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犯罪による収益の移転の危険性の程度に関する評価書 年次報告書|JAFIC 警察庁

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(1)

平成26年12月

犯罪による収益の移転の

危険性の程度に関する評価書

FATF勧告実施に関する関係省庁連絡会議

国が実施する資金洗浄及びテロ資金に関する

(2)

凡 例

1 法律の略称

法律の略称は、次のとおり用いる。

[ 略称] [ 法律名]

組織的犯罪処罰法 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律

麻薬特例法 国 際 的 な 協力 の 下 に 規制 薬 物 に 係 る不 正 行 為 を 助長 す る 行 為

等 の 防 止 を 図 る た め の麻 薬 及 び 向 精神 薬 取 締 法 等の 特 例 等 に

関する法律

出資法 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律

銃刀法 銃砲刀剣類所持等取締法

風適法 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律

犯罪収益移転防止法 犯罪による収益の移転防止に関する法律

金融機関等本人確認法 金 融 機 関 等に よ る 顧 客等 の 本 人 確 認等 及 び 預 金 口座 等 の 不 正

な利用の防止に関する法律

テロ資金提供処罰法 公 衆 等 脅 迫目 的 の 犯 罪行 為 の た め の資 金 の 提 供 等の 処 罰 に 関

する法律

入管法 出入国管理及び難民認定法

外為法 外国為替及び外国貿易法

労働者派遣法 労 働 者 派 遣事 業 の 適 正な 運 営 の 確 保及 び 派 遣 労 働者 の 保 護 等

に関する法律

資金決済法 資金決済に関する法律

2 条約等の略称

条約等の略称は、次のとおり用いる。

[ 略称] [ 条約等]

麻薬新条約 麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約

テロ資金供与防止条約 テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約

G8行動計画原則 法 人 及 び 法的 取 極 め の悪 用 を 防 止 する た め の G 8行 動 計 画 原

行動計画 法 人 及 び 法的 取 極 め の悪 用 を 防 止 する た め の 日 本の 行 動 計 画

【国が実施する資金洗浄及びテロ資金に関するリスク評価に関する

分科会を構成した省庁】

警察庁

金融庁

総務省

(3)

犯罪による収益の移転の危険性の程度に関する評価書

目次

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

第1部 マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の現状 1

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

第1 リスク評価の実施 1

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

1 背景 1

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

2 体制 1

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

3 目的 1

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

第2 マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の脅威 2

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

1 我が国の環境 2

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 1) 地理的環境 2

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 2) 経済的環境 2

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 3) 犯罪情勢 3

‥ ‥ ‥ ‥ ‥

2 マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の我が国における脅威 3

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 1) マネー・ローンダリング 3

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

ア 主体 3

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

イ 手口 5

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( ア) 前提犯罪 5

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( イ) マネー・ローンダリングに悪用された取引等 6

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 2) テロ資金供与 7

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

第3 マネー・ローンダリング及びテロ資金供与への取組 7

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

1 犯罪収益移転防止法の概要 7

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 1) 法律の目的 8

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 2) 犯罪による収益 8

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 3) 特定事業者 8

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 4) 国家公安委員会の責務とFIU 9

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 5) 特定事業者による措置 9

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 6) 疑わしい取引に関する情報の提供 12

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 7) 監督上の措置 12

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 8) 預貯金通帳、為替取引カード等の譲受け等に関する罰則 12

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

2 麻薬特例法の概要 12

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 1) マネー・ローンダリングの処罰 13

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 2) 没収・追徴及び保全措置 13

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

3 組織的犯罪処罰法の概要 13

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 1) マネー・ローンダリングの処罰 13

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 2) 没収・追徴及び保全措置 13

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

4 テロ資金提供処罰法の概要 14

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

5 マネー・ローンダリング関連事犯の取締り等 14

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 1) 犯罪収益移転防止法違反の検挙状況 14

‥ ‥ ‥ ‥

( 2) 組織的犯罪処罰法に係るマネー・ローンダリング事犯の検挙状況 14

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 3) 麻薬特例法に係るマネー・ローンダリング事犯の検挙状況 15

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 4) 犯罪収益の剝奪 15

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

ア 起訴前の犯罪による収益の没収保全状況 15

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( ア) 組織的犯罪処罰法に基づく起訴前の没収保全状況 15

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( イ) 麻薬特例法に基づく起訴前の没収保全状況 16

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

イ 没収・追徴規定の適用状況 17

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

(4)

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( イ) 麻薬特例法に基づく没収・追徴規定の適用状況 17

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 5) 特定事業者に対する是正命令等の実施状況 18

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

ア 国家公安委員会・警察庁による報告徴収・意見陳述等 18

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

イ 意見陳述に基づく所管行政庁による是正命令 18

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

6 疑わしい取引の届出 18

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 1) 制度の概要 18

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

ア 趣旨 18

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

イ 疑わしい取引の届出の流れ 19

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

ウ 届出が必要な場合 19

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

エ 疑わしい取引の参考事例 20

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 2) 届出状況 20

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

ア 届出受理件数の推移 20

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

イ 業態別の届出受理件数の推移 21

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 3) J AFI Cにおける分析 22

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 4) 捜査機関等における活用状況 23

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

ア 都道府県警察における活用状況 23

( ア) 疑わしい取引に関する情報を端緒として検挙に至った事件数の推移 23

( イ) 疑わしい取引に関する情報を端緒としてマネー・ローンダリング事犯

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

の検挙に至った事件数の推移 24

( ウ) 疑わしい取引に関する情報を端緒として没収・追徴に至った事件数の

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

推移 25

‥ ‥ ‥ ‥

( エ) 捜査において活用された疑わしい取引に関する情報数の推移 25

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

イ 検察庁における活用状況 25

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

ウ 麻薬取締部における活用状況 26

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

エ 海上保安庁における活用状況 26

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

オ 税関における活用状況 26

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

カ 証券取引等監視委員会における活用状況 26

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

7 国際的な連携の推進 26

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 1) 外国FI Uとの情報交換 26

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

ア 情報交換枠組みの設定状況 26

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

イ 情報交換の状況 27

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

ウ 協議等の状況 27

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 2) 刑事司法における国際協力 27

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

ア 逃亡犯罪人の引渡し 27

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

イ 捜査共助 28

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

ウ 刑事司法共助 28

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

エ 国際刑事警察機構(I CPO)を通じた捜査協力 29

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

(5)

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

5 テロ資金供与に係るリスク評価の位置付け 31

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

第2 リスク評価 31

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

1 取引形態に着目したリスク評価 31

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 1) 非対面取引 31

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 2) 現金取引 33

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 3) 外国との取引 35

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

2 顧客の属性に着目したリスク評価 37

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 1) 反社会的勢力(暴力団等) 37

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 2) 非居住者 39

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 3) 外国の重要な公的地位を有する者 39

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 4) 実質的支配者が不透明な法人 40

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 5) 写真付きでない身分証明書を用いる顧客 42

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

3 国・地域に着目したリスク評価 43

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

4 商品・サービスの属性に着目したリスク評価 44

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 1) 預金取扱金融機関が取り扱う商品・サービス 44

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

ア 預金取扱金融機関の概要 44

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

イ 疑わしい取引の届出 44

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

ウ 預貯金口座 45

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

エ 預金取引 47

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

オ 内国為替 48

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

カ 貸金庫 49

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

キ 手形・小切手 50

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

ク 預金取扱金融機関が取り扱う商品・サービスの評価 51

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 2) 資金移動サービス 52

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 3) 外貨両替 55

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 4) 保険 58

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 5) 投資 59

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 6) 不動産 62

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 7) 宝石・貴金属 64

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 8) 郵便物受取サービス 65

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 9) 法律・会計専門家 67

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 10) 信託 69

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

5 新たな技術を利用した取引に関するリスク評価 70

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 1) 電子マネー 70

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

( 2) ビットコイン等 72

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

第3 リスクを低下させる要因 72

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

1 趣旨 72

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

2 リスクを低下させる要因 72

‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

(6)

第1部 マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の現状

第1 リスク評価の実施

1 背景

IT 技術の進歩や経済・金融サービスのグローバル化が進む現代社会において、

マネー・ローンダリング(Money Laundering: 資金洗浄)及びテロ資金供与(以

下「マネー・ローンダリング等」という。)に関する情勢は絶えず変化しており、

そ の 対策 を 強力 に推進 してい くた めには 、各国 が協 調した グロー バルな 対応が 求

められる。

FATF(Financial Action Task Force: 金融活動作業部会) は、平成24年(2012年)

2 月に 改訂 した新 「40の勧告 」に おいて 、各国 が自 国にお けるマ ネー・ ローン ダ

リング等のリスクを特定し、及び評価することを要請している。

また 、25年( 2013年) 6月 のロッ ク・ア ーン・ サミット において、法人 等の所

有 ・ 支配 構 造の 不透明 な実態 によ って、 法人等 がマ ネー・ ローン ダリン グや租 税

回 避 のた め に利 用され ている 現状 を踏ま え、各 国が 自国の マネー ・ロー ンダリ ン

グ 等 対策 を 取り 巻くリ スクを 評価 し、そ のリス クに 見合っ た措置 を講じ ること 等

が盛り込まれたG8行動計画原則が合意された。

我 が国 は 、同 月、G 8行動 計画 原則を 踏まえ 、警 察庁を 中心と して金 融庁等 の

関 係省 庁から なる作 業チ ームを 設けて 、26年(2014年)末 までにマネー・ ローン

ダ リ ング 等 対策 に係る 国によ るリ スク評 価を行 うこ と等を 盛り込 んだ行 動計画 を

定め、これを公表した

*1

2 体制

前記 の行 動計画 を受け て、 国によ るリスク 評価 を行う に当た り、 平成25年7 月

に 「FATF 勧 告 実 施 に 関 す る 関 係 省 庁 連 絡 会 議 」 の 下 に 、 我 が 国 に お い て FIU

(Financial Intelligence Unit: 資金情報機関)の業務を担う警察庁の刑事局組織犯

罪 対 策部 犯 罪収 益移転 防止管 理官 (現同 部組織 犯罪 対策企 画課犯 罪収益 移転防 止

対 策 室長 ) を議 長とし て、警 察庁 、金融 庁、総 務省 、法務 省、財 務省、 厚生労 働

省 、 農林 水 産省 、経済 産業省 、国 土交通 省、内 閣官 房及び 外務省 の職員 で構成 す

る「国が実施する資金洗浄及びテロ資金に関するリスク評価に関する分科会」(以

下「分科会」という。)を設置し、マネー・ローンダリング等対策に関わる省庁が

連携して検討・協議を行った。

3 目的

国 が実 施 する リスク 評価は 、事 業者が 取り扱 う各 種取引 や商品 ・サー ビスが マ

ネ ー ・ロ ー ンダ リング 等に悪 用さ れるリ スクを 国と して特 定し、 及び評 価する も

のである。

新「 40の勧告 」では 、各種 取引 等がマ ネー・ ロー ンダリ ング等 に悪用 される リ

スクの程度に応じて対策を講じることによって、当該リスクの低減を図るという、

リ ス クベ ー ス・ アプロ ーチの 考え 方が明 示的に 取り 入れら れたと ころで あり、 国

が 実 施す る リス ク評価 は、こ れを より適 切に実 施し ていく ための 前提と なるも の

(7)

*1 全 国銀 行 協 会「 全 国 銀行 財 務 諸 表分 析 」 及び ゆ う ちょ 銀 行 の ディ ス ク ロー ジ ャ ー 誌を 参 照 。全 国 銀行 財務 諸表 分

析では、店舗数1万3, 314店舗(内訳は、都市銀行6行(みずほ、三菱東京 UFJ、三井住友、りそな、みずほコーポ

レ ー ト 、 埼玉 り そ な)、地 方 銀 行64行 、 第 二地 方 銀 行41行、 信託 銀 行4 行( 三菱 UF J 信託 、 みず ほ信 託、 三井 住友 信

託 、野村信託)、新生 銀行、あおぞら銀行の117行の本支店及び出張所の合計)、ゆうちょ銀行のディスクロージャー

誌では、店舗数2万4, 215店舗(本支店、出張所、郵便局、簡易郵便局)となっており、これらの合計店舗数。

踏 ま え、 自 らリ スク評 価を行 い、 法令に 定めら れた 義務に 加えて 、取引 形態や 顧

客、商品・サービス等のリスクに応じて、自主的な措置を講じることは、マネー・

ローンダリング等の防止にとって有益であると考える。

第2 マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の脅威

1 我が国の環境

( 1) 地理的環境

我 が国 は、 太 平洋 と日 本 海に 囲まれ た東ア ジア に位置 する島 国で、 他国と の

間の 人の 往来 や 物流 のす べ ては 港(空 ・海) を経 由して いる。 海外と の通商 に

携わる港の数は、空港30、海港120である。

国土は約37万8, 000㎢で、本州の中央に位置する首都・東京及びその周辺部が、

我が 国で 最大 の 経済圏 を形 成して いる。平 成26年 3月1 日現在 、人口 は約1 億

2, 712万人で、前年同月に比べて、約22万人(0. 17%)減少している。

( 2) 経済的環境

我が国は世界経済の中で重要な地位を占めており、GDP は478. 4兆円(平成2

5暦年・名目)と世界第3位の規模で、1人当たりの名目GDPは370. 7万円(24

年度)となっている。24暦年の経済活動別(産業別)のGDP構成比(名目)は、

サービス業19. 9%、製 造業18. 2%、卸売・小 売業14. 5%、金融 ・保険業12. 1%であ

り、相対的にサービス業及び製造業の割合が高い。

25年度の 輸入総額 は84兆6, 129億円、 輸出総額は約70兆8, 574億円とな ってい

る。 25年 度に おける 貿易相 手国 は、中 国、米 国、 韓国が 上位を 占める 。貿易 品

目では、輸入は原粗油、液化天然ガス、衣類・同付属品、輸出は自動車、鉄鋼、

半導体等電子部品が上位品目となっている。

我 が国 は高 度 に発 達し た 金融 セクタ ーを有 して おり、 世界有 数の国 際金融 セ

ンタ ーと して 相 当額の 金融 取引が 行われて いる 。例え ば、25年 中に東 京証券 取

引所で行われた上場株式(市場第一部及び市場第二部)の売買金額は、約643兆

7, 700億円となっている。

金 融シ ステ ム は、 全国 的 に張 り巡ら されて おり 、迅速 かつ確 実に資 金を移 動

させることができる。25年3月末の銀行の国内店舗数は3万7, 529店舗

*1

で、日

本各 地か ら金 融 シス テム へ のア クセス を容易 にし ている ほか、 近年は 店舗に 赴

く必 要が ない イ ンター ネッ トを通 じた取引 ( イン ターネ ットバ ンキ ング) も行 わ

れている。

ま た、 携帯 電 話や スマ ー トフ ォン等 を利用 した 決済( モバイ ルペイ メント )

も、今後ますます、充実していくことが予想される。

さ らに 、我 が 国は 、観 光 立国 の実現 に向け て各 種取組 を推進 してお り、そ の

結果、25年には、史上初めて訪日外国人旅行者数が1, 000万人を超えた。今後よ

り一 層、 人々 の 往来 が活 発 化す るとと もに、 訪日 外国人 の利便 性向上 の観点 か

ら、 海外 で発 行 され たク レ ジッ トカー ドを使 って 日本円 を現金 で引き 出せる 現

金自動預払機(以下「ATM」という。)の設置を促進する動きも見られるなど、

我が 国の 金融 イ ンフ ラ等 の 面に おいて も、利 便性 や効率 性が一 段と向 上して い

くことが期待されている。

(8)

往来・流通することを可能とする。

一 方で 、こ の よう な環 境 は、 マネー ・ロー ンダ リング 等を企 図する 国内外 の

者に 対し て、 マ ネー ・ロ ー ンダ リング 等に係 る様 々な手 段・方 法を提 供する こ

とと なる 。こ れ らの 者は 、 世の 中に存 在する 様々 な取引 や商品 ・サー ビスの 中

から 、自 己の 目 的を 達成 す るの に最も 適した 手段 ・方法 を選択 し、マ ネー・ ロ

ーンダリング等を敢行しようとする。

犯 罪収 益や テ ロ資 金が 、 高度 に発展 した我 が国 の金融 システ ム等を 通じて 我

が国 の経 済活 動 の中 に投 入 され 、膨大 な合法 的な 資金の 中に紛 れてし まうと 、

その 中か ら犯 罪 収益 やテ ロ 資金 を特定 し、追 跡す ること は非常 に困難 となる 。

( 3) 犯罪情勢

平 成25年版 犯罪白 書では 、我 が国の 犯罪動 向と 諸外国 の犯罪 動向と の比較 分

析と して 、主 要 な犯罪 及び そのう ちの殺人 並び に窃盗 の発生 率( 人口10万人 当

たり の認 知件 数 )に つい て 、我 が国と フラン ス、 ドイツ 、英国 (イン グラン ド

及びウェールズに限る。)及び米国の4か国とを対比している。これによると、

19年 ( 2007年) から 23年( 2011年) にかけてのそれぞれの 発生率は、いず れも、

我が 国が 最も 低 くな って い る。 もとよ り各国 にお いて犯 罪とさ れる事 象の範 囲

や犯 罪の 構成 要 件が 異な る ほか 、統計 の取り 方も 同一で ないこ とから 、即断 す

るこ とは 適当 で はな いが 、 これ は、我 が国の 治安 の良さ を示す 指標の 一つで あ

るといえる。

また、24年8月に内閣府が実施した「治安に関する特別世論調査」では、「日

本は安 全・安 心な 国か」 という 質問 に対し て、59. 7%が 「そう 思う」 又は「 ど

ちらかといえばそう思う」と回答している。

図表1- 1【各国における主要な犯罪等の発生率の推移】

平成19年

(2007年)

平成20年

(2008年)

平成21年

(2009年)

平成22年

(2010年)

平成23年

(2011年)

日本 1,491 1,420 1,330 1,239 1,159

フランス 5,833 5,751 5,639 5,491 5,447

ドイツ 7,635 7,436 7,383 7,253 7,328

英国 9,157 8,636 7,915 7,514 7,091

米国 3,748 3,673 3,473 3,350 3,295

日本 1.0 1.0 0.9 0.9 0.8

フランス 3.0 3.1 2.6 2.8 3.1

ドイツ 2.9 2.8 2.8 2.7 2.7

英国 2.6 2.3 2.2 2.1 1.8

米国 5.7 5.4 5.0 4.8 4.7

日本 1,117 1,072 1,015 948 887

フランス 2,906 2,746 2,728 2,680 2,669

ドイツ 3,112 2,972 2,859 2,814 2,940

英国 4,345 4,118 3,765 3,696 3,591

米国 3,276 3,215 3,041 2,946 2,909

主要な犯罪

殺人

(9)

*1 特 殊詐 欺 と は、 面 識 のな い 不 特 定の 者 に 対し 、 電 話そ の 他 の 通信 手 段 を用 い て 、 預貯 金 口 座へ の 振込 みそ の他 の 方 法 に よ り、 現 金 等を だ ま し取 る 詐 欺 をい い 、 オレ オ レ 詐 欺、 架 空 請求 詐 欺 、融 資 保 証 金詐 欺 、還 付金 等詐 欺、 金 融 商 品 等 取引 名 目 の特 殊 詐 欺、 ギ ャ ン ブル 必 勝 情報 提 供 名 目の 特 殊 詐欺 、 異 性の 交 際 あ っせ ん 名目 の特 殊詐 欺及 び その他の特殊詐欺を総称したものをいう。

ン ダ リン グを 敢 行す るお そ れが あり 、そ の 主体 は、国 籍、罪 種、組 織性の 有

無等の属性を問わず様々な者が存在する。

我 が国 にお い ては 、と り わけ 暴力 団に よ るマ ネー・ ローン ダリン グが、 大

き な 脅威 とし て 存在 して い る。 平成25年中 に組 織的犯 罪処罰 法及び 麻薬特 例

法 に 係る マネ ー ・ロ ーン ダ リン グ事 犯で 検 挙さ れたも ののう ち、暴 力団構 成

員及び準構成員その他の周辺者(以下「暴力団構成員等」という。)によるも

のは85件で、全体の30. 1%を占めている(図表1- 2参照)。

暴 力団 は、 経 済的 利得 を 獲得 する ため に 職業 的に反 復して 犯罪を 敢行し て

おり、巧妙にマネー・ローンダリングを行っている。

暴 力団 によ る マネ ー・ ロ ーン ダリ ング は 、国 際的に 敢行さ れてい る状況 も

う かが われ、 米国は 、23年( 2011年)7 月、「 国際組織 犯罪 対策戦略」 を公表

し 、 その 中で 、 暴力 団を 「 重大 な国 際犯 罪 組織 」の一 つに指 定し、 暴力団 に

係 る 資産 であ っ て、 米国 内 にあ るも の又 は 米国 人が所 有・管 理する ものを 凍

結し、米国人が暴力団と取引を行うことを禁止した。

25年 中に 組 織的 犯罪 処 罰法 及び麻 薬特例 法に 係るマ ネー・ ローン ダリン グ

事犯で検挙されたもののうち、来日外国人によるものは21件で、全体の7. 4%

を占めている(図表1- 2参照)。

来 日外 国人 に よる マネ ー ・ロ ーン ダリ ン グは 、日本 国内で 得た犯 罪収益 を

外 国 に為 替送 金 して いた も の、 現金 を母 国 に密 輸して いたも の等、 法制度 や

取引システムの異なる他国への資金移動が多く認められる。

図表1- 2【組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法に係るマネー・ローンダリング事犯の検挙事

件数】

近 年、 我が 国 にお いて は 、被 害者 に電 話 をか けるな どして 対面す ること な

く欺もうし、不特定多数の者から現金等をだまし取る特殊詐欺

*1

が多発してい

る。特殊詐欺の犯行グループは、首謀者を中心に、だまし役、詐取金引出役、

犯 行 ツー ル調 達 役等 にそ れ ぞれ 役割 分担 し た上 で、組 織的に 詐欺を 敢行す る

と と もに 、詐 取 金の 振込 先 には 、架 空・ 他 人名 義の口 座を利 用する などし て

おり、マネー・ローンダリングの大きな脅威となっている。

平成23年 平成24年 平成25年

251 249 282

84 59 85

比率(%) 33.5% 23.7% 30.1%

14 17 21

比率(%) 5.6% 6.8% 7.4%

区分       年

マネー・ローンダリング事犯検挙事件

暴力団構成員等による事件

(10)

図表1- 3【特殊詐欺の認知件数・被害総額】

注1:警察庁の資料による。

2:実質的な被害総額とは、キャッシュカードを直接受け取る手口の特殊詐欺における ATM からの引出

(窃取)額(実務統計による集計値)を被害総額に加えた額である。

ま た、 マネ ー ・ロ ーン ダ リン グを 支え る 存在 として 、自己 名義の 口座や 偽

造 し た身 分証 明 書を 悪用 す るな どし て開 設 した 架空・ 他人名 義の口 座を遊 興

費 や 生活 費欲 し さか ら安 易 に譲 り渡 す者 等 がお り、マ ネー・ ローン ダリン グ

の敢行をより一層容易にしている。

イ 手口

( ア) 前提犯罪

マ ネー ・ロ ー ンダ リン グ犯 罪 は、 前 提犯 罪か ら得 ら れた 収益の 隠匿、 収

受 及 びこ れを 用 いた 法人 等の 事 業経 営 の支 配を 目的 と する 行為で ある。 前

提 犯 罪は 、不 法 な収 益を 生み 出 す犯 罪 であ って 、そ の 収益 がマネ ー・ロ ー

ン ダ リン グの 対 象と なる もの で 、麻 薬 特例 法に 掲げ る 薬物 犯罪及 び組織 的

犯 罪 処罰 法の 別 表等 に掲 げる 罪 をい う 。組 織的 犯罪 処 罰法 の別表 には、 殺

人、強盗、窃盗、詐欺、背任等の刑法犯と出資法、売春防止法、著作権法、

商標法、銃刀法、薬事法等の特別法犯を合わせて200を超える犯罪が掲げら

れている。

平 成23年 か ら25年 ま での 間にお ける組 織的 犯罪処 罰法に 係るマ ネー・ ロ

ー ン ダリ ング 事 犯の 前提 犯罪 別の検挙 事件数

*1

を 見ると 、窃 盗が205件と 最

も 多く27. 1%を占 める。 次いで 、詐 欺(193件 、25. 5%)、出資法・貸 金業法

違反(90件、11. 9%)、売春防止法違反(55件、7. 3%)、わいせつ図画頒布等

(54件、7. 1%)となっている。

ま た、 23年 から 25年 まで の間に おける 薬物 犯罪を 前提犯 罪とす る麻薬 特

例 法 に係 るマ ネ ー・ロ ーンダ リング 事犯の 検挙 事件数 は29件(図 表1- 11参

照)となっている。

平成22年 平成23年 平成24年 平成25年

認知件数 6,888 7,216 8,693 11,998

被害総額(円) (実質的な被害総額)

(11)

*1 ①プレイスメント(Placement):犯罪収益を金融システムに組み込む段階。②レイヤーリング(Layering):犯罪収 益 の 出 所 を 不 透 明 に す る た め 資 金 源 か ら 分 離 す る 段 階 。 ③ イ ン テ グ レ イ シ ョ ン (Integration): 犯 罪 収 益 を 合 法 的 な 経済活動に投入する段階。

図表1- 4【組織的犯罪処罰法に係るマネー・ローンダリング事犯の前提犯罪別の検挙事件

数・割合(平成23年∼25年)】

( イ) マネー・ローンダリングに悪用された取引等

FATF は 、 ナ シ ョ ナ ル ・ リ ス ク ・ ア セ ス メ ン ト に 関 す る ガ イ ダ ン ス

「National Money Laundering and Terrorist Financing Risk Assessment」 ( 以下

「FATF ガ イ ダ ン ス 」 と い う 。) に お いて 、 リ ス ク の評 価 を 行 う 上で 、 マ ネ

ー・ローンダリングの3段階

*1

を考慮することが有益であると述べている。

そこで、FATF ガイダンスを踏まえ、マネー・ローンダリングに悪用され

た取引等にあっては、マネー・ローンダリング事犯として検挙された事例(平

成23年から25年までの過去3年間)を分析し、捜査の過程において判明した

範囲内で、犯罪収益の隠匿・収受手段として悪用された取引や商品・サービ

スのほか、前提犯罪で得た犯罪収益がその形態を転化した主な商品・サービ

スがある場合には、その商品・サービスについて集計した。 前

提 犯 罪

窃 盗

詐 欺

出 資 法 ・ 貸 金 業 法 違 反

売 春 防 止 法 違 反

わ い せ つ 図 画 頒 布 等

商 標 法 違 反

電 子 計 算 機 使 用 詐 欺

博 開 張 図 利 等

銀 行 法 違 反

風 適 法 違 反

薬 事 法 違 反

業 務 上 横 領

著 作 権 法 違 反

恐 喝

そ の 他

合 計

合計 205 193 90 55 54 20 19 14 12 11 10 10 9 8 47 757

(12)

図表1- 5【マネー・ローンダリングに悪用された取引等(平成23年∼25年)】

注 : 組 織 的 犯 罪 処 罰 法 及 び 麻 薬 特 例 法 に 係 る マ ネ ー ・ ロ ー ン ダ リ ン グ 事 犯 の 検 挙 事 件 ( 平 成 23年 から 25年 ま で の

間で 782事件 ) から 、犯 罪収 益の 隠匿 ・収 受手 段と して 悪用 さ れた 取引 等及 び犯 罪収 益が その 形態を転 化した 主

な商品・サービスを捜査の過程に おいて判明した範囲内で抽出した。

図 表1- 5を見る と、 内国為 替が407件、 次いで 現金 取引が278件と両者 がマネ

ー・ローンダリングに悪用された取引等の大半を占めている。

検挙されたマネー・ローンダリング事犯、さらには、疑わしい取引の届出の

分析を踏まえると、我が国においては、マネー・ローンダリング企図者が、迅

速かつ確実な資金移動が可能な内国為替を通じて、架空・他人名義の口座に犯

罪収益を振り込ませる事例が多く認められるところ、当該犯罪収益は、最終的

には ATM において現金出金され、その後の資金の追跡が非常に困難になるこ

とが多い。

したがって、我が国においては、内国為替及び現金取引がマネー・ローンダ

リングの大きな脅威となっている。

( 2) テロ資金供与

過 去に おい て は、 日本 赤 軍や オウム 真理教 によ って、 テロ行 為が敢 行され た

こと があ った 。 一方 で、 現 在ま でのと ころ、 我が 国国内 におい て、国 際連合 安

全保 障理 事会 で 指定 され て いる テロリ スト及 びテ ロ組織 による テロ行 為の被 害

は確認されていない。

ま た、 テロ 資 金供 与に つ いて は、事 業者か らの 疑わし い取引 の届出 等を通 じ

て情 報収 集を 行 って いる も のの 、現在 までの とこ ろ、テ ロ資金 供与に 係る事 件

検挙はない。

以 上の とお り 、現 時点 に おい て、我 が国に おい ては、 テロ資 金の供 与元又 は

供与 先に 係る 大 きな 脅威 は 認め られな い。た だし 、マネ ー・ロ ーンダ リング と

同様 、我 が国 が テロ 資金 供 与の 経由地 になり うる ことに 十分留 意しな ければ な

らない。

そ こで 、我 が 国で は、 国 際連 合安全 保障理 事会 決議に 基づい て、タ リバー ン

関係 者等 を資 産 凍結 措置 等 の対 象とし ており 、こ れら対 象者の リスト が改正 さ

れる 都度 、所 管 行政 庁を 通 じて 、特定 事業者 に対 し、犯 罪収益 移転防 止法に 基

づく 取引 時確 認 義務 等の 履 行及 び疑わ しい取 引の 届出の 徹底を 図るよ う要請 し

ている。

利 用 さ れ た 取 引 等

内 国 為 替

現 金 取 引

預 金 取 引

外 国 為 替 等

外 国 と の 取 引

投 資

手 形 ・ 小 切 手

不 動 産

法 人 格

郵 便 物 受 取 サ

ビ ス

宝 石 ・ 貴 金 属

法 律 ・ 会 計 専 門 家

保 険

外 貨 両 替

貸 金 庫

電 子 マ ネー

物 品 譲 受

物 理 的 隠 匿

合 計

(13)

図表1- 6【犯罪収益移転防止法の概要】

( 1) 法律の目的(第1条)

本法は、( 3) にある特定事業者による本人特定事項等の確認、取引記録等の保 存、 疑わ しい 取 引の 届出 等 の措 置を講 ずるこ とに より、 組織的 犯罪処 罰法及 び 麻薬 特例 法に よ る措 置と 相 まっ て、犯 罪によ る収 益の移 転防止 を図り 、併せ て テロ 資金 供与 防 止条 約等 の 的確 な実施 を確保 し、 もって 国民生 活の安 全と平 穏 を確保するとともに、経済活動の健全な発展に寄与することを目的とする。

( 2) 犯罪による収益(第2条第1項)

本 法に おい て「犯 罪に よる収 益」と は、「 犯罪収 益等」(組織 的犯罪 処罰法 第

2条第4項)及び「薬物犯罪収益等」(麻薬特例法第2条第5項)をいう。

( 3) 特定事業者(第2条第2項)

本法で取引時確認等の措置を講ずることとなる事業者は、「特定事業者」と呼

称 さ れ る が 、 その 範 囲 は 、FATF の 勧 告 や我 が 国 に お ける 事 業 者 の 活動 状 況 を 踏まえ定められている。

特定事業者

○ 金融機関等(1∼36号)

銀行、信用金庫、信用金庫連合会、労働金庫、労働金庫連合会、信用協同組合、信

用協同組合連合会、農業協同組合、農業協同組合連合会、漁業協同組合、漁業協同組

合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、農林中央金庫、株式会

社商工組合中央金庫、株式会社日本政策投資銀行、保険会社、外国保険会社等、少額

短期保険業者、共済水産業協同組合連合会、金融商品取引業者、証券金融会社、特例

(14)

会社、貸金業者、短資業者、資金移動業者、商品先物取引業者、振替機関、口座管理

機関、電子債権記録機関、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構、両替業者

○ ファイナンスリース事業者( 37号)

○ クレジットカード事業者( 38号)

○ 宅地建物取引業者( 39号)

○ 宝石・貴金属等取扱事業者( 40号)

○ 郵便物受取サービス業者、電話受付代行業者、電話転送サービス事業者( 41号)

○ 弁護士又は弁護士法人( 42号)

○ 司法書士又は司法書士法人( 43号)

○ 行政書士又は行政書士法人( 44号)

○ 公認会計士又は監査法人( 45号)

○ 税理士又は税理士法人( 46号)

( 4) 国家公安委員会の責務とFI U(第3条)

本 法は 、国 家 公安 委員 会 の責 務とし て、特 定事 業者に よる本 人特定 事項等 の

確認 等の 措置 が 的確 に行 わ れる ことを 確保す るた め、特 定事業 者に対 し犯罪 に

よる 収益 の移 転 に係 る手 口 に関 する情 報の提 供そ の他の 援助を 行うと ともに 、

犯罪 収益 移転 防 止の 重要 性 につ いて国 民の理 解を 深める ように 努める ことの ほ

か、 特定 事業 者 によ り届 け 出ら れた疑 わしい 取引 に関す る情報 その他 の犯罪 に

よる 収益 に関 す る情 報が 、 犯罪 捜査や 国際協 力に 有効活 用され るよう 、迅速 か

つ的 確に その 集 約、 整理 及 び分 析を行 うもの とす ること を明ら かにし ている 。

( 5) 特定事業者による措置

本法上、特定事業者の義務とされる措置の内容は次のとおりである。

なお、特定事業者と、義務の対象となる「特定業務」、取引時確認義務の対象

(15)

図表1- 7【特定事業者、特定業務、特定取引と義務の対応状況】

ア 取引時確認(第4条)

一 定の 取引 ( 特定 取引 及 びな りす まし が 疑わ れるな どマネ ー・ロ ーンダ リ

注1:取引時確認済みの 顧客等との取引は除く。 ただし、なりすまし等の 疑いがある場合は除かれ ない。 2:金融機関等のうち 為替取引に係る事業者は 、送金人情報の通知義務 を負う【9条 】。

3:司法書士、行政書 士、公認会計士、税理士 のいわゆる士業者は本人 特定事項のみ確認。 特 定 事 業 者

【 2条 2項 】

特 定 業 務 ( 義 務 の 対 象 )

特 定 取 引

( 取 引 時 確 認 が 必 要 )( 注 1)

義 務

金 融 機 関 等 【 1号 ∼ 36号 】

金 融 機 関 等 が 行 う 業 務

( 金 融 に 関 す る 業 務 に 限 ら れ る )

預 貯 金 契 約 ( 預 金 又 は 貯 金 の 受 入 れ を 内 容 と す る 契 約 ) の 締 結 、 200万 円 を 超 え る 大 口 現 金 取 引 、 10万 円 を 超 え る 現 金 送 金 等

フ ァ イ ナ ン ス リ ー ス 事 業 者   【 37号 】

フ ァ イ ナ ン ス リ ー ス 業 務

( 中 途 解 約 で き な い も の 、 賃 借 人 が 賃 借 物 品 の 使 用 に 伴 う 利 益 を 享 受 し 、 か つ 、 費 用 を 負 担 す る も の に 限 ら れ る )

1 回 の リ ー ス 料 が 10万 円 を 超 え る 物 品 の フ ァ イ ナ ン ス リ ー ス 契 約 の 締 結

ク レ ジ ッ ト カ ー ド 事 業 者   【 38号 】

ク レ ジ ッ ト カ ー ド 業 務 ク レ ジ ッ ト カ ー ド 契 約 の 締 結

宅 地 建 物 取 引 業 者   【 39号 】

宅 地 建 物 の 売 買 又 は そ の 代 理 若 し く は 媒 介 業 務

宅 地 建 物 の 売 買 契 約 の 締 結 又 は そ の 代 理 若 し く は 媒 介

宝 石 ・ 貴 金 属 等 取 扱 事 業 者   【 40号 】

貴 金 属 ( 金 、 白 金 、 銀 及 び こ れ ら の 合 金 ) 、 宝 石 ( ダ イ ヤ モ ン ド そ の 他 の 貴 石 、 半 貴 石 及 び 真 珠 ) の 売 買 業 務

代 金 の 支 払 が 現 金 で 200万 円 を 超 え る 貴 金 属 等 の 売 買 契 約 の 締 結

郵 便 物 受 取 サ ー ビ ス 業 者 【 41号 】

郵 便 物 受 取 サ ー ビ ス 業 務 役 務 提 供 契 約 の 締 結

電 話 受 付 代 行 業 者   【 41号 】

電 話 受 付 代 行 業 務

役 務 提 供 契 約 の 締 結

  ※電 話 に よ る 連 絡 を 受 け る 際 に   代 行 業 者 の 商 号 を 明 示 す る 条 項 を 含 む 契 約 の 締 結 は 除 く   ※コ ー ル セ ン タ ー 業 務 等 の 契 約   締 結 は 除 く

電 話 転 送 サ ー ビ ス 事 業 者 【 41号 】

電 話 転 送 サ ー ビ ス 業 務 役 務 提 供 契 約 の 締 結

司 法 書 士   【 43号 】 行 政 書 士   【 44号 】 公 認 会 計 士   【 45号 】 税 理 士   【 46号 】

法 で 定 め る 各 士 業 の 業 務 又 は こ れ ら に 付 随 し 、 若 し く は 関 連 す る 業 務 の う ち 、 以 下 の 行 為 の 代 理 又 は 代 行 に 係 る も の

  ・ 宅 地 又 は 建 物 の 売 買 に 関 す る     行 為 又 は 手 続

  ・ 会 社 等 の 設 立 又 は 合 併 等 に 関     す る 行 為 又 は 手 続

  ・ 現 金 、 預 金 、 有 価 証 券 そ の 他     の 財 産 の 管 理 又 は 処 分

  ※ 租 税 、 罰 金 、 過 料 等 の 納 付 は     除 く

  ※ 成 年 後 見 人 等 裁 判 所 又 は 主 務     官 庁 に よ り 選 任 さ れ る 者 が 職     務 と し て 行 う 他 人 の 財 産 の 管     理 ・ 処 分 は 除 く

以 下 の 行 為 の 代 理 等 を 行 う こ と を 内 容 と す る 契 約 の 締 結

  ・ 宅 地 又 は 建 物 の 売 買 に 関 す る     行 為 又 は 手 続

  ・ 会 社 等 の 設 立 又 は 合 併 等 に 関     す る 行 為 又 は 手 続

  ・ 200万 円 を 超 え る 現 金 、 預 金     、 有 価 証 券 そ の 他 の 財 産 の 管     理 又 は 処 分

  ※任 意 後 見 契 約 の 締 結 は 除 く

・ 取 引 時 確 認   【 4条 】      ( 注 3)

・ 確 認 記 録 の 作 成 ・ 保 存   【 6条 】

・ 取 引 記 録 等 の 作 成 ・ 保 存   【 7条 】

・ 取 引 時 確 認 等 を 的 確 に 行 う た め の 措 置   【 10条 】

弁 護 士   【 42号 】

・ 取 引 時 確 認   【 4条 】

・ 確 認 記 録 の 作 成 ・ 保 存   【 6条 】

・ 取 引 記 録 等 の 作 成 ・ 保 存   【 7条 】

・ 疑 わ し い 取 引 の 届 出   【 8条 】

・ 取 引 時 確 認 等 を 的 確 に 行 う た め の 措 置   【 10条 】

   ( 注 2)

(16)

ン グ のリ スク が 高い 取引 ) を行 うに 際し て 、運 転免許 証の提 示を受 けるな ど

し て 顧客 の氏 名 、住 居等 の 本人 特定 事項 、 取引 を行う 目的、 職業又 は事業 の

内 容 、実 質的 支 配者 の有 無 等を 確認 する こ と( 司法書 士、行 政書士 、公認 会

計士、税理士のいわゆる士業者は本人特定事項のみ確認)。

ま た、 マネ ー ・ロ ーン ダ リン グの リス ク が高 い取引 につい ては、 取引時 確

認 に 係る 事項 を より 厳格 な 方法 で確 認す る こと 並びに 資産及 び収入 の状況 を

確認すること。

なお、取引時確認の方法は図表1- 8のとおりである。

図表1- 8【取引時確認の方法】

イ 確認記録の作成・保存(第6条)

取 引時 確認 に 係る 事項 、 取引 時確 認の た めに とった 措置等 を記録 し、取 引

終了日から7年間保存すること。

ウ 取引記録等の作成・保存(第7条)

非対面取引(インターネット、郵送等)では・・・

法人と実際に取引を行っている取引 担当者の両方の本人確認書類記載 の住所等に、取引関係文書を書留郵 便等により転送不要郵便等で送付 実際に取引を行って

いる取引担当者の 本人確認書類又は その写しの送付 対面取引では・・・

住民票の写し、顔写真のない官公庁発行 書類等 の提示並び に取引を行う目的及び職 業の申告

本人確認書類に記載の住所に取引 関係文 書を書 留郵 便等により転送不要郵便等で送付

取引時確認の方法

対面取引では・・・

本人確認書類に記載の住所に取引 関係文 書を書 留郵 便等により転送不要郵便等で送付

○法人の場合

法人の本人特定事項(名称、本店又は主たる事務 所)、取引 を行う目的、事業の内容及び実質的支配者の確認 を行います。あわせて、実際に取 引を行っている取引担当者の本人 特定事 項の確認が必 要となります。

非対面取引(インターネット、郵送等)では・・・

実際に取引を行っている取引担 当者の 本人特定事項 の 確認

法人の登記事項証明書、印鑑登録証明書等の本 人確認 書 類又はその写しの送付

取引の目的の申告

定款等事業の内容が確認できる書類又 はその 写しの送付 実質的支配者がある場合は、その者の 本人特 定事項の申告

対面取引のみ

住居の確認ができない限り、取引時確認が必 要な取引は原則 として行 うことはできませ んが、外貨両替、宝石・貴金 属等の売買等 について は、氏名・生年月日に加え国籍・番号の記載のある旅券、乗員手帳の提 示 を受 けることで本人特 定事項 の確認が可能です。

※ 上陸許可の証印等により、その在留期間が90日間を超えないと認められるときは、日本国内に住居を有しないことに該当します。

○個人の場合

顧客の本人特定事項(氏名、住居、生年月日)、取引を行う目的及 び職 業の確 認を行 います。なお、代 理人取引の場合には、実際 に取引を行 って いる取引担当者の本人特定事項の確認 も合わ せて必要 となります。

運転免許証、健康保険証等の提示並びに取引 を行う目的及 び職業の申告

本人確認書類又はその写しの送付並 びに取引 を行う目的及 び職業の申告

○日本国内に住居を有しな い短期滞在者(観光者等)であって、旅券等で本国における住居を確認することが できない場合

引 時

認 完 了

法人の登記事項証明書、印鑑登録証明書等の提 示 取引の目的の申告

定款等事業の内容が確認できる書類の 提示

実質的支配者がある場合は、その者の 本人特 定事項の申告

+ +

+ + +

(17)

カ 取引時確認等を的確に行うための措置(第10条)

取 引時 確認 事 項に 係る 情 報の 更新 のた め の措 置を講 じたり 、その 他必要 な

体制の整備を行うこと。

キ 弁護士による措置(第11条)

特 定事 業者 の うち 弁護 士 につ いて は特 則 が設 けられ ており 、上記 のアか ら

ウ 及 びカ に相 当 する 措置 を 司法 書士 等の 例 に準 じて日 本弁護 士連合 会の定 め

る会則により行うこととされている。

上記のうち、取引時確認、確認・取引記録等の作成・保存(アからウまで)

に つ いて は、 犯 罪に よる 収 益の 移転 を行 お うと する者 に対す る牽制 の効果 と

事 後 的な 資金 ト レー スを 可 能に する 効果 が 期待 される 。疑わ しい取 引の届 出

( エ )に つい て は、 これ を マネ ー・ ロー ン ダリ ング事 犯及び 前提犯 罪の捜 査

に 役 立て るほ か 、金 融シ ス テム を含 む合 法 経済 が犯罪 者に悪 用され ること を

防 止 して その 健 全性 を確 保 する 効果 が期 待 され る。取 引時確 認等を 的確に 行

う た めの 措置 ( カ) につ い ては 、取 引時 確 認等 の措置 がより 的確に 行われ 、

事 業 者自 身が マ ネー ・ロ ー ンダ リン グの リ スク を従来 以上に 網羅的 かつ効 率

的に認識する効果が期待される。

ま た、 外国 為 替取 引に 係 る通 知( オ) に つい ては、 外国と の間で 犯罪に よ

る 収 益の 移転 が 行わ れる 場 合に 備え 、国 際 的な 資金ト レース を可能 にする た

めの措置である。

( 6) 疑わしい取引に関する情報の提供(第12条及び第13条)

疑 わし い取 引 に関 する 情 報を 国内外 の捜査 等に 活用し 得るよ うにす るため 、

FIU で ある 国家公 安委員 会は 、疑わ しい取 引に関する情報 を、犯罪捜査 を行う

検察官、検察事務官若しくは司法警察職員(警察官、麻薬取締官、海上保安官)

又は 犯則 事件 の 調査 を行 う 税関 職員若 しくは 証券 取引等 監視委 員会の 職員に 提

供するほか、一定の要件の下で外国のFIUに提供することができる。

( 7) 監督上の措置(第14条から第18条、第24条、第25条、第29条)

本 法で は、 特 定事 業者 に よる 義務の 履行を 担保 するた めの手 続とし て、特 定

事業者の所管行政庁による報告徴収及び立入検査のほか、指導、助言及び勧告、

さらには違反があった場合の是正命令についての規定等が置かれている。

報 告や 資料 提 出を しな か った 者、虚 偽の報 告や 資料の 提出を した者 、立入 検

査を拒んだ者等は1年以下の懲役又は300万円以下の罰金(併科も可)に、是正

命令に違反した者は2年以下の懲役又は300万円以下の罰金(併科も可)に処せ

られる場合がある。

ま た、 国家 公 安委 員会 に は、 所管行 政庁に よる 監督上 の措置 を補完 する立 場

から 、特 定事 業 者の 義務 違 反を 認めた 場合の 所管 行政庁 に対す る意見 陳述の 権

限とそのために必要な調査権限が付与されている。

( 8) 預貯金通帳、為替取引カード等の譲受け等に関する罰則(第27条及び第28条)

売 買さ れた 預 貯金 通帳 、 キャ ッシュ カード 等が マネー ・ロー ンダリ ングに 使

用さ れる など 様 々な 犯罪 に 不正 利用さ れてい るこ とから 、この 防止を 図る目 的

で、 本法 は、 預 貯金 通帳 等 の有 償又は 無償の 譲受 け、譲 渡し等 をした 者を1 年

以下の懲役又は100万円以下の罰金(併科も可)に処することとし、また、業と

してこれらの行為をした者を3年以下の懲役又は500万円以下の罰金(併科も可)

に処することとしている。

ま た、 預貯 金 通帳 等の 有 償又 は無償 の譲受 け、 譲渡し 等をす るよう 人を勧 誘

し、又は誘引した者を1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(併科も可)に処

することとしている。

(18)

麻 薬 特 例 法は 、 昭和 63年 ( 1988年 )に 採択 さ れた 麻薬 新 条約 と、FATF が 平 成

2 年( 1990年) に策 定した 「40の勧 告」を 直接の 契機とし て、薬物犯罪か ら生じ

る 収 益の 循 環を 遮断す ること 等を 目的に 制定さ れ、 4年7 月から 施行さ れた。 薬

物犯罪収益対策に関するものとしては次の2点がある。

( 1) マネー・ローンダリングの処罰(第6条、第7条)

麻 薬特 例法 は 、マ ネー ・ ロー ンダリ ングに は、 更なる (薬物 )犯罪 を助長 す

るなどの側面があるとし、これを新たに犯罪として定義した。

ア 薬物犯罪収益等隠匿罪(第6条)

① 「薬 物犯 罪 収益 等の 取 得若 しく は処 分 につ き事実 を仮装 」する 行為、 ②

「 薬 物犯 罪収 益 等を 隠匿 」 する 行為 及び ③ 「薬 物犯罪 収益の 発生の 原因に つ

き事実を仮装」する行為が罪とされている。

① のう ち「 取 得に つき 事 実を 仮装 する 行 為」 には、 薬物犯 罪収益 等を他 人

名 義 で預 金す る 行為 や合 法 事業 によ る収 益 を装 って帳 簿を操 作する 行為等 が

含まれる。

① のう ち「 処 分に つき 事 実を 仮装 する 行 為」 には、 薬物犯 罪収益 等を用 い

他人名義で物品を購入する行為等が含まれる。

② の「 隠匿 」 には 、天 井 裏に 隠す など の 物理 的隠匿 のほか 、資金 の追跡 が

著しく困難となる国や地域への送金等が含まれる。

③ の「 発生 の 原因 につ き 事実 を仮 装す る 行為 」には 、薬物 の譲受 人がそ の

代金について架空債務の返済金を装う行為等が含まれる。

イ 薬物犯罪収益等収受罪(第7条)

「情を知って、薬物犯罪収益等を収受」する行為が罪とされている。

例 えば 暴力 団 幹部 が薬 物 犯罪 によ り得 た 金で あるこ とを知 りなが らこれ を

上納金として受け取る行為等が考えられる。

( 2) 没収・追徴及び保全措置(第11条から第13条、第19条、第20条)

薬 物犯 罪収 益 は没 収さ れ る。 しかし 、既に 費消 された り権利 が移転 されて い

るな どの 理由 で 没収 でき な いと きは追 徴され る。 それ以 前から あった 刑法の 没

収・ 追徴 の制 度 に比 べ、 対 象が 有体物 に限ら れず 預金債 権等も 含まれ ること や

必要 的な 没収 ・ 追徴 であ る など の点で 強化さ れて いる。 さらに 、薬物 犯罪収 益

の剝奪を確実にするため、没収すべき財産について、判決が言い渡される前に、

当該 財産 が処 分 され てし ま うこ とがな いよう に裁 判所の 命令に よりこ れを禁 ず

る措 置を とる こ とが でき る 。捜 査の開 始を犯 人が 察知す ること で処分 の危険 が

高ま るこ とか ら 、裁判 所は 、起訴 前におい ても 警察官 等の請 求に より30日の 期

限付き(更新可)で保全命令を発することができる。

3 組織的犯罪処罰法の概要

組織的犯罪処罰法は、平成8年(1996年)に FATF による「40の勧告」の改訂

に伴う前提犯罪の拡大や、FIU の設置に関する国際的合意等を契機に制定され、1

2年2月から施行された。犯罪収益規制の面では、前提犯罪を薬物犯罪以外の一定 の重大犯罪に拡大したことが特徴である。

(19)

没収 ・追 徴と 異 なり 、任 意 的な もので あるが 、刑 法の規 定に比 べて、 対象が 金 銭債 権に も拡 大 され てい る 点、 犯罪収 益の果 実と して得 た財産 等もそ の対象 と されている点及び保全手続を設けている点等において強化が図られている。

4 テロ資金提供処罰法の概要

テ ロ資 金 提供 処罰法 は、テ ロ資 金供与 防止条 約の 締結そ の他の テロリ ズムに 対

す る 資金 供 与の 防止の ための 措置 の実施 に関す る国 際的な 要請に 応える ため必 要

な国内法整備を行うことを目的として、平成14年に制定された。

同 法に お いて は、公 衆又は 国若 しくは 地方公 共団 体若し くは外 国政府 等を脅 迫

す る 目的 を もっ て行わ れる殺 人や 航空機 の強取 等の 一定の 犯罪行 為を「 公衆等 脅

迫目的の犯罪行為」と定め(第1条)、公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易に

す る 目的 で 資金 を提供 する行 為等 につい ての処 罰規 定(第 2条及 び第3 条)を 設

けている。

FATF の 第 3 次 相互 審 査 に おい て 、 資 金 以外 の い わ ゆ る物 質 的 支 援 の提 供・ 収

集 や テロ リ スト 以外の 者によ る資 金等の 収集等 が処 罰対象 とされ ていな いなど テ

ロ 対 策が 不 十分 である との評 価を 受けた ことを 踏ま え、テ ロを許 さない 国際環 境

の 醸 成 に 努 めて い く こ と が必 要 で あ る との 観 点 か ら 、FATF の 指 摘 に 対応 する た

め、26年11月にテロ資金提供処罰法が改正された。

改 正の 要 点は 、資金 以外の 土地 、建物 、物品 、役 務その 他の利 益につ いても 、

提 供 罪等 の 客体 とする ととも に、 公衆等 脅迫目 的の 犯罪行 為を実 行しよ うとす る

者 に 対し 資 金等 を提供 しよう とす る者に 対する 資金 等の提 供に係 る行為 等につ い

ても処罰対象とするものである。

5 マネー・ローンダリング関連事犯の取締り等

( 1) 犯罪収益移転防止法違反の検挙状況

犯 罪収 益移 転 防止 法に は 、特 定事業 者の所 管行 政庁に よる監 督上の 措置の 実

効性 を担 保す る ため の罰 則 及び 預貯金 通帳等 の売 買等に 対する 罰則が 規定さ れ

てい る。 特に 、 多く のマ ネ ー・ ローン ダリン グ事 犯にお いて、 他人名 義の預 貯

金通 帳等 が悪 用 され てい る こと から、 警察で は、 これら の行為 の取締 りを強 化

している。(図表1- 9参照)。

図表1- 9【犯罪収益移転防止法に係る罰則の適用状況】

注:平成20年3月1日より前にした行 為については、金融機関等本人確認 法の適用

( 2) 組織的犯罪処罰法に係るマネー・ローンダリング事犯の検挙状況

過 去10年間 におけ る組織 的犯 罪処罰 法に係 るマ ネー・ ローン ダリン グ事犯 の

検挙事件数は、図表1- 10のとおりである。 年

区分

68 30 18 32 18

851 727 1,221 1,487 1,570

25 8 22 24 17

0 0 0 1 0

944 765 1,261 1,544 1,605

平成25年

合 計

平成24年

是 正 命 令 違 反

平成21年 平成22年 平成23年

預 貯 金 通 帳 等 の 譲 渡 等 (業 )

預貯金通帳等の譲渡等(非業)

(20)

図表1- 10【組織的犯罪処罰法に係るマネー・ローンダリング事犯の検挙事件数】

注1: 括弧内は、暴力団構成員等に よるものを示す。

2 : 犯 罪 収 益 等 と は 、 犯 罪 収 益 、 犯 罪 収 益 に 由 来 す る 財 産 又 は こ れ ら の 財 産 と こ れ ら の 財 産 以 外 の 財産 と が 混

和 した財産をいう(組織的犯罪処罰法 第2条第2項から第4項)。

( 3) 麻薬特例法に係るマネー・ローンダリング事犯の検挙状況

過去10年間の麻薬特例法に係るマネー・ローンダリング事犯の検挙事件数は、

図表1- 11のとおりである。

図表1- 11【麻薬特例法に係るマネー・ローンダリング事犯の検挙事件数】

注1: 括弧内は暴力団構成員等によ るものを示す。

2 : 薬 物 犯 罪 収 益 等 と は 、 薬 物 犯 罪 収 益 、 薬 物 犯 罪 収 益 に 由 来 す る 財 産 又 は こ れ ら の 財 産 と こ れ ら の財 産 以 外

の 財産とが混和した財産をいう(麻薬 特例法第2条第3項から第5項)。

( 4) 犯罪収益の剝奪

ア 起訴前の犯罪による収益の没収保全状況

犯 罪に よる 収 益に つい て は、 犯罪 組織 の 維持 ・拡大 や将来 の犯罪 活動へ の

投資等に利用されることを防止するため、これを剝奪することが重要である。

犯罪による収益の没収・追徴は、裁判所の判決により言い渡されるが、没収・

追 徴 の判 決が 言 い渡 され る 前に 、犯 罪に よ る収 益の隠 匿や費 消等が 行われ る

こ と のな いよ う 、警 察は 、 組織 的犯 罪処 罰 法及 び麻薬 特例法 に定め る起訴 前

の没収保全措置を積極的に活用して没収の実効性を確保している。

( ア) 組織的犯罪処罰法に基づく起訴前の没収保全状況

過 去10年 間 の組 織的 犯 罪処 罰法 に基 づ く起 訴前の 没収保 全命令 の発出 件

数(司法警察員請求分)は、図表1- 12のとおりである。       年

区 分

平 成 16年 平 成 17年 平 成 18年 平 成 19年 平 成 20年 平 成 21年 平 成 22年 平 成 23年 平 成 24年 平 成 25年

5 3 5 5 10 5 8 8 8 6

(3) (2) (3) (4) (4) (1) (4) (3) (2) (6)

0 2 5 2 2 5 1 0 3 4

(0) (2) (2) (1) (1) (3) (1) (0) (2) (4)

5 5 10 7 12 10 9 8 11 10

(3) (4) (5) (5) (5) (4) (5) (3) (4) (10)

薬 物 犯 罪 収 益 等 隠 匿 (6条 )

薬 物 犯 罪 収 益 等 収 受 (7条 )

合 計

          年 区分

平成16年 平成17年 平成18年 平成19年平成20年平成21年平成22年 平成23年 平成24年 平成25年

0 0 1 0 1 0 1 1 0 2 (0) (0) (0) (0) (1) (0) (0) (0) (0) (0) 50 65 91 137 134 172 139 150 158 171 (29) (21) (18) (35) (41) (49) (46) (43) (27) (35)

15 42 42 40 38 54 65 92 80 99 (11) (27) (35) (25) (21) (41) (44) (38) (28) (40)

65 107 134 177 173 226 205 243 238 272 (40) (48) (53) (60) (63) (90) (90) (81) (55) (75) 法 人 等 経 営 支 配 (9条 )

犯 罪 収 益 等 隠 匿 (10 条 )

犯 罪 収 益 等 収 受 (11 条 )

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