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金融論
イントロダクション
慶田 昌之
立正大学 経済学部
なぜ金融論を学ぶのか?
経済学では、ミクロ経済学とマクロ経済学を通じて、市場 が、稀少な資源をどのように配分するかを学ぶ。
稀少な資源とは、財や労働サービスなどである。
配分とは、企業が、どれだけの原材料を購入し、どれだけの 労働サービスを雇用し、どれだけの財を生産するか、という こと。
配分とは、あなたが、どれだけの財を購入して、消費を楽し めるか、ということ。
お金は?
基本的な経済学が考える市場において、お金は、あまり重要 ではない。
お金は、価値をはかる尺度。
企業は、価格をみて原材料を購入し、賃金をみて労働を雇用 する。
あなたも、価格をみて財を購入する。
想像してみよう
今の100円を、1円と呼ぶ世界。 1円の価値が、100倍になった世界。
すべての、今あるお札や、硬貨は、ゼロを2つとって、利用 可能。
明日から!
想像してみよう
あなたのお財布のなかみは、すべてゼロが2つ少なくなった。 お店の値札も、すべてゼロが2つ少なくなった。
あなたの買い物に、影響を与えますか?
想像してみよう
これは、デノミネーション(正確には、リデノミネーショ ン)と呼ばれ、しばしばハイパーインフレが起きた国で実施 される。
お店の値札を、すべて変えるコストは小さくない。 あなたの頭も、とても混乱するかもしれない。
しかし、これらのコストが小さければ、あなたは購入行動を 変更しないだろう。
貨幣的側面と実物的側面
デノミネーションに関する思考実験は、経済の貨幣的側面と 実物的側面が、分離可能であることを示している。
貨幣的側面とは、中央銀行が貨幣を発行して、その貨幣の量 に応じて、コーヒー 1 杯の値段が(例えば)200 円と定まる こと。
実物的側面とは、あなたがコーヒー 1 杯を飲んで、幸せを感 じること。
コーヒー 1 杯の値段から分かること
あなたは、100円玉2枚が手元にあること、そのこと自体に 幸せを感じるわけではない。
その200円で、買えるものが、幸せをもたらす。 例えば、コーヒー1杯。
コーヒー 1 杯の値段から分かること
では、コーヒー1杯が400円に値上がりしたら、どう感じ るか。
答えは、あなたのお財布の中身による。
コーヒー 1 杯の値段から分かること
今、お財布の中身が1万円で、コーヒー1杯が200円とし よう。
お財布の中身が変わらずに、すべての財の値段が2倍になっ たとしよう。
もちろん、コーヒー1杯400円。
コーヒー1杯を飲んで得られる幸せは変わらないとしても、 お財布の残りで買えるものが少なくなってしまう。
これは、実物的側面に影響を与える変化である。
コーヒー 1 杯の値段から分かること
もし、すべての財の値段が2倍になったと同時に、あなたの お財布の中身も2倍になったら?
つまり、お財布の中身が2万円になった。
コーヒー1杯は400円になったけれど、残りのお金で、値段 が2倍になった財を、前と同じように購入できる。
これは、実物的側面に影響を与えない。
ふたたび、貨幣的側面と実物的側面
これは、デノミネーションと逆のことが起こったのと同じ。 1円の価値が半分になった。
やっぱり、貨幣的側面と実物的側面は、分離可能。
疑問
あくまで、貨幣的側面と実物的側面が分離可能ならば、なぜ お金は大事なんだろう?
なぜ、金融や金融政策について、経済学者は意見を述べるの だろう?
疑問
なぜ、金融危機でトヨタは生産量を減らすのだろう?
金融
金融という言葉には、お金を融通する、という意味がある。 経済主体(あなたやお店、あるいは大企業)は、さまざまな 理由から、資金を調達しようとする。
例えば、投資するため、原材料購入資金を手当てするため、 あるいは、雇用した労働サービスに賃金を支払うため。
金融
経済全体では、資金を調達したい経済主体と、資金を融通し たい(貸したい)経済主体があり、その間で資金が流れて いく。
金融を理解するとは、そのような資金の流れ全体を理解する ことである。
金融を理解する上で大切な 3 つの視点
制度としての金融 ミクロ経済学的な視点 マクロ経済学的な視点
制度としての金融
金融は、多くの部分で法律制度に支えられている。 例えば、
通貨で支払いができること。
銀行が守らなければならないルール。 金融商品取引法が規定するルール。
ミクロ経済学的な視点
金融は、経済主体の時間を通じた資源配分の意思決定と関係 がある。
現在よりも将来の財を消費したい人は、資金を貸すだろう。 将来よりも現在の財を消費したい人は、資金を借りるだろう。
マクロ経済学的な視点
金融は、マクロ経済に大きな影響を及ぼすことが理解されて いる。
金融危機は、どうして景気を悪化させるのか?
金融政策は、マクロ経済政策として、重要性を増している。 ゼロ金利政策は、どのような効果を通じて、マクロ経済に影 響を及ぼすのか?
より大切なことは
金融を学ぶ上で、もっとも大事なことは、3つの視点、制度 としての金融、ミクロ経済学的な視点、および、マクロ経済 学的な視点を、バランスよく理解することである。
この、いずれかが欠けても、金融の全体像は把握できない。