非鉄金属市況と需給動向
平成29年12月(銅、亜鉛、ニッケル、金・白金)
■ベースメタル
当該期間、銅は6,734US$/tで開始。上旬はLME在庫の増加とドル高の進行が嫌気され下落 したものの、中国の11月銅輸入量が前月比40%増加したとの報道や、同国11月鉱工業生産 が市場予想を上回ったことを受けて中旬以降は上昇傾向を辿った。29日には利益確定の売り の動きが入り小幅に下落し、7,157US$/tで越年した。亜鉛も上旬はドル高の進行が下方圧 力となり軟調に推移。中旬は、Glencoreの生産再開計画の規模が予想を下回ったことを受け た供給不足懸念の高まりや、中国需要への期待感から上昇した。LME在庫の減少が続き約9 年ぶりの低水準となっていることも好材料となったものとみられ、下旬も引き続き上昇し 3,309US$/tで越年。ニッケルは、中国ステンレス鋼の需要減退が意識され、1日に
11,050US$/tと値を落としてスタート。その後は中国製造業向け需要の好調さが意識された 他、ドル安の進行やゴールドマン・サックスによる2018年世界全体GDPの強気見通しも好 材料となり上昇傾向を辿り、12,260US$/tで越年した。
■貴金属
金は1,276.4US$/oz、プラチナは937.5US$/oz、パラジウムは1,015US$/ozでスタート。 上旬は、米国の税制改革案が成立した場合には同国経済が一段と上向くことが予想される 中、利上げの可能性が意識されたことやドル高傾向からいずれも軟調に推移。中旬、プラチ ナは欧州ディーゼル社の販売比率低下傾向などを背景に下落、パラジウムは米国経済の好調 さを材料に上昇し2001年2月以来の高値を更新した。金は、中旬以降ドル安地合いが好感さ れた他、月末には米国⾧期金利の低下も材料に緩やかに上昇した。
米国経済 12月の製造業PMI改定値は55.1(前月確定値:53.9)。1/5労働省発表の12月非農業部門雇用者数は前月比+14.8 万人(前月:+22.8万人)
と市場予想の19万人増を大幅に下回った。失業率は4.1%(前月:4.1%)と低水準を維持した。
中国経済 12月製造業PMIは、国家統計局発表が51.6(前月:51.8)と下落、財新/Markit発表の速報値は51.5(前月:50.8)と上昇。
欧州経済 12月製造業PMIは、確定値60.6(前月確定値:60.1)と1997年6月の統計開始以来の高水準を記録。
(JOGMEC作成)
総括
主要非鉄金属の価格推移 (2003年5月=1)
製造業購買担当者景況指数(PMI)
0.00 2.00 4.00 6.00 8.00 10.00
M
ay
-0
3
M
ay
-0
4
M
ay
-0
5
M
ay
-0
6
M
ay
-0
7
M
ay
-0
8
M
ay
-0
9
M
ay
-1
0
M
ay
-1
1
M
ay
-1
2
M
ay
-1
3
M
ay
-1
4
M
ay
-1
5
M
ay
-1
6
M
ay
-1
7
銅 ニッケル 鉛 亜鉛 金
44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 64
20
16
/1 3 5 7 9 11
20
17
/1 3 5 7 9 11
■LME価格
① LME在庫量の増大とドル高の進行:1日、6,734US$/tで開始。中国での製造業向け需要 が好調であることが好感された様子から、4日に6,807US$/tに上昇したものの、その 後は急落し7日には6,530US$/tとなった。LME在庫量の増加とドル高の進行が嫌気さ れたものと見られる。
② 好調な中国経済と世界経済加速の見通し:翌8日、11月の中国の銅輸入量が前月比で
40%増加したと報道されたことを受け、需要の堅調さが意識されたことにより再び上 昇に転じた(6,538.5US$)。その後、中国の11月鉱工業生産が市場予想を上回ったこ と、ゴールドマンサックスが「2018年の世界全体のGDPは2017年の3.7%から2018 年には4.0%に加速する」との強気の見通しをたてたこと、ペルーMichiquillay銅プロ ジェクトの入札延⾧により供給タイト化の意識が強まったことなどが材料とみられる 影響で価格は上昇を続け、28日に3年11か月ぶりの高値(7,216US$/t)となった。29日 には、利食い売りや持ち高調整により、価格が下落したものの7,157US$/tと
7,000US$/t超で越年。
■需給動向
✍ 国際銅研究会(秋季)予測は2017年15.1万tの供給不足、2018年10.4万tの供給不足。 ✍ チリ:Antofagastaは、Centinela銅鉱山労働組合と賃金に関する新たな協定を締結し
たと発表。(12月20日)
✍ ペルー:投資促進庁(PROINVERSION)は12月20日に予定されていたMichiquillay 銅プロジェクト(Cajamarca州)の入札日を、2018年2月20日に延期することを決 定(12月20日)。ペルーでの大統領選挙に伴い、政治情勢が入札に与える影響を懸念し た複数の応札企業からの提案を受けて日程延期したもの。
銅
好調な中国経済と世界経済加速の見通しで、3年11か月振りの高値(7,216US$/t)に達する
(出典:ICSG)
当該期間の値動き
LME価格(US$) LME在庫(千t)
銅地金の需給バランスと在庫の動き
150 200 250 300 350
6,000 6,200 6,400 6,600 6,800 7,000 7,200 7,400 7,600
12
/1
12
/4
12
/5
12
/6
12
/7
12
/8
12
/1
1
12
/1
2
12
/1
3
12
/1
4
12
/1
5
12
/1
8
12
/1
9
12
/2
0
12
/2
1
12
/2
2
12
/2
7
12
/2
8
12
/2
9
亜鉛
■LME価格
① ドル高進行で軟調に推移:3,217.5US$/tで開始。中国での環境規制に伴う生産減少懸 念で一時押し上げられたが、ドル高の進行が嫌気され上旬は軟調に推移。
② 供給不足懸念と中国需要への期待感から緩やかに上昇:中旬は、Glencoreの生産再開
計画の規模が予想を下回ったことを受けた供給不足懸念の高まりや、14日に発表され た中国11月鉱工業生産が市場予想を上回る底堅さだったことを受けた同国需要への期 待感の高まりから緩やかに上昇した。
③ 世界経済成⾧への期待と在庫の減少が好材料に:下旬は、ゴールドマン・サックスが
2018年の世界全体のGDP成⾧率は4.0%となるとの強気の見通しを示したことや、ド ル安の進行が好感され続伸。LME在庫の減少が続き、約9年ぶりの低水準となっている ことも好材料となったものとみられ、3,309US$/tで越年。
■需給動向
✍ 国際鉛亜鉛研究会(秋季)の予測では2017年は39.8万tの供給不足、2018年は22.3万t
の供給不足。
✍ 主要鉱山操業状況:Nyrster社は加・Myra Falls鉱山(30万t/年)や米国・Middle Tennessee鉱山(50万t/年)で操業再開。Rampura-Agucha鉱山やAntamina鉱山も 高品位鉱体開発により増産。Teck社はRed Dog鉱山の亜鉛生産量について今後5年間 は525~550千t/年に達する見通し及びマインライフ延⾧を発表(2017年9月18日)。 MMG社は豪・Dugald River鉱山の鉱石出荷開始を発表(同11月8日)、また豪・ Century鉱山の尾鉱からの亜鉛採掘計画を発表(同11月28日)。GlencoreはLady Loretta鉱山の2018年上半期再開計画を発表(同12月12日)。
中国需要・世界経済成⾧への期待感とLME在庫減少を受けて3,300US$/tを超える
当該期間の値動き
LME価格(US$) LME在庫(千t)
SHFE在庫(t) SHFE在庫の推移
(2017年1月~2017年12月)
150 200 250 300 350 2,500 2,700 2,900 3,100 3,300 3,500 12 /1 12 /4 12 /5 12 /6 12 /7 12 /8 12 /1 1 12 /1 2 12 /1 3 12 /1 4 12 /1 5 12 /1 8 12 /1 9 12 /2 0 12 /2 1 12 /2 2 12 /2 7 12 /2 8 12 /2 9
LME在庫 LME価格
0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 20 17
年
1月
20
17
年
2月
20
17
年
3月
20
17
年
4月
20
17
年
5月
20
17
年
6月
20
17
年
7月
20
17
年
8月
20
17
年
9月
20
17
年
10
月
20
17
年
11
月
20
17
年
12
ニッケル
■LME価格
① 米国税制改革法案上院通過を背景としたドル高進行などから下落:中国ステンレス鋼の
需要減退が意識され、1日に11,050US$/tと値を落としてスタート(前日11/30は 11,295US$/t)。4日には、中国製造業向け需要の好調さが好感され、11,330US$/t まで値を戻したが、5日以降、米国税制改革法案の上院通過を背景としたドル高進行等 から下落、7日には当該期間最安値の10,795US$/tまで値を落とした。
② 中国需要の底堅さや世界経済成⾧への期待感などから上昇:中国の11月銅輸入量増加
との報道から、同国ベースメタル需要の堅調さが好感されたものと見られ、8日には ニッケルも上昇傾向に転じた。中旬以降も、14日発表の中国11月鉱工業生産が市場予 想を上回ったことのほか、ドル安の進行も好感され続伸、ゴールドマン・サックスによ る2018年世界全体GDPの強気見通しも好材料となったものと見られ、22日には
12,050US$/t まで上昇。
③ 一時値を下げたものの在庫減少などから回復:LME休場明けの27日には11,840US$/t と一時値を落としたものの翌日には回復、LME在庫の減少も材料となり、29日には 12,260US$/tと11月中旬以来の高値を付けて越年した。
■需給動向
✍ 国際ニッケル研究会(秋季)の予測では2017年は9.7万tの供給不足、2018年は5.3万t
の供給不足。
✍ 主要鉱山操業状況:フィリピンニッケル鉱山生産者8社に操業停止命令(2016年7月7日
~8月11日)、フィリピンニッケル鉱山生産者15社を含む20社に操業停止勧告(2016年9 月27日)。フィリピン環境天然資源省が国内23鉱山の閉鎖・5鉱山の生産一時停止を命令 (2017年2月2日)。ValeがカナダBirchtree鉱山閉鎖計画を発表(2017年5月17日)。 First Quantum Mineralsが豪Ravensthorpe鉱山の9月閉鎖を発表(2017年8月11日)
✍ フィリピン新環境天然資源大臣にRoy Cimatu氏を任命(2017年5月8日)
ドル高進行から値を下げた後、中国需要の堅調さや世界経済成⾧見通しなどから上昇
当該期間の値動き
LME価格(US$) LME在庫(千t)
(出典:INSG)
需給バランス / LME在庫(千t)
340 360 380 400 420 440
10,000 10,500 11,000 11,500 12,000 12,500 13,000
12
/1
12
/4
12
/5
12
/6
12
/7
12
/8
12
/1
1
12
/1
2
12
/1
3
12
/1
4
12
/1
5
12
/1
8
12
/1
9
12
/2
0
12
/2
1
12
/2
2
12
/2
7
12
/2
8
12
/2
9
LME在庫 LME価格
(15) (10) (5) 0 5 10
需給バランス
金・プラチナ・パラジウム
■金
① 米国税制改革法案の成立見通しを背景としたドル高などから下落:当該期間
1,276.4US $/ozでスタート、12月上旬は米国の税制改革案が成立した場合には同国 経済が一段と上向くことが予想される中、利上げの可能性が意識されたことやドル高 傾向から軟調に推移。13日には、本年7月以来の安値となる1,242.1US$/ozまで下 落。
② ドル安傾向に下支えされ上昇傾向辿る:12月半ば以降は、ドル安傾向により割安感が
出たことが支援材料となり、1,250~1,260US $台で堅調に推移した。27日には約 1ヵ月ぶりの1,280US$台となる1,282.4US$/ozをつけ、月末には米国⾧期金利の低 下を材料に、またドル安地合いも引き続き好感されたものと見られさらに続伸、約 2ヵ月半ぶりの高値となる1,296.5US$/ozで越年した。
■プラチナ・パラジウム
① プラチナ:ドル高傾向から軟調推移、中旬以降は回復:プラチナは937.5US$/ozで
スタート。金同様、ドル高傾向から軟調推移し、13日には欧州ディーゼル車の販売比 率低下傾向などを背景に877US$/ozと1年10ヵ月ぶりの安値を付けた。中旬以降はド ル安に転じたことを材料に回復、19日には900US$台をつけ、その後も続伸し
927US$/ozで越年した。
② パラジウム:米国経済の好調さを背景に高値水準を維持:パラジウムは
1,015US$/ozでスタート。自動車排ガス触媒需要が8割を占め産業用途が多いパラジ ウムは、米国経済の好調さを材料に引き続き2001年2月以来の高値水準を維持。中旬 以降はドル安を材料に緩やかに上昇し、27日には1,057.5US$/ozと2001年2月以来 の高値を更新、1,056US$/ozで越年した。
ドル高進行で軟調推移も後半回復、パラジウムは2001年2月以来高値へ上伸
当該期間の値動き(US$/oz)
(European Central Bank)
ユーロに対する為替の値動き (米ドル・南アランド)
(US$/€) (R/€)
850 950 1,050 1,150 1,250 1,350
12
/1
12
/4
12
/5
12
/6
12
/7
12
/8
12
/1
1
12
/1
2
12
/1
3
12
/1
4
12
/1
5
12
/1
8
12
/1
9
12
/2
0
12
/2
1
12
/2
2
12
/2
7
12
/2
8
12
/2
9
金 プラチナ パラジウム
14.6 14.9 15.2 15.5 15.8 16.1 16.4
1.16 1.18 1.20 1.22
12
/1
12
/8
12
/1
5
12
/2
2
12
/2
9
USD ZAR
銅
亜鉛
ニッケル
金
プラチナ
パラジウム
LME現物 LME現物 LME現物 AM・PM平均 AM・PM平均 AM・PM平均
(US$/t) (US$/t) (US$/t) (US$/oz) (US$/oz) (US$/oz)
本報告期 期 初 6,734.0 3,217.5 11,050.0 1,276.4 937.5 1,015.0
期 末 7,157.0 3,309.0 12,260.0 1,296.5 927.0 1,056.0
最高値 7,216.0 3,309.0 12,260.0 1,296.5 937.5 1,057.5
12月28日 12月29日 12月29日 12月29日 12月1日 12月27日、28日
最安値 6,530.5 3,094.0 10,795.0 1,242.1 877.0 993.5
12月7日 12月8日 12月7日 12月13日 12月13日 12月6日
平 均 6,801.2 3,192.5 11,409.2 1,264.6 906.9 1,020.9
先物
(12月29日) Dec 13か月 7,192.0 3,288.5 12,305.0 -- -- --
Dec 2 - - -
2017年 期 初 5,574.0 2,552.5 10,205.0 1,149.8 917.5 695.0
(当年) 期 末 7,157.0 3,309.0 12,260.0 1,296.5 927.0 1,056
最高値 7,216.0 3,370.0 12,830.0 1,348.6 1,029.5 1,057.5
12月28日 10月4日 11月6日 9月8日 2月27日 12月27日、28日
最安値 5,466.0 2,434.5 8,715.0 1,149.8 877.0 695.0
5月8日 6月7日 6月2日 1月3日 12月13日 1月3日
平 均 6,166.0 2,895.9 10,411.3 1,257.6 948.5 869.8
2016年 期 初 4,645.0 1,600.0 8,515.0 1,077.5 885.5 550.0
(前年) 期 末 5,501.0 2,563.0 10,100.0 1,159.1 917.5 695.0
最高値 5,935.5 2,907.0 11,735.0 1,361.7 1,179.5 770.5
11月28日 11月28日 11月11日 8月3日 8月10日 12月1日
最安値 4,310.5 1,453.5 7,710.0 1,077.5 815.5 467.5
1月15日 1月12日 2月11日 1月4日 1月21日 1月12日
平 均 4,863.1 2,083.2 9597.6 1,248.2 987.0 612.5