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(1)

2012 年版

位相入門

距離空間の位相

酒 井   克 郎

筑波大学・数学系

Introduction to Topology Topology of Metric Spaces

2012 K. Sakaic

(2)

はじ めに

ト ポ ロジ ー(位相) の概念は, 現代数学における基本的かつ重要な概念の一つであ る. 何故なら, この概念があって初めて, 極限や連続性を論じることが出来るからであ る. 位相構造を持った集合を位相空間と呼ぶのであるが, 数学で扱う様々な集合の上 に 位相構造を 導入することにより, 様々な位相空間が定義されて, 極限や連続に関連 する議論が 展開され るのである. しかしながら, 位相構造は順序構造や代数構造と比 べて より抽象的で 捉えに くい概念であるので, 「位相入門」の講義では, 一般的な位 相空間を 扱う「ト ポロジーI 」への導入として, 距離空間における点列の収束や写像 の連続性など の位相的な概念を 学ぶ.

ト ポ ロジ ー (位相幾何学) に興味が持てるように, トピックスとして, ペアノ曲線 (平面や空間の領域を埋め尽くすような閉区間からの連続写像) の構成も内容に含めた が, これは点列コンパクトと一様収束の概念の応用となっている. 可分距離空間がヒ ルベルト 立方体やヒルベルト 空間の部分空間に 同相になることや, どんな距離空間も バナッハ空間に 等長に 埋め込めることなど も扱っている. また, 1 章では, 微積分で学 んだ 事柄の 復習であ るので, 飛ばしても構わないが, 微積分で学んだ事柄がここでど の様に 一般化され ているのか, 随時参照してもらいたい.

このテキ スト は, 教科書というより学習帳として, 「位相入門」の講義で扱う事柄 をまとめたものである. 先生の板書を学生が自分のノートに書き写すだけいう講義を 避けるために, 準備されたものである. 定義や例の後に, 定理や補題などの命題が証明 なし に掲げ られている. 講義では, 新しい概念の意味を解説し, 定理や補題などの命題 の意味と 証明を 行う. 完成した証明を板書するのを避け, 演習で完成させるものも多 い. その他に, 本来なら命題, 定理, 系とすべき命題が演習に含まれているが, 講義の 時間の許す限り, そうした演習では, 何を示すべきなのかを説明を加える. 定理や補題 など の命題および 演習の証明をつけ ることにより, 独自の講義録を完成させてもらう ことを 意図し ている. 講義での説明を聞いても納得のいかない場合には, 先輩や教師 など に 相談し たり, 参考書などを調べたりするなら, 最終的に自分にとって最も納得 のい く証明を 付け ることが 出来る. この様にして, 自分独自の講義録を完成させるな ら, 講義で扱われる事柄を確実に自分のものとすることが出来るであろう.

筑波大学の数学系の 諸先生方, 特に演習を担当した先生方から, また講義を受けた 学生の皆さんからも有益なご 指摘を 沢山頂いたことに, 心から感謝致します.

2012 年 3 月 酒井克郎

(3)

記 号

• ∀x —すべての x に対して, . . . [for all x];

• ∃x (such that) — (次のよ うな) x が存在する [there exists x] ( ∃x — ∃x の否 定);

• p ⇒ q — pならば q [p implies q (or) if p then q] (p ⇒ q — p ⇒ q の否定);

• p ⇔ q — pq と同値である [p if and only if q] (p ⇔ q — p ⇔ q の否定);

• p =

defq (p ⇔defq) — p (であること) を q (であること) と定義する;

• ∅ —空集合[empty set];

• x ∈ A — x A の元, 要素 [element] (x ∈ A — x ∈ A の否定);

• A ⊂ B — AB の部分集合 [subset] (A ⊂ B — A ⊂ B の否定);

• A ∪ B, λ∈ΛAλ — A と B, および (Aλ)λ∈Λ の和集合[union];

• A ∩ B, λ∈ΛAλ — A と B, および (Aλ)λ∈Λ の共通部分[intersection];

• A \ B — AからB を除いた差集合 [difference];

• A × B, λ∈ΛAλ— A と B, および (Aλ)λ∈Λ(直) 積集合 [(direct) product];

• Xn = X × · · · × X

  

n times

— n 個の X の累乗積 [n-th power];

• XN — 可算無限個の X の累乗積 [countable power];

• P(X) — Xの巾集合[power set];

• f : X → Y (x → f (x)) —写像[map, function];

• id (idX) — (X の) 恒等写像 [identity (map)];

N = 1, 2, . . .— 自然数全体の集合 [the natural numbers];

• ω =N ∪ {0} = 0, 1, 2, . . .:

Z = 0, ±1, ±2, . . .— 整数全体の集合 [the integers];

• Q — 有理数全体の集合 [the rationals];

• R = (−∞, ∞) — 実数全体の集合 [reals], 数直線 [the real line];

• I = [0, 1] —単位閉区間[closed unit interval].

(4)

目 次

1 実数の連続性 . . . 1

2 ノルム空間と 距離空間 . . . 5

3 点列の収束と 完備性 . . . 11

4 連続写像と一様連続写像 . . . 15

5 同相写像, 埋め込み . . . 17

6 近傍, 開集合, 閉集合 . . . 19

7 集合の閉包, 内部, 境界 . . . 23

8 点列コン パクト . . . 27

9 各点収束, 一様収束, 完備化 . . . 29

10 トピ ックス— ペアノ曲線とカントール集合 . . . 32

(5)

1 実数の連続性

ここでは, 微積分で学んだ数列の収束と関数の連続に関する事柄を復習する. 定義1.1 数列 [sequence] (xn)n∈N,N から R への写像 n → xnである. 順序を保 つN から N への写像 i → ni(n1< n2< · · · ) との合成 (xni)i∈N(i.e., i → ni → xni) が (xn)n∈N の部分数列[subsequence] である.

定義1.2 つぎの条件が成立するとき, 数列 (xn)n∈Nx に収束 [converge] する, また はx は (xn)n∈Nの極限[limit] であるといい, xn → x (n → ∞),またはlimn→∞xn= x と表す:

∀ε > 0, ∃n0∈N such that n  n0⇒ |xn− x| < ε

実数x, y に 対し て,|x − y|は 数直線 上におけ る2x, yの距離なので, 上の定義は, xn xにいくらでも近くに 接近し て行くことを意味し ている.

演習1.1 収束する数列 (xn)n∈Nの極限は 一意的であることを 示せ.

演習1.2 収束する数列 (xn)n∈Nに 対し て, つぎを示せ:

∀n ∈N, xnb ⇒ lim

n→∞xnb

また, つぎが成立しない例を上げよ: ∀n ∈N, xn< b ⇒ limn→∞xn < b

演習1.3 数列 (xn)n∈N, (yn)n∈N, (zn)n∈Nに 対し て, つぎを示せ:

∀n ∈N, xnynzn, lim

n→∞xn = limn→∞zn = x0⇒ limn→∞yn= x0

定義1.3 つぎの条件を満たす数列 (xn)n∈Nをコーシー列[Cauchy sequence] と呼ぶ:

∀ε > 0, ∃n0∈N such that n, m  n0⇒ |xn− xm| < ε

演習1.4 数列 (log n)n∈N, つぎの条件を満たすがコーシー列でないことを示せ:

∀ε > 0, ∃n0∈N such that n  n0⇒ |xn− xn+1| < ε

演習1.5 収束する数列 (xn)n∈Nが コーシー列となることを示せ.

演習1.6 コーシー列 (xn)n∈Nが 収束する部分列を 持てば, (xn)n∈N自身も収束す ることを 示せ.

(6)

演習1.7 単調増加数列 (または単調減少数列) (xn)n∈N が 収束する部分列を 持て ば,1 (xn)n∈N 自身も収束することを 示せ.

定義1.4 数列 (xn)n∈N, 集合 {xn| n ∈N} が有界 (上に有界, 下に有界) のとき, 有 界[bounded] (上に有界 [upper bounded], 下に有界 [lower bounded]) であるという.

演習1.8 コーシー列 (xn)n∈Nは 有界であることを 示せ.

定義1.5 つぎの条件を満たすR の空でない部分集合の組 (A, B) を R におけるデデ キント 切断[Dedekind cut] と呼ぶ:

(i) R = A ∪ B ; (ii) ∀x ∈ A, ∀y ∈ B, x < y

定理1.6 (実数の連続性) R における任意のデデキント切断 (A, B) に対して, A が 最大値を持ちB が持たないか, あるいは B が最小値を持ち A が持たないかのいずれ かが 成立する.

定理1.7 (ワイエルシュト ラス [Weierstrass] の公理) R の空でない部分集合が上に有 界であれば 上限を 持つ. (下に有界であれば下限を持つ)

定理1.8 上に有界な単調増加数列は収束する. 定理1.9 (実数の完備性) コーシー列は収束する.

定理1.10 (ボルツァーノ・ワイエルシュト ラス [Bolzano-Weierstrass] の定理) 有界 な数列は 収束する部分列をもつ.

上の5 つの定理 (1.6∼1.10) は実数に関する基本定理で, それぞれの主張は互いに 同値である. すなわち, そのうちの 1 つを仮定すれば他の 4 つを導ける. (補足参照) 定義1.11 関数 f :R → R がつぎの条件を満たすとき, f は x0R で連続 [contin- uous] であるという:

∀ε > 0, ∃δ > 0 such that |x − x0| < δ ⇒ |f (x) − f (x0)| < ε 大まかに 言えば,数直線 上において, x0 の近くの点はfによってf (x0)の近 くの点に 写され るという意味である.

定理1.12 関数 f :R → R が x0 ∈R で連続であるためには, x0に 収束するど ん な 数列もf (x0) に収束する数列に写すことが必要十分条件となる. すなわち,

n→∞lim xn = x0⇒ limn→∞f (xn) = f (x0) 1

ここでは, 広義単調増加数列 x1 x2 · · · を意味する.

(7)

証明 まず, f x0で 連続と仮定し て, limn→∞xn= x0とする.

∀ε > 0に 対し て,連続の定義におけ るδ > 0を取る. すなわち,|x − x0| < δ ⇒ |f(x) − f(x0)| < ε.

このδ > 0に 対し て, limn→∞xn= x0の定義を適用すると

∃n0such that n n0 ⇒ |xn− x0| < δ.

δ > 0の取り方より, n n0⇒ |f(xn)− f(x0)| < ε. limn→∞f (xn) = f (x0).

次に,上の条件を満たすが, fx0 で 連続でないと 仮定し て,矛盾を導く.

∃ε > 0, ∀δ > 0, ∃x ∈ such that|x − x0| < δ, |f(x) − f(x0)| ε.

∀n ∈ に 対し て,∃xnsuch that|xn− x0| < n−1,|f(x) − f(x0)| ε. このとき, limn→∞xn= x0だがlimn→∞f (xn)= f(x0)となり矛盾.

定義1.13 関数 f :R → R が各 x ∈ R で連続であるとき, f は 連続 [continuous] で あるという:

∀x ∈R, ∀ε > 0, ∃δ > 0 such that |x − y| < δ ⇒ |f(x) − f(y)| < ε

定義1.14 関数 f : R → R がつぎの条件を満たすとき, f は一様連続 [uniformly continuous] であるという:

∀ε > 0, ∃δ > 0 such that |x − y| < δ ⇒ |f (x) − f (y)| < ε 連続の 定義に おいて, δ > 0 x ε > 0に 依存し て 決まり,たとえ ε > 0の値が 同じ でもx が 変われば, δ > 0の値は変わってもよいが,一様連 続では, δ > 0ε > 0だけに 依存し ており, x が 変わっても ε > 0の値が 同じ ならδ > 0の値は 変わらない. 明らかに,一様連続であれば 連続であるが, は 一般には 成立し ない.

演習1.9 f :R → R を f(x) = 2xと 定義すると, f は連続だが一様連続にならな いことを 示せ.

定義1.15 R の部分集合 A 上で定義された関数 f : A → R に対しても, 連続および 一様連続が 同様に定義できる. すなわち, 定義における x, y, x0など を, f の定義域 A に限ることにより, 連続と一様連続の定義が得られる.

関数f : (一様)連続であれば, fA への制限f|A : A → (一様)連続であるが, f が 不連続であってもf|A : A → (一様)連続にな り得る.

演習1.10 関数 f :R → R をつぎのように定義する: f (x) = n if n  x < n + 1, n ∈Z (1) f は不連続であるが, f |Z は一様連続になることを示せ. (2) f |R \ Z は連続であるが一様連続ではないことを示せ.

(8)

ワ イエルシュト ラスの公理,実数の連続性,上に有界な単調増加数列は収束すること,実数の 完備性,ボルツァーノ・ワ イエルシュト ラスの定理が,それぞれ 互いに同値であることは,次の ようにし て示せる.

実数の連続性 ボルツァ ーノ・ワ イエルシュト ラスの定理

ワ イエルシュト ラスのの公理 実数の完備性

⇓ ⇑

上に 有界な単調増加列は 収束する

(1)実数の連続性ワ イエルシュト ラスの公理

ヒント 上に有界な集合AÊの上界Bとその補集合Ê\ B でデデキント切断を作り, 実数の連続性を適用せよ. max(Ê\ B) が存在しなければ, min B = sup A が存在する. (2)ワ イエルシュト ラスの公理実数の連続性

ヒント デデ キント の切断(A, B) の A に対して, ワイエルシュトラスの公理を適用せ . sup A が max A または min B.

(3)ワ イエルシュト ラスの公理上に 有界な単調増加数列は 収束する ヒント sup

n∈ xn= limn→∞xnを示せ. supn∈ xnの存在に,ワ イエルシュ

ト ラスの公理が 必要となる.

下に 有界な単調減少数列(xn)n∈ も収束し, infn∈ xn= limn→∞xn. (4)上に 有界な単調増加数列は 収束する実数の完備性

ヒント コーシ ー列(xn)n∈ に 対し て, yn= infi nxiとすれば, (yn)n∈ 有界な単調増加列. limn→∞yn= limn→∞xnとなることを示せ.

2つの 証明により,コーシ ー列(xn)n∈ に 対し て, sup

n∈ infi nxi=

limn→∞xnが 成立. 同様に, infn∈ supi nxi= limn→∞xnも成立. (5)実数の完備性ワ イエルシュト ラスの公理

ヒント 上に有界な空でない部分集合A の上界をB とするとき, 納的にxn∈ A, yn ∈ B (n ∈ )を 以下のよ うにし て 取る:

1

2(xn+ yn)∈ B または ∈ Bに 応じ て,

xn+1= xn,

yn+1=12(xn+ yn), または

xn+1>12(xn+ yn), yn+1= yn.

(yn)n∈ はコーシ ー列となり, limn→∞yn= sup Aが 示せ る. ((xn)n∈ を 用

いてもよい.)

(6)実数の完備性ボルツァ ーノ・ワ イエルシュト ラスの定理

ヒント 有界な数列(xn)n∈ ,コーシ ー列となる部分列を持つことを示せ. (7)ボルツァ ーノ・ワイエルシュト ラスの定理実数の完備性

ヒント 演習1.8, 1.6を適用.

演習1.7を用いれば, “ボ ルツァ ーノ・ワ イエルシュト ラスの定理上に有 界な単調増加数列は 収束するも容易に 示せる.

(9)

2 ノルム空間と 距離空間

定義2.1 線形空間 E において, つぎの条件を満たすように, 各 x ∈ E に対して, 実数 値x  0が 定義され ているとき, x を x のノルム [norm], 関数  ·  : E → [0, ∞) を E 上のノルム [norm] と呼び, E = (E,  · ) をノルム空間 [normed space] と呼ぶ:

(N-1) x = 0 ⇔ x = 0 (N-2) tx = |t|x

(N-3) x + y  x + y (三角不等式 [triangle inequation])

ノルムはベクトルの大きさを表し,実数や複素数の絶対値の拡張である. 同一の線 形空間上に,様々なノルムが 定義でき,異なるノルムが 与えられ るとノルム空間と し ては 別のものになる.

2.2 (1)R = (R, | · |) はノルム空間である.

(2) ユークリッド 空間Rn において, 各点 x = (x1, . . . , xn) ∈ Rn のノルムは つぎ の ように 定義され る:

x = x21+ · · · + x2n0

この ノルムをユークリッド ・ノルム[Euclidean norm] と呼ぶ.

三角不等式の証明 上の定義より,三角不等式(N-3)は下の不等式となる:

n

i=1

(xi+ yi)2

n

i=1

x2i+

n

i=1

yi2

両辺を二乗し て,次の不等式を得る:

n

i=1

(xi+ yi)2

n

i=1

x2i+

n

i=1

y2i + 2

n

i=1

x2i

n

i=1

yi2

左辺の各項は(xi+ yi)

2= x2i+ y2i+ 2xiyiなので,次を示せば よい:

n

i=1

xiyi n

i=1

x2i

n

i=1

y2i

この両辺を二乗し て得られ る次の不等式を示せば よい:

n

i=1

xiyi

2 n

i=1

x2i n

i=1

yi2

この 不等式は,コーシ ー・シュワル ツの 不等式[Cauchy-Schwarz inequality] と 呼ばれ る. この 不等式の証明には,

m

i=1(xit + yi) 2

を 展開し て得られ るt に 関する次の2次式を考え る:

m

i=1

x2i t2+ 2

m

i=1

xiyi t +

m

i=1

y2i

(10)

これは 負の値を取らないので,この判別式は 正にはならない. すなわち,

m

i=1

xiyi 2

m

i=1

x2i m

i=1

y2i 0

(3) 実数列全体は可算無限積RNとし て表せるが, 各項ごとに和とスカラー倍を定義 することにより, 線形空間となる. 次のようにノルムが定義されるRNの線形部 分空間が ある.

2 =

def

x = (xi)i∈NRN

 i=1

x2i < ∞



, x =





 i=1

x2i ;

1 =

def

x = (xi)i∈NRN

 i=1

|xi| < ∞



, x =

 i=1

|xi| ;

=

def



x = (xi)i∈NRN

supi∈N|xi| < ∞



, x = sup

i∈N

|xi|.

2はヒルベルト 空間[Hilbert space] と呼ばれる. ℓ1 ℓ2 ℓ RNに注意. 実, (1,

1 2,

1

3, . . . ) ∈ ℓ2\ ℓ1, (1, 1, 1, . . . ) ∈ ℓ\ ℓ2, (1, 2, 3, . . . ) ∈RN\ ℓ. ℓ2の ノルムの三角不等式の証明

i=1

(xi+ yi)2= lim

n→∞ n

i=1

(xi+ yi)2

n→∞lim

n

i=1

x2i + lim

n→∞ n

i=1

yi2=

i=1

x2i+

i=1

y2i

次の無限級数に 関するコーシ ー・シュワル ツの不等式も,同様に 有限和の 極限とし て得られ る:

i=1

xiyi

2

i=1

x2i

i=1

yi2

演習2.1 以下のものも Rn 上の ノル ムとなることを 示せ:

x1= |x1| + · · · + |xn| ; x= max{|x1|, . . . , |xn|}

演習2.2 単位区間 I = [0, 1] 上の実数値連続関数全体のなす集合 C(I) は, 自然 に定義され る演算で 線形空間となるが, 以下のものが C(I) 上のノルムとなることを 示せ:

f 1=



t∈I

|f (t)|dt ; f 2=



t∈I

f (t)2dt ; f = sup

t∈I

|f (t)|

(11)

定義2.3 集合 X において, つぎの条件を満たす関数 d : X × X → [0, ∞) を X 上の 距離(関数) [metric] と呼ぶ:

(M-1) d(x, y) = 0 ⇔ x = y (M-2) d(x, y) = d(y, x)

(M-3) d(x, y) + d(y, z)  d(x, z) (三角不等式 [triangle inequation])

このと き, X = (X, d) を距離空間 [metric space] と呼び, d(x, y) を 2 点 x, y 間の距 離[distance] という.

距離が 与えられている(定義され ている)集合が 距離空間である. この場合,その (要素)は点と呼ぶ. 同一の集合上に,様々な距離が 定義でき,異なる距離が 与え られ ると距離空間とし ては 別のものになる.

例 2.4 ノルム空間 E = (E,  · ) において, d(x, y) = x − y が E 上の距離になり, これをノルム ·より導入される距離[induced metric] と呼ぶ. 断りのない限り, ノル ム空間E = (E, ·) は, この距離で距離空間とみなす. 数直線R は d(x, y) = |x − y| を距離とする距離空間であり, ユークリッド 空間Rn は 次の距離が 与えられ た距離空 間である:

d(x, y) = x − y =(x1− y1)2+ · · · + (xn− yn)2

ここで, x = (x1, . . . , xn), y = (y1, . . . , yn) ∈ Rn. この距離を ユークリッド の距離 [Euclidean metric] と呼ぶ.

例 2.5 単位区間 I = [0, 1] の可算無限積 INは次のように 定義され る距離を 持つ: d(x, y) = sup

n∈N

n−1|xn− yn|.

ここで, x = (xn)n∈N, y = (yn)n∈N∈ I

N. 距離空間 IN= (IN, d) をヒルベルト 立方体 [Hilbert cube] と呼ぶ.

演習2.3 集合 X の 2 点 x, y に対して, つぎのように定義される d0(x, y) が X 上の距離になることを 示せ:

d0(x, y) =

def

⎧⎨

0 if x = y, 1 if x = y,

定義2.6 上の演習で定義された距離 d0 X 上の離散距離 [discrete metric] と呼び, X = (X, d0) を離散距離空間 [discrete metric space] と呼ぶ.

(12)

命題2.7 有限個の距離空間 X1 = (X1, d1), . . . , Xm = (Xm, dm) の直積集合 X = X1× · · · × Xm2 点 x = (x1, · · · , xm), y = (y1, · · · , ym) ∈ X に対して, 以下のよ うに 定義され るd(x, y) は X 上の距離である:

d(x, y) =

def

d1(x1, y1)2+ · · · + dn(xm, ym)2

三角不等式の証明 上の定義より三角不等式(M-3)は次の不等式となる:

m

i=1

di(xi, yi)2+

m

i=1

di(yi, zi)2

m

i=1

di(xi, zi)2

左辺を二乗すると

m

i=1

di(xi, yi)2+

m

i=1

di(yi, zi)2+ 2

m

i=1

di(xi, yi)2

m

i=1

di(yi, zi)2

diに 関する三角不等式を二乗すると,次の不等式を得る:

di(xi, yi)2+ di(yi, zi)2+ 2di(xi, yi)di(yi, zi) di(xi, zi)2

よって,次の不等式を示せば よい:

m

i=1

di(xi, yi)2

m

i=1

di(yi, zi)2

m

i=1

di(xi, yi)di(yi, zi)

この両辺を二乗し て得られ る次の不等式を示せば よい:

m

i=1

di(xi, yi)2

m

i=1

di(yi, zi)2

m

i=1

di(xi, yi)di(yi, zi)

2

この不等式は, di(xi, yi) = ai, di(yi, zi) = biとおけば,コーシ ー・シュワルツの 不等式となる. (2.2(2)三角不等式の証明参照)

定義2.8 上の命題で定義された距離 d を X = X1× · · · × Xm上の直積距離[product metric] と呼び, X = (X, d) を直積 (距離) 空間 [product (metric) space] と呼ぶ.

ユークリッド 空間 n, n個の数直線 の直積空間である.

演習2.4 命題 2.7 において, 以下の ρ1, ρも直積集合X = X1× · · · × Xm上の 距離になることを 示せ:

ρ1(x, y) =

defd1(x1, y1) + · · · + dn(xm, ym) ; ρ(x, y) =

defmax{d1(x1, y1), · · · , dn(xm, ym)}

上の演習におけ る距離も直積距離と呼ぶ場合もある. —演習3.8参照.

(13)

定義2.9 距離空間 X = (X, d) において, 点 x ∈ X の ε-近傍 [ε-neighborhood] BX(x, ε) をつぎのように定義する (しばしば X を省略して, B(x, ε) と書く):

BX(x, ε) =

def

y ∈ X d(x, y) < ε

演習2.5 座標平面R2=R × R において, ユークリッドの距離 d (例 2.4), 演習 2.1 のノルムx1xによって定義され た距離d1, dを考え, それぞれに関して, 原点0 = (0, 0) ∈R2 ε-近傍を図示せよ.

例 2.10 離散距離空間 X において, x ∈ X の ε-近傍 BX(x, ε) は次のようになる: BX(x, ε) =

⎧⎨

{x} for ε  1, X for ε > 1

定義2.11 集合 X 上の距離 d を部分集合 A ⊂ X 上に制限すれば, A 上の距離 dA = d|A × A が得られるが, A = (A, dA) を X = (X, d) の部分 (距離) 空間 [subspace] と呼ぶ. 混乱の恐れのない場合には, dA を 同じ 記号d で表す.

演習2.6 ユークリッド 平面 R2の部分空間

A = {(x, y) ∈R2| (xy)21} ⊂R2

において, 点 a = (1, 1) ∈ A の ε-近傍を, ε > 0 の値を変えて図示せよ.

定義2.12 距離空間 X = (X, d) において, 空でない部分集合 A ⊂ X の直径 [diam- eter] をつぎのように定義する:

diam A =

defsup

d(x, y) x, y ∈ A

diam A < ∞ のとき, A は有界 [bounded] であるという. 全空間 X が有界 (i.e., diam X < ∞) となる距離 d を有界 [bounded] な距離と呼ぶ. さらに, X の空でない 部分集合A, B の間の距離 [distance] をつぎのように定義する:

d(A, B) =

definf

d(x, y) x ∈ A, y ∈ B

A = {x} のとき, d({x}, B) は d(x, B) と書く. すなわち, d(x, B) = infy∈Bd(x, y).

演習2.7 距離空間 X = (X, d) の空でない部分集合に関して, つぎを示せ. (1) A ⊂ B ⇒ diam A  diam B.

(2) A ⊂ A, B ⊂ B⇒ d(A, B)  d(A, B). (3) |d(x, A) − d(y, A)|  d(x, y).

(14)

(4) diam A ∪ B  d(A, B) + diam A + diam B.

定義2.13 距離空間 X = (X, dX) から距離空間 Y = (Y, dY) への距離を変えない写 像f : X → Y (i.e., dY(f (x), f (y)) = dX(x, y)) を等長写像 [isometry] あるいは等長 埋め込み[isometrically embedding] と呼ぶ.

演習2.8 等長写像が単射になることを示せ.

定義2.14 距離空間 X = (X, dX) と距離空間 Y = (Y, dY) は, 全単射となる等長写 像f : X → Y が存在するとき, 等長 [isometric] であるといい, X ≡ Y と表す. 上の 演習より, 全射となる等長写像は全単射であることに注意せよ.

距離空間X Y ,等長であ るとき,距離空間とし て全く同じ 性質を持ってい . 等長写像f : X→ Y が 存在するとき, XY の部分空間f (X)は 等長なの ,両者はf によって同一視でき, XY に 等長に埋め込まれ る[isometrically

embedded]とい う. そのよ うな意味で, 等長写像を 等長 埋め込み とも呼ぶので

ある.

距離空間X, Y , Z に対して, つぎが成立する:

X ≡ X ; X ≡ Y ⇒ Y ≡ X ; X ≡ Y, Y ≡ Z ⇒ X ≡ Z

例 2.15 距離空間 X = (X, dX), Y = (Y, dY) の直積距離空間 (X × Y, d) において, 任意のy ∈ Y に対し, 写像 iy: X → X × Y を iy(x) = (x, y) と定義すれば, iyは 等

長写像になる. また, 直積距離 d を演習 2.4 における距離 ρ1, ρで 置き換えてもiy

は等長写像である.

(15)

3 点列の収束と 完備性

定義3.1 距離空間 X = (X, d) における点列 [sequence] (xn)n∈Nとは,N から X へ の写像n → xnである. 順序を保つN から N への写像 i → ni(n1< n2< · · · ) との 合成(xni)i∈Nを 点列(xn)n∈Nの部分点列[subsequence] と呼ぶ.

定義3.2 距離空間 X = (X, d) において, つぎの条件が成立するとき, 点列 (xn)n∈N

が 点x ∈ X に収束 [converge] するといい, xn→ x (n → ∞) またはlimn→∞xn= x と表す:

∀ε > 0, ∃n0∈N such that n  n0⇒ d(xn, x) < ε

i.e., n  n0⇒ xn∈ B(x, ε).

演習3.1 収束する点列の収束先は一意的に決まること, すなわち, 点 x ∈ X に収 束する点列(xn)n∈Nは x 以外の点には収束しないことを示せ.

定義3.3 直積集合 X = X1× · · · × Xm から 各成分 Xi への 射影 [projection] を pri: X → Xiと 表す. すなわち, pri(x1, . . . , xm) = xi. また可算無限個の X の累乗 積X

N

に 関し ても, 同様に射影 prk : X

N→ X, k ∈N, を prk((xi)i∈N) = xk と定義

する.

演習3.2 距離空間 X1 = (X1, d1), . . . , Xm = (Xm, dm) の直積距離空間 X = X1× · · · × Xmにおいて, 点列 (xn)n∈N x に収束するための必要十分条件は, 各成 分Xi におけ る点列(pri(xn))n∈Npri(x) に収束することであることを証明せよ.

演習3.3 例 2.5 で定義したヒルベルト立方体 INにおいて, 点列 (xn)n∈N x に 収束するための必要十分条件は, 各 i ∈N に対し, I における数列 (pri(xn))n∈N

pri(x) に収束することであることを証明せよ.

定義3.4 距離空間 X = (X, d) において, つぎの条件を満たす点列 (xn)n∈N をコー

シー点列[Cauchy sequence] と呼ぶ:

∀ε > 0, ∃n0∈N such that n, m  n0⇒ d(xn, xm) < ε

演習3.4 距離空間 X = (X, d) における収束点列 (xn)n∈Nはコーシ ー点列である ことを 示せ.

演習3.5 距離空間 X1 = (X1, d1), . . . , Xm = (Xm, dm) の直積距離空間 X = X1× · · · × Xmにおけ る点列(xn)n∈Nが コーシー点列であるための必要十分条件は, 各成分Xiにおけ る点列(pri(xn))n∈Nがコーシ ー点列であることを 証明せよ.

(16)

定義3.5 距離空間 X = (X, d) において, どんなコーシー点列もある点に収束すると き, X (または d) は完備 [complete] であるという.

例 3.6 定理 1.9 によれば,R は完備である. 命題3.7 離散距離空間は完備である.

証明概略 離散距離空間おけるコーシー点列(xn)n∈ では,十分大きなn 対するxnは 一定である.

すなわち,∃n ∈ such that xn= xn+1= xn+2=· · ·

命題3.8 完備距離空間 X1, . . . , Xm の 直積距離空間X = X1× · · · × Xmは 完備で ある. 特に, ユークリッド 空間Rnは 完備である.

証明概略 演習3.5と演習3.2を組み合わせる.

定義3.9 完備ノルム空間を バナッハ空間 [Banach space] とよぶ.

例 3.10 (1) ユークリッド 空間Rn= (Rn,  · ) はバナッハ空間である (例 2.2(2)). (2) ℓ1, ℓ2, ℓはバナッハ空間である(例 2.2(3)).

2の完備性の証明2のコーシ ー点列(xn)n∈ が 収束することを示す.

∀i ∈ に 対し, (pri(xn))n∈ がコーシ ーなので, の完備性より,

∃yi= limn→∞pri(xn)

このとき, y = (yi)i∈ ∈ ℓ2 であることと(xn)n∈ yに 収束することを示す. まず, y∈ ℓ2であること,すなわち,

i=1y

2

i <を示す.

i=1y

2

i =と仮定し て,矛盾を導く

(xn)n∈ がコーシ ーより有界なので,∃r > 0, ∀n ∈ , xn < r 仮定より∃k ∈ such that

k i=1y

2

i > r2+ 1 i = 1, . . . , kに 対し て, yi2= limn→∞pri(xn)2より,

∃ni∈ such that n ni⇒ |pri(xn)2− yi2| < 1/k m = max{n1, . . . , nk}とおくと

xm2

k

i=1

pri(xm)2

k

i=1

yi2

k

i=1

|y2i − pri(xm) 2|

> r2+ 1− 1 = r2矛盾!

次に(xn)n∈ yに 収束することを示す.

∀ε > 0に 対し て, (xn)n∈ がコーシーなので,

∃n0∈ such that m, n n0⇒ xn− xm < ε/2

このとき,∀k ∈ , ∀m, n n0 に 対し て,

k

i=1

(pri(xn)− pri(xm))2

i=1

(pri(xn)− pri(xm))2< ε2/4

(17)

i = 1, . . . , kに 対し て, yi= limn→∞pri(xn)より,

∃ni∈ such that n ni⇒ |pri(xn)− yi| < ε/2

√k m = max{n1, . . . , nk}とおくと

k

i=1

(pri(xn)− yi)2

k

i=1

(pri(xn)− pri(xm))2+

k

i=1

(pri(xm)− yi)2

< ε2/4 + ε2/4 = ε2/2 し たが って,次を得る:

i=1

(pri(xn)− yi)2= sup

k∈ k

i=1

(pri(xn)− yi)2 ε2/2 < ε2

すなわち,∀n n0,xn− y ε

演習3.6 ℓ1 の完備性を 示せ.

定義3.11 集合 X 上の 2 つの距離 d と ρ がつぎの 2 条件を満たすとき, 互いに同 値[equivalent] であるという:

∀ε > 0, ∃δ > 0 such that d(x, y) < δ ⇒ ρ(x, y) < ε;

∀ε> 0, ∃δ> 0 such that ρ(x, y) < δ ⇒ d(x, y) < ε

演習3.7 集合 X 上の距離 d に対して, つぎのように定義される d d が d と˜ 同値な距離となることを 示せ:

d(x, y) =

defmin{1, d(x, y)} ; d(x, y) =˜

def

d(x, y) 1 + d(x, y)

演習3.8 演習 2.4 の距離 ρ1, ρ は 命題 2.7 の直積距離 d に同値になることを 示せ.

ヒント ρ(x, y) d(x, y) ρ1(x, y)に 注意せよ.

演習3.9 (1) 例 2.5 で定義したヒルベルト立方体 INの距離d が以下の 2 つの距 離 ρ1, ρ2に同値であることを 示せ:

ρ1(x, y) =

def

 n=1

2−n|xn− yn| ; ρ2(x, y) =

def





 n=1

1

n2(xn− yn)

2.

ヒント 任意のε > 0に 対し て, d(x, y) < δ⇒ ρ1(x, y) < ε (ρ2(x, y) < ε) なるδ > 0を見付け るには,

n=12

−n<

n=1n

−2< に 注意し て, それぞれの 距離を定義する無限和を有限和の項とε/2未満の 無限和の 項に 分 けて考えよ.

逆に,任意の ε > 0に 対し て, ρ1(x, y) < δ (ρ2(x, y) < δ)⇒ d(x, y) < εとな δ > 0を見付け るには,有限個のn を除き1/n < εとなることに 注意 せよ.

(18)

(2) 以下の距離 ρはヒルベルト 立方体INの距離d に同値ではないことを示せ: ρ(x, y) =

def supn∈N|xn− yn|. ヒント 定義3.11の否定を考えよ.

演習3.10 集合 X 上の完備距離 d と同値な距離 ρ が完備になることを示せ.

演習3.11 線形空間 X 上の 2 つのノルム  · ,  ·  に よって導入され た 距離ddが 互いに 同値になるためには, つぎの 2 条件を満たすことが必要十分であるこ とを 示せ.

∃δ > 0 such that x< δ ⇒ x < 1;

∃δ> 0 such that x < δ⇒ x< 1.

演習3.12 (1) 演習 2.1 におけるRn 2 つのノルム x1, xにより導入さ

れ る距離は, ユークリッド 距離と同値になることを示せ. よって,Rn はこれらの ノルムに 関し てもバナッハ空間となる.

(2) 例 2.2(3) において, ℓ1⊂ ℓ2⊂ ℓであるので, ℓ2およびの ノルムを1 上に

制限することにより, ℓ1上に 3 つのノルムを考えることができるが, これら 3 つ の ノルムの導入する1上の距離は, 互いに同値にはならないことを示せ.

ヒント 演習3.11の 否定を 示せ. なお, “x < δ

⇒ x < 1”の否定は,

“∃x such that x < δ,x 1”となる.

(19)

4 連続写像と 一様連続写像

定義4.1 距離空間 X = (X, dX) から距離空間 Y = (Y, dY) への写像 f : X → Y が つぎ の条件を 満たすとき, 点 x ∈ X で連続 [continuous] であるという:

∀ε > 0, ∃δ > 0 such that dX(x, y) < δ ⇒ dY(f (x), f (y)) < ε

i.e., f (BX(x, δ)) ⊂ BY(f (x), ε)

各点x ∈ X で連続であるとき, f は連続 [continuous] であるという. すなわち,

∀x ∈ X, ∀ε > 0, ∃δ > 0 such that dX(x, y) < δ ⇒ dY(f (x), f (y)) < ε 上の定義において, δ > 0x∈ X ε > 0に 依存する.

定義4.2 距離空間 X = (X, dX) から距離空間 Y = (Y, dY) への写像 f : X → Y が つぎ の条件を 満たすとき, 一様連続 [uniformly continuous] であるという:

∀ε > 0, ∃δ > 0 such that dX(x, y) < δ ⇒ dY(f (x), f (y)) < ε δ > 0ε > 0だけに依存し て決まり, x∈ Xの取り方には 依存し ない. 集合X 上の距離dρが 同値であるとい うのは, idX : (X, d)→ (X, ρ) よびidX: (X, ρ)→ (X, d)が 一様連続であることを意味する.

定理4.3 距離空間 X = (X, dX), Y = (Y, dY), Z = (Z, dZ) に対して, 連続写像 f : X → Y と g : Y → Z の合成 gf : X → Z は連続である. さらに, f , g が一様連 続ならば gf も一様連続である.

演習4.1 連続と一様連続の定義に沿って, 上の定理を証明せよ.

上の定理において, X を Y の部分空間で f を包含写像とすれば, 次が得られる: 系 4.4 距離空間 X = (X, dX) から距離空間 Y = (Y, dY) への写像 f : X → Y の部 分空間A ⊂ X への制限 f |A : A → Y は連続である.

定理4.5 距離空間 X = (X, dX) から距離空間 Y = (Y, dY) への写像 f : X → Y が 点x ∈ X で連続であるためには, つぎの条件が必要十分である:

∀xn∈ X (n ∈N), lim

n→∞xn= x ⇒ limn→∞f (xn) = f (x).

演習4.2 定理 1.12 の証明に倣って, 上の定理を証明せよ.

定理4.6 距離空間の間の (一様) 連続写像 f : X → Y は, X と Y の距離を同値な距 離で 置き換えても(一様) 連続である.

(20)

定理4.7 距離空間 X1= (X1, d1), . . . , Xm= (Xm, dm) の直積空間 X = (X, d) (i.e., X = X1× · · · × Xm) に対して, つぎが成立する:

(1) X から各成分 Xi への射影pri: X → Xiは 一様連続である.

(2) X への写像 f : Y → X が連続であるための必要十分条件は, 各 Xi への 写像

fi= prif : Y → Xiが 連続となることである.

演習4.3 距離空間 X からヒルベルト立方体 INへの 写像f : X → INが 連続とな るためには, 各 fi= prif : Y → I が連続となることが必要十分条件であることを示 せ. ただし, pr

i: I

N→ Iは第i 座標への射影である.

演習4.4 距離空間 X = (X, dX) から距離空間 Y = (Y, dY) への一様連続写像 f : X → Y は X のコーシー点列を Y のコーシー点列に写すことを示せ.

演習4.5 完備距離空間 X = (X, dX) から距離空間 Y = (Y, dY) への一様連続な 全射f : X → Y が存在すれば, Y は完備となるか? 証明または反例を与えよ.

(21)

5 同相写像 , 埋め込み

定義5.1 距離空間 X から距離空間 Y への全単射 f : X → Y が連続で, その逆写像 f−1: Y → X も連続になるとき, f を同相写像 [homeomorphism] と呼ぶ. また, 同 相写像f : X → Y が存在するとき, X と Y は互いに同相 [homeomorphic] であると いい, X ≈ Y と表す.

命題5.2 同相写像の逆写像も同相写像であり, 2 つの同相写像の合成写像も同相写像 である.

これ より, 距離空間 X, Y , Z に対して, つぎが成立する.

X ≈ X ; X ≈ Y ⇒ Y ≈ X ; X ≈ Y, Y ≈ Z ⇒ X ≈ Z

定義5.3 集合 X 上の 2 つの距離 d と ρ に関して, 恒等写像 idX : (X, d) → (X, ρ) が 同相写像と な ると き, d と ρ は X に同じ位相 [topology] (または, 同じ位相構造 [topological structure]) を導入するという. これは, つぎの条件と同値である:

∀x, ∀xn∈ X (n ∈N), lim

n→∞d(xn, x) = 0 ⇔ lim

n→∞ρ(xn, x) = 0 ここでは,位相(構造)が 何であるかを定義し ていないが, “点列の収束や写像 の 連続を 扱 うことの出来る構造と 理解し ておいてもら いたい. 次の 章で,位相 (構造)が 何であ るかを 定義する. 点列の 収束や 写像の 連続を扱 う場合,同じ 位相 を導入する距離であれば,ど の距離を用いてもか まわない.

命題5.4 互いに同値な 2 つの距離は X に同じ位相を導入する.

定義5.5 距離空間 X がある性質をもつならば, それと同相な距離空間 Y もその同 じ 性質をもつとき, その性質を位相不変的な性質 (位相不変量) [topological invariant] と呼ぶ.

位相不変的な性質(位相不変量),距離に 依存し ない性質であり,これによって, 2つの距離空間が 同相であるか 否かを判定できる. 同相であることを示すのには, 同相写像を作れば よいが,同相でないことを示すのには,ある位相不変量を共有し ないことを示せば よい.トポロジ ー(位相幾何学)という学問は位相不変的な性質 を調べる学問といえ る.

例 5.6 完備であるという性質は位相不変的な性質ではない. 実際, 普通の距離で数直 線R は完備であるが, 開区間 (−1, 1) は完備ではない. しかし, R と (−1, 1) は同相 である.

演習5.1 2 つの離散距離空間が同相であるためには, それぞれの濃度が等しいこと が 必要十分であることを 示せ.

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