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九州大学法学部「法情報学」

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(1)

選挙のしくみ

1 選挙

1.1 選挙の歴史

古代アテネ 陶片追放

ローマ 都市参議会員等の選挙

イギリス 1295年 エドワード1世 模範議会 ヨーロッパ中世 等族会議、三部会

ポンペイの壁の落書き「公職を友に」 エドワード1 1.2 選挙の機能

①利益の表出、②利益の集約、③正統性の付与、④政治的リーダーの選出 1.3 選挙の原則

①普通選挙の原則、②平等選挙の原則、③直接選挙の原則、④秘密選挙の原則 ※自由選挙の原則 2 選挙制度の分類

2.1 代表法による分類

※「多数」「少数」:選挙区の多数派が議席を占めるのか、それとも少数派にも議席獲得の可能性があるのか

・多数代表法 ・少数代表法 ・比例代表法

※代表する者による分類

・身分代表 等族会議、三部会 ・職能代表 ・地域代表 2.2 選挙区制による分類

代表法と選挙区制との組み合わせ

代表法 選挙区制 採用している例

多数代表法 小選挙区制

大選挙区完全連記式

アメリカ、イギリス アメリカの一部の自治体 少数代表法 大選挙区制限連記式

大選挙区単記式

日本の戦後第1回目の衆院選(2名連記) かつての「中選挙区制」

比例代表法 比例代表区制 北欧諸国等 2.3 代表法の効果

選挙区の定数は3名 選挙区内の有権者は100

そのうち A党支持者45名、B党支持者 25名、C党支持者 20 名、その他10名とする

→中選挙区(3名大選挙区単記式)では、A党の45万票は2名 の候補者に分割させざるを得ない

B党にも当選可能性が出てくる 45

25 20

10

A党支持者 B党支持者 C党支持者

その他

(2)

少数代表制の特色

・死票が多い ・投票の分布と議席の分布が一致しない ・選挙区単位で「政権選択」が可能 多数代表制の特色

・死票が少ない ・投票の分布と議席の分布が一致しやすい ・多党制になりやすい 2.4 ※選挙区制と比例代表制との組み合わせ

・選挙区比例代表区 並立 制:選挙区と比例代表区が連動しない 日本

・選挙区比例代表区 併用 制:選挙区と比例代表区が連動する ドイツ 2.5 投票用紙の記入方法による分類

・自書式と記号式 ・単記式と連記式 ・電子投票

・インターネット投票(エストニア) 3. 議会制と選挙制度

3.1 身分制議会、等族会議における代表 議会は身分的特権の主張の場

各議員は選出母体の意思に拘束される (強制委任・命令的委任) 選出母体の「代理人」としての性格

3.2 「国民主権」原理の下での議会での代表

議員=全国民の代表として、全国民の一体的利益を代表 議員は選挙民の意思に拘束されない (自由委任)

4 その他

4.1 投票率

■アメリカ

投 票 に は 事 前 の 有 権 者 登 録 が 必 要 で、登録率は 70%程度。実際の投票 者 /投票有資格者の割合は、 50% 程 度(大統領選)。

中間選挙はさらに低くなる傾向。

■ドイツ

以前は非常に高かったが、80 年代 以降低下。最近は 80%程度。

■日本

参院選、自治体首長選(相乗り選 挙、無風選挙)の投票率が低い。

■オーストラリア、ベルギー 強 制 投 票 制 度 の お かげ で 高 い 投 票率を保っている。

■イタリア(以前)

強 制 投 票 制 度 に よ り高 い 投 票 率

(廃止後は、漸減傾向にある) 5 投票の仕方

小選挙区 比例代表区 最高裁判所裁判官国民審査

※住民票が実家にある場合(転入してから3ヶ月未満の場合も含む)

1住民票(実家)のある市町村の選挙管理委員会に連絡し、「不在者投票宣誓書兼請求書」を送付してもらう 2「不在者投票宣誓書兼請求書」を記入して、住民票のある市町村の選管管理委員会に送付

3住民票のある市町村選挙管理委員会から投票用紙が届く。 4現住所のある市町村の選挙管理委員会で投票を行う

※詳細は実家のある市町村選挙管理委員会、横浜市選挙管理委員会へ http://www.city.yokohama.lg.jp/senkyo/huzai/igai.html

大選挙区完全連記(3名連記式の場合) 候補者①(A党)45

候補者②(A党)45票 候補者③(A党)45票 候補者④(B党)25票 候補者⑤(B党)25票 候補者⑥(B党)25票 候補者⑦(C党)20

中選挙区(定数3の場合) 候補者①(A党)20票 候補者②(A党)15票 候補者③(A党)10票 候補者④(B党)15票 候補者⑤(B党)10票 候補者⑥(C党)10

(3)

2 回 権力 論

1. 権力論とは

権力を行使する側(権力者)についての理論 2. 権力についての見方

2.1. 実体的権力論(実体概念)

2.2. 関係的権力論(関係概念)

2.3. 非対称的理解

2.4. 共同体的理解

3. 支配と服従

支配とは権力者が人々を従わせている状態 服従とは被支配者が権力者に従う状態

3.1. マックス・ウェーバーの支配の類型

3.2. メリアムのミランダとクレデンタ

暴力や強制だけでは、効率的に支配することができない

被支配者の自発的な服従をひきだす → 被支配者の心理に訴える手段 4. エリート論

4.1. マルクス主義のエリートに関する見解

4.2. エリート学派の理論

4.3. いろいろなエリート理論

4.3.1 パレート「エリートの周流」

4.3.2 モスカ『支配する階級』(1939

4.3.3 ミヘルス「寡頭性の鉄則」

4.3.4 シュンペンター「競争的民主主義」

政治指導者(エリート)

競争 指導者選出

5. 権力構造論

5.1. 権力構造論

5.1.1 ミルズ「パワーエリート」

5.1.2 リースマン「拒否権行使集団」

5.2. 権力構造の実証研究(コミュニティ権力構造論)

5.2.1 ハンター『コミュニティ権力構造』

5.2.2 ダール『統治するのは誰か』

5.2.3 バクラックとバラッツ 非決定における権力 『権力の二つの顔』『決定と非決定』

人民(大衆)

- 1 -

(4)

4 回 政治行動論 (1)

1. 政治行動論 1.1 政治行動論とは?

政治行動論:支配される側・統治される側の行動について(権力論の対極) 1.2 市民社会から大衆社会へ

1.2.1 市民

「市民」:一定以上の教養と財産を持つ=ブルジョワジー 均質性・同質性(利害関係に決定的な断裂がない)

合理性(理性に基づいて主体的・冷静に行動)→討議や多数決原理が機能する 議会制民主主義に適合的

1.2.2 大衆

普通選挙運動、選挙権の拡大により貧しく教養もない者(無産者)も政治参加 主体的に行動することができない

都市化の進行 → 個人の社会的紐帯失われる

①原子化、②異質性、匿名性、非合理性、③不安感や無力感、疎外感、④政治に無関心 画一的な思考様式・行動様式 → 「群衆」

2. 大衆社会論

2.1 オルテガ『大衆の反逆』 2.1.1 背景

スペインでは、1923年にプリモ・デ・リベラ将軍の独裁政権が成立するが20年代末にはこれ も末期的状態に陥り、反政府運動が高揚。独裁政権が 1930 年に崩壊すると、オルテガは多く の知識人と政治結社「共和国奉仕集団」を結成し、スペイン共和国成立の一翼を担った。 こうした政治状況の中で書かれたのが『大衆の反逆』。

2.1.2 オルテガが批判する大衆とは

大衆一般ではなく、社会に責任を持とうとしない「大衆人」という人間のタイプ 少数エリートと大衆の従順性との結合を理想とする

あえて「貴族」(自ら進んで社会に責任をとろうとする少数派)になろうとした

2.1.3 オルテガの大衆批判

大衆= 欲望と権利意識のみを持った凡庸な人間の集合体 本来はエリートの領分であるべき政治に大衆が進出

大衆による圧政の危機を招来 2.2 レーデラー『大衆の国家』

ファシズムの基盤を組織化された大衆の積極的な支持に求めた 2.3 コーンハウザーの大衆社会論

2.3.1 大衆社会論の系譜

コーンハウザーによる大衆社会批判の系譜の整理 1

(5)

(コーンハウザーが大衆を批判しているわけではない)

①貴族主義的批判 = 少数エリートによる支配を肯定(オ ルテガ)

②民主主義的批判 = 社 会 の 大 衆 化 で エ リ ー ト に よ る 大 衆操作可能性が高まることを危惧

エリート

接近可能性 操縦可能性

大衆

2.3.2 大衆社会の類型

非エリートの操縦可能性 低

非エリートの操縦可能性 高

エリートへの接近可能性 低

①共同体的社会 ③全体主義社会

エリートへの接近可能性 高

② 多 元 的 社 会 ④ 大 衆 社 会

広い意味での大衆社会=②、③、④ 狭い意味での大衆社会=④ コーンハウザーが望ましいと考えた社会=②

参考

オルテガ・イ・ガセット(José Ortega y Gasset 18831955)

スペインの哲学者。母ドロレス・ガセットはスペインの有力新聞『公正』の創立者の娘、父ホセ・オル テガ・イ・ムニーリャは『公正』の主幹で、作家・ジャーナリスト。マドリード大学卒業後、1910年に 弱冠27歳でマドリード大学教授となる。哲学者としての著作には『ドンキホーテをめぐる省察』(1914) があるが、1930 年に発表した『大衆の反逆』で文明批評家として高名となった。1936年のスペイン内 乱勃発により45年まで亡命生活を余儀なくされた。

エミール・レーデラー (Emil Lederer 1882-1939)

ドイツの理論経済学者・社会学者。ベルリン大学教授、ハイデルベルグ大学教授を歴任。ナチスが政 権を掌握した1933年にアメリカに亡命。『大衆の国家』では、ファシズムやナチズムが階級・階層を 含めあらゆる社会集団を破壊して「大衆」に作り変え、カリスマ的なリーダーに動員される「大衆の 国家」が出現したと主張。192325年、東京帝国大学経済学部に外国人教師として招かれ、日本の経 済学者にも影響を与えている。

大 衆 が エ リ ー ト に 近 づ き や すいこと

大 衆 が エ リ ー ト に よ っ て 操 ら れ や す い こ

2

(6)

5回 政治行動論 (2) 1.政治意識と政治的社会化

1.1 政治意識

政治および政治現象に関する考え方や態度 1.2 政治的社会化

社会の成員が、政治的規範や態度、価値観、行動パターンなどを習得し、それに 同化していく過程

・ハイマン『政治的社会化』(1959

人間の政治的態度が2224歳にかけて形成

・グリーンスタイン『子どもと政治』(1965

政治的対象として識別されるのは具体的個人 当初は好意的、年齢と共に非好意的

1.3. アイゼンクの政治意識論

硬い心性

共産主義者 ファシスト

急進的 保守的

社会主義者 保守主義者

自由主義者

柔らかい心性

※日本では、若いころに社会主義や共産主義、反政府・反体制的言動を取っていた人物が、 歳を取ると保守的・国家主義的な立場に転じることが多い。これを「転向」という。アイ ゼンクの理論により、このような「転向」という現象も説明できる。若い頃に過激な左派・ 学生運動家であった人が、その後保守派・国家主義者になったりするのは、イデオロギー の転向だからである。つまり、何らかの組織、主義、理論に傾倒するという心性は変わら ず、傾倒の対象が左派から右派に転向したにすぎない。

1.4 リースマンの政治意識論

『孤独な群衆』(1950) パーソナリティーの3分類 前近代 伝統志向型 伝統や慣習を基準

近代 内部志向型 自己の内面を基準 → 近代社会の「市民」 現代 他人志向型 他者を基準(メディアも含む)

適応の方法

・適応型 主流を占める型に適応

・アノミー 同調能力を欠く

・自律型 適応するかどうかを自主的に選択 現代において望ましいタイプ = 他人志向型 + 自律型 1.5 フロムの政治意識論

権威主義的性格

『自由からの逃走』(1941

マゾヒズム的傾向とサディズム的傾向(強いものに卑屈に服従し、弱いものに過 剰に攻撃的になる)からなる「権威主義的性格」がファシズムの要因

自由を進んで放棄、カリスマ的指導者に自己の運命を委ねる 2. 政治的無関心

2.1 政治的無関心とは

移動は困難

移動は容易

1

(7)

政治意識の一形態

政治そのものや政治過程への参加に興味を持たない状態 前近代の政治的無関心 → 現代的無関心

2.2 政治的無関心の原因

①政治規模の拡大による政治的有効性感覚の喪失

②社会の分業の進展による個人の阻害

③マスメディアによる影響 氾濫する情報

皮相的、センセーション的報道 3. 政治的無関心の分類

3.1 リースマンの分類

①伝統的無関心

②現代的無関心 3.2 ラスウェルの分類

①脱政治的無関心 かつては政治に関心を持っていたがその後無関心に

②反政治的態度 政治的・権威的価値を否定し、軽蔑する(アナキスト)

③無政治的態度 政治の存在意義を信じていない、政治的主体性がない

4. 無党派層

4.1 無党派層とは

支持政党を持っていない有権者の層 支持政党なし層

政治に高い関心を持っていながら既存の政治や政党に不信感

4.2 歴史

アメリカ 1970年代から増加

日本 1990年代から注目されるようになった 4.3 バッファ・プレイヤー

牽制的投票者(蒲島郁夫・東京大学教授・現熊本県知事の指摘) アナウンスメント効果と密接なかかわりを持つ

「基本的には自民党政権を望んでいるが、与野党伯仲がよいと考えて投票する有 権者」

※参考

エーリッヒ・フロム (Erich Fromm 190080)

アメリカのユダヤ系精神分析学者、社会心理学者。ハイデルベ ルク大学、フランクフルト大学、ミュンヘン大学で心理学・社 会学を学ぶ。卒業後ベルリン精神分析研究所、フランクフルト 社会研究所に勤務したが、ナチスの迫害を逃れて1933 年に渡 米。その後、コロンビア大学、イェール大学、メキシコ国立大 学などで教えた。

『自由からの逃走』では、現代人が歴史的に獲得してきた自由 を捨て、かえって自由であることから逃れようとして、新たに 依存や従属を求める原理を、ナチズムに即して分析している。

2

(8)

6 回 投票行動 (1)

1. 投票行動

1.1 投票行動論とは

有権者の選挙における投票方向の決定に関する行動のこと

どのような有権者がどのような条件の下にどのような政党・候補者に投票するか 1.2 投票行動研究の流れ

コロンビア・グループ

ミシガン・グループ

リビジョニスト

2. 投票行動研究

2.1 コロンビア・グループ コロンビア大学の研究者

ポール・ラザースフェルト、バーナード・ベレルソン

1940年大統領選挙(オハイオ州エリー郡)、1948年大統領選挙(ニューヨーク州エルミラ市) パネル方式(面接調査を複数回実施)

政治的先有傾向(社会経済的属性、宗教、居住地域により形成される政治的態度) 2.2 ミシガン・グループ

ミシガン大学の研究者 A.キャンベル

1960年代~ 全国調査

外的な社会環境と個人の反応との間に心理的媒介変数の存在を仮定 政党・候補者・争点のうち、政党帰属意識(政党支持)の重要性 未成年期における両親からの影響が主要源泉

有権者は合理的でなく争点投票は起こりにくい 2.3 ミシガン・グループへの批判(リビジョニスト)

2.3.1 争点投票

シドニー・ヴァーバによる批判

調査方法の問題、調査時期の問題(「黄金の50年代」は国内外の状況が平穏)

2.3.2 政党帰属意識の変容

1970年代以降の無党派層の出現 2.4 業績投票モデル

M. フィオリナ

エリー調査・エルミラ調査(パネル調査方式) 有権者の社会経済的属性を重視

全国アンケート調査(大統領選) 有権者の心理的要素を重視、政党支持

ミシガングループへの批判

争点投票(ヴァーバ) 業績投票(フィオリナ) 論争

1

(9)

有権者は相応に合理的 政権党のそれまでの業績に対する評価により左右 有権者の投票=政党帰属意識 + 業績評価 + 未来への期待

3. 合理的選択論と棄権 3.1 合理的選択論とは

合理的な人々は、自己の効用を最大化することをめざして行動する A.ダウンズ、W.ライカー、P.オードシュク

3.2 投票の参加可能性 R = PB + D - C

R:投票に参加することによって得る利益

P:自分の投票参加が結果にあたえる影響に関する主観的確率 B:異なる政党や候補者を選ぶことにより期待できる利益

C:コスト

D:投票義務をはたす満足感

4. 日本人の投票行動

政党支持 政治的有効性感覚 政治争点・政治状況 所属している団体の影響 投票率(年齢、性別、都市化、種別、天候)

資料 アメリカの1950年代

第二次世界大戦の終結と空前の経済的繁栄 消費社会の到来、大型車、家庭電化製品 有色人 種差別など社会的矛盾も内包

2

(10)

投票行動2 マスメディアと選挙のしくみ

5. 投票行動とマスメディア 5.1 マスメディアの機能

5.1.1 マスメディアとは

新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、映画など

不特定多数の受け手に均一的メッセージを伝達 「第四の権力」 5.1.2 特徴

①送り手の専門性、②公開的・一般的性質、③伝達機会の定期性、④送り手・受け手の役割の固定化(フ ィードバックの限定性)

5.2 アナウンス効果

バンドワゴン vs. アンダードッグ 5.3 機能についての見解

顕在的機能

ラスウェル :①環境の監視、②社会の諸部分の関連づけ、③社会的遺産の伝達 ライト :④娯楽の提供

潜在的機能

ラザースフェルド、マートン:①地位付与、②社会的規範強制、③麻酔的逆機能 5.4 マスメディアの効果

強力効果論 弾丸理論、皮下注射モデル ミルズ、リップマン 限定効果論 コミュニケーションの二段階の流れ

①創造、②補強、③減殺、④改変

ラザーフフェルド クラッパー 新強力効果論 議題設定機能仮説

沈黙の螺旋 培養理論

マコームズ、ショー ノエル=ノイマン ガードナー

1 選挙

1.1 選挙の歴史

古代アテネ 陶片追放

ローマ 都市参議会員等の選挙

イギリス 1295年 エドワード1世 模範議会 ヨーロッパ中世 等族会議、三部会

ポンペイの壁の落書き「公職を友に」 エドワード1

1.2 選挙の機能

①利益の表出、②利益の集約、③正統性の付与、④政治的リーダーの選出

(11)

1.3 選挙の原則

①普通選挙の原則、②平等選挙の原則、③直接選挙の原則、④秘密選挙の原則

※自由選挙の原則

2 選挙制度の分類 2.1 代表法による分類

※「多数」「少数」:選挙区の多数派が議席を占めるのか、それとも少数派にも議席獲得の可能性があるのか

・多数代表法 ・少数代表法 ・比例代表法

※代表する者による分類

・身分代表 等族会議、三部会 ・職能代表 ・地域代表

2.2 選挙区制による分類

代表法と選挙区制との組み合わせ

代表法 選挙区制 採用している例

多数代表法 小選挙区制

大選挙区完全連記式

アメリカ、イギリス アメリカの一部の自治体 少数代表法 大選挙区制限連記式

大選挙区単記式

日本の戦後第1回目の衆院選(2名連記) かつての「中選挙区制」

比例代表法 比例代表区制 北欧諸国等 2.3 代表法の効果

選挙区内の有権者は100

そのうち A党支持者45名、B党支持者 25名、C党支持者20 名、その他支持10名とする

→中選挙区(大選挙区単記式)では、A党の45万票は2名の候 補者に分割させざるを得ない

B党にも当選可能性が出てくる

少数代表制の特色

大選挙区完全連記(3名連記式の場合) 候補者①(A党)45

候補者②(A党)45票 候補者③(A党)45票 候補者④(B党)25票 候補者⑤(B党)25票 候補者⑥(B党)25票 候補者⑦(C党)20

中選挙区(定数3の場合) 候補者①(A党)20票 候補者②(A党)15票 候補者③(A党)10票 候補者④(B党)15票 候補者⑤(B党)10票 候補者⑥(C党)1045

25 20

10

A党支持者 B党支持者 C党支持者

その他

(12)

・死票が多い ・投票の分布と議席の分布が一致しない ・選挙区単位で「政権選択」が可能 多数代表制の特色

・死票が少ない ・投票の分布と議席の分布が一致しやすい ・多党制になりやすい

2.4 ※選挙区制と比例代表制との組み合わせ

・選挙区比例代表区 並立 制:選挙区と比例代表区が連動しない 日本

・選挙区比例代表区 併用 制:選挙区と比例代表区が連動する ドイツ

2.5 投票用紙の記入方法による分類

・自書式と記号式 ・単記式と連記式 ・電子投票

・インターネット投票(エストニア)

アメリカの投票用紙(サンプル) 日本の投票用紙(例)

(13)

3. 議会制と選挙制度

3.1 身分制議会、等族会議における代表 議会は身分的特権の主張の場

各議員は選出母体の意思に拘束される (強制委任・命令的委任) 選出母体の「代理人」としての性格

3.2 「国民主権」原理の下での議会での代表

議員=全国民の代表として、全国民の一体的利益を代表 議員は選挙民の意思に拘束されない (自由委任)

→ エドマンド・バークの「ブリストル演説」

※ルソーはこのような代表観を批判

※バークのブリストル演説の内容

議会は決して多様な敵対的利害関係を代表する諸使節団から成る会議体ではない。そし てこの使節個々人はそれぞれが自己の代表する派閥の利害をその代理人ないし弁護人に 対して必ず守り抜かねばならないような種類の、会議体ではない。議会は一つの利害つ まり全成員の利害を代表する一つの国民の審議集会であり、したがってここにおいては 地方的目的や局地的偏見ではなく、全体の普遍的理性から結果する普遍的な利益こそが 指針となるべきものである。諸君は確かに代表を選出するが、一旦諸君が彼を選出した 瞬間から、彼はブリストルの成員ではなく王国の議会の成員となるのである。

4 その他

4.1 強制投票制度

選挙その他の投票に際して、投票を法的に義務づけ、正当な理由がないのに棄権する者に制裁を科する制度

(義務投票制度)。

導入している国:ベルギー、オーストラリア 導入していた国:イタリア(1994年選挙法改正で廃止) 4.2 ゲリマンダー

選挙区の境界線を、ある党派が他の党派よりも有利になるように恣意的に画定す ること。

1811年、マサチューセッツ州知事エルブリッジ・ゲーリー(Elbridge Gerry)は、州 議会の選挙に際し、エセックス・カウンティ(Essex County) の選挙区を自派の民 主党に有利になるよ うに恣意的に画定した。その選挙区の概 観がサラマンダー

(salamander. 火とかげ。伝説上の怪獣で火の中に住むという)に似ていたので、

画家が翼と爪を加えてイラストを描き、それが新聞に風刺漫画として掲載され、 有名となった。

4.3 投票率

■アメリカ

投 票 に は 事 前 の 有 権 者 登 録 が 必 要 で、登録率は 70%程度。実際の投票 者 /投票有資格者の割合は、 50% 程 度(大統領選)。

中間選挙はさらに低くなる傾向。

■ドイツ

以前は非常に高かったが、80 年代 以降低下。最近は 80%程度。

■日本

参院選、自治体首長選(相乗り選 挙、無風選挙)の投票率が低い。

■オーストラリア、ベルギー 強 制 投 票 制 度 の お かげ で 高 い 投 票率を保っている。

■イタリア(以前)

強 制 投 票 制 度 に よ り高 い 投 票 率

(廃止後は、漸減傾向にある)

(14)

政党

1. 政党

1.1 政党の定義

政治的主義・主張を共有する者によって組織され、一定の政治的利益や政策の実現のために活動し、 政権獲得をめざす集団のこと

政党の目的=政権獲得 1.2 政党の発生

・近代議会制と共に生成・発展

・名望家政党 → 大衆政党

19世紀半ば以降、普通選挙制度の広がりで有権者が増加、政党も変容) 1.3 政党の社会的位置づけ

当初は歓迎されていなかった

・エドマンド・バークの政党擁護論

・トリーペル 政党と憲法

敵視 → 容認 → 編入 1.4 政党の機能

①利益表出 ②利益集約 ③政治家の人材発掘、政治的指導者の選抜 ④政治的社会化 1.5 政党の衰退

なぜ政党は衰退したのか?

・「支持なし層」の増加(アメリカでは70年代以降、日本では90年代以降)

・単一争点型市民運動

・ネットワーク型政党の出現(緑の党など)

・経済的利益分配を調整原理とした包括政党の限界

・ポピュリズム 1.6 政党と国家

公費助成

1994年に政党助成法を制定(政治資金規正法改正とセット)

・政党助成金の総額=250円×人口(コーヒー一杯分) 2. 政党の分類

2.1 ウェーバーの分類

①貴族主義型政党 ②名望家政党 ③大衆政党 2.2 デュヴェルジェの分類

①幹部政党 ②大衆組織政党 ③間接政党 2.3 キルヒハイマーの包括政党論

特定の思想・宗教・階層等の支持者ではなく、包括的に支持者を取り込もうとする政党(=日本の自由 民主党のような政党)

2.4 組織、拘束力による分類

強固な全国的党組織、厳格な党議拘束 ←→ アメリカ型 3. 政党システム(政党制)

3.1 政党システム、政党制とは 政党間の力関係

1

(15)

3.2 デュヴェルジェの分類

①単独政党制 ②2大政党制 ③多党制 3.3 サルトーリの分類

①一党制

(a)全体主義一党制 (b)権威主義一党制 (c)プラグマティズム一党制

②ヘゲモニー政党制

(a)イデオロギー志向ヘゲモニー政党制 (b)プラグマティズム志向ヘゲモニー政党制

③一党優位政党制

④二党制

⑤限定的多党制(穏健な多党制)

⑥分極的多党制(極端な多党制)

⑦原子化政党制 4. 政党制と連立政権の安定度 4.1 二党制の神話、多党制の神話

「デュヴェルジェの法則」 二党制 多党制 4.2 実証

・ローウェル『大陸ヨーロッパの政府と政党』

・ドッドの数量分析研究 → 「神話」性を明らかにした

参考

ジョバンニ・サルトーリ(Giovanni Sartori 1926-2017)

イタリアの政治学者。フィレンツエ大学で学んだ後、フィレンツエ大学教授、コロンビア大学教 授をへて現在コロンビア大学名誉教授。比較政党政治の第一人者。

「政党国家」

政党が国家意思の形成に事実上主導的な役割を果たす国家。政党制を基礎とする現代民主制国家のほとん どは政党国家。このよ うな国家では、議会は自由な討論に基づき決定するとい う本来の機能を失い 、選挙も従 来の個人本位のものから「政党本位」 のものへ変化する。選挙の際には、議員の人格や才能よりその所属政党 が重要な要素となる。

PAC

連邦選挙委員会の資料によれば、2008年大統領選でオバマ陣営は75000万ドルを支出した。2012年大 統領選の選挙運動資金は、それを大きく越えたとみら れる。選挙運動資金の高騰の一因は、今回の大統領選 からスーパーPAC と呼ばれる政治団体が登場したことにある。アメリカでは、企業や団体、個人が候補者や政党 に直接献金を行うことは連邦法で禁止されて い る。そこで、候補者や政党を支援するため の政治活動委員会

(Political Action Committee = PAC)という政治資金団体が寄付を集め、PACを通じて間接的に候補者や政党

に献金するという経路をとっている。また、法人や団体が候補者とは無関係に独立して支出する場合でも、支出 には規制が加えられていた。 ところが 2010 年に、連邦最高裁判所は新たな判決(Citizens United v. Federal

Election Commission, 558 U.S. 310 (2010))を下し、候補者や政党には直接関係していない政治活動に対する

献金額に上限を設けることは違憲であると判断した。候補者とは無関係の第三者の団体への寄付には上限がな くなり、このような団体が候補者からは独立して支出することが事実上無制限で認められるようになった。

2

(16)

政治制度

1 民主主義の政治制度の基本原理 1.1 法治主義

・行政も司法も議会の制定する法律によって行わなければならないとする原則

→ 形式的法治主義が生じる余地

法治主義に従っている国家=法治国家(Rechtsstaat)

・行政裁判所制度(ドイツとフランス、戦前の日本)

1.2 法の支配

A.V.ダイシーの整理

①専断的権力の支配ではなく,正規の法(コモン・ロー)の絶対的支配 人の支配ではない

②地位や身分を問わずあらゆる人が国の通常の法に服し、かつ通常裁判所の裁判権に服する 行政法、または公法という、統治のための特別の法律があるのではなく、国王も国民もみなただ一 つの法の下に服する

③行政事件も当然に普通の司法裁判所で扱われ、また適用される法も国民に適用される法と同じ法 憲法の一般的法原則(人身の自由等)は,裁判所の判決の結果である

法とは裁判所が判例によって積み上げてきた判例法(コモン・ロー)を意味

・発展

イギリス:「議会主権の原理」と結びつく

アメリカ:違憲立法審査制(司法審査制)→日本国憲法 違憲立法審査権

1.3 法治主義と法の支配

・法治主義

形式的法治主義に陥る危険性

・法の支配

個人の権利、自由を国家権力による侵害から守る 立法権に対する制約原理となりうる

2 権力分立

2.1 権力分立の理論

・ハリントン『オシアナ共和国』

・ジョン・ロック『市民政府二論』

・モンテスキュー『法の精神』

立法権、行政権、司法権の三権の分立

アメリカ合衆国憲法に採用された権力分立の方式 → 影響力大

2.2 権力分立のその他の形態

執行権

立法権

狭義の執行権

外交権

立法

行政 司法

(17)

・連邦制 地域的な権力の分立(中央政府と州政府)

・二院制 立法権の分割による権力内の分立

3 議会制 3.1 議会の機能

①統合

②立法

③代表

④行政監督(政府監視)

予算議決権、国政調査権、内閣不信任決議権等を通じて行政を統制

3.2 議会の構成

・一院制

・二院制

下院 国民が直接選出する議員で組織されるのが普通 上院 国によって議員の選任方法が異なる

貴族院型 イギリス、明治憲法時代の日本

連邦型 アメリカ、ドイツ、スイス等 連邦を構成する州の代表で構成 各州代表として選挙(アメリカ)

州政府により派遣(ドイツ) 地域代表型 地域を代表

地方議会議員らによる間接選挙(フランス) その他 上下両院ともほぼ同じ方法で選出

日本、イタリア

衆議院 参議院

議員数 480(小選挙区 300+拘束名簿式比例代 表区180、重複立候補可)

242(選挙区 146+非拘束名簿式比 例代表区96

議員任期 4年(解散あり) 6年(解散なし、3 年ごとに半数を 改選)

選挙区 小選挙区は全国300

比例代表区は全国11区域のブロック制

選挙区は都道府県単位47区(地方 部は小選挙区、都市部は中選挙区) 比例代表区は全国1区(候補者又は 政党に投票)

解散 あり なし

選挙権 20歳以上 20歳以上

被選挙権 25歳以上 30歳以上

衆議院と参議院の違い

(18)

・二院制の意義

議会の権力濫用を防止する

上院によって下院の行為を慎重に審査する 選挙の回数が増えるため民意が忠実に反映される

一方の院が機能停止になった場合にも他方の院で審議可能

・参議院の意義

カーボンコピー論

「ヴィスコシティ(viscosity)」理論

「粘り強さ」「粘着力」という意味

フランスの政治学者ブロンデルが議会の能力を測るために提示した概念 アメリカの政治学者モチヅキ

立法能力ばかりでなく、内閣が提出する議案の早期成立を野党が妨害して与党 に譲歩を要求し場合によっては廃案に追い込む能力にも注目

二つの院が存在することは、与党が野党への譲歩を強いられ、野党が国会にお ける審議に強い影響力を行使することが可能となる一因である

「強すぎる参議院」論

衆議院で可決した法案を参議院が否決した場合、衆議院出席議員の3分の2以上の 多数で再び可決すれば法律となるが、実際には与党議員が衆議院の議席の3分の 2 以上という圧倒的多数を占めていなければ、再可決は困難

参議院の与党議員が、衆議院で可決された法案に賛成しない場合もありうる(→小 泉郵政解散を招いた)

直近の選挙によって選出された衆議院議員の中から指名を受けた内閣総理大臣が国 会への法案提出を通じて推進しようとしている政策が、参議院による法案の否決と いう「抵抗」によって実現できないとすれば、それは参議院による民意の無視・軽 視ではないかという見方(衆議院で可決された郵政民営化関連法案を参議院が否決 した例は、参議院の「良識の府」としての機能が働いたものであると評価できる?) ねじれ国会

20078月の参議院選挙の結果、連立政権与党は参議院における第1党の地位を失 い、衆議院と参議院における第1党が異なるという「ねじれ」が発生

衆議院と参議院の間の関係で緊張(審議の停滞や法案の廃案、衆参の議決の相違、 国会同意人事の否決など)

評価(与野党の協議による政策修正、野党主導の国政調査権行使、これまで形式的 に行われがちであった国会同意人事の実質化)

・多数代表と少数代表

多数代表:多数者の支持を獲得した者のみを当選させる 少数代表:少数者の支持を獲得した者にも議席を与える 比例代表:支持の割合を議席に比例的に反映させる

(19)

3.3 議会の運営

・委員会中心主義:アメリカ、戦後の日本 議員は最低1つの常任委員会に所属

委員会審議→本会議審議 委員会で否決された場合には原則として本会議にかけない

・本会議中心主義:イギリス、戦前の日本

「読会」制度

4 立法と行政の関係

・大統領制

行政府の長である大統領が国民の直接選挙で選ばれ、立法府と行政府の厳格な分離 大統領は議会に法案を提出できない(アメリカ)

閣僚は議員を兼職できない(アメリカ、フランス、韓国)

・議院内閣制

内閣は議会の信任により存立し、行政府の長である内閣総理大臣が議会の選挙で選ばれる 内閣と議会(特に政権与党)との緊密な関係

与党議員が閣僚として政府の一員になる 内閣提出法案の多さ

民主党政権で変わったのか

内閣提出法案 参議院議員提出法案 衆議院議員提出法案

参議院で閉会中審査 4

衆議院で閉会中審査 10 26

成立 84 4 10

撤回 1 4

本院議了 6

未了 12 5

合計 94 21 51

164国会 法案成立状況(出典:http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/kaiji164.htm

内閣提出法案 参議院議員提出法案 衆議院議員提出法案

参議院で閉会中審査 1 7

衆議院で閉会中審査 21 3 27

成立 82 4 24

撤回 3 2 8

本院議了

未了 2 11 1

合計 109 27 60

177国会 法案成立状況(出典:http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/kaiji177.htm

(20)
(21)

利益集団・圧力団体

1 利益集団・圧力団体

ある利益を得るために、公の機関に政治的な圧力を強くかけて、政策・法律を自分たちに有利に導 こうとする集団・団体

トルーマン → 利益集団という語を提唱

2 発生および台頭の要因

①工業化・都市化

②代表原理の変質

③行政国家化

④政党の官僚制化・寡頭制化(利益表出機能を果たさなくなった)

3 位置づけと機能

・積極的な評価 多元国家論、アメリカ

利益集団の相互交渉により均衡→多元的集団の民主主義が生まれる アメリカ的体制の擁護論

・消極的な評価 代表民主主義をゆがめる、非公式制度による政策決定、利益誘導

・機能

①利益表出、②利益集約、③政治的社会化 政党との違い

4 公共利益集団

公共的な利益の実現をめざす

公共利益集団の設立や活動促進が本質的に困難である理由は何か?

→ フリーライダーの存在 オルソン『集団行動の論理』

※アメリカの有名な公共利益集団 コモンコーズ

1

1970年に選挙運動資金の公開、情報公開法の制定等を求めて組織された。その後も予算サンセ ット方式の創設などを実現している有力な民間・非営利・非党派的政治団体。

アメリカ自由人権協会(アメリカ市民自由連合)

2

人種差別や各種の少数派への差別などの問題、言論の自由や表現の自由を中心として人権問題

1 http://www.commoncause.org/

2 http://www.aclu.org/

【利益集団】

・特殊な利益の実現

・特殊、個別的利益

・利益表出中心

【政党】

・政権獲得

・一般的、国民的利益

・利益集約中心

(22)

に取り組んでいる団体。1920年設立、約50万人の会員を擁する。 シエラクラブ

3

サンフランシスコに本部を置く環境教育保護団体で、1982年にアメリカの自然保護の父と言わ れるジョン・ミューアにより創設。当初はシエラネバダ山脈周辺のハイキングを楽しむ同好会 的な団体にすぎなかったが、ヨセミテ公園内のダム建設に反対し、建設を中止させた。以来発 展を続け、現在では全米に360余の事務所を持ち、約56万人の会員を擁する。

その他の主要環境保護団体

全米オデュポン協会(1905年設立、会員55万人) 国立公園資源保全協会(1919年設立、会員35万人)

アメリカ・アイザック・ウォルトン連盟(1922年設立、会員45000人) 全米野生生物連合(1936年設立、会員400万人)

原生自然協会(1935年設立、会員275000人) 5 利益集団の活動

政治的リソース 規模の大きさ

組織 → 「票」の提供(特に比例代表) 財政 → 政治資金の提供

情報や専門知識 人的ネットワーク 活動様式

議会や行政に対する圧力活動、世論誘導、ロビイストによるロビイング 活動の対象とその変化

アメリカ 主として議会・議員に対する圧力活動

日本 従来は主として行政・官僚に対する圧力活動

PAC

アメリカでは、企業や団体、個人が候補者や政党に直接献金を行うことは連邦法で禁止

候補者や政党を支援するための政治活動委員会(PAC)という政治資金団体が寄付を集め、PAC を通 じて間接的に候補者や政党に献金するという経路

法人や団体が候補者とは無関係に独立して支出する場合でも、支出には規制。

2010年に、連邦最高裁判所が新たな判決(Citizens United v. Federal Election Commission, 558 U.S. 310

(2010))を下し、候補者や政党には直接関係していない政治活動に対する献金額に上限を設けること

は違憲であると判断 → 候補者とは無関係の第三者の団体への寄付には上限がなくなり、このよう な団体が候補者からは独立して支出することが事実上無制限で認められるようになる

候補者とは表向きは無関係という建前でスーパーPACと呼ばれる団体が続々と登場して寄付を集め、 テレビCMその他に巨額の資金を投入(スーパーPACは候補者とは「無関係」であるという建前なの で、候補者への支持を求めるような内容のCMは流せない。そこで、候補者のライバル候補者を中傷 することで候補者を実質的に支援しようとするネガティブ・キャンペーンが横行)

連邦選挙委員会の資料によれば、前回大統領選でオバマ陣営はPAC経由で75000万ドルを支出 今回の大統領選と連邦議会選のためにスーパーPAC63000万ドルを集め、そのうちアメリカン・

3 http://www.sierraclub.org/

(23)

クロスロードというスーパーPAC1団体で1億ドル以上を集めた

6 多元主義とネオ・コーポラティズム

多元主義:アメリカ

ベントレー『政治の過程』(The Process of Government)

グラスルーツ・ロビイング、ロビイストと連邦ロビイング規制法

ヨーロッパ:コーポラティズム

・コーポラティズム(corporatism)

政策決定に企業や労働組合などを参加させ、協調させる体制.

狭義のコーポラティズム(権威主義的コーポラティズム) ネオ・コーポラティズム

※労働無きコーポラティズム(日本) ペンペル、恒川恵一

※コーポラティズム成立の条件

①組織化

②全国的頂上団体の存在(×仏)

③自由競争<調整、安定、統制

7 日本の利益集団

団体の固定化

※例

自由民主党: 経営者団体、農協、日本医師会、日本遺族会 各種の政府委員会、審議会等 各種の政府委員会、審議会等

労働組合 経営者団体 業界団体

協調 体制

頂上団体

(24)

旧社会党: 「総評」系の労働組合 旧民社党: 「同盟」系の労働組合

既存集団を包含する構造

※例:日本体育協会

※族議員

特定の分野の政策に精通し、業界の利益を代弁する議員 野党議員の中にも族議員は存在

族議員が発生したのはなぜか?

一定の専門分野に議員が詳しくなっていく(厚生族、農林族、運輸族、文教族など) 政治資金の調達のために特定の業界団体からの支持を必要とする

政財官(鉄のトライアングル)の緊密な結びつきを背景に、規制権限と予算を持つ行政に対して 業界団体の利益を代弁

猪口孝・岩井奉信『「族議員」の研究:自民党政権を牛耳る主役たち』(日本経済新聞社、 1987

頂 点 に 近 づ く に 従 っ て 目 的集団としての性格強い

基 底 部 で は 成 員 の 参 加 意 識乏しい

(25)

主要な政治思想

1. プラトンの政治思想

1.1 古代ギリシャの 3 大哲学者

弟子 弟子

1.2 国家論と哲人王論

4つの徳 → 知恵・勇気・節制・正義

【人間の魂】 【国家の構成】 理性(「知恵」が対応) 支配者(哲人王) 気概(「勇気」が対応) 防衛者(戦士)階級 欲望(「節制」が対応) 労働者階級

統治者たる資格を持つ者 → 哲学者(知恵を愛する者)だけ 知恵=善のイデア

哲人王になる方法 → 統治者が哲学を身につける、または哲学者が支配する

1.3 イデア論

現実の世界 → イデア界(絶対的・無時間的・不変の本質=イデアに満たされた世界)の仮象 にすぎない(洞窟の比喩)

哲学者がイデア界を認識する方法 (1)想起する

(2)エロスの導き

2. アリストテレスの政治思想 2.1 イデア論批判

目的論的自然観に基づきイデア論を批判 究極の実在は現象界

善の原理を現象界に下ろし人間の理性の上に置く

2.2 ポリス的動物

人間はポリス的動物 → ポリスという共同体をなし存在(ポリスに属しないものは神か野獣) 奴隷制の容認

ポリスは自然的に発生する共同体(家族 → 村落 → ポリス)

2.3 『政治学』 統治形態論

健全な政治形態 堕落形態 支配者が 1 人 王政 僭主E

せんしゅ

A

支配者が少数 貴族政 寡頭政

支配者が多数 ポリティア デモクラティア ソクラテス プラトン アリストテレス

1

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参考

【図 ラファエロ「アテネの学堂」

(ヴァチカン宮殿、署名の間の壁画】

プラトン(紀元前 427 年 - 紀元前 347 年)

古代ギリシャの哲学者。ソクラテスの弟子で、アリストテレスの師。ア カデミー(アカデメイア)という名で学校を開いた。『ソクラテスの弁 明』『国家』等の著作で知られる。紀元前 367 年、友人ディオンらの 依頼によりシュラクサイの若き僭主ディオニュシオス 2 世を指導して哲 人政治(『国家』に示される)の実現をめざしたが、結局失敗。現存す る著作はすべて対話編という方式を取っており、一部の例外を除けば 師のソクラテスを主要な語り手とする。初期は敬虔や勇気といった伝 統的な徳とはなにか、それは教えられるものかどうかを探求し中期に は世界を、目に見える現実の世界「現実界」とそのもとになる完全に して真実の世界「イデア界」に分けるイデア論を展開。もっとも晩年 の『法律』では『国家』と同じく政治とはなにかが語られ、理想的な 教育論が再び展開されるが、哲人王の思想は登場しない。

アリストテレス(前 384 年 - 前 322 年)

古代ギリシャの哲学者。中世スコラ学に影響を与えた。プラトンの弟子で あり、ソクラテス、プラトンと共に、しばしば「西洋」最大の哲学者の一 人とみなされるほか、その多岐にわたる自然研究の業績から、「万学の 祖」とも呼ばれる。またアレクサンドロス大王の家庭教師であったことで も知られ、マケドニア王フィリッポスの招聘により王子アレクサンドロス

(後のアレクサンドロス大王)に弁論術、文学、科学、医学、哲学を教 えた。著作には『自然学』、『形而上学』(哲学書)、『ニコマコス倫理学』、

『動物誌』、『詩学』、『アテナイ人の国制』(政治学書)など。

2

(27)

3. マキャベリ

『君主論』

・リアリズム、目的合理主義、性悪説的人間観

・政治と倫理の分離

・ヴィルトウ:徳性・有能さ・能力・欲望実現能力

・フォルティーナ:幸運・時勢・好機

U・分裂状態のイタリアを統一するため強力な君主制を支持 4. ボダン

『国家論』

「主権」概念 絶対王政を正当化 抵抗権を否定

主権者は、①神法と自然法、②王国基本法に拘束される → 「正しい統治」を実現するため

5. 社会契約説

ホッブズ、ロック、ルソーの 3 人

17~18 世紀を代表する思想,市民革命を背景 自然状態 → 社会契約 → 政治社会の成立

ホッブズ ロック ルソー

自然状態 万人の万人に対する 闘争

一応は平和 自然法が妥当 戦争状態になる危険

「他者」のいない自足的 平和(ただし現実は堕落 している)

自然権 自 己 の 生 命 の保 存 のため,自己の力を 欲するままに行使す る自由

生命,自由,財産に対 する権利

(自由と平等と善性)

契約の動機 自己保存 自然権を確実に保護 理想的共同体の建設 人間性の回復 契約の帰結 絶対的権力を持つ主

権者が統治し,人々 は 服従( 抵抗権 な し )

共同体が設立され,そ こに権限を「信託」 政府の目的が果たせな いときは交替(抵抗権 あり )

各人はすべての権利と己 を共同体に完全に譲渡 一般意思の成立

著書 『リバイサン』 『市民政府二論』 『社会契約論』

●参考

ロックが想念していた市民社会を構成する 「市民」の中には、無産者は含まれていなか った 。ロック自身は無産者の権利拡大にむしろ否定的であった。

6. 現代リベラリズムと保守主義

自由主義とリベラリズムの相違

3

(28)

ロールズ『正義論』

・第一原理 平等な自由の原理

各人は、他の人々の自由と両立する最大限の平等への権利を有する

・第二原理 (a) → 格差原理

社会的・経済的不平等は、社会における最も不遇なメンバーの便益を最 大化するときに認められる

(b) → 機会均等原理

社会的・経済的不平等は、機会の均等という条件の下で万人に開かれて いる地位や職務に認められる

優先順位 格差原理→機会均等原理→平等な自由の原理 ノージックの保守主義(リバータリアン)

新自由主義(行政改革 ex.サッチャリズム、レーガノミクス)にも影響

ロバート・ノージック ジョン・ロールズ

参考

ニッコロ・マキャベリ (Niccolo Machiavelli 1469-1527)

ルネサンス時代のイタリアの政治家・著作家。共和制時代のフィレンツェで、 1498年からフィレンツェの第二書記官長の職(内政、軍事担当)につき、大 使として活躍。しかし 1512 年メディチ家のフィレンツェ復帰とともに失脚。そ の後は失意のうちに読書と著作に専念し、『君主論』もその時代に著されたも の。

メディチ家

15~18 世紀にフィレンツェを支配した一族。当初は共和制の専制者だったが後にトスカナ大公となり 君主制に。もともとは薬種商といわれ、その後金融業で繁栄。1494 年 11 月にフィレンツェから追放 されるが、1512 年神聖ローマ皇帝カール 5 世の支援で復帰(マキャベリが活躍したのはこの間の時 期)。

2人のフランス王妃(カトリーヌ・ド・メディチ、マリア・ド・メディチ)と 2 人の法王(クレメンス 7 世、 レオ 10 世)を出している。

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参照

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