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うしろめたさの人類学(資料紹介)

著者

岸 真由美

権利

Copyr i ght s 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / I ns t i t ut e of D

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雑誌名

アフリカレポート

56

ページ

19- 19

発行年

2018

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

(2)

19 ア フリカ レポー ト 2018年 No.56

Ⓒ IDE-JETRO 2018

うしろめたさの人類学

松村 圭一郎 著

東京 ミシマ社 2017年 334p.

世のなかに何かしらの違和感を覚えたり、窮屈さや無力感を感じたりすることはないだろうか。

本書はそうした違和感や窮屈さに向き合う手がかりを構築人類学の観点から示す。

二十代に十カ月ほどエチオピアの村に住んだ著者は、生活のすべてが他人との関わりのなかに

あって、なにをするにも物事はすんなり運ばず、怒ったり泣いたり喜怒哀楽に満ちた毎日を送っ

た。しかし日本に戻った時、すべてがすんなり運び、憤りも戸惑いも感じないことに違和感を抱

いた。日本の社会には「交換」のモードが浸透している。贈り物を渡す/受け取る「贈与」ではモ

ノには相手への愛情や感謝など何らかの思いが込められるが、売買による商品の「交換」では売

り手と買い手のあいだで商品に特別な思いを込めたりはしない。交換は人との関わりで生じる厄

介ごとやストレスを回避するが、同時に感情も取り除く。それは私たちにとって大事な「共感」

する力も抑圧してしまう。著者が調査地とするエチオピアには贈与の関係があふれている。人び

とは物乞いに気前よく小銭を渡す。レストランで知人に会えば一緒に食べようと誘う。共感はモ

ノを独占することへの「うしろめたさ」を喚起し、「相手にふるまう」ことを求める。

本書のタイトルにもある「うしろめたさ」は実は、世のなかの違和感や窮屈さを感じさせる普

段は見えていないルールや制度が、当たり前で変わらないものではないことに気づく重要な手が

かりになる。わたしたちの心と体は公平さを求めていて、他者とのあいだに偏りを感じるとバラ

ンスを回復しようとする。その時感じるのが「うしろめたさ」だ。共感が生まれやすい空間では

「うしろめたさ」の感度も高まる。今まで見えていなかった不均衡に気が付けば、当然のものと

考えていたルールや制度を見直し、自分ができることを考えるきっかけになる。

本書は自分が今いる社会を別の角度から見る視点を与えてくれる。著者の簡潔かつ平易であり

ながら内容にぐいぐい引き込む文体もすばらしい。ちなみに出版社のウェブサイトに本書に関連

した著者の対談(全 2回)が掲載されている。あわせて読むと本書をより深く理解できるのでお

薦めしたい。

・「私」が変われば、世界が変わる? ―構築人類学の可能性―(1)

・「私」が変われば、世界が変わる? ―構築人類学の可能性―(2)

参照

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