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予測精度とデータ同化111024pdf 最近の更新履歴 SFJ

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2011/10/24

「予測精度が高まるデータ同化」

統計数理研究所 樋口知之

【データ同化とは】

科学研究を推進する上で、 理論 と 実験 が駆動力として重要であることは言うまで もありませんが、1970年代、80年代からスーパーコンピュータが大規模計算のインフラと して登場し、シミュレーションが第3の科学として欠かすことのできない存在となりまし た。1990年代頃になるとエルニーニョ現象などの異常気象が問題視され始め、人工衛星に より地球に関するデータが豊富に得られるようになってきたことから、気象や海洋に関す る大量のデータと気象予報に使うシミュレーションを一体的に使う研究が始まりました。 データ同化とは、シミュレーションと大量のデータ処理とを結合する軸のような役割を果 たす計算技術です。

【どうしてデータ同化が必要?】

気象予報をしようとする場合、空間は 3次元ですが、そこに時間軸を入れると4次元と なります。その一つ一つの次元の精度を2倍にすると、4次元では16倍の精度が要求され ますが、コンピュータの発達の速度を考えても、すぐに16倍の精度を満足させようとして も難しいのです。今までの研究の進め方は、シミュレーションはシミュレーションで精度 をよくすることを目指し、データはできる限り詳細かつ大量にとりましょうということで 別々に行われていた。ただ、効率よく予測性能を上げるためには、その両方を一体化する ほうが当然良い。そこの認識が欠けていたのです。計測も計算もそれぞれ進歩はしていま すが、それだけではダメで、限界が常につきまといます。両方を併せることで、限界を打 破するものが見えてくる。

シミュレーション計算は、既知の基礎的な方程式を解いていくといくことで、知識が内 的にあると言えます。その知識とデータとを一体化することで、インスピレーションのよ うに、予測に欠けていた視点がパッと見えてくることがあります。そこをデータ同化は目 指すのです。これは気象・海洋現象の解明にとどまらず、ゲノム解析などのライフサイエ ンス、あるいは「ものづくり」などシミュレーションと大量のデータ解析を扱う分野で、 データ同化計算に関する知識や考え方を広めていけば、今まで進展の遅かった分野にブレ ークスルーを与え、一挙に進める可能性を秘めています。

【データ同化で何かできる?】

地球環境問題においては、データ同化によって予測精度を高めることができます。予測 精度を高める作業を通して、計測なり、シミュレーションの弱点が見えてきます。コンピ ュータの計算リソースを最大限に生かそうとすれば、どこにそれを投下すべきか。重要性 のあるところに集中して、計算させるべきなのです。

最初から研究戦略にデータ同化のイメージがあれば、より効率的に研究費を使えるかも しれません。海洋観測ですでに実現されているのですが、赤道あたりの海の鉛直方向の温

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度分布が重要だとなれば、そこを、集中的にデータをとる。人間に神経の集まっている つ ぼ があるように、情報にもツボがあって、シミュレーション結果に非情に利く部分があ る。シミュレーションとデータをつき合わせて、その結果を次に活かす際に、最初からそ の結果に大きく影響を与えるところを集中的に、観測を行えばよいことになります。あま り意味のないところは最初からカットできます。

データ同化はもちろん社会科学の問題にも適応できます。人間の標準的な行動モデルを いくら精密化しても意味がない。人間は多様性があり、その部分を計算できる形でどう表 現するかといったら、データから読み解くしかない。それを順問題のみで解けるわけがあ りません。データから逆問題的に学び、順問題できちんと突き詰めるのです。

【データ同化研究に必要な人材】

データ同化では異なる研究アプローチをつなげるわけですから、その実現にあたっては コミュニケーション能力が大切です。計測分野の人、シミュレーションの計算をする人、 統計科学を扱う大規模数値計算をする人、少なくともその 3 分野の人たちがいなければ、 データ同化はできません。ミュレーションは代入計算の繰り返しです。子どもの頃から方 程式の解法などは叩き込まれていますが、それは演繹的な考え方です。一方データ解析は 帰納法です。つまり、シミュレーションは順問題でデータ解析は逆問題。それぞれ得意な 人が異なるのです。

さらに悪いことに、これまであまり逆問題に強い人間を養成してこなかった。これが大 きくいえば、日本の産業全体が沈滞ムードにあるひとつの原因と私はみています。日本で 統計学科のある大学等は本研究所のみですが、世界では主要大学に統計学科がないことの ほうがまれです。統計科学はつなぐ学問ですので、広い意味でコミュニケーション能力が 研究者に求められます。学問と学問、学術と社会、情報と情報、あるいは人と人をつなぐ といった具合に。今の日本は、しっかりとしたコミュニケーション能力を持つ人が少ない からニーズをなかなか堀起こすことができないのではないでしょうか。

限界を超えるとか、閉塞感の打破のためには、「つなぐ」ことしかないと考えています。

参考文献

樋口知之、統計数理は隠された未来をあらわにする:ベイジアンモデリングによる実世界 イノベーション(監修・執筆)、東京電気大学出版局, 2007.

樋口知之、予測にいかす統計モデリングの基本―ベイズ統計入門から応用まで、講談社、 2011.

樋口知之、データ同化入門−次世代のシミュレーション技術−(編集・執筆)、朝倉書店 、 2011.

参照

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