ポイントチェック
⑴ 蒸気圧降下……不揮発性の溶質を溶かした溶液の蒸気圧は,純溶媒の蒸気圧より低くなる現象。
⑵ 沸点上昇・凝固点降下…不揮発性の物質が溶けた溶液では,純粋な 溶媒より沸点は(ア )し,凝固点は(イ )する。溶媒と 溶液との沸点の差を沸点上昇度(Dt),凝固点の差を凝固点降下度
(Dt)という。
⑷ 沸点上昇・凝固点降下・浸透圧の溶質が電解質の場合:これらの現象は,溶質粒子の総物質量 に依存する。電解質の場合,電離して生じたイオンを含めた濃度に比例する。
例:0.1 mol/kgのCaCl2水溶液 C
0.1mol aCl2→ C
0.1mol a2++2
0.2mol
Cl- 完全に電離した場合,溶質粒子は0.3 mol/kgとなり, D t,P は非電解質水溶液の場合の3倍になる。
■解答 ア.上昇 イ.降下 ウ.質量モル濃度 エ.モル濃度 オ.絶対温度 カ.nRT
⑶ 浸透圧
⒜ 半透膜:溶媒などの小さい粒子は通すが,大きな溶 質粒子は通さない膜。例:セロハン,ぼうこう膜
⒝ 浸透:溶媒粒子が,半透膜を通って溶液側に移動す る現象。
⒜ 沸点上昇度,凝固点降下度… 非電解質溶液では,溶質の種類に関 係なく,溶液の(ウ )に 比例する。
D t=Km
D t:沸点上昇度(凝固点降下度)〔K〕 K: モル沸点上昇(モル凝固点降下)
〔K・kg/mol〕
溶媒1 kgに溶質1 molを溶かしたと きの,沸点上昇度(凝固点降下度) m:質量モル濃度〔mol/kg〕
⒞ 浸透圧:半透膜を通って溶媒が溶 液中に浸透するのを防ぐために溶液 側に加える圧力。
浸透圧 P は溶液の(エ )Cと
(オ )Tに比例し、 気体定数 をRとするとP=CRTと表すこと ができる。ここでC=Vn 〔mol/L〕 であるから,PV=(カ ) とも表される。
⒝ 溶質の分子量の求め方 溶媒の質量をW〔g〕, 溶質の質量をw〔g〕,溶 質の分子量をMとする
と,質量モル濃度mは,次のように表される。
m W
M w mol
M W w
1000
1000 kg #
= = #
] ]
g g
これをDt =Kmに代入すると M= 1000Dt W:K w:
⒟ 浸透圧による溶質の分子量の求め方 溶質の質量をw〔g〕,分子量をMとすると, 溶質の物質量n=Mw 〔mol〕となり
これを⒞の式に代入し,変形すると M=wRTPV となる。
5.希薄溶液の性質
温
度
溶液の沸点 沸点上昇度 Dt 純溶媒の沸点
純溶媒の凝固点 凝固点降下度 Dt 溶液の凝固点
半透膜 浸透 溶媒
溶媒溶質 溶液
半透膜 浸透 浸透圧に相当
溶媒 溶液
〔基本問題〕
46.(希薄溶液の性質)次の文の空欄に適する語を記入せよ。
⑴ ある不揮発性の溶質が,ある溶媒に溶けているとき,その溶液の蒸気圧は純粋な溶媒に比
― 24 ― 第1章 物質の状態
べて(
ア)くなる。これは溶液の場合,単位時間に蒸発する溶媒分子の数が溶媒だけ
の場合に比べて(
イ)なるからである。溶液が沸騰するということは,溶液の飽和蒸
気圧が外圧と(
ウ)なり,溶液内部からも蒸発が起こることである。したがって溶液
の沸点は,溶媒に比べて(
エ)くなる。
⑵ ある溶液と溶媒とを(
オ)膜で仕切ると(
カ)は膜を通って(
キ)の中
に入りこもうとする。この現象を(
ク)という。(
ケ)が入りこむのを止めるには,
溶液側に圧力を加えなければならない。この圧力を(
コ)といい,溶液1 L中に含ま
れる(
サ)の物質量に比例する。また,(
シ)にも比例する。
47.(沸点上昇度)右図は,水 500 gにスクロース 34.2 gを溶かしたスクロース溶液,水 500 gに
グルコース 27.0 gを溶かしたグルコース溶液および水の蒸気圧曲線で
ある。スクロースおよびグルコースの分子量を,それぞれ 342,180
として,次の各問いに答えよ。
⑴ スクロース溶液とグルコース溶液の質量モル濃度を求めよ。
⑵ スクロース溶液の蒸気圧曲線はA,Bのうちどちらか。
⑶ 水のモル沸点上昇を 0.520 K・kg/molとするとa,bは何℃になるか。
48.(電離と凝固点降下)次の物質 1gを,それぞれ水 200 gに溶かした水溶液がある。凝固点が
最も低いものと最も高いものはどれか。ただし,電解質は完全に電離するものとする。また, ( )
の中は分子量または式量を表している。
ア グルコースC
6H
12O
6(180) イ 塩化カリウムKCl(74.5)
ウ 尿素CO (NH
2)
2(60) エ 塩化マグネシウムMgCl
2(95)
49.(浸透圧)右図のように,デンプン水溶液と水をセロハン膜で隔てて放置すると,デンプン
水溶液側に水が移動し,デンプン水溶液の液面が上昇した。水面とデ
ンプン水溶液の液面の高さの差が,ある値hになったときにこの液面
の上昇が停止した。次の各問いに答えよ。
⑴ セロハン膜のように小さい分子のみを通すような性質をもつ膜を
何というか。
⑵ 両液の液面の高さの差に相当する圧力を何というか。
⑶ デンプン水溶液の濃度を大きくすると,hの高さはどう変化するか。
50.(逆浸透法)図に示すような装置を利用して,海水から純粋な水を
取り出すには,どのような操作を行えばよいか。50字程度で答えよ。
セロハン膜 水
水溶液 デンプン h
半透膜 溶液 溶媒
5.希薄溶液の性質 ― 25 ―
〔標準問題〕
51.(凝固点降下・沸点上昇と分子量)次の各問いに答えよ。ただし,水のモル凝固点降下は
1.86 K・kg/molとする。
⑴ 水500 gにグルコースC
6H
12O
6(分子量180)60.0 gを溶かした溶液の凝固点は何℃か。
⑵ 水200 gに塩化ナトリウム(式量58.5)1.17 gを溶かした溶液の凝固点は何℃か。ただし,
塩化ナトリウムは完全に電離しているものとする。
⑶ 硫黄の結晶5.35 gを二硫化炭素(CS
2)100 gに溶かした溶液は,46.8 ℃で沸騰した。二硫
化炭素の沸点を46.3 ℃,モル沸点上昇を2.40 K・kg/molとして,次の①②に答えよ。
①この硫黄の分子量はいくらか。
②この硫黄の分子式は次のどれか。
ア S イ S
2ウ S
4エ S
6オ S
852.(浸透圧)ヒトの血液の浸透圧は 37℃で 7.5 × 10
5Pa である。同じ温度でヒトの血液と浸
透圧が等しい食塩水を生理食塩水といい,麻酔薬や注射剤の希釈,傷口の洗浄などに用い
られる。生理食塩水 1.0 L に含まれる塩化ナトリウムの質量は何 g か。ただし,気体定数
R=8.3 × 10
3Pa・L/(mol・K),NaCl の式量は 58.5 とする。
53.(過冷却)次の文章中のア〜オに適切な語句を記入し,以
下の各問いに答えよ。
ある純溶媒の冷却曲線は右図のAのように表される。この
溶媒にある非電解質を溶かした後,この溶液をゆっくりと冷
却したところ,右図のBの冷却曲線が得られた。
これら2つの冷却曲線にみられるように,凝固点以下の温
度になっても凝固しない現象を(
ア)という。また,
純溶媒に比べて溶液の凝固点が低くなる現象のことを
(
イ)といい,非電解質の希薄溶液では,その低
下の度合いは溶液の質量モル濃度に比例する。このとき,その比例定数は(
ウ)の種類
に関係せず,(
エ)の種類によって決まる。
ⅡからⅢ,あるいはⅡ'からⅢ'において温度は急激に上昇する。その後,溶液ではⅢ'から温
度が下がりながら凝固が進む。これは溶液中の(エ)だけが先に凝固し,残った溶液の濃度が
(
オ)なるためである。
⑴ この溶液の凝固点は図中のa,b,c,dのどれか。記号で答えよ。
⑵ 下線部の理由を,15字以内で記せ。
⑶ この溶液の凝固点降下度を記号a〜eを使って表せ。
温度
冷却時間
a
Ⅱ '
Ⅲ'
Ⅱ'
Ⅲ A
B
― 26 ― 第1章 物質の状態
さらに温度を上げなくてはならない(右図③)。した がって,溶液の沸点は上昇することになる。
⑵半透膜とは,小さな溶媒粒子は通すが,大きな溶質 粒子は通さない膜。(例:セロハン,ぼうこう膜)溶 液(溶媒+溶質)と純溶媒とを半透膜で仕切ると半透膜 を隔てて,純溶媒側から溶液側へ通り抜ける溶媒分子 の単位時間当たりの移動量が,逆向きの移動量より大 きくなり,見かけ上純溶媒中の溶媒分子が半透膜を 通って溶液の中に入り込もうとする現象が起こる。こ の現象を浸透というが、溶媒が溶液側に入り込もうと するのを止めるには,溶液側にある圧力を加えなけれ ばならない。この圧力を浸透圧という。
ファントホッフの法則PV=nRT
P〔Pa〕:浸透圧,V〔L〕:溶液の体積,n〔mol〕: 溶質の物質量
R〔Pa・L/(mol・K)〕:気体定数,T〔K〕:絶対温度 したがって,浸透圧Pは,溶質の物質量nに比例, 絶対温度Tに比例する。
47.⑴スクロース溶液 0.200 mol/kg, グルコース溶液 0.300 mol/kg
⑵A
⑶ a 100.104 ℃ b 100.156 ℃
〔解説〕(1)スクロース溶液:
質量モル濃度〔mol/kg〕=溶質の物質量溶液の質量]]kgmolgg =
.
1000 500 342 34 2
kg
mol=0.200 mol/kg
グルコース溶液:
質量モル濃度〔mol/kg〕=溶質の物質量溶液の質量]]kgmolgg =
.
1000 500 180 27 0
kg
mol=0.300 mol/kg
⑵溶液の質量モル濃度が大きいほど,蒸気圧降下が 大きくなる。⑴より,質量モル濃度は,グルコース溶 液よりスクロース溶液の方が小さい。したがって,ス クロースの蒸気圧曲線は,蒸気圧降下の小さい方の Aである。
蒸気圧
1013
〔hPa〕
水
・Aの蒸気圧降下
A B
100 a b
蒸気圧
1013
〔hPa〕
水
・Bの蒸気圧降下
A B
100 a b
⑶沸点上昇度 D t = Kbm Kb:水のモル沸点上昇, m:質量モル濃度,スクロース,グルコースともに
非電解質であるのでmに溶質の濃度をそのまま代 入してよい。
スクロース水溶液D t=Kbmに代入して
D t=0.520 K・kg/mol×0.200 mol/kg=0.104 K この温度は水の沸点(100 ℃)に比べて上昇する温 度であるから,スクロース水溶液の沸点は,a= 100+0.104=100.104 ℃
グルコース水溶液 D t=Kbmに代入して D t=0.520 K・kg/mol×0.300 mol/kg=0.156 K したがって,グルコース水溶液の沸点は, b=100+0.156=100.156 ℃
48.最も低いものエ,最も高いものア
〔解説〕凝固点降下度 D t=Km の式において,m(溶 液中の粒子の質量モル濃度)が大きいほど,D tも大き くなり凝固点は低くなる。また,沸点上昇・凝固点降 下は,溶質粒子の総物質量に依存する。つまり,電 解質の場合,電離するためイオンの総物質量で考え なければならない。
ア C6H12O6の構成元素は,すべて非金属元素(C,H,O) なので,分子からなる物質である。したがって,電離 しないので,分子の物質量で考える。
m〔mol/kg〕=
kgmol 溶媒の質量 溶質の物質量
] ]
g
gより,
k g m o l m
1000 200 180
1
180
= = 1 ×5 mol/kg
イKClの構成元素は,金属元素(K)と非金属元素
(Cl)である。したがって,イオン結晶からなる電解 質で,次のように電離する。K
(1mol)Cl → K1mol
+ + C
1moll
-
イオンの総物質量である2倍で考える。
kg . mol m
1000 200
1 2
1 74 5
37
# ]
= ×5 mol/kg
ウCO(NH2)2の 構 成 元 素 は, す べ て 非 金 属 元 素
(C,H,O,N)なので,分子からなる物質である。した がって,電離しないので,分子の物質量で考える。
kg mol m
1000 200
1
1 60
= =60×5 mol/kg
エMgCl2の構成元素は,金属元素(Mg)と非金属元 素(Cl)である。したがって,イオン結晶からなる 電解質で,次のように電離する。MgCl2 → Mg2+
+ 2Cl- イオンの総物質量である3倍で考える
kg mol m
1000 200 1 3
1 95
32
# ]
= ×5 mol/kg
質量モル濃度が最も大きいエが凝固点降下度も大き
― 18 ― 解 答 編
く,凝固点が最も低い。質量モル濃度が最も小さい アが凝固点降下度も小さく,凝固点が最も高い。
〔別解〕物質はすべて水 200 gに溶かしているの だから,質量モル濃度を 計算する必要はない。そ れぞれの物質量(mol)だ けで比較すればよい。
ア1801 mol イ74 51. # ]2 371 mol ウ601 mol
エ951 # ]3 321 mol
物質量が一番大きいのはエ,物質量が一番小さいの はアである。
49.⑴半透膜 ⑵浸透圧 ⑶高くなる。
〔解説〕⑴水(溶媒)は小さい粒子で,デンプンは大 きな粒子である。水のような小さい溶媒分子のみを 通すのは半透膜である。
⑵
⑶PV=nRTにおいて,濃度を大きくする(nを大 きくする)と浸透圧Pも大きくなる。浸透圧Pが大 きくなるということは,水がより多く浸透するため, hの高さは高くなる。
50.海水を溶液側に,純水を溶媒側に入れ,溶液 側から浸透圧より大きい圧力を加えると,溶媒側に 純水が得られる。(句読点含み51字)
〔解説〕海水を溶液側,純水を溶媒側に入れたまま だと,溶媒側から溶液側に水分子が浸透する。この 浸透を防ぐには,溶液側に浸透圧をかけなければな らないが,浸透圧より大きい圧力を加えると,溶液 側から溶媒側に水分子が浸透する。この方法を逆浸 透法といい,実際に海水から淡水を得る方法として 利用されている。
51.⑴-1.24 ℃ ⑵-0.372 ℃ ⑶①257,②オ
〔解説〕沸点上昇度,凝固点降下度はD t=Km
⑴D tを求める 質量モル濃度mは m〔mol/kg〕= .
. 0 50 180 60 0
kg
mol=32 mol/kg
∴ D t=Kfm より
D t=1.86 K・kg/mol×32 mol/kg = 1.24 K 水の凝固点は 0 ℃で,溶液の凝固点は 0 ℃よりさ らに 1.24 K下がるので
凝固 点 降下 度
0℃水の凝固点 の凝固点
の凝固点 MgCl2 C6H12O6
液面の高さの差に よる圧力=浸透圧 h
∴0-1.24=-1.24 ℃
⑵NaClは,NaCl → Na++Cl-のように完全に電 離するので,イオンの総物質量は2倍になる。質量 モル濃度mは
m〔mol/kg〕= .
. 2
1000 200 58 5 1 17
kg mol
#
=0.200mol/kg 凝固点降下度D t=Kfmに代入して
D t=1.86 K・kg/mol×0.200 mol/kg=0.372 K したがって,凝固点は, 0 K-0.372 K=-0.372 ℃
⑶①モル質量をM〔g/mol〕,硫黄の質量をw〔g〕, 二硫化炭素の質量をW〔g〕とすると,質量モル 濃度mは,
m W
M w
MW w 1000
= =1000
沸点上昇の式 D t=Kbm に上の式を代入し D t=Kb×1000MWw=1000MWK wb
M=1000Dt・K wWb =1000 2 40(#46 8. K. K kg/mol−・46 3. K)##1005 35.g g =256.8≒257 g/mol 分子量に単位はない ので257
②硫黄の分子式をSxとするとS=32 M=32x M=257だから 32x=257 ∴x≒8 したがっ て,S8
52.8.5g
〔解説〕浸透圧も,溶質粒子の総物質量に依存する。 NaClは電解質で
(1mol)NaCl → N1mola
+ + C
1moll
- のように電離するので, イオンの総物質量は2倍になる。
生理食塩水のNaClのモル濃度を x 〔mol/L〕とする と,イオンのモル濃度は 2 x 〔mol/L〕となる。 浸透圧P=CRTより,P=2x×R×T
したがって,7.5×105=2x×8.3×103×(273+37) x=0.1457≒0.146 mol/L
NaCl=58.5より,生理食塩水1.0 L中のNaClの質量は, 0.146 mol/L×1.0 L×58.5 g/mol=8.54≒8.5 g
〔別解〕PV=nRTにおいて,V=1.0 L,n=2x〔mol〕 だから
7.5×105 Pa×1.0 L= 2x×8.3×103 Pa・L/(mol・K)
×(273+37)K x=0.1457≒0.146 mol
0.146 mol×58.5 g/mol=8.54≒8.5 g 53.ア過冷却 イ凝固点降下 ウ溶質
エ溶媒 オ大きく(高く)
⑴c
⑵多量の凝固熱を放出するから。(句点含み14
― 19 ― 解 答 編
ポイントチェック
解答 ア.NH3 イ.黄おうりょく緑 ウ.下方 エ.腐卵 オ.弱塩基 カ.赤褐 キ.NH3 ク.ソーダ石灰
7.気体の発生
気体の 法 水に溶けるか溶けないか,空気より いか いかで決まる。 ある気体
気体の製法と性質 :よく溶ける :溶ける : し溶ける ×:溶けない
化学反応の 理
① 弱酸(または弱塩基)の塩に強酸(または強塩基)を作用させて, 弱酸(弱塩基)を発生させる。
(弱酸の 離,弱塩基の 離)
② 揮発性の酸の塩に不揮発性の酸(濃硫酸)を加え加熱し,揮発性の酸を 離させる。
③ 酸化還元反応を利用して発生させる。
④ 水反応を利用して発生させる。
気体の 捕集する気体と中和反応や酸化還元反応を起こさない乾燥剤を選 。 水に溶けにくい
水に溶けやすい
水上置 例:H2,O2,CH4
空気より い 空気より い
(分子量が空気の 分子量(29)より小さい)
(分子量が空気の 分子量(29)より大きい)
上方置 例:(ア )のみ 下方置 例:Cl2,CO2,HCl
気体 H2 O2
Cl2
HCl H2S SO2
NH3
NO NO2
CO2
CO
分子量 2 32 71 36.5
34 64 17 30 46 44 28
捕集法 水上 水上
(ウ ) 下方 下方 下方 上方 水上 下方 下方 水上
反応の理 臭い色
無色無臭 無色無臭
(イ )色 刺激臭無色 刺激臭無色
(エ )臭 刺激臭無色 刺激臭無色 無色---
(カ )色 刺激臭無色
無臭無色 無臭
水溶性液性 中性× 中性×
酸性 強酸性 弱酸性 弱酸性
(オ )性 中性×
強酸性 弱酸性× 中性
M O2
H2SO4
H2SO4→ SO4 H2 2H2O2→2H2O O2
M O2 4HCl→M Cl2 2H2O Cl2
NaCl H2SO4→NaHSO4 HCl F S H2SO4→F SO4 H2S C 2H2SO4→C SO4 2H2O SO2
2NH4Cl Ca(OH)2→CaCl2 2H2O 2NH3
3C 8HNO3→3C(NO3)2 4H2O 2NO C 4HNO3→C(NO3)2 2H2O 2NO2
CaCO3 2HCl→CaCl2 H2O CO2
HCOOH→H2O CO
気体発生の化学反応式
酸性の 気 体 中性の 気 体 塩基性 の気体
気体の種類 適する乾燥剤・適さない乾燥剤
酸性の濃硫酸,酸性酸化物のP4O10,中性のCaCl2を使用する。
(濃硫酸(酸化剤)はH2S(還元剤)と酸化還元反応を起こすので不 ) すべての乾燥剤(P4O10,CaCl2, ー 石灰,CaO,濃硫酸)を使用できる。 塩基性の(ク ),塩基性酸化物のCaOを使用する。
(CaCl2はNH3と反応し,CaCl2・8NH3となるので使用不 ) Cl2,H2S,HCl
CO2,NO2,SO2
H2,N2,O2
CO,NO NH3 固体
液体
酸 性 中 性 塩基性 酸 性
乾 燥 剤 適さない気体
酸化 リン(P4O10) 塩化カルシウム(CaCl2)
ー 石灰(CaO NaOH) ,酸化カルシウム(CaO) 濃硫酸(H2SO4)
塩基性の気体
(キ ) 酸性の気体 塩基性の気体,H2S
7.気体の発生 ― 89 ―
〔基本問題〕
155.(気体の性質・製法)次の⑴〜⑸の性質・製法の気体を,下の物質群のうちから1つずつ選
び化学式で答えよ。また,下線部を化学反応式で表せ。
⑴ 黄緑色で刺激臭のある気体で,酸化マンガン(Ⅳ)に濃塩酸を加えて加熱すると生じる。
⑵ 希硝酸に銅を入れると発生する無色の気体。空気中で直ちに赤褐色の気体に変化する。
⑶ 過酸化水素の水溶液に酸化マンガン(Ⅳ)を加えてつくる。この気体に紫外線を照射すると,
オゾンが発生する。
⑷ 大気中に0.04%含まれており,水に溶けて弱酸性を示す。石灰石に希塩酸を作用させると
発生する。
⑸ 白金製の容器中で,ホタル石 CaF
2に濃硫酸を加え加熱する。この気体は水に溶けて弱酸
性を示す。
物質群 塩素 二酸化炭素 一酸化窒素 酸素 フッ化水素
156.(気体の性質)次のア〜スの文は,下の物質群のうちどの気体について述べたものか。それ
ぞれ1つずつ選び,化学式で答えよ。
ア 淡青色で特異臭を持ち,強い酸化作用があるので,漂白・殺菌に用いられる。湿ったヨウ
化カリウムデンプン紙を青くする。
イ 無色刺激臭の気体で毒性があり,水に溶けて弱い酸性を示す。還元力をもち,色素を漂白する。
ウ 無色で水に溶けにくい。酸素と反応すると,すぐ赤褐色の気体になる。
エ 黄緑色で刺激臭をもち,水に溶け,酸化力が強い。
オ 無色無臭で,石灰水を白濁させ,水に溶けて弱い酸性を示す。
カ 無色刺激臭の気体で,水によく溶けて弱い塩基性を示し,濃塩酸を近づけると,白煙を生じる。
キ 無色無臭で,水に溶けにくい。火の付いた線香を入れると,炎をあげて燃える。
ク 無色腐卵臭の気体で,水に溶けて弱い酸性を示す。還元力をもち,酢酸鉛(Ⅱ)をしみこま
せたろ紙を黒変する。
ケ 無色刺激臭の気体で,湿った空気中で発煙し,アンモニアで白煙を生じる。水によく溶け
強い酸性を示す。
コ 無色無臭の気体で,有毒,水に溶けにくい。高温で還元剤として使われる。
サ 無色無臭の気体で,水に溶けにくい。空気との混合物に点火すると,爆発する。
シ 赤褐色刺激臭の気体で,水に溶けると,酸を生じる。
ス 水溶液は弱酸性で,ガラスを溶かす。
物質群 水素 酸素 オゾン 塩素 一酸化炭素 二酸化炭素 一酸化窒素
二酸化窒素 二酸化硫黄 硫化水素 アンモニア フッ化水素
塩化水素
― 90 ― 第3章 無機物質
〔標準問題〕
157.(気体の発生に関する問題)次の各問いに答えよ。
⑴ 下表の( )に分子式を記入し,それぞれ製法,発生装置,捕集方法を解答群より選び
記入せよ。また製法については,その化学反応式をかけ。
[製法]
ア 酸化マンガン(Ⅳ)に濃塩酸を作用させる。
イ 亜鉛に希硫酸を作用させる。
ウ 酸化マンガン(Ⅳ)に過酸化水素水を作用させる。
エ 硫化鉄(Ⅱ)に塩酸を作用させる。
オ フッ化カルシウム(ホタル石)に濃硫酸を作用さ
せる。
カ 空気または,酸素中で無声放電をする。
キ 塩化アンモニウムに水酸化カルシウムを作用さ
せる。
ク 塩化ナトリウムに濃硫酸を作用させる。
ケ 銅に希硝酸を作用させる。
コ 銅に濃硝酸を作用させる。
サ 銅に濃硫酸を作用させる。
シ 石灰石に塩酸を作用させる。
⑵ ①〜⑫の気体のうち,次の色の気体の名称をかけ。
淡青色( ) 黄緑色( ) 赤褐色( )
⑶ ①〜⑫の気体のうち,乾燥剤に濃硫酸を使用できないものはどれか。すべて選び,番号で
答えよ。
⒜ ⒝ ⒞
[発生装置]
⒜ ⒝ ⒞
[捕集方法]
気体名(分子式) 製法 発生装置 捕集方法 化学反応式
① 酸 素( )
② 水 素( )
③ 塩 素( )
④ 塩 化 水 素( )
⑤ アンモニア( )
⑥ 一酸化窒素( )
⑦ 二酸化窒素( )
⑧ フッ化水素( )
⑨ 二酸化硫黄( )
⑩ 硫 化 水 素( )
⑪ 二酸化炭素( )
⑫ オ ゾ ン( )
7.気体の発生 ― 91 ―
⑶①:C+O2→ CO2
②:CaCO3+2HCl → CaCl2+H2O+CO2
③:HCOOH H2O+CO
〔解説〕⑴一酸化炭素の燃焼:2CO+O2→ 2CO2
COの還元性:Fe2O3+3CO → 2Fe+3CO2
⑵CO2はいくらか水に溶け,空気より重い。(分子 量はCO2=44で空気の平均分子量は約29である。) COは水に溶けにくい。
⑶②:弱酸(H2CO3)の塩であるCaCO3と強酸(HCl) により,弱酸遊離(H2O+CO2)の反応が起こる。 ③:濃硫酸は,脱水作用を示す。
154.⑴CaCO3+2HCl → CaCl2+H2O+CO2
⑵気体の発生や停止を簡単な操作でできる。
⑶石灰石の表面に難溶性の硫酸カルシウム CaSO4が生じるため。
〔解説〕⑴弱酸の塩に強酸を反応させると,強酸の 塩が生成し,弱酸が遊離する反応例である。
⑵固体と液体の反応によって気体を発生させると き,気体の発生や停止を活栓を開閉するだけで行う ことができる。
⑶はじめは気体が発生するが,水に溶けにくい硫酸 カルシウムが石灰石の表面を覆ってしまうため,反 応が止まり二酸化炭素が発生しなくなる。
⑷キップの装置は固体と液体の反応で気体を発生さ せたいときに使う。コックDを閉じると,発生した 気体がBにたまり,B内の圧力が大きくなるので, 液体がB→C→Aと移動する。その結果,B内の石 灰石と希塩酸が接触しなく
なり,気体の発生が止まる。 逆にコックDを開くと,B内 の圧力が小さくなり(大気圧 と等しくなる)液体がA→ C→Bと移動するので,固 体と液体が接触し再び反応 が起こり,気体が発生する。
155.⑴Cl2:MnO2+4HCl→MnCl2+2H2O+Cl2
⑵NO:3Cu+8HNO3→ 3Cu(NO3)2+4H2O+2NO
⑶O2:2H2O2 2H2O+O2
⑷CO2:CaCO3+2HCl→ CaCl2+H2O+CO2
⑸HF:CaF2+H2SO4→CaSO4+2HF
〔解説〕⑴黄緑色の気体は塩素である。MnO2による HClの酸化でCl2が得られる。
⑵酸化剤である希〰〰〰〰硝酸による銅の酸化である。希硝 酸自身は,還元されてNO(無色気体)になる。 一酸化窒素は,空気に触れるとすぐに酸化されて, 赤褐色の二酸化窒素という気体になる。
2NO+O2→ 2NO2
注意:銅を濃硝酸と反応させた場合は,NO2が発生 H2SO4
→
A
B
栓 C
D
MnO2
→
する。
Cu+4HNO3→ Cu(NO3)2+2H2O+2NO2↑
⑶ 紫外線
3O2→ 2O3 酸素中で無声放電をしてもオゾン を生じる。
⑷CO2+H2O →← H2CO3 →← H++HCO3-
石灰石(CaCO3)と塩酸の反応:「弱酸(H2CO3) の塩であるCaCO3」が「強酸(HCl)」により,「弱 酸(H2O+CO2)」が遊離する反応
⑸「揮発性の酸(HF)の塩であるCaF2」に「不揮 発性の濃硫酸」を加え加熱することにより,「揮発 性の酸(HF)」が発生する。
156.アO3 イSO2 ウNO エCl2
オCO2 カNH3 キO2 クH2S ケHCl コCO サH2 シNO2 スHF
〔解説〕アオゾンO3は,淡青色・特異臭の気体で酸 化作用がある。オゾンは湿ったヨウ化カリウムデ ンプン紙中のヨウ化カリウムKI中のI-を酸化して I2にする。さらにI2とデンプンのヨウ素デンプン反 応により,ヨウ化カリウムデンプン紙は青紫色に なる。
イSO2は酸性酸化物で,水に溶けて亜硫酸になり, 弱い酸性を示す。
SO2+H2O→H2SO3
また,SO2には還元性があり,漂白作用を示す。 ウ赤褐色の気体はNO2である。空気と反応してNO2
になるのは,NOである。 2NO+O2→2NO2
エ黄緑色の気体はCl2である。水に少し溶け,一部 は水と反応し塩酸と酸化力のある次亜塩素酸 HClO を生じる。
Cl2+H2O →← HCl+HClO
オ石灰水を白濁させるのは二酸化炭素である。石灰 水とは,水酸化カルシウム水溶液である。
Ca(OH)2+CO2→CaCO3↓+H2O
(Ca(OH)2は塩基,CO2は酸性酸化物で,塩と水が 生じる。)
二酸化炭素は水に溶けて弱い酸性を示す。 H2O+CO2 →← H2CO3 →← H++HCO3-
カNH3は水によく溶け, NH3+H2O →← NH4++OH-
のようにOH-を生じ,弱い塩基性を示す。 塩化水素HCl(気体)とは,
NH3+HCl→NH4Cl
のように塩化アンモニウムの白煙(固体)を生じる。 濃塩酸からは,揮発性の塩化水素(気体)が発生し ている。
キ物を燃やす働きがあるのは,酸素O2である。
― 38 ― 解 答 編
ク腐卵臭といえばH2Sである。水に溶け H2S →← H++HS-,HS- →← H++S2-
の よ う に 電 離 す る。 強 い 還 元 剤 で あ る。Pb
(CH3COO)2とは,
Pb2++S2-→PbS↓(黒色) の反応が起こる。 ケアンモニアと反応して白煙を生じるのは,塩化水 素HCl(気体)である。
NH3+HCl→NH4Cl
塩化水素の水溶液は,塩酸といい,強い酸性を示す。 HCl→H++Cl-
コ有毒で還元性があり,水に溶けにくいのはCOで ある。
還元剤としての反応例:Fe2O3+3CO→2Fe+3CO2
サ空気つまり酸素O2と反応して,爆発するのは水 素H2である。
2H2+O2→2H2O
シ赤褐色の気体はNO2である。NO2は酸性酸化物で 水に溶け,硝酸を生じる。
3NO2 +H2O→2HNO3+NO↑
スガラス(SiO2)を溶かすのは,HFの水溶液である フッ化水素酸である。
6HF+SiO2→H2SiF6+2H2O
ハロゲン化水素の水溶液のなかで,唯一の弱酸である。 157.⑴
分子式 製法 発生装置 捕集方法 化 学 反 応 式
① O2
② H2
③ Cl2
④ HCl
⑤ NH3
⑥ NO
⑦ NO2
⑧ HF
⑨ SO2
⑩ H2S
⑪ CO2
⑫ O3 ウ イ ア ク キ ケ コ オ サ エ シ カ
B B C C A B B
C B B
a a b b c a b
b b b
2H2O2→2H2O+O2 Zn+H2SO4→ZnSO4+H2
MnO2+4HCl→MnCl2+2H2O+Cl2 NaCl+H2SO4→NaHSO4+HCl 2NH4Cl+Ca(OH)2
→CaCl2+2H2O+2NH3
3Cu+8HNO3
→3Cu(NO3)2+2NO+4H2O Cu+4HNO3
→Cu(NO3)2+2NO2+2H2O CaF2+H2SO4→CaSO4+2HF Cu+2H2SO4
→CuSO4+2H2O+SO2
FeS+2HCl→FeCl2+H2S CaCO3+2HCl
→CaCl2+H2O+CO2
3O2→2O3
⑵淡青色(オゾン),黄緑色(塩素), 赤褐色(二酸化窒素)
⑶⑤ ⑩
〔解説〕⑴発生装置について:
�加熱が必要で,反応により水が生じる場合(試験 管を傾けておかないと発生した水により試験管が割 れる可能性がある)
�加熱は不要の反応の場合
C加熱が必要で,液体を用いる反応の場合
捕集法について:
水に溶けにくければ,水上置換⒜である。
水に溶けやすく,空気より重ければ下方置換⒝である。 水に溶けやすく,空気より軽ければ上方置換⒞である。 なお,空気の平均分子量は約29(標準状態で22.4 Lが約29g)である。
①酸化マンガン(Ⅳ)は触媒である。反応に加熱は 必要ないので発生装置は�である。酸素O2は水に 溶けにくいので捕集法は⒜である。
塩素酸カリウムに酸化マンガン(Ⅳ)を加え,加熱 するという方法もある。
2KClO3→ 2KCl+3O2↑
この場合も触媒としてMnO2を用いる。
②Znは,Hよりイオン化傾向が大きいので,一般 の酸(塩酸,希硫酸)と反応してH2を発生する。 反応に加熱は必要ないので発生装置は�である。水 素H2は,水に溶けにくいので捕集法は⒜である。
③MnO2による濃塩酸HClの酸化反応である。反応 に加熱が必要で,液体を使うので発生装置は⒞であ る。塩素Cl2は少し水に溶け,空気より重い(Cl2
=71)ので捕集法は⒝である。
④揮発性の酸(HCl)の塩NaClが,不揮発性の濃 硫酸により,揮発性の酸(HCl)が発生する反応。 反応に加熱が必要で,液体を使うので発生装置はC である。塩化水素HClは,水に溶けやすく,空気よ り重い(HCl=36.5)ので捕集法は⒝である。
⑤弱塩基(NH3)の塩NH4Clが,強塩基(Ca(OH)2)によ り,弱塩基(NH3)が遊離する反応である。固体どう しの反応の場合,加熱が必要である。また,反応に より水が生じるため,試験管は傾けていなければな らないので,発生装置は�である。アンモニアNH3
は,水に溶けやすく,空気より軽い(NH3=17) ので捕集法は⒞である。
⑥Hよりイオン化傾向の小さいCuが酸化力のある 希硝酸に溶け,希硝酸自身は還元されて,NOが発 生する。反応に加熱は必要ないので発生装置は�で ある。一酸化窒素NOは,水に溶けにくいので捕集 法は⒜である。また,空気に触れるとすぐにNO2に なるので,空気に触れないように捕集しなければな らない。
⑦Hよりイオン化傾向の小さいCuが酸化力のある 濃硝酸に溶け,濃硝酸自身は還元されて,NO2が発 生する。反応に加熱は必要ないので発生装置は�で ある。二酸化窒素NO2は,水に溶け,空気より重い
(NO2=46)ので捕集法は⒝である。
⑧揮発性の酸(HF)の塩CaF2が,不揮発性の濃硫 酸により,揮発性の酸(HF)が発生する反応。
⑨Hよりイオン化傾向の小さいCuが酸化力のある 熱濃硫酸に溶け,硫酸自身は還元されて,SO2が発
― 39 ― 解 答 編