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第5回研究会資料 原因論 原因論研究会

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原因論 第七章 改訂版1

小林 剛

72 知性体はすべて、自身より上位のものと下位のものとを知っている。しかし、自身よ り下位のものを知っているのは、[自身が]それにとって原因だからであり、自身より上位 のものを知っているのは、そこから諸善を獲得するからである。

73 そして知性体は知的実体である。だから、自身の実体の在り方に即して、上位のもの から獲得する諸事物と、[自身が]それらにとって原因であるところの諸事物とを知る。

74 それゆえ知性体は、知性体より上位に在るものと下位に在るものを識別する。そし て、自身より上位にあるものは知性体にとって原因であり、知性体より下位に在るものは 知性体の結果であると知る。そして、自身の原因を認識し、自身の結果を、その原因であ る在り方で1認識する。すなわち、自身の実体の在り方で認識する。

75 そして同様に、知る者すべてがより善い事物とより下位のより劣った事物とを知るの はただ、自らの実体と存在の在り方に即してだけであり、諸事物がそれに即して在るとこ ろの在り方に即してではない。

76 そしてもし以上の通りであるならばその場合、疑いなく、第一原因から知性体の上に 降りて来る諸善は、知性体においては知性的であり、同様に、感覚可能な物体的諸事物 も、知性体においては知性的である。

77 なぜなら、知性体のうちに在る諸事物は刻印2そのものではなく、むしろ諸々の刻印 の原因だからである。それを表すのは次のことである。すなわち、知性体そのものは、知 性体であるということによってのみ3、知性体の下に在る諸事物の原因である。だからも し知性体が、知性体であるということによって[知性体の下に在る]諸事物の原因であるな

1 「その原因である在り方で」per modum qui est causa eiusは、「在り方」が直接「原 因」ということになってしまい(その前では知性が原因だと語られている)ややおかしな 言い方であるように思われる。これは、アラビア語原文bi-l-nawʻialladhī huwa ʻalay-hi

(「それ(知性)が即している仕方で」)のʻalay(~に即して)が‘illat(「原因」)となって いる写本をラテン語訳者が見ているか、あるいは、書かれている文字をそのように理解し たことによるのであろう。

2 「刻印」のアラビア語原語はāthār(痕跡)なので、「刻印するもの」ではなく「刻印さ れたもの」というニュアンスであろう。

3 Taylor

に従ってtantum(~のみ)を読む。「~によって」(per)に係っていると解釈し た。

(2)

らばその場合、疑いなく、[知性体の下に在る]諸事物の諸原因4も知性体においては知性的 である。

78 だからすでに次のことは明らかである。すなわち、知性体よりも上位に在る事物と下 位に在る事物は、知性的力を通して在る。同様に物体的事物も、知性体とともに[在れば] 知性的であり、知性認識可能な諸事物5も知性体においては知性的である。というのも、 知性体が諸事物の諸原因の原因6であるが、知性体が諸事物を7把捉するのはただその実体 の在り方によってのみであり、知性体は、知性体であるがゆえに、知性的諸事物であろう と、物体的諸事物であろうと、知性的把捉によって諸事物を把捉するからである。

4[知性体の下に在る]諸事物の諸原因」とは、77冒頭の「諸々の刻印の原因」であるよ うな「知性体のうちに在る諸事物」のことであろう。

5 これは恐らくプロクロスが『神学綱要』で言うところの知性認識対象(noētos)、すなわ ち、知性(nous)の上位に在る存在(on)のことであろう。

6 Taylorに従って「存在」esse)を取る。Pattinでは「諸事物が存在する諸原因の原 因」となっている。

7 Taylorに従って「諸事物を」(res)を読む。

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