卵の殻の醸造
T.Crofton Croker
サリバン夫人は彼女の末っ子が妖精泥棒によって取り換えられたように思った。そして確 かに見かけはそのような結論を保障した。なぜならある夜、彼女の健康的で青い眼をした 息子が何者でもないくらい縮まり、わめき泣き続けた。このことは当然、哀れなサリバン 夫人をとても不幸にした。そして、隣人はみな、彼女を慰めるつもりで、彼女の息子は疑 いなく良い妖精たちといてその妖精の一人と入れ替わったのだといった。
サリバン夫人はもちろんみなが言ったことを信じようとしなかったわけではなかったが、 彼女はこの赤ちゃんを傷つけたくなかった。なぜなら、その子の顔はとてもしおれ、単な る骨格になるほどやつれているけれども、自分の息子にとてもよく似ているからだ。した がって、彼女はその妖精を焼き板の上で生きたまま焼いたり、赤く焼けたトングで鼻を とったり、道端の雪の上に投げ出したりする気にはならなかった。これらのような行為や これに似た行為が彼女の子供を取り戻すために強く勧められたけれども。
ある日、サリバン夫人はある人に会うことになったが、誰であろうエレン・リーア(白髪 のエレン)と言うその地でよく知られている魔女だった。彼女はどのように身につけたに せよ、死人がいる場所や死人の魂の平穏に何をすればよいのか、どうすればいぼやこぶ
(皮脂嚢腫)を取り除けるか、というような驚くべき能力を備えていた。
‘今朝は悲しそうですね、サリバンさん’これはエレンから彼女への最初の言葉だった。
‘あなたはそう言うかもしれませんね、エレン’サリバン夫人は言った。‘悲しむのには理 由があるのです。なぜなら私の元気な子が私の許し、あいさつさえもなしに忽然といなく なってしまったのです。そして醜く、縮んだ妖精が彼の代わりにいたのです。私が悲しん でいるように見えるのも当然ですよ、エレン。’
‘あなたが責められることはないわ、サリバンさん’エレンは言った。‘けどそれは本当に 妖精なの?’
‘もちろん!’サリバンは鸚鵡返しに繰り返した。‘悲しいことに確かなのです。私自身の 二つの目を疑えますか?全ての母親が私に同情してくれるに違いありません!’
‘年寄りのアドバイスを受け入れてくれますか?’エレンは野性的で神秘的な視線を不幸な 母親に向けて言った。少し間をあけて‘あなたはばかげているというかもしれませんね’ と加えた。
‘あなたは私の、私自身の子供を取り返せるのですか?’サリバンは力強くいった。
‘私の言うとおりにしてくれればわかるでしょう。’エレンは答えた。サリバンは期待しな がら黙り、そしてエレンはつづけた。‘大きなポットを水で満たし、火にかけてものすご く沸騰させなさい。そして 1 ダースの卵を割り、殻は残して他は捨てなさい。それができ たら、殻をその熱水の中にいれれば、すぐにそれが妖精か本当の子供かわかります。もし ゆりかごの中身が妖精だとわかれば、赤く燃えた火かき棒を彼の醜いのどに詰め込めば、
そのあとは何も問題ないと保証しますよ。’
サリバンは家に帰り、エレンが望むようにした。彼女はポットを火にかけ、その下に大量 の泥炭をいれ、水を沸騰させた。
不思議なことにその子供はとても安らかに静かにゆりかごの中で横になっていた。ときど き目を上げ、それは寒い世に星が瞬くような鋭い光を放ち、ものすごい炎とその上の大き な鍋を見ていた。そして彼はサリバンが卵を割り、殻を熱湯の中に入れるのを注意深く見 ていた。ついに彼は老人の声でたずねた。‘何をしてるの、ママ?’
サリバンは、彼女自身によると、子供が喋るのを聞いて心臓が口まで上がって窒息しそう になったということだ。しかし、彼女はなんとか火かき棒を火に入れ、不思議に思ってい るような様子を見せずに‘醸造してるのよ’と答えた。
‘じゃぁ何を醸造してるの、ママ?’小さな妖精は言った。その超自然的なしゃべる能力は 疑いもなく彼がかわりの妖精であることを裏付けた。
‘もう火かき棒が赤くなればよいのに’それは大きかったので熱するのに時間がかかった。 そのため彼女は、火かき棒が彼ののどに突っ込むのにちょうどよくなるまで彼を会話に引 き入れるために質問を繰り返した。
‘あなたは私が何を醸造しているか知りたい?’
‘うん、ママ。何を醸造しているの?’妖精は答えた。
‘卵の殻よ’サリバンは言った。
‘おー!’妖精は金切り声を上げ、ゆりかごから急に飛びあがり、手をたたいた。‘僕は 1500年この世にいるがこの世界にいるけど今まで卵の殻を醸造しているのをみたことが ない’火かき棒はそのときはとても赤くなり、サリバンはそれを握ってゆりかごに向かっ て猛然と走った。しかし、どういうわけか彼女は足を滑らせ、床にこけ、火かき棒は彼女 の手から離れ、家の反対の端に飛んで行った。しかし、彼女はほとんど時間をかけること なく起き上がり、妖精を熱湯の中に投げ込もうとゆりかごに向かった。そのとき、彼女は 片方の丸くやわらかい腕を枕の上において安らかに眠っている彼女の息子を見た。彼はま るで、おとなしく規則的な呼吸で動くピンク色の唇を除いて、彼の休息が決して邪魔され なかったかのようにおだやかであった。