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参考資料書類 北陸Gi

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(1)

胃X 線画像の読影ポイン ト−充盈像−

青柳孝行

横浜市立市民病院放射線科

はじめに

 日本消化器集団検診学会(現:日本消化器がん検診 学会)胃X 線撮影法標準化委員会において,「新・胃X 線撮影法(間接・直接)の基準」の最終答申が2002年 5 月に発表され〔日消集検誌,40(5),(2002)〕,2005年 3 月には「新・胃X 線撮影法(間接・直接)ガイドライ ン」が編集出版された 1).この新撮影基準は,X 線装置 および高濃度低粘性造影剤(バリウム)の改良・開発, 撮影手技の工夫などにより,これまで以上に前壁と胃 上部の描出能を向上させた二重造影像主体の撮影法と なっている.現在,新・撮影法(間接 8 枚法)は,胃が ん検診において普及しつつある.横浜市胃がん検診に おいては,高濃度低粘性粉末バリウム200w/v%以上を 150ml前後使用し,新・撮影法の 8 体位を基本に立位 充盈像を加え,9 体位で実施している(F i g. 1).充盈 像は読影医の意向を含め過渡的な体位として加えてい る.

 これまで胃X 線撮影において基本撮影法であった充 盈像の要求度,撮影頻度は極めて少なくなっているの が実態である.これは,基準撮影において撮影枚数に 制限があるためにやむを得ず取られている措置である が,検査中の透視観察では充盈像の確認は必ず行われ なければならない.また,撮影枚数にゆとりのあるス クリーニングでは,必要体位として撮影されている場 合が多い.そこで本稿では,スクリーニングにおける 充盈像の読影ポイントを紹介する.

1 .撮影法の変遷

 日本消化器集団検診学会は,1974年に「間接撮影の 標準方式」を発表し,1984年には改善案「胃集検間接撮 影の基準」を発表した〔日消集検誌,62,(1984)〕.こ の改善案は,前壁と胃上部の描出能向上を目的として 撮影体位を選択する方法となっているが,腹臥位と再 立位の充盈像も残されている.その後,使用機器・バ リウムの改良,撮影体位の工夫などにより二重造影像 主体の撮影法が多くの施設で検討され,更なる改善を

求める声が大きくなった.また,胃直接X 線撮影につ いての検討も行われ,1995年に土井が,厚生省がん研 究助成金による研究班「有末班」において全国23施設で 発見された胃癌1,039例の撮影体位別胃癌描出頻度につ いて検討し,その順位を示した.その結果について有末 が,平成 7 年度に総括研究報告をしている(T able 1)

2)

. その後,日本消化器集団検診学会において撮影法委員 会が組織され,文献的考察と検討施設へのアンケート 調査にもとづき新基準案の検討を重ねたうえで,その 骨子が報告された〔日消集検誌,39(4・5),(2001)〕.

2 .充盈像の撮影法

 四大撮影法(T able 2)の一つである充盈法は,胃の形 態(変形),辺縁の状態(不整像),胃壁の伸展性(硬 化),周辺臓器との関係,腸管との関係などを観察目 的として撮影される.定形像を得るためには250∼ 300mlのバリウムを必要とし,立位充盈像のほうが腹 臥位充盈法に比べ,胃の形態,周辺臓器や腸管との関 係が素直に描出される.撮影の際は,必ず胃角部小彎 を正面像として描出するように注意する.

2 - 1 立位充盈法

 立位充盈像は,胃X 線撮影の基本体位であり,胃の 最も自然な状態を辺縁から観察できる(F i g. 2).本来 は,空気を入れずにバリウムを飲ませた直後の充盈状 態の像のことを指し,滑らかな曲線で辺縁が描出でき る.また,空気を入れ,バリウムを飲ませた直後に撮 影する立位充盈像は十二指腸へのバリウム流出を比較 的抑えることができる.検査終盤に撮影する再立位充 盈像は充盈像に加え,穹窿部の二重造影像が得られ る.しかし,体位変換や蠕動運動により十二指腸に流 出したバリウムと重なることで胃の下部が描出できな い場合がある.

 立位充盈像の撮影を行う場合は,バリウムの濃度・ 使用量,撮影法,コストパフォーマンスや被曝などを 考慮すると,再立位充盈像のみで十分である.

(2)

370

F ig . 1 横浜市胃がん検診 胃X 線撮 影法

造影剤:高濃度低粘性粉末バ リウム200∼220w/v%,服用 量:1 2 0 ∼1 5 0 ml,発泡剤: 5 . 0 g

撮影法:

食道はバリウム飲用時,透視 にて観察を行う.

(a )背臥位水平位二重造影  正面像

(b)背臥位水平位二重造影  第 1 斜位像

(c )背臥位頭低位二重造影  第 2 斜位像

(d)腹臥位頭低位二重造影  正面像(下部)

(e )腹臥位半立位二重造影  第 1 斜位像(上部)

( f )右側臥位水平位二重造影 側面像(噴門部)

( g)背臥位半臥位二重造影  第 2 斜位像(振り分け)

( h)立位二重造影 第 1 斜位 または正面像

( i )立位充盈正面像

早期癌 進行癌 合計

(515例) (252例) (767例)

撮影体位 描出頻度% 描出頻度% 描出頻度% 順位

1 腹臥位粘膜像 13.8 18.3 15.3

2 腹臥位二重造影正面像 23.1 28.6 24.9 10

3 腹臥位二重造影第 1 斜位像 12.6 15.9 13.7

4 腹臥位二重造影第 2 斜位像 23.3 30.2 25.6 9 5 半立位腹臥位二重造影像 5.6 12.7 8.0

6 腹臥位充盈像 26.6 56.7 36.5 6

7 背臥位二重造影正面像 65.4 77.0 69.2 1

8 背臥位二重造影第 1 斜位像 63.1 75.8 67.3 3 9 背臥位二重造影第 2 斜位像 48.2 65.9 54.0 4 10 半立位二重造影第 2 斜位像 22.3 36.5 27.0 8 11 再立位二重造影第 1 斜位像 12.6 31.0 18.6

12 立位充盈正面像 28.2 63.5 40.0 5

13 立位充盈第 1 斜位像 8.9 23.0 13.6

14 圧迫像(4 分割) 69.3 64.7 67.8 2

15 二重造影(4 分割) 28.9 37.7 31.8 7

T a ble 1 撮影体位別胃癌描出頻度についての検討−研究班の関連2 3施設における胃癌1 , 0 3 9 例−

2 )

a b c e f d

g h i

(3)

2 - 2 腹臥位充盈法

 腹臥位充盈像は,撮影台を水平位にすることにより 広く充盈像が得られ,小彎が最も長く描出されるとこ ろで撮影する(F i g. 3).また,第 1 斜位では幽門と十 二指腸の関係が描出される.圧迫の要素が加わるの で,ある程度の大きさを持った隆起性病変が,大小彎 側から離れた部位に存在していても陰影欠損像として 描出される.また,十二指腸球部前壁に多発する十二 指腸潰瘍は,球部の変形を伴うため腹臥位充盈法は有 効である.

3 .読影ポイント

 胃X 線読影において,病変の「どこに,なにが,ど れくらい」,つまり存在診断,質的診断,量的診断に つながるX 線画像が要求される.充盈像での第一印象 をどのように感じ取るか,読み取るかで二重造影像の 見方が変わるため,充盈像はおろそかにできない.び まん性に浸潤し,壁の伸展性が悪くなる 4 型胃癌(ス キルス)や壁の欠損像を伴う進行癌では充盈像は極め て有効である.

充盈法 ウム250∼300mlを飲用し,胃体上部まで充盈し胃を伸展させ,撮影する. 位置・形・辺縁

二重造影法

陰性造影剤(空気)と陽性造影剤(バウム)を用いてX 線吸収の差により

粘膜面 二重の対照度を利用し,粘膜面の微細な異常所見を描出し撮影する.

圧迫法

充盈されている胃の一部に圧迫を加えバリウムの層を薄くし,胃壁の凸凹を

微細粘膜面 描出し,撮影する.

粘膜法

少量(50∼100ml)のバリウムを使用し,バリウムをヒダに隈なく分布させ,

粘膜走行 粘膜のレリーフ像を撮影する.

F ig . 2 再 立 位 充 盈 正 面 像 と ス ト マップによる描出範囲 観 察 部 位 : 小 彎 ・ 大 彎 ・ 胃上部後壁

 充盈像における読影のポイントでは,以下のことに 注意し,胃の全体像から異常所見の有無を読み取るこ とが重要である.

 ① 胃の位置や形などの形態

 ② 辺縁の状態,大小彎のバランス(均衡)  ③ 胃壁の伸展性

 ④ 周辺臓器や腸管との関係

 特に胃角部小彎は胃疾患の好発部位であるばかりで なく,変形や辺縁の異常所見がよくみられる部位なの で十分注意するとともに,必ず正面像で撮影しなけれ ばならない.また,周囲臓器や腸管からの圧迫や手術 後の癒着などによっても胃の辺縁異常として描出され る.充盈像の異常所見としては,胃角の変形,ひきつ れ , 直 線 化 , 壁 硬 化 , 陰 影 欠 損 , 突 出 陰 影( ニ ッ シェ),壁不整,伸展不良,圧排などが挙げられる

(F i g. 4).透視観察の際は,蠕動運動や壁の緊張状態

(抗コリン剤が使用されているかどうか)を見ておくの も重要となる.

(4)

372

3 - 1  正常な胃と異常な胃

 充盈像は,正常な胃においては,一筆書きをするよ うに滑らかな曲線で辺縁を描出できる.しかし,異常 な胃においては,滑らかな曲線のなかに不整な辺縁

(直線化,ひきつれ,欠損,突出など)が描出される

(F i g. 4). 3 - 1 - 1  正常な胃

 噴門部から幽門部に至る袋状で釣り針のような形態 を示し,小彎は噴門から滑らかな連続する曲線で形成 され,胃角部で反転し幽門まで至る.大彎も同様な滑 らかな連続する曲線で形成されるが,胃体部で胃粘膜 ヒダによって鋸歯状を呈し,一般的には鈎状胃と呼ば れる.その他,胃全体が下方偏位した下垂胃,胃角が 幽門よりも高位にある牛角胃,穹窿部が強く後方偏位 した瀑状胃など形態は鈎状胃とは異なるが,正常な胃 といえる.

F ig . 3 腹臥位充盈正面像とスト マップによる描出範囲 観察部位:小彎・大彎・ 十二指腸球部

F ig . 4 辺縁における異常所見

3 - 1 - 2  異常な胃

 正常な胃とは異なり,滑らかな曲線に直線化やひき つれがみられたり,辺縁の欠けた像や突出した像がみ られ,時間が経過してもこの形態に変化が生じない状 態であり,病的な胃の形には,以下のように嚢状胃, B 型胃,砂時計胃,幽門狭窄胃などが挙げられる5)

① 嚢状胃:小彎が著しい短縮を生じ,胃体下部から幽 門部が袋状になり,十二指腸球部が胃角部に接したよ うな形になる.胃角部小彎の線状潰瘍によって小彎短 縮をきたし,胃形が変わる.

② B 型胃:胃体部の大彎が小彎側に引っぱられた形に なる.多くは胃体部小彎の線状潰瘍によって変形をき たす.

③ 砂時計胃:胃体部大小彎が引っぱられた形となる. 胃体部の接吻潰瘍あるいは胃体部の全周性の癌によっ て変形をきたす(F i g. 5).

(5)

F ig . 5 接吻潰瘍(kis s ing ulc e r)による強い変形

(a )再立位充盈像

(b)背臥位頭低位二重造影 第 2 斜位像

F ig . 6 胃角の変形

7 )

④ 幽門狭窄胃:幽門部の癌や潰瘍あるいは十二指腸潰 瘍によって幽門部の狭小化を生じた形となる.良悪性 の鑑別をするには,陰影欠損と壁の伸展性が決め手と なる.二重造影像とともに圧迫の要素が加わる腹臥位 充盈像において,大小彎の描出は不可欠である.

3 - 2 異常所見

 充盈像における異常所見は,小彎短縮,ひきつれ等 が原因の胃形の変形と,陰影欠損やニッシェなどが原 因となる辺縁不整に分けられる.一般的によく使用さ れる用語を説明する6)

3 - 2 - 1 胃角の変形

 胃角は急激に反転する独特な形態をし,左右対称で その対称軸は垂直を示す.胃全体に病変により変形を きたす可能性はあるが,特に胃角部小彎は潰瘍などの 好発部位であり,小彎線に変形をきたし,所見が顕著 に現れる(F i g. 6).反転の幅が広がって見えるものを  開,反転が見えないものを消失,その他,変形の程 度により棍棒状変形,U 字変形,直線化,尖鋭化など がある.胃角の変形を読む場合は,立位充盈像が基本 となる.

3 - 2 - 2  小彎短縮

 潰瘍などの陥凹性病変の収縮により小彎が短くなる 所見である.他の変形と比べ高い確率で病変の存在を 示す所見といえる.また,正常な胃において小彎の長 さは胃形によって異なる.小彎短縮は大彎と小彎のバ ランスで判定する必要がある.

3 - 2 - 3  ひきつれ

 辺縁が内側に向かって凹む変化で,陥凹性病変の間 接的な所見としてみられる.病変が大小彎側に存在し

なくても,陥凹性病変の収縮によって大小彎の辺縁が 引っぱられて変形を生じる.二重造影像により鑑別が 必要となる.

 また胃蠕動運動による彎入は,胃角部から幽門部に かけて認められ,その輪郭は平滑で大小彎に左右対 称,移動性が認められ,識別は容易である.

3 - 2 - 4 直線化

 滑らかな曲線を呈する胃壁辺縁が直線的な像を示す ことで,胃蠕動運動の影響は受けない.陥凹性病変が 存在し,壁の伸展不良によって生じる場合と,隆起性 病変が存在し,陰影欠損により生じる場合がある.い ずれにしろ確定は,二重造影像で一致する病変の有無 になる.

3 - 2 - 5  硬化

 陥凹性病変などの線維化により壁が硬くなり,胃壁 に異常像として現れる所見である.線維化した壁平面 の存在により滑らかな曲線で描かれるはずの辺縁が陰 影欠損のように直線的に現れ,シャープに描出され

a b

(6)

374

F ig . 7 S c ha tte nplus im S c ha tte nminus

69歳,男性,L 小彎,T ype2,25×25mm,endocrine cell carcinoma,mp,N2, S ta g e IIIA

(a )再立位充盈像

(b)背臥位水平位二重造影 第 2 斜位像

(c )内視鏡

a c b

る.これは,硬化平面に平行なX 線束が入ることによ り黒化度の急激な変化を起こすためである.

3 - 2 - 6  陰影欠損

 隆起性病変の存在により辺縁が内側に欠けた像のこ とを示す.特に充盈像・圧迫像における陰影欠損像

(側面像)の形や大きさは,質的・量的診断において大 きく寄与するので必ず撮影しなければならない.欠損 像 の な か に ニ ッ シ ェ が 現 れ る S c hat t enpl us i m S chattenmi nusは進行癌を強く示唆する(F i g. 7).  また,陰影欠損には充盈像などで描出される輪郭の 陰影欠損像と,二重造影像や圧迫像などで描出される 胃の内側の陰影欠損像(透亮像)がある.

3 - 2 - 7  ニッシェ

 陥凹性病変により胃壁自体に穴があき,そこにバリウ ムが溜まることにより,辺縁が外側に突出した像とな ることを示す.その特徴は,突出部の辺縁が不整でそ の周辺も滑らかではない.憩室のように辺縁が滑らか

参考文献

1)日本消化器集団検診学会胃X 線撮影法標準化委員会 編: 新・胃X 線撮影法(間接・直接)ガイドライン.メディカル レビュー,東京,(2005).

2)有末太郎:総括研究報告(平成 7 年度),厚生省がん研究助 成金による胃がん検診における個別検診の精度向上方策に 関する研究,p.6,(1995).

3)海老根精二,西川 孝,仲西和成,他 編:胃X 線造影検査 専門技師になるための基礎学習.p.8,永井書店,東京,

(2002).

4)海老根精二,仲西和成,西川 孝,他 編:胃がん検診専門 技 師 認 定 試 験 対 策 ノ ー ト . pp. 1- 2, 永 井 書 店 , 東 京 ,

(2002).

5)白 壁 彦 夫 : 腹 部 X 線 読 影 テ キ ス ト ① . 文 光 堂 , 東 京 ,

(1979).

6)市川平三郎,吉田裕司:胃X 線診断の考え方と進め方. pp.93- 120,医学書院,東京,(1986).

7)市川平三郎:胃X 線読影を極める.p.41,永井書店,東京,

(2001).

で胃壁全体が突出するものは,ニッシェとは呼ばない.

おわりに

 撮影法の変遷とともに,多くの施設で行われている 二重造影像主体のルーチン撮影において,充盈像の要 求度,撮影頻度は低くなっている.しかし,充盈像の 役割は,二重造影像との組み合わせにより存在診断は もちろんのこと,質的・量的診断に寄与する度合いは 大きいと考える.撮影者がこれまで述べてきた充盈像 の読影ポイントをしっかりと理解したうえで,必要時 に充盈像を追加撮影として利用できるか否かが,診断 価値に寄与する鍵となる.二重造影像主体の新・撮影 法は,胃X 線検査において原則的には 8 体位となって いるが,撮影過程のなかで充盈像は必ずモニタで観察 しなければならない.より確実な診断につなげるため にも充盈像の理解を深め,その意義を認識しておくこ とが重要である.

参照

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