力学演習
No.5 (May 19, 2010) 簡単な運動I∼落下・投げ上げ・放物運動∼ 1 例題1. 高さy0から初速度0で自由落下する質点*1について以下の問いに答えよ。mg
mg t=0 v0=0
t vy y
y0
1-1.鉛直上方をy軸に選び,運動の概略が分かるように図示せよ。高さの基準と して地面をy= 0とする。
1-2.運動方程式を書け。
md
2y
dt2 = −mg. (1)
1-3.運動方程式をtで積分し,時刻tにおけるy方向の速度vy(t)を求めよ。 (1)より
d2y dt2 = −g
∫ d2y dt2dt=
∫
(−g)dt dy
dt = −gt + C1 (2)
となる。
初期条件(境界条件): t = 0のときvy(0) = 0 → C1= 0と定まる。これを(2)に代入して vy(t) = dy
dt = −gt. (3)
1-4.運動方程式をもう一度tで積分し,時刻tでの高さy(t)を求めよ。
∫ dy dtdt=
∫
(−g)tdt
y(t) = −1 2gt
2+ C2 (4)
となる。
初期条件: t = 0のときy(0) = y0→ C2= y0と定まる。これを(4)に代入して y(t) = −1
2gt
2+ y0 (5)
となる。
1-5.質点が地面に落下する時刻t1を求めよ。また,得られたt1の次元が時間Tであることを確認せよ*2。
y(t1) = −1 2gt
2
1+ y0= 0 (地面の高さは0) t21=2y0
g t1=√ 2y0
g ∵ t1>0 (6)
物理量Aの次元を[A]と表すと
[t1] = [y0]12[g]−12 = [L]12[LT−2]−12 = T (7)
よってt1の次元は,時間T である。
1-6. vy(t)とy(t)をtの関数としてグラフで表せ。
*1
質点:大きさ0,質量だけを持つ理想的な粒子。
*2
長さL,質量M,時間T,電荷Q,温度Θを基本量と考えることで,全ての物理量は基本量の組み立て単位として表すことがで きる。SI単位系における基本量の単位はそれぞれm,kg,s,C,Kである。ただしSI単位系の基本単位には,電荷でなく電流 Aが採用されている。電流の次元はCT−
1
である。更にSI単位系の基本単位には物質量molと光度cd (カンデラ)が含まれる。
2
問題1. 地面から初速度v0で質点を垂直に投げ上げた場合について以下の問いに答えよ。
1-1.鉛直上方をy軸に選び,運動の概略が分かるように図示せよ。高さの基準として地面をy= 0とする。 1-2.運動方程式を書け。
1-3.運動方程式をtで積分し,時刻tにおけるy方向の速度vy(t)を求めよ。 1-4.運動方程式をもう一度tで積分し,時刻tでの高さy(t)を求めよ。 1-5.質点が最高点に到達する時刻thとその高さyhを求めよ。
✎最高点では速度vyが0になることを用いる。
1-6.地面に 落下 する 時刻t1と その瞬 間の 速度vy(t1)を求め よ。ま たt1とthにはど んな 関係 があ るか? vy(t1)とv0にはどんな関係があるか?
1-7. vy(t)とy(t)をtの関数としてグラフで表せ。
問題2. 水平面のある方向をx軸,鉛直上方をy軸とする。xy平面内の仰角αの方向に*3原点から初速度V で質点を投げる場合を考える。
2-1.運動の概略が分かるように図示せよ。
2-2.初速度のx成分とy成分をV := |V |とαを用いて表せ。 2-3. x方向,y方向の運動方程式を書け。
2-4. x方向の運動は容易に解けるので,先に積分してその速度vx(t)と位置x(t)を求めよ。 2-5. y方向の運動方程式をtで積分し,時刻tでの速度vy(t)を求めよ。
2-6. y方向の運動方程式をもう一度tで積分し,時刻tでの位置y(t)を求めよ。 2-7.質点が最高点に到達する時刻thとその高さyhを求めよ。
✎最高点では速度vyが0になることを用いる。
2-8.地面に落下する時刻t1と落下地点のx座標x1を求めよ。またt1とthにはどんな関係があるか。 2-9. x1が最大となる投射角度をαmaxとする。αmaxとその到達距離l:= x1(αmax)を求めよ。V が40m/s の場合,lは何mになるか?
2-10. vx(t), vy(t), x(t), y(t)をtの関数としてグラフで表せ。
2-11. yをxの関数として表し運動の経路を求めよ。またこの経路が放物線となることを確認せよ。
2-12.この質点を点P = (X, Y )にある的に当てるには投射角αをどう選べばよいか。的に命中するとき
の角度αを求めよ。(tan αを求めればよい。)
2-13.初速V で命中させることのできる領域を求めよ。
*3
高い所にある対象を見上げる場合,観測する視線と水平面とがなす角を仰角と言う。対象を見下ろす場合,その視線と水平面との なす角を伏角または俯角と言う。観測者が地球の中心にいる場合,北緯が仰角に,南緯が伏角に相当する。