22 4 自由落下・放物運動
4 自由落下・放物運動
4.1 自由落下と垂直投げ上げ運動
例題1. 高さy0から初速度0で自由落下する質点*13について以下の問いに答えよ。
mg
mg
t=0
v
0=0
t
v
yy
y
0図14 1-1.鉛直上方をy軸に選び,運動の概略が分かるように図示せよ。高さの基準と
して地面をy = 0とする。 1-2.運動方程式を書け。
md
2y
dt2 = −mg. (4.1)
1-3.運動方程式をtで積分し,時刻tにおけるy方向の速度vy(t)を求めよ。 (4.1)より
d2y dt2 = −g
∫ d2
y dt2dt =
∫
(−g)dt dy
dt = −gt + C1 (4.2)
となる。
初期条件(境界条件): t = 0のときvy(0) = 0 → C1= 0と定まる。これを(4.2)に代入して vy(t) = dy
dt = −gt. (4.3)
1-4.運動方程式をもう一度tで積分し,時刻tでの高さy(t)を求めよ。
∫ dy dtdt =
∫
(−g)tdt y(t) = −1
2gt
2+ C2 (4.4)
となる。
初期条件: t = 0のときy(0) = y0→ C2= y0と定まる。これを(4.4)に代入して y(t) = −1
2gt
2+ y0 (4.5)
となる。
*13
質点:大きさ0,質量だけを持つ理想的な粒子。
1-5.質点が地面に落下する時刻t1を求めよ。また,得られたt1の次元が時間T であることを確認せよ*14。
y(t1) = −1 2gt
2
1+ y0= 0 (地面の高さは0) t21=2y0
g t1=√ 2y0
g ∵ t1> 0 (4.6)
物理量Aの次元を[A]と表すと
[t1] = [y0]12[g]−12 = [L]12[LT−2]−12 = T (4.7)
よってt1の次元は,時間T である。
1-6. vy(t)とy(t)をtの関数としてグラフで表せ。
【解答】図15の通り。
0.5 1 1.5 2 t@sD
-20 -15 -10 -5 5 v@msD
(a)速度v(t)
0.5 1 1.5 2 t@sD
5 10 15 20 25
y@mD
(b)高さy(t) 図15
mg
mg
t=t
hv
y=0
v
yy
y
hv
0v
yt=t
1v
1図16 問題21. 地面から初速度v0で質点を垂直に投げ上げた場合について以下の問いに答
えよ。
21-1.鉛直上方をy軸に選び,運動の概略が分かるように図示せよ。高さの基準
として地面をy = 0とする。
【解答】右図の通り。 21-2.運動方程式を書け。
【解答】質点に働く力は重力だけなので
md
2y
dt2 = −mg. (4.8)
21-3.運動方程式をtで積分し,時刻tにおけるy方向の速度vy(t)を求めよ。
*14長さL,質量M,時間T,電荷Q,温度Θを基本量と考えることで,全ての物理量は基本量の組み立て単位として表すことがで きる。SI単位系における基本量の単位はそれぞれm,kg,s,C,Kである。ただしSI単位系の基本単位には,電荷でなく電流 Aが採用されている。電流の次元はCT−1である。更にSI単位系の基本単位には物質量molと光度cd (カンデラ)が含まれる。
24 4 自由落下・放物運動
【解答】(4.8)より d2y
dt2 = −g
∫ d2
y dt2dt =
∫
(−g)dt dy
dt = −gt + C1 (4.9)
となる。ここで初期条件よりvy(0) = C1 = v0と決 まるので
vy(t) = dy
dt = −gt + v0 (4.10)
が上向きの速度である。
21-4.運動方程式をもう一度tで積分し,時刻tでの高さy(t)を求めよ。
【解答】(4.10)より
∫ dy dtdt =
∫
(−gt + v0)dt y(t) = −1
2gt
2+ v0t + C2 (4.11)
となる。初期条件よりy(0) = C2= 0なので y(t) = −1
2gt
2+ v0t (4.12)
が質点の高さである。
21-5.質点が最高点に到達する時刻thとその高さyhを求めよ。
【解答】最高点では速度vyが0になることと(4.10) より
vy(th) = −gth+ v0= 0, th= v0
g (4.13)
よってその高さは
yh= y(th) = v
2 0
2g (4.14)
である。
21-6.地面に落下する時刻t1とその瞬間の速度v1を求めよ。またt1とthにはどんな関係があるか? v1と v0にはどんな関係があるか?
【解答】落下点では高さが0であるので(4.12)お よびt1> 0より
y(t1) = −1 2gt
2
1+ v0t1= 0, t1
(
−1
2gt1+ v0 )
= 0,
∴t1=2v 0
g . (4.15)
t1= 0の解は出発時に対応する。またそのときの速 度は(4.10)より
v1= vy(t1) = −v0. (4.16)
つまり打ち上げ時と落下時では速度の向きは逆だが その速さは同じである。またt1= 2thなので打ち上
げから落下までの中間の時刻で最高点に達する。
21-7. vy(t)とy(t)をtの関数としてグラフで表せ。
【解答】図17の通り。
0.5 1 1.5 2 t@sD
-10 -5 5 10 v@msD
(a)速度v(t)
0.5 1 1.5 2 t@sD
1 2 3 4 5 y@mD
(b)高さy(t) 図17 初速v0= 10m/s。
4.2 放物運動
mg y
V
vy
α x
図18 問題22.水平面のある方向をx軸,鉛直上方をy軸とする。xy平面内
の仰角αの方向に*15原点から初速度V で質点を投げる場合を考える。
22-1.運動の概略が分かるように図示せよ。
【解答】図18の通り。
22-2.初速度のx成分とy成分をV := |V |とαを用いて表せ。
【解答】図より
vx(0) = V cos α, vy(0) = V sin α. (4.17)
22-3. x方向,y方向の運動方程式を書け。
【解答】質点には重力しか働いていないので
m¨x = 0, (4.18)
m¨y = −mg. (4.19)
22-4. x方向の運動は容易に解けるので,先に積分してその速度vx(t)と位置x(t)を求めよ。
【解答】(4.18)よりx方向には等速度運動なので
vx(t) = vx(0) = V cos α, (4.20)
x(t) = V t cos α. (4.21)
22-5. y方向の運動方程式をtで積分し,時刻tでの速度vy(t)を求めよ。
【解答】垂直投げ上げ運動との違いは,初速度がV sin αになっているだけなので
vy(t) = −gt + V sin α. (4.22)
*15
高い所にある対象を見上げる場合,観測する視線と水平面とがなす角を仰角と言う。対象を見下ろす場合,その視線と水平面との なす角を伏角または俯角と言う。観測者が地球の中心にいる場合,北緯が仰角に,南緯が伏角に相当する。
26 4 自由落下・放物運動
22-6. y方向の運動方程式をもう一度tで積分し,時刻tでの位置y(t)を求めよ。
【解答】同様に
y(t) = −1 2gt
2+ V t sin α. (4.23)
22-7.質点が最高点に到達する時刻thとその高さyhを求めよ。
【解答】最高点では速度vy(th) = 0なので,(4.22)および(4.23)より th=V
g sin α, (4.24)
yh= y(th) = V
2
2g sin
2α. (4.25)
22-8.地面に落下する時刻t1と落下地点のx座標x1を求めよ。またt1とthにはどんな関係があるか。
【解答】落下時には高さy(th) = 0より y(t1) = t1
(
−1
2gt1+ V sin α )
= 0,
∴ t1= 2V
g sin α = 2th. (4.26)
他の解t1= 0は投げ上げ時に対応する。落下点は
x1= x(t1) = V cos α2V g sin α
= V
2
g sin 2α. (4.27)
真上に投げた場合,αmax=π
2 なのでx1= 0となる。
22-9. x1が 最 大 と な る 投 射 角 度 をαmaxと す る 。αmax と そ の 到 達 距 離l := x1(αmax)を 求 め よ 。V が 40m/sの場合*16,lは何mになるか?
【解答】x1が最大になるのはsin 2αが最大のときなのでαmax=π
4。なのでsin π
2 = 1より
l =V
2
g . (4.28)
数値を代入すると
l =40
2(m/s)2
9.8m/s2 ≈ 163m. (4.29)
22-10. vx(t), vy(t), x(t), y(t)をtの関数としてグラフで表せ。
【解答】図19と図20の通り。
22-11. yをxの関数として表し運動の経路を求めよ。またこの経路が放物線となることを確認せよ。
*1640m/s=144km/hなので高校生以上の投手が投げる球速程度である。
1 2 3 4 t@sD 5
10 15 20 25 30 35 40 v_x@msD
(a) 速度vx(t)
1 2 3 4 t@sD
20 40 60 80 100 120 140
x@mD
(b)水平距離x(t) 図19 初速V = 40m/s,α= π
6 = 30
◦
。
1 2 3 4 t@sD
-20 -15 -10 -5 5 10 15 20 v_y@msD
(a)速度vy(t)
1 2 3 4 t@sD
5 10 15 20 25
y@mD
(b)高さy(t) 図20 初速V = 40m/s,α= π
6 = 30
◦
。
【解答】(4.21)よりt = x
V cos α なのでこれを(4.23)に代入して y = −g
2
( x
V cos α )2
+ V sin α x V cos α
= − g
2V2cos2αx
2+ x tan α. (4.30)
y(x)は上に凸の放物線になる。
22-12.この質点を点P = (X, Y )にある的に当てるには投射角αをどう選べばよいか。的に命中するとき
の角度αを求めよ。(tan αを求めればよい。)
【解答】P = (X, Y )が,軌道の方程式(4.30)の解となれば良いので
Y = − g
2V2cos2αX
2+ X tan α = − g
2V2(1 + tan
2α) + X tan α,
tan2α −2V
2
gX tan α + 2V2Y
gX2 + 1 = 0,
∴ tan α = V
2
gX ±
√ V4 g2X2 −
2V2Y
gX2 − 1. (4.31)
根号の中が正なら,角度αを変えた2通りの投げ方ができる。
28 参考文献
-150 -100 -50 50 100 150 x@mD 20
40 60 80 y@mD
図21 初 速V = 40m/sで 届 く 範囲。
22-13.初速V で命中させることのできる領域を求めよ。
【解答】解(4.31)が存在しないとき,すなわち根号の中が負になる
様なP (X, Y )には届かない。従って質点が届くための条件は
V4 g2X2 −
2V2Y
gX2 − 1 ≥ 0 (4.32)
である。これより
Y ≤ − g 2V2X
2+V
2
2g (4.33)
の放物線の範囲まで質点は届く。等号成立なら投げる角度αは1通り しかなく,その軌道は上式に接する。逆に上式は,αが1通りしかな い軌道群の包絡線に対応する。上式でX = 0としたときのY は,真 上に投げた場合の最高点yh=
V2
2g に一致し,Y = 0としたときのXは,最長到達距離l = V2
g に一致する。
参考文献
[1] 後藤憲一,山本邦夫,神吉健. 詳解力学演習. 共立出版株式会社, 2003. [2] 原島鮮. 力学I-質点・剛体の力学-. 裳華房, 1990.
[3] 原島鮮. 力学II -解析力学-. 裳華房, 1990. [4] 小出昭一郎. 物理学. 裳華房, 2003.
[5] 砂川重信. 電磁気学演習. 物理テキストシリーズ5.岩波書店, 1992. [6] 戸田盛和. 力学. 物理入門コース1.岩波書店, 1999.