1 LGBTのこどもの気持ち
LGBT というのは、レズビアン、ゲイ、両性
愛のバイセクシャル、性同一性障害など生ま
れつきの性別に違和感を持つトランスジェン
ダーの頭文字をとった総称で、セクシャルマ
イノリティの代名詞的に使われています。 LGBT の当事者は、小学校高学年くらいから
「自分は何者なのだろう」ということを考え
て、「こんな人は世の中に自分しかいない」と、
自分を否定することから始まります。どの LG BTの子どもも「自分はおかしい、変えなきゃ」
と、まず思うそうです。うちの子も「どうし
ても自分を女とは思えない」ということで、
中学、高校の 6 年間、一番友達と仲よく、楽
しく過ごしたい時期を、ずっと放課後は家に
帰って寝ていました、現実逃避ですね。
うちの子は、よくも悪くもいろいろな人に
出会えたし、子どもの時から、自分は何者だ
ろうということをとことん考えた。だけど、
そんな時間を過ごしたことが自分にとって、
自分を再生するためのとてもいい時間だった
と今は話しています。「不便だし、寂しいし、
悲しい時もあったけど不幸じゃなかった」と
いう手紙を、カミングアウトして1年ぐらい
経ってからくれました。「不幸じゃなかった」
と書いてあった一行を見て、初めて、「どんな
に苦労したのか、もっと早く気づいてあげら
れればよかった」と感じました。
2 言えない理由
2015 年に電通ダイバーシティ・ラボが7万
人を対象とした調査では、LGBT の人は 7.6%
と約13人に1人、これは左利きの人やAB型
の血液型の人より若干多い数です。それほど
多くの人がいるのに、会ったことがないとい
う人がほとんどです。それは、当人がカミン
グアウトしていないから、他人からは分かり
にくいのです。カミングアウトをしたくても
差別や偏見、いじめが心配でできないのです。
50代以降の人たちは、性教育や人権教育は
受けていないはずです。だから、ゲイやレズ
ビアンの話題は、明るいところで話をしては
だめという世代だったわけです。それが未だ
に根強く残っているので、カミングアウトで
きないのです。
3 カミングアウトするほど上がる自殺率
つなぐ会に来るお子さんたちの話では、「こ
の先生は」と思ってカミングアウトしたけれ
ど、「病院に行って診てもらったほうがいいよ、
同性愛って治るかもしれないよ」、「異性を好
きになってみたら同性愛って治るかもしれな
いよ」等と言う先生が未だにいます。まして、
トランスジェンダーになると、「おまえ、そん
なみっともない格好できないだろう」、「そん
なことをしていたら就職もできないよ」と言
う先生がまだたくさんいるのが現実です。そ
んな中でこども達は誰を信頼して、信用して
カミングアウトができるでしょうか。就職し
たら、今度は上司から、「おまえ、いつ結婚す
るんだ、好きなやついないのか、もしかして、
こっちか」等とばかにされてしまうので、就
職しても離職する率が高いのです。
「この人は大丈夫」と思って、頑張って先生
や友達にカミングアウトする。しかし、その
度に裏切られるので、もうこれ以上は無理、
限界ということで、カミングアウトを多くし
た子ほど自殺率が高くなっているという調査
結果もあります。LGBTの子どもたちの65%が、
一度は死ぬことを考えます。うちの子もそう
でした。「もう自分はこの世にいても、これか
ら先の将来が見えない、夢が描けない。」、「こ
れからどういう大人になるのか、どういう年
のとり方をするのか、仕事ができるのか、結
婚はできるのか」という不安で自分を見失っ
てしまう時期があるようです。LGBTの子ども
の14%が自殺未遂の経験があるという調査結
果は切実です。
【後期】第3回 1月31日(火)講演要旨
LGBT
のわが子と関わる中で
~LGBT支援者としてできること~
【講師】NPO法人LGBTの家族と友人をつなぐ会 小林
こばやし
りょう子 こ
4 理解されない辛さ
「親だけには理解してほしい」と思ってカ
ミングアウトしたけれど、「一時の気の迷いだ
から精神科に行け」、「おまえなんて死んだほ
うがましだ」、「気持ち悪い」等と言われた人、
暴力を振るわれたり、家族関係がばらばらに
なってしまったという人もいます。
カミングアウトされた家族も、性教育や人
権教育を受けていないために混乱しますし、
大抵の方はまず、特に母親は「育て方が悪か
ったのだろうか」等と自分を責めます。次に、
「頭がおかしくなったのではないか」等と当
事者を責めます。自分の子どもの悩みや苦し
みより、自分と自分の周りのこと、世間体を
考えることがとても多いです。
5 ありのままを受けとめて
皆さんももしかしたら、自身の子どもや同
僚の方とかにカミングアウトされることがあ
るかもしれません。その時には、「大事なこと
を話してくれてありがとう。私は何をしたら
いい?」と聞いてくださると、カミングアウ
トする側としては、どれほど心強いかと思い
ます。一番苦しんでいるのは子どもたちです。
子どもがありのままに、自分らしく生きるこ
とを見守って、応援する大人たちが増えてく
れることを願っています。
カミングアウトというのは、すごく重いバ
トンです。本当に大事なことを、「この人なら
大丈夫、分かってくれる」と思って話をする
訳ですから、「変じゃないよ、何もおかしなこ
とじゃないよ」というふうに受けとめていた
だきたいと思います。アライというのは、ア
ライアンスといって支援者のことです。LGBT
だけではなくて、いろいろなマイノリティを
支援する人たちのことをアライと言います。
ホモ、おかま、レズという言葉がよく使わ
れますが、ホモの正しい名称はホモセクシャ
ルです。レズはレズビアンです。これらの言
葉は蔑称です。使っていいのは当事者だけで
す。もし使っている人がいたら「正しい言葉
で言ったほうがいいよ」と、さらりと言える
人になっていただけたらうれしいです。信頼
してくれた気持ちに応えるために少しでも知
識を増やしていく、LGBT 関連の書籍や映画等
を見ていただけるととてもうれしいです。保
険証には、男、女の表記がありますが、運転
免許証には性別欄はないです。そんなふうに、
少しずつ世の中が変わっていくと、私たちは
すごく生きやすくなります。
6 アウティングはしてはいけない
皆さんはLGBTの人に、絶対にどこかで出会
っているはずです。例えば、電車の隣に座っ
ているかもしれないということを、常に心の
どこかに留めておいていただきたいのです。
見た目の感じだけで、男、女というふうに決
めないでほしいです。特に、トランスジェン
ダーの方たちは、見た目と性別が違う場合が
あります。見た目で決めつけられると、とて
も生きにくくなります。
学校の先生でよくあるのが、「この話、わか
った。これは学年の先生方、みんなで共有し
たほうがいいよね」と、カミングアウトの内
容を勝手に伝えてしまうケースです。実際、
伝えられた先生が授業の中でうっかり話して
しまい、本人が学校に行けなくなっているお
子さんもいます。これは、共有する問題では
ないです。どうしても必要な時には、本人に
確認をとって、同意をもらわない限り、伝え
てはいけないことです。誰にでも言ってしま
うことを、アウティングと言います。アウテ
ィングしてはいけないということを、心の隅
に留めていただきたいです。
7 一人ひとりにできること
夫婦や配偶者という言葉は使わないように
する。夫婦というのは異性愛者同士で婚姻を
した男女を言い、配偶者というのも異性愛間
の言葉になります。異性愛者じゃない方たち
もいるので、カップル、パートナーや連れ合
いという言葉を使うとすんなり入ってきます。
「彼氏いる?」、「彼女いる?」も、禁句です。
「恋人いますか?」と言っていただけると、
レズビアンやゲイの方も「います」と答える
ことができます。そういうことを皆さんが、
少しずつ心がけていただくと、LGBT の人たち
はとても生きやすくなると思います。
親の育て方が悪い訳でもなく、気の迷いで
もなく、いつか治るものでも治すものでもな
いです。LGBT の相談ができる自治体も増えて
きましたが、こうした相談窓口が増えていく
と、生きづらい部分が解消されていき、一般