-第9回 一般均衡分析- 菅 史彦
内閣府 経済社会総合研究所
個別・市場需要曲線
消費者の効用最大化問題を解いて導出された個別需要曲線を積み 上げれば、市場の需要曲線になり、
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 2 / 32
個別・市場需要曲線
消費者の効用最大化問題を解いて導出された個別需要曲線を積み 上げれば、市場の需要曲線になり、
個別・市場需要曲線
消費者の効用最大化問題を解いて導出された個別需要曲線を積み 上げれば、市場の需要曲線になり、
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 2 / 32
個別・市場供給曲線
企業の利潤最大化問題を解いて導出された個別供給曲線を積み上 げれば、市場の供給曲線になり、
個別・市場供給曲線
企業の利潤最大化問題を解いて導出された個別供給曲線を積み上 げれば、市場の供給曲線になり、
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 3 / 32
個別・市場供給曲線
企業の利潤最大化問題を解いて導出された個別供給曲線を積み上 げれば、市場の供給曲線になり、
市場均衡
市場の需要曲線と供給曲線の交点で、価格と数量が決まる。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 4 / 32
市場均衡による価格決定
供給曲線に沿った動きと、
市場均衡による価格決定
供給曲線に沿った動きと、
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 5 / 32
市場均衡による価格決定
供給曲線そのものの動きを区別する必要がある。
市場均衡による価格決定
供給曲線そのものの動きを区別する必要がある。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 6 / 32
産業の長期均衡
企業が参入・退出の意思決定をできるくらいの長い期間を考える。 参入が起こるための条件は以下で与えられる:
売上 > 機会費用込の(長期的に見た)費用 これを書き換えると、
価格p >長期の平均費用 を得る。
すなわち、価格が平均費用を上回る限り、新たな企業の参入 が起こり続ける。
産業の長期均衡
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 8 / 32
産業の長期均衡
産業の長期均衡
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 8 / 32
産業の長期均衡
産業の長期均衡
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 8 / 32
産業の長期均衡
長期均衡ではp =LAC になるように生産量が決まるので、技術進 歩などがなければ、長期の供給曲線は完全にフラットになる。
余剰分析
余剰分析から、以下のことがわかる:
1 市場均衡は、総余剰を最大化する。
2 間接税は非効率性(死荷重)をもたらす。
3 消費量や生産量などの経済活動の水準とは無関係に、固定さ れた金額を徴収する一括固定税を通じた富の分配は、非効率 性(死荷重)をもたらさない
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 10 / 32
余剰分析
ただし、余剰分析については以下の点に留意:
消費者余剰が消費者の効用の総和となるためには、効用関数 に関して強い仮定が必要。
生産者余剰が生産者の利潤の総和となるためには、固定費用 がゼロである必要がある。
すなわち、
余剰分析は市場における消費者・生産者の厚生の増減につい て大まかな目安を与えてくれるに過ぎない。
しかし、どういうタイプの介入がどういう帰結をもたらすか について示唆を与えてくれる。
部分均衡から一般均衡へ
部分均衡分析は、直感的にわかりやすい。
しかし他の市場への波及効果や市場同士の相互依存関係など が捨象されている。
全体像を見渡すため、全ての財を同時に扱う一般均衡分析へ。
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企業
経済に存在する全ての財をn = 1, . . . ,Nで表す。
経済に存在する全ての企業をj = 1, . . . ,Jで表し、企業jの生 産活動を、生産計画:
yj =(y1j, . . . ,yNj ) で表す。
生産計画は、マイナスなら投入、プラスは産出。
企業:生産計画の例
y =(ガソリン, 重油, 原油)とし、
原油 20 リットルからガソリン 10 リットルと重油 5 リットル を生産するとする。
この時、生産計画は
y = (10, 5, −20) と表される。
ちなみに、ガソリン、重油、原油の価格をそれぞれp1、p2、 p3とおくと、利潤は、
π=p1×10+p2×5+p3×(−20) で与えられる。
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企業:利潤最大化問題
すなわち、企業jの利潤は、 πj =pyj で与えられる。
したがって、企業jの利潤最大化問題は、 max
xi py
j
s.t. yj ∈Yj
で与えられる。ただしYjは生産可能性集合。 この解を、最適生産計画yj(p)と表す。
消費者
経済に存在する全ての消費者をi = 1, . . . ,Iで表す。 消費者iの財の初期保有量を
wi =(w1i,w2i, . . . ,wNi ) で表す。
企業の利潤は最終的には消費者に分配されるとし、企業jの利 潤のうち、家計iに分配される割合を θijで表す。このとき、 分配される額は以下で与えられる:
∑J j=1
θijpyj(p)
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消費者:効用最大化問題
このとき、消費者の予算制約式は、 pxi =pwi+
J
∑
j=1
θijpyj(p) で表される。
よって、消費者の効用最大化問題は、 max
xi u
i(xi)
s.t. pxi =pwi+
J
∑
j=1
θijpyj(p) と書ける。
消費者:労働供給
労働供給、労働所得が無いように見える。 しかし第一財を余暇とすれば、
w1i:余暇の初期保有(=24時間) x1i:余暇の消費量
w1i −x1i:労働時間
予算制約式は、以下のように書き換えられる:
N
∑
n=2
pnxni =p1(w1i −x1i) +
N
∑
n=2
pnwni +
J
∑
j=1
θijpyj(p)
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消費者:労働供給
余暇以外の財をまとめて第二財とすれば、消費者の時に使った枠 組みが使える。例えば…
労働者は一日に最大で 12 時間働くことができる。 時間あたり賃金は 800 円。
働いて稼いだ分だけ消費財を消費できる。
労働者は消費財の消費と、余暇から効用をえる。 と仮定する。
消費者:労働供給
図で見ると…
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 20 / 32
消費者:労働供給
図で見ると…
消費者:労働供給
図で見ると…
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 20 / 32
消費者:労働供給
図で見ると…
一般均衡モデル
非常に抽象的だが、以上でとりあえず経済全体を、 (ui,wi,Yj, θij)
i=1,2,...,I andj=1,2,...,J
によって余す所無く記述できた。 以下のように定義する:
y(p) =
∑J j=1
yj(p)
x(p) =
I
∑
i=1
xi(p)
w =
∑I i=1
wi
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超過需要関数
第n財の市場での均衡は、
xn(p) =yn(p) +wn で表される。
両辺の差を取ったものを超過需要関数と定義する: zn(p) ≡xn(p) −yn(p) −wn
これを並べたベクトルをz(p)と定義する。 均衡価格p∗では、以下が成立するはず:
z (p∗) = 0, n= 1, 2, . . . ,N
超過需要関数の性質1:ワルラス法則
いろいろな財の超過需要はそれぞれバラバラに動くわけでは なく、相互に依存している。
財の超過需要の間に成立する法則がワルラス法則である。 ワルラス法則
✓ ✏
すべての価格体系pと超過需要関数z(p)について、pz(p) = 0 つまり
p1z1(p) +p2z2(p) + · · · +pNzN(p) = 0 が成り立つ。
✒ ✑
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 23 / 32
超過需要関数の性質1:ワルラス法則
ワルラス法則が意味するのは、
超過需要の金額を合計すると常にゼロになる。 すべての財の価格が正であるならば、
ある市場で超過需要があれば、別の市場で必ず超過供給が ある。
N個の市場のうち、N − 1個が均衡すれば、残りの1個も必ず 均衡する。
ということ。
超過需要関数の性質2:ゼロ次同次性
すべての財の価格が同時にt 倍になっても、最適生産計画は 変わらない。
すべての財の価格が同時にt 倍になっても、最適消費計画は 変わらない。
よって超過需要関数にも同じことが成り立つ。 超過需要関数のゼロ次同次性
✓ ✏
すべてのpとt >0について、超過需要関数z(p)は z(tp) =z(p)
✒を満たす ✑
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 25 / 32
均衡の存在
市場均衡は理想的な資源配分を実現する。
しかし、そもそも全ての市場を均衡させる価格体系p∗は存在 するのか?
ここでは均衡を
zn(p∗) = 0もしくは、 zn(p∗) < 0, pn∗ = 0
が成立する状態と定義する。
市場均衡の存在定理
✓ ✏
超過需要z(p) = (z1(p),z2(p), . . . ,zN(p))が価格pの連続な関 数であるならば、全ての市場を同時に均衡させる均衡価格体系 p∗ =(p∗,p∗, . . . ,p∗) が必ず存在する。
パレート効率的
均衡における厚生分析のために、以下の概念を導入する: パレート改善
✓ ✏
誰の効用も下げることなく、少なくとも一人の効用を上げるこ とをパレート改善という。
✒ ✑
さらに、パレート改善の概念を使って以下を定義: パレート効率的
✓ ✏
パレート改善がもはやできない状態、つまり「誰かの効用を下 げることなく、少なくとも一人の効用を上げることがもはやで きない」ような状態をパレート効率的という。
✒ ✑
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 27 / 32
厚生経済学の第一基本定理
競争市場によって実現される厚生水準について何が言えるか? 競争市場の均衡では死荷重が生じないので、パレート効率的 になってそう。
このことは、以下の定理で確認される: 厚生経済学の第一基本定理
✓ ✏
次の条件のもとでは、競争市場における均衡は常にパレート効 率的な資源配分を実現する。
条件:消費量を連続に変化させることができ、かつ消費量をわず かに増やすと効用が上がるような財が、各消費者について1つ
✒はある。 ✑
厚生経済学の第二基本定理
以下の条件が成立すれば、いかなるパレート効率的な資源配分も、 適当な所得再分配を一括固定税と一括補助金を使って行えば、競 争市場の均衡を通じて達成できる。
1 各消費者の無差別曲線の上側が凸集合。
2 各生産者の生産可能性集合が凸集合。
3 企業はいらない財を捨てることができる。
4 実行可能などんな資源配分においても、「(どれかの財の)消 費を増やすと効用が上がる」人が、一人はいる。
5 各消費者の効用関数は連続関数である。
6 pのもとでの各消費者の支出額がゼロではない。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 29 / 32
市場の効率性
1 非効率性が起こる一般的な原因は、価格の歪みと競争の制 限にある。
2 そこから逆算すると、望ましい政策の指針として、
どのような価値判断を取るにせよ、非効率性を何らかのやり方 で取り除くことはつねに望ましい。
全ての消費者と生産者が同一の価格に直面していないと非効率 性が生じる。また、全ての消費者と生産者が同一の価格に直面 していても、完全競争的に振舞っていないと非効率性が生 じる。
そのような価格の歪みや競争の制限を排除して完全競争状態を 作り出し、同時に一括固定税と一括補助金を使って適当な所得 配分をすれば、国民全員をより幸福にできる。
市場の失敗
以上の議論は、市場がうまく機能している場合の話。
実際には市場メカニズムが完全に機能するケースは稀である。 しかし、一般均衡分析の、どの仮定が満たされないせいで市 場が機能不全に陥っているのかがわかれば、対策も考えられ るかもしれない。
どういうケースで市場メカニズムがうまく機能しないのかを 具体的に見てゆく。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 31 / 32
市場の失敗
1 独占・寡占
2 市場が存在しない
3 外部性
4 情報の非対称性
5 公共財
6 分配の公平性