整形外科ネットワーク筑波 後期研修年次別達成目標
2012年4月1日
一般社団法人整形外科ネットワーク筑波理事長 原田繁 後期研修プログラム作成委員会
河村春生(研修担当理事) 村松俊樹 原友紀 西野衆文 万本健生 竹内亮子 植村健太 村井伸司
後期研修プログラム作成オブザーバー 坂根正孝 金森章浩
はじめに
整形外科ネットワーク筑波後期研修プログラム作成委員会は、筑波大学付属病院およびネット ワーク病院で使用する整形外科後期研修プログラムを作成した。このプログラムは日本整形外科 学会整形外科研修記録(指導者用冊子版、平成18年4月)を元に、一部修正を行ったものであ る。日整会の冊子には、「整形外科研修カリキュラム」、「経験することが望ましい整形外科外傷」、 そして「経験することが望ましい整形外科疾患」が列挙されている。しかし、それぞれの項目を研修 何年次で修得すべきかについては記載がない。研修医および指導者双方にとって、研修年次別の 達成目標が明確になっていることが望まれる。
日整会の整形外科専門研修カリキュラムは、Ⅰ運動器の基礎知識、Ⅱ診断基本手技、Ⅲ治療基 本手技、Ⅳ救急医療、Ⅴ運動器疾患、Ⅵ医療記録、Ⅶ研究・発表能力の七項目に分かれ、それぞ れに一般目標と行動目標あるいは達成目標がある。これらに加えて、経験することが望ましい整形 外科外傷および疾患、検査、治療が定められている。
後期研修プログラム作成委員会で検討し、整形外科ネットワーク筑波理事会で承認された「整 形外科研修カリキュラム」、「経験することが望ましい整形外科外傷」、そして「経験することが望ま しい整形外科疾患」の研修年次別達成目標を別表に示した。
以下に、修正・変更・追加した項目を列挙し、内容を説明する。変更前の記載は、日整会のものを 参照のこと。
<整形外科研修カリキュラム>日整会研修記録の修正点を○囲み数字の通し番号で表示 I.運動器の基礎知識 修正なし
II.診断基本手技
①行動目標14と19を統合
14項目は侵襲的検査を行う際の説明ができ同意が得られること、19項目は検査の合併
症を熟知し予防的管理ができることであるが、同一項目にまとめた。 ②行動目標18を削除
③新規行動目標18と19の追加
18.超音波エコー検査の適応を理解し、実施判定できる。 19.四肢循環所見がとれ、評価できる。
Ⅲ.治療基本手技
④新規達成目標21の追加
関節鏡手術の適応と合併症を理解して、指導者のもとで安全に実施できる。元の21
~24は22~25に番号変更。 ⑤新規達成目標26の追加
26.肺血栓塞栓症について説明し、リスク階層に応じた予防法を選択できる。元の25~27 は27~29に番号変更。
Ⅳ.救急医療
⑥達成目標2の変更
「蘇生・救命処置ができる」→「一次救命処置ができる」 ⑦新規達成目標12と13の追加
12.BLS(Basic Life Support)コースを受講する。
13.JATEC(Japan Advanced trauma Evaluation & Care)コースを受講する。 Ⅴ.運動器疾患
最も多くの変更を行った部分である。5の感染症、13の手、16の足に改変を行い、新規項目 として17のスポーツ外傷・障害を追加した。スポーツ医学の筑波をアピールすると共に、世間一 般でスポーツ医学への関心が高くなっていることを考慮した。
また、運動器疾患の項目には重要であっても実際に経験することが難しい先天異常、骨系統 疾患、および骨軟部腫瘍が含まれる。運動器疾患の一般目標は「外傷以外の重要な運動器疾 患について理解・修得する」、達成目標は「疾患の臨床像を述べて鑑別診断でき、検査・治療方
針を立てることができる」となっている。従って、これらの疾患全てを研修中に実際に診療する必 要はなく、教科書的知識や典型的画像を知っていればよい。研修に必要なティーチングファイル
を整備する予定であり、腫瘍の研修については他大学との連携も考慮する。
⑧項目1の先天性疾患、2の骨系統疾患の研修にティーチングファイルを活用する。 ⑨項目5の名称を変更:骨・関節の感染症→骨・関節・軟部組織の感染症とし、小項目につ
いて以下の変更を行った。
(1)骨髄炎は骨髄炎(小児も含む)とする。 (4)骨関節の梅毒を項目(8)に統合。
(4)は新規項目の蜂窩織炎(蜂巣炎)とする。
(5)感染性関節炎は感染性関節炎(一般細菌、真菌)とする。 (7)筋肉感染症を廃し、新規項目の壊死性筋膜炎・ガス壊疽とする。
を含める。
⑩項目10の骨軟部腫瘍に新規項目(25)転移性骨腫瘍を追加。 ⑪項目13の手関節と手指の疾患について小項目の変更を行った。
(1)手の炎症性疾患に列記されている3項目を分離し、(1)手の腱鞘炎と腱炎、(2)手の関 節リウマチ、(3)手の変形性関節症とし、それ以下の番号を繰り下げた。
(4)手の感染症
(5)手の骨壊死→手の骨壊死(Kienböck, Preiser)と明記。 (6)手の神経麻痺から回内筋症候群を削除。
⑫項目15の膝関節疾患の小項目(9)膝蓋大腿関節障害に含まれる変形性膝関節症と膝の
特発性骨壊死を独立項目とした。また、「膝関節」の疾患ではないが、臨床的に重要な腓骨 神経麻痺がカリキュラムから欠落していたので追加した。
(10)変形性膝関節症 (11)膝の特発性骨壊死
(12)腓骨神経麻痺
⑬項目16の足関節と足趾の疾患は、石井先生の助言を得て小項目を大幅に変更した。 (1)先天性足変形-先天性内反足
(2)後天性足部・足趾変形-外反扁平足、麻痺性足部変形、外反母趾
(3)慢性障害
1.中足骨疲労骨折
2.陳旧性足関節外側靭帯損傷 3.アキレス腱炎
4.足底腱膜炎
5.有痛性踵骨棘
(4)骨端症-踵骨、有痛性外脛骨
(5)変形性足関節症
⑭項目17として、新たにスポーツ外傷・障害を追加。詳細は表を参照。他項目との重複があ るものについては、今後検討の余地がある。
Ⅵ.医療記録 修正なし Ⅶ.研究・発表能力
⑮新規行動目標6の追加。
6.適切な統計学的検定手法を選択し、解析ができる。
<経験することが望ましい整形外科外傷>
日整会からリストアップされている外傷は27項目しかなく、極めてシンプルである。専門医に関
わる分野は言うまでもなく全て「2:外傷性疾患」である。重み付けは神経損傷・血管損傷・胸郭損
いかに重用かが分かる。
後期研修プログラム作成委員会で議論し決定されたことは
1.いつ・何を・どのように・どれだけ(When, What, How, How many)経験すべきか、ある程 度の目安を示す必要がある。手術治療に関しては、第一助手を経験する年次と術者(執刀)を経 験する年次のそれぞれを示すことにした。
2.上腕骨顆上骨折を含む肘関節部骨折・脱臼、および膝周辺骨折・脱臼・靭帯損傷骨折のカテゴ
リーは多くの独立した重要な外傷を含んでいる。さらに、前者は小児と成人骨折 を分けて経験することが望ましい。項目を細分化して記載することにした。
3.代表的な骨折や脱臼の分類、例えばGarden、Evans、Neerなどを理解することを3年次 の必修とした。また、骨折のA-O分類も3年次の必修としたい。
Note. A-O分類は一見ややこしいが、長管骨は十の位に上腕骨が1、前腕骨が2、大腿骨が 3、下腿骨が4の番号がついている。これらに共通で、一の位は近位部が1、骨幹部が2、遠位
部が3の番号がつく。例えば大腿骨骨幹部は32となる。骨折形態と粉砕程度でA1・A2・ A3、B1・B2・B3、C1 ・C2・C3の9通りに分類される。従って、大腿骨は27通りに分類される。
他の長管骨も同様である。ちなみに臼蓋は62、手は7、頭蓋骨(整形の分野ではないが)は9 の番号がつき、独特の分類が成されている。詳しくはAO Foundationのホームページ参照 (研修医はインターネットのお気に入りに登録すること)。
4.アキレス腱断裂の項目を追加した。
5.神経縫合と血管縫合は手の外科、ACL再建術は膝関節外科を志望する研修医が7年次以 降に指導者の下で執刀できるとした。
<経験することが望ましい整形外科疾患>
日整会からは分野2~12の順番に44項目がリストアップされている。後期研修プログラム作 成委員会で議論し決定されたことは
1.いつ・何を・どのように・どれだけ経験すべきか、目安を示す必要があることは外傷と同様である。 手術治療に関しては、術者(執刀)を経験する年次のみを示した。
2.骨粗鬆症に関連した椎体圧迫(破裂)骨折による神経障害の項目を追加し、研修内容は手術療 法とした。
3.関節リウマチは、最近の診断・治療の進歩を踏まえて早期診断と抗リウマチ薬(DMARDs、生 物製剤)投与を研修内容に追加。
4.頚椎疾患に頚椎椎間板ヘルニアとOPLLがあるのに通常の頚部脊髄症が欠落しているので追 加。研修内容は診断・保存療法・手術とした。
5.脊椎疾患に脊柱管狭窄症の項目があるが、これは腰部脊柱管狭窄症のこととした。 6.脊椎側弯症の診断および着目点を「病因」から「分類」に変更した。
7.腱板断裂の手術療法を「関節形成」から「腱板縫合」に変更した。
9.膝内障のカテゴリーを廃止し、半月板損傷・関節内遊離体・離断性骨軟骨炎・骨壊死に変更し た。
以上