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アントニー・スティーヴン・ギブズ先生 ―仰ぎ見る存在として― 外国語学部(紀要)|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

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Academic year: 2017

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アントニー・スティーヴン・ギブズ先生

― 仰ぎ見る存在として ―

外国語学部長 外国語教育学研究科長

竹 内   理

 ギブズ先生と初めて言葉を交わしたのは、もう 20 数年も前のことになる。2 m はあろう細 身・長身の先生を仰ぎ見るようにして、15 分程度、他愛のないお話をさせて頂いたのだが、今 でもその時のことを鮮明に覚えている。その理由は、先生の使われた日本語の流ちょうさに、 ただただ舌を巻いた強い印象があったからである。日本語が母語の私たちでも、決して真似の できない、折り目正しい言葉使いであった。あれから 20 年以上も経ったのだ。年月の流れの速 さを感じるとともに、強い寂しさを感じずにはいられない。

 ギブズ先生は、名門オックスフォード大学ニューカレッジの卒業生であり、ゴールズワーゼ イ特待生でもあった。私が学会発表でオックスフォードのトリニティカレッジへ行く際には、

「ニューカレッジのあたりも良いですよ。あそこは 007 のジェームズ・ボンドが卒業した設定に なっているのですよ」とお話になられていたが、自らが卒業生であることは少しも語られなか った。ご専門の 1 つである日本文化の話になっても、「間違っているかもしれませんが」と前置 きをしながら、造詣の深さが滲み出るお話をされていた。常に、謙虚で、穏やかな語り口が先 生の特徴といえるだろう。それでいて、どこかに少しユーモアを隠して話しをされる。たまに 私がそれに気づくと、茶目っ気たっぷりに目配せをしてくださったことが何度かあった。

 先生はまた優しい人でもある。もう 10 数年前のことだが、世間話で、肩こりに悩まされてい ると話をすると、後日「この ointment がよいですよ」と、それをわざわざ買い求めて持参して くださるなど、若輩の私などにも細やかな気遣いをされた。大学を去られることになった時も、

「まだ私にやれることがあれば、何でもお手伝いをしますよ」と非常勤での科目担当も自ら申し 出てくださった。先生が日本を終の棲家とされる決意をされ、そのための保証や書類作成でお 手伝いをさせて頂いた時も、大したことをした訳でもないのに、学内で出会う度に何度も長身 を 90 度に折り曲げてお礼をいわれ、その後も、学部長職の大変さを労う言葉をかけ続けてくだ さっている。本当に優しい 、 そして律儀な人なのだ。

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外国語学部紀要 第 14 号(2016 年 3 月)

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 先生は、遠州流茶道の直門上席師範を経て、家元師範代という高い立場に昇られており、茶 道に関する論考や、茶道の語彙に関する研究も多数発表されてこられた。また、日本語・日本 文学についても、その分野で修士の学位( Oxon )を取得されて以来、継続して研究を続けら れている。しかし何よりも私個人の印象に残るのは、その英文法教授に関する論考である。全 10 章からなるこの一連の論文群と、それを発展させた書籍のドラフトを先生から数年前に見せ て頂いた時には、そのユニークなアプローチに大いに感銘を受けた。40 年にわたり、日本の大 学生と向き合った経験があるからこそ、生まれてきた考え方だと思われる。日本人にとって痒 いところに手が届くようなこの論考のさらなる充実と、早い出版が待たれるところである。ま た先生は、発音や韻律の教授法に関しても一家言をお持ちであり、90 年代にはこの分野でも一 連の論文を書かれている。陳腐な言葉かもしれないが、マルチな才能とは彼のような人物のこ とを言うのであろう。まさに仰ぎ見る存在と言わざるを得ない。

 大阪万博の 2 年後に、文部省(当時)の奨学生として来日されてから 40 有余年にわたり、先 生は異国の地で教育・研究職の経験を積み重ねてこられた。我々のような凡夫にとっては、こ れだけでもとても真似の出来ないことだが、先生はそれを軽々とこなし、さらにその文化の心 髄ともいえる領域で師範となられた。そして今や、その異国を文字通り母国とされようとして おられる。いや、異国、母国などという言葉の範疇には収まらないのがギブズ先生かもしれな い。そんな仰ぎ見る存在としての先生に、20 数年間も同僚として接することが出来たのは、私 の僥倖だったといえよう。

 ギブズ先生、本当にありがとうございました。

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