして、祥悟は、84Sで「ちょっともしよろしければっ ていう話だったんで。」と条件を限定する気配り発話

で、相手の負担を軽減しようとしている。この発話 について、祥悟は、自分が気にしていないように見 せ、できるだけ相手に申し訳なさを感じさせないよ

うに言ったとFUIで述べていた。一方、多恵は、この終結部において、頭を何度も下げながら、

81T「ほんとごめん。」、83T「いやー、ごめん。」、85T「すいません。」と陳謝の思いやり発話(謝 罪)を繰り返し、申し訳ない気持ちを伝えることで、祥悟との関係を維持しようとしている。

ここでは、祥悟は、多恵の断る理由を受け入れる姿勢を見せ、謝り続ける多恵に対して、気 を遣わせないように陳謝の否定や相手の負担軽減のための気配り発話を用いていた。

会話例(5)主要部 終結部

前終結部 79S: {後ろに寄りかかり両肘を載せながら}いやまあ金かかりますからね。{下を向く} 断る理由に関する気配り発話(受け入れ・同意)

80T: そうなんだよねー。{後ろにもたれかかる} 同意

関係再確 認部

81T: ほんとごめん。 陳謝の思いやり発話(謝罪)

82S: {多恵を見ながら}いやいや//いや、{両手を膝に置きながら}いやいやいや。

否定

83T: {頭を下げながら}いやー、ごめん。 陳謝の思いやり発話(謝罪)

84S: ちょっともし//よろしければっていう話だったんで。{下を向く}

気配り発話(条件を限定して相手の負担軽減)

85T:         {頭を下げながら}すいません。 陳謝の思いやり発話(謝罪)

86T: {頭を下げながら}はい。

図 7 81T: ほんとごめん

(17)

4.6. 終了部(別れの挨拶)

会話例(6)は、終了部の別れの挨拶の部分である。この終了部は、87Sの1.8秒沈黙後の祥 悟の「ちょっと、すいません、じゃあ。」と時計を見上げて立ち上がりながら言う切り上げの終 結開始と別れの挨拶から始まる。そして、祥悟が時

間を気にして会話を終わらせようとしていることを 察し、多恵は88Tで笑いながら「あー、なんかごめん、 なんかごめんね。」と陳謝の思いやり発話(謝罪)を再 びする。これに対し、祥悟は、89Sで「やー、違います。」 と(図9)、自分は気にしていないことを表すために無 意識にひと際大きな声で否定したとFUIで述べてい た。

そして、祥吾は、91S、93Sで「俺、マジであの、ちょっと今日テストあるんで。」と会話を 切り上げる口実を述べ、その場を去ろうとする。そして、多恵は、97T「じゃ、ごめん、ごめ んね。」と陳謝の思いやり発話(謝罪)を再度述べ、98Tで「じゃ、また。」と別れの挨拶をし、会 話を終了させている。この終了部でも多恵は、88T「あー、なんかごめん、なんかごめんね。」、

90T「なんかごめんね。」、97Tで「じゃ、ごめん、ごめんね。」と陳謝の思いやり発話(謝罪)を 繰り返している。この点について、多恵は、何度も「ごめん」を連呼しているが、あまり心が こもっていないようにも聞こえるとFUIで述べていた。

ここでは、祥悟が会話を終わらせる口実を述べ、多恵が陳謝の言葉を繰り返すことで、お互 いにこれ以上情報交換することはないということを伝え、別れの挨拶とともに、会話を終了さ せている。

会話例(6)終了部

の挨拶 87S: (1.8)ちょっと、 {時計を見上げて立ち上がりながら}すいません、じゃあ。 終結開始、別れ

88T: あー、{笑いながら}なんかごめん、//なんかごめんね。 陳謝の思いやり発話(謝罪)

89S:         やー、{口に手を当てながら}違います。 否定

90T: //なんかごめんね。 陳謝の思いやり発話(謝罪)

91S: 俺、マジで{腕時計を見る}あの、 92T: うん。

93S: {後ずさりしながら}ちょっと今日テストあるんで。 94T: うん。{笑い}

95T: //じゃ、じゃあ勉強しないと。

96S: ちょっと図書室で勉強しようっていう。{部屋から去る}

97T: じゃ、ごめん、ごめんね。 陳謝の思いやり発話(謝罪)

98T: じゃ、また。 別れ

(18)

おわりに

以上、誘いの会話の展開構造の各段階における後輩男性と先輩女性の駆け引きの特徴につい て、ロールプレイの会話例とFUIによる会話参加者の会話時の意識をもとに分析した。

誘いの会話を展開していく際、誘い手は気配り発話を用いて、相手に誘いの内容を押し付け たりすることのないように心掛けていた。一方、誘われ手も思いやり発話を用いて、相手の誘 いに肯定的な態度を示しつつ、陳謝や代案提示を行っていた。そして、会話参加者は、互いに こうした瞬間瞬間の相手の出方に注意を払い、間合いを読みながら会話に参加していた。特に、 誘い手は誘いが成功するように、誘われ手は誘いの承諾と断りが成功するように、間合いを読 んで誘いの会話を展開させていく駆け引きを行っている様子が見られた。

特に、後輩男性が誘う際に言い出しにくくしている場合は、先輩女性が笑って場をなごませ つつ、新情報を要求する発話で後輩男性を促し、誘いの発話や誘った理由を言わせるように誘 導し、誘いの会話を次の段階に積極的に展開させていた。こうした後輩の発話の促しを行いつ つ会話の展開を進めるという態度は、先輩という立場の心の余裕と会話を進めるという責任感 というところから現れているのではないかと考えられる。しかし、この点については、さらな る会話データの分析が必要となろう。

さらに、こうした駆け引きは、誘いの行為に対してだけでなく、相手に認めてもらいたい、 よく見られたいという気持ちの現われにも反映されているのではないかと考えられる。例えば、 先輩女性の場合は、「自分と一緒に行きたいから誘った」ということを後輩男性に言わせるよ うに促す発話をしていたが、後輩男性がその旨を伝えると、それには反応せず、話を逸らす様 子が見られた。こうした駆け引きの方法は、相手に言わせて自分の気持ちはすぐには伝えない という女性特有のものではないかと考えられるが、今後、さらなるデータ分析が必要である。 一方、後輩男性は、「自分に友達がいないと思われたくない」、「動揺した自分をごまかしたい」 という思いから、否定の表現を強調して言うという様子が見られた。これも、相手によく見ら れたいという駆け引きの行為が、誘いの駆け引きの行為と重ねて行われていることの現われで はないかと考えられる。

こうした言語的な駆け引きに加え、会話参加者は、目線やうなずき、姿勢の変化、笑いといっ た非言語行動を駆使して、誘いの行為への自身の態度を示していた。それと同時に、相手の非 言語行動から相手の誘いの行為への態度も読み取っていたと言える。駆け引きを考える際、言 語だけでなく、非言語の情報も考慮に入れる必要があると言えよう。

(19)

う会話など、さらに異なる人間関係における誘いの会話を分析したい。また、誘いだけでなく、 依頼の会話など、異なる場面の会話においても同様の駆け引きが見られるのか明らかにしてみ たいと思う。こうした様々な会話における言語行動・非言語行動による駆け引きの様相を1つ

1つ明らかにしていくことによって、中井(2017)の中で南が述べるように、人間が行うコミュ ニケーション全体のあり方を把握することに近づけるのではないかと考える。これをもとに、 日本語母語話者・非母語話者へのコミュニケーション教育に生かしていくことを目指したいと 思う。

1) ザトラウスキー(1993)は、誘いの会話の全体的構造を「開始部、主要部、終了部」の3段階に大きく 区分している。「開始部」は挨拶などからなり、「主要部」は都合確認などからなり、「終了部」は「じゃね え」「バイバーイ」などによって会話を終わらせる発話からなるとしている(ザトラウスキー1993)。  また、黄(2014)は、誘いの会話を「先行部、誘い部、終結部」に分けている。「先行部」とは、勧誘内 容が成立するための前提条件を確認する段階で、「誘い部」は誘いの開始から内容伝達までの段階で、「終 結部」は誘いの会話を終了させる段階(感謝、会合場所・時間の決定、遺憾表明など)であるという(黄 2014)。

2) 筒井(2002)は、勧誘の会話の連鎖構造の分析の中で、前提条件の確認、肯定的な返答、勧誘、承諾、断り、 受け入れ、提案、同意、不同意、情報要求、情報提供、確認要求、確認、課題提示、保留、受け入れ、 謝罪、同意要求、否定、事情説明、代案提示という発話機能を取り上げている。

 また、誘いの会話の分析の中で、武田(2006)は、承諾類(感謝、希望、興味・関心、実行意志)、断 り類(意見、遺憾、事情・都合、実行不可、代案、保留)、インターアクション管理(応答、確認、確 認要求、確認提供、情報要求、情報提供)、あいづち他(あいづち、フィラー、笑い、沈黙、表情)、 その他(はげまし、ほめ、依頼、評価)という発話機能を取り上げている。

 さらに、徐(2006)は、依頼の会話の終結部の分析の中で、前終結(終結開始)、関係再確認(感謝、謝罪、 努力保証、見返りの言及、友情の確認、冗談、儀礼表現、将来の接触への言及)、別れ(別れ)という 発話機能を取り上げている。

 生天目他(2012)は、談話展開に関わる構成要素として、前置き、概要説明、詳細説明、依頼発話を 取り上げている。このうち、前置き(依頼者側の意思を予告する「例:ちょっとお願いがあってね」「例: 頼みたいことがあるんだけど」)(生天目他2012:18)と同様の働きをする機能が本研究の誘いの会話デー タにも見られたため(「17S:ちょっとお話がありましてですね」「23S:お誘いなんですけど」)、表2の発 話機能に追加した。

3) 南(1972、1981)は、「談話」について、「切れ目(ポーズ)」「連続性」「参加者(の一定性)」「コミュニケーショ ン上の機能(の一定性)」「ことばの調子(の一定性)」「話題(の一定性)」の6つの基準で区切ることがで きるとし、この「談話」がいくつか集まってひとまとまりになったものを「会話」と呼んでいる。ザトラ ウスキー(1993)もこの南(1972、1981)の「談話」の定義に倣い、勧誘の談話のストラテジーを分析し ている。

4) ザトラウスキー(1993:72)は、「話段」について、「一般に、談話の内部の発話の集合体(もしくは一発話) が内容上のまとまりをもったもので、それぞれの参加者の「談話」の目的によって相対的に他と区分さ れる部分」であり、「話題・発話機能・音声面における特徴がある」と定義している。ザトラウスキー(1993) では、「勧誘の話段」と「勧誘応答の話段」に分けてストラテジーを分析しているが、本研究では、表1 の誘いの会話の展開構造の各段階で分けてストラテジーを分析する。

(20)

て用いることとする。

6) 高澤(2004)では、後輩が先輩を誘う際、尊敬と親しみの気持ちの両方を示すために、都合伺いをして、 先輩の都合を優先的に考慮した誘い方をする傾向が見られるとしている。

7) 誘いの会話などにおいて、49S「もし日曜空いてるのであれば。」や84S「ちょっともしよろしければっ ていう話だったんで。」といった言いさし発話には、相手の負担を軽減し、柔らかな印象を与える効果 があるとされている(三原1995、ウィモンサラウォン・中井2017)。また、高澤(2004)によると、「そ れで一緒に行きたいなと思って…」などの言いさし発話は、先輩を誘う会話でよく見られたという。 本研究の誘いの会話データにおいても、後輩の祥悟の42S「いや、誰と行こうかなと思って。」などの 言いさし発話が見られた。高澤(2004:62)は、誘いの会話において「全部言わないことで相手に判断の 余地を与えるという配慮」から言いさし発話を用いると述べている。

付記

本研究は、平成28~30年度JSPS科研費(基盤研究(C))「会話データ分析の手法を用いたインターアクショ ン能力育成のための教材開発」(研究代表者:中井陽子)(課題番号:16K02800)の研究成果の一部である。 本研究にご協力くださった皆様、貴重なコメントを下さった皆様に感謝致します。

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(22)

表 1 誘いの会話の展開構造(ウィモンサラウォン・中井 2017:144 ※一部加筆) 誘いの会話の展開構造の各段階 定義 各段階に現れる発話例 開始部 挨拶・雑談部 会話を開始する挨拶や雑談な どを行う段階 あ、おはよう。/やっほー。/久しぶり。/早いねー。/授業? 主要部 先行部 誘いの予告や、会話時間の有 無を確認する段階 ちょっとお話がありましてですね。/お誘いなんですけど。 誘い部 勧誘部 誘いの表現を用いて誘う段階 デ ィ ズ ニ ー ラ ン ド 行 か な い?/ 行 か な い? 事情説明部

参照

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