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第11回研究会資料 原因論 原因論研究会

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原因論 第十八章 改訂版1

小林 剛

149 知性体の中には神的な知性体であるものが在る。なぜなら[なぜ神的なのかという

]その知性体は、第一原因から発出する第一の諸善から大いなる受容によって受容す る1からである。知性体の中にはただ知性体であるだけのものも在る。なぜなら[なぜ知 性体であるだけなのかというと、それが]第一の諸善から受容するのはただ第一知性体 を媒介としてのみだからである。魂の中には知性的魂であるものが在る。なぜなら[な ぜ知性的なのかというと]知性体に依存しているものだからである。魂の中には魂であ るだけのものも在る。自然物の中には、それを統括しそれに方向を与える魂がそれに在 るところのものが在る。自然物の中には自然物であるだけのものも在る。それらには魂 はない。

Ex intelligentiis est quae est intelligentia divina, quoniam ipsa recipit ex

bonitatibus primis quae procedunt ex causa prima receptione multa. Et de eis est quae intelligentia tantum, quoniam non recipit ex bonitatibus primis nisi mediante intelligentia prima. Et ex animabus est quae est anima intellectibilis, quoniam est pendens per intelligentiam; et ex eis est quae est anima tantum. Et ex corporibus naturalibus est cui est anima regens ipsum et faciens directionem super ipsum; et de eis sunt quae sunt corpora naturalia tantum, quibus non est anima.

150 そして以上のことがそのようになるのはただ以下の理由による。すなわち、知性

的区別2全体、魂的区別全体、物体的区別全体が、その区別を超えている原因に依存し ているわけではない。ただその区別の中の或るものだけが、完成しており完全で、それ を超えている原因に依存しているものなのである。

1 プロクロス『神学綱要』第111命題では「神々の分有を受容する」となっている。

2 アラビア語原語はsharh。この語には確かに「説明」など、ラテン語で通常

expositioと訳されるような意味がある。しかしこの語をここでこのような意味で理解 することは不可能である。sharhは文脈上、プロクロスが『神学綱要』第111命題で用 いているσειράの訳語であると思われる。この語には「鎖」という意味がある。実際 Doddsはをσειρά seriesと訳している。Taylorsharhの訳語としてseriesを用い ている(Remarks, p.97, St.Thomas Aquinas Commentary, p.116。しかしsharh expositioを「連続」「系列」などと訳すのはやはり通常は無理であると思われる。ここ ではsharhの基になっている動詞sh-r-hの「切り分ける」という意味に鑑み、「区別」 という訳語を使用した。

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Et hoc non fit ita nisi quoniam3 expositio4 neque intellectibilis tota neque animalis tota neque corporea tota5 pendet per causam quae est supra eam, nisi6 quae est ex ea completa, integra est7 quae pendet per causam quae est supra eam,

151 すなわち、知性体すべてが第一原因の存在の諸善性に依存しているわけではな

い。ただ諸知性体の中で第一に完成していて完全な知性体であるものだけ[が第一原因 の存在の諸善性に依存している]。というのも、その知性体は、自身の一性が強力にな るため、第一原因から降下して来る諸々の善性を受容し、それら諸々の善性に依存する ことができるのである。

scilicet quia non omnis intelligentia pendet per bonitates esse8 causae primae, nisi quae ex eis est intelligentia completa in primis, integra. Ipsa enim potest recipere bonitates descendentes ex causa prima et pendere per eas, ut vehemens fiat sua unitas.

152 同様に、魂すべてが知性体に依存するわけでもない。ただ諸々の魂の中で、知性

体に依存しているということを通して、完成しており完全で、より強力に知性体ととも に在るものだけ[が知性体に依存する]。そして[魂が依存する知性体とは]完全な知性体 のことである。

3 Pattin

Tayorquoniamの後にest ipsaを読むが、これらに対応する語はアラビ ア語原文になく、しかも、これらの語を読むと文意が分からなくなる。Pattinが挙げ ている三つの写本にはこれらの語はないので(Pattin, p.175, l.75註)、これらの写本に 従いest ipsaは読まない。旧和訳も仏訳もこのように読んでいると思われる。

4 Pattinはこの語を読まないが、この語はアラビア語原文におけるsharhの訳語であ ると思われるので、Taylorに従いこの語を読む。

5 PattinTaylorはこのtotaの後にnequeを読むが、これに対応する語はアラビア語 原文になく、しかも、この語を読むと文意が分からなくなる。Pattinが挙げている四 つの写本にはこの語はないので(Pattin, p.175, l.76註)、これらの写本に従いneque は読まない。旧和訳も仏訳もこのように読んでいると思われる。

6 プロクロス『神学綱要』第111命題の趣旨からして、このnisiを前出の三つの nequeと絡めて「~であるのはただ…だけ」という意味で読むことはできない。neque とは切り離してnisi以下だけで「ただ~だけ」の意味に理解する。アラビア語原文の laysalāillāの関係もそのようになっている。151~153nisiについても同じ。

7 Taylor

はアラビア語原文を考慮してこの語をetと読むが、estと読んでもアラビア語 原文と同じように読めるので、そのままestと読む。

8 Pattinはこの語を読まないが、多くの写本に在り、アラビア語のアンカラ・イスタン ブール写本にもこれに当たる語であるanniyyatが在るので、Taylorに従ってこの語を 読む。

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Et similiter non omnis anima pendet per intelligentiam, nisi quae ex eis est completa, integra et vehementius simul cum intelligentia, per hoc quod pendet per intelligentiam, et est intelligentia completa9.

153 さらに同様に、自然物すべてが魂を有するわけでもない。ただ諸々の自然物の中

で、たとえば理性的なもののように、完成していて完全なものだけ[が魂を有する]。 Et similiter iterum non omne corpus naturale habet animam, nisi quod ex eis est completum, integrum, quasi rationale.

154 そして残りの知性的諸階層も以上のような形式に即して存在している。 Et secundum hanc formam <…>10 sunt reliqui ordines intellectibiles.

9 est intelligentia completaの主語は、アラビア語原文に従えば直前のintelligentia

10 アラビア語原文には「以上のようなアナロジーで」が付いている。

参照

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