欲しい物だけを取り分ける!
電子科学研究所附属グリーンナノテクノロジー研究センター
大学院環境科学院
専門分野 : 金属錯体化学,多孔性材料化学 研究のキーワード : 機能性物質,温暖化,省エネ HP アドレス : http://org-com.es.hokudai.ac.jp/
何を目指しているのですか?
ビター・ミルク・ナッツ・イチゴなどいろんな味のチョコレートが入ったバラエティパッ クから(わたしの好きな)ビター味だけを簡単に取り分けることはできますか?答えは YES。包装をみれば誰にでもできますね。それでは、チョコレート(数cm)の1億分の1 の大きさ(~10−8 cm!)の小分子AとBの混ざり物からどちらか一方を取り分けることは できるでしょうか?そんなのは無理、と皆さんは思うでしょう。わたしは、そんな小分子 の混ざり物から目的の小分子を高選択的に取り分ける(分離する)ことができる機能性物 質(金属錯体)の開発(図1)を行っています。
どんな研究をしているのですか?
現在取り分けたい小分子として二酸化炭素 と二重結合をもつ炭化水素に注目しています。 二酸化炭素CO2は温室効果ガスのひとつです。 地球温暖化をこれ以上進行させないため、ま た炭素を含む原料として再利用するためには、 様々な場所から排出される二酸化炭素を含ん だ混合ガスから目的の二酸化炭素のみを高選 択的かつ省エネ高効率に分離することが重 要です。また、二重結合をもつ炭化水素CnHm は、プラスチックやタイヤに使われる合成樹 脂や合成ゴムなどいろいろな化学製品の原料 として使われています。人間が今の生活水準 を保とうとするかぎり、これら化学製品の原
料は安定かつ安価に供給される必要があります。化学製品の原料として二重結合をもつ炭 化水素を使うためには高純度のものが必要になりますが、合成時に他のいろいろな炭化水 素が一緒にできてしまいます。なので、二酸化炭素と同様に高選択的・省エネ高効率な炭 化水素分離が求められます。
このような小分子の分離ができる材料として、わたしは金属錯体と呼ばれる機能性物質 を扱っています。金属錯体とは、無機部品の金属イオンと有機部品の配位子が連結したも のです(図1)。それぞれの部品を子供がブロック遊びをするように自由に組み合わせるこ
出身高校:神奈川県立平塚江南高校 最終学歴:京都大学大学院工学研究科
マテリアル/環境系/エネルギー
准教授
野呂
の ろ
真
し ん
一郎
い ち ろ う
図1 金属錯体
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とで、いろいろな形・大きさ・性質をもった金属錯体をねらって作り出すことができます。 身近なものとしては、新幹線の青色塗料、あれは銅イオンを含んだ金属錯体が使われてい ます。
この金属錯体を使って、われわれは図2 のような穴の空いた構造(多孔性構造)を 作っています。世の中にはすでに、活性炭 やゼオライトといった多孔性材料がありま すが、多孔性金属錯体の、①欲しいものを ねらって作れる、②いろいろな形ができる、
③規則正しく並んでいる、④やわらかい、 といった特徴を利用することによって、既 存の材料よりも高選択的・省エネ高効率に 小分子を分離することができる多孔性金属 錯体を作ることができます。例えば、穴の 中に二酸化炭素をつかまえるしかけを入れることで、図2のように二酸化炭素だけをたく さん穴の中に取り込む(吸着する)材料を作ることに成功しています。
どんな装置を使って、どんな実験をするのですか?
まず初めに、目的の分離特性を示す金属錯体を設 計し、その後実際に合成します。2つのビーカーの 一方に金属イオンを溶かした溶液を、もう一方に有 機配位子を溶かした溶液を用意し、それらをゆっく りと混ぜると、すぐに金属錯体の微結晶ができます。 ただ混ぜるだけ。とても簡単です。次に、合成した 金属錯体がどのような形をしているか調べるために、 X線を使った回折測定や各種分光測定を行います。 目的の多孔性金属錯体ができていれば、いよいよメ インの吸着測定(図3)を実施し、分離特性を調べ ます。実験結果を設計にフィードバックし、合成・ 測定・評価を繰り返すことによって、より優れた分 離材料の開発を行います。
次に何を目指しますか?
現在は二酸化炭素と二重結合をもつ炭化水素をターゲットとした基礎研究をメインに 行っていますが、今後はより応用的な研究(混合ガスでの実験、1万回以上の繰り返し実 験、成形加工など)にも取り組んで行きたいと思います。定年までに一つでも世の中で使 われるような分離材料をつくることがわたしの野望の一つです。
キ ャ プ シ ョ ンはMS P ゴシック 7 ポイント
図2 二酸化炭素だけを取り込む多孔性金属錯体
図3 吸着実験の様子
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