シンクタンク・証券取引所などに対するインタビュー調査ならびにデータによる実証分析 を基盤とするものである。各国の金融政策、法制度、間接金融、直接金融などをテーマに
個人もしくはチーム単位で活動を進めている。最終年度にあたる2008年度の活動の主目的
は、これまでの研究成果をまとめることであり、その成果は下記のとおりであった(詳細
は各担当者・チームの活動報告を参照)。
研究成果(
論文)
大 倉 正 典 “Firm Characteristics and Access to Bank Loans: An Empirical Analysis of
Manufacturing SMEs in China,” International Journal of Business and Management Science,
1(2), pp.334-368.
大倉正典「中国の省際間資本移動性と非金融企業の投資資金の調達」専修大学社会科学
研究所編『中国社会の現状Ⅱ』。
計聡 “Chinese Informal Financial Systems and Economic Growth -- A Case Study of China's
Small and Medium Enterprises”(近刊)Public Policy Review .vol.5 April.2009.
瀬下博之「抵当権に関する優先権侵害が企業価値に及ぼす影響について」大瀧雅之編『平
成長期不況 政治経済学的アプローチ』,pp.117-145,東京大学出版会(共著)。
瀬下博之「解雇規制と有期雇用保障契約」『経済セミナー』11月号,pp.48-55,日本評論
社(共著)。
瀬下博之「情報の非対称性と自己規制ルール」中山信弘・藤田友敬編『ソフトローの基
礎理論』第2部第2章,pp.123-152,有斐閣。
瀬下博之「ソフトローとハードロー――何がソフトローをエンフォースするのか」中山
信弘・藤田友敬編『ソフトローの基礎理論』第3部第1章,pp.169-194,有斐閣。
鈴木健嗣 “Ownership Structure and Underwriter Spread: Evidence from Japanese IPO Firms,” International Journal of Managerial Finance, 4(2), pp.96-111.
手嶋宣之、鈴木健嗣 “Government Control and the Higher Costs of Going Public: Evidence from
a New Stock Market in China,” Corporate Ownership and Control, 6(1), pp.9-15.
手嶋宣之 “Managerial Ownership and Earnings Management: Theory and Empirical Evidence
from Japan,” Journal of International Financial Management and Accounting, 19(2),
2008 年度研究報告:
金融グループ
●
氏名・
所属
大倉正典・専修大学経済学部准教授
●
2008 年度の研究実施内容
(1) 論文掲載
Firm Characteristics and Access to Bank Loans: An Empirical Analysis of Manufacturing SMEs in China, International Journal of Business and Management Science 1(2): 334-368, 2009.
世界銀行 Enterprise Survey を利用して、中国企業の銀行融資へのアクセスの有無
と企業の諸属性との関係についてプロビット・モデルにより分析した。企業の規模と 立地は、銀行融資の利用確率に有意で大きな差異をもたらしている。また、会計や法 律サービスの利用性、輸出権の有無、政府機関の支援の利用の有無も銀行融資の利用 確率に有意に関連している。
『中国の省際間資本移動性と非金融企業の投資資金の調達」専修大学社会科学研究所 編『中国社会の現状Ⅱ』
中小企業の資金調達環境を理解する上で、経済全体の資金配分状況を把握しておく
ことは重要である。中国の場合は、とくに、地域的な特性もおさえておく必要がある。
こうした問題意識のもとに、中国の地域間資本移動性と非金融企業の投資資金の調達 構成について、省レベルの資金循環表のデータを利用して実証分析した。資金循環表 を省レベルで分析した文献は未だ数少ないと考えられ貢献の一つである。また、非金 融企業の投資資金の調達では、内部留保、政府からの資本移転、同一省内の家計貯蓄 の利用、省外資金の利用を区別して考察した。
(2) 中国の信用保証について
昨年度に引き続き、慶応大学・大学院生の唐斌(Tang Bi n)さんに協力を仰いで、中 国の信用保証に関する下記の文献サーベイを行った。また、文献サーベイに基づいて、
中国の信用保証機関の発展と今後の課題について論文を作成中である。2003 年以降、信
陈晓红・黄楠・曾江洪(2007)、「建立新的“ 政商分 离”担保体系的思考」(新しい「政策
性と商業性担保機構の分離」体系の構築に関する思考)、『民营经济与中小企业管理』
2007年第8期、pp.61-66。
狄娜(2007)、『完善中小企业信用担保体系建设 促进中小企业更好更快发展—中国中小企
业信用担保业2007年度发展报告(中小企業信用担保体系の構築を完備させ、中小企業
の発展を促進する―中国中小企業担保業界2007年度の発展報告書)』。
顾海峰(2008)、「经营性金融创新与我国中小企业信用担保体系发展研究」(金融イノベー
ションと我国の中小企業信用担保体系の発展に関する研究)、『民营经济与中小企业管
理』2008年第7期、pp.31-37。
何嗣江(2007)、「微小企业贷款与信贷机制创新—以台州市商业银行小本贷款为例」(小企
業の融資及び貸付メカニズムの革新―台州市商業銀行の小口融資を例に)、『金融研究
(实务版)』2007年第2期、pp.149-157。
吉明・钱敏・吴登宽(2007)、「温州 开展“ 抵 押权转让” 担保业务情况调查」(温州の「抵 当権譲渡」担保業務の状況調査)、『金融研究(实务版)』2007年第1期、pp.54-59。
柳瑛・于江(2008)、「中国担保业:诱惑与危机」(中国担保業界:誘惑と危機)、『金融与
保险』2008年第2期、pp. 147-150。
孙晨光(2007)、「对焦作市开展信用担保贷款业务情况的调查」(焦作市における信用担保
融資業務の状況に関する調査)、『金融研究(实务版)』2007年第7期、pp.145-150。 田秀娟・许施智・王宾(2007)、「县域中小企业融资渠道研究」(県レベルの中小企業資金
調達ルートに関する研究)、『民营经济与中小企业管理』2007年第8期、pp.49-56。
袁象・余思勤・卞玥杰(2008)、「中国信用担保机 构的信用风险分析」(中国信用担保機構
の信用リスク分析)、『金融论坛』2008第2期、pp. 53-57。
张力生・王耀宗(2007)、「贷款担保:一个信贷市场发展中的“ 瓶颈” 问题」(融資担保―
貸付市場の発展における「ボトルネック」問題)、『金融研究(实务版)』2007 年第 5
期、pp.181-185。
邹蜀宁・范琦(2007)、「青岛市银行业小企业融资服务创新情况调查」(青島市銀行業界の
小企業融資サービスの革新状況に関する調査)、『金融研究(实务版)』2007年第3期、
pp.125-130。
「2007年湖南省担保行业发展情况盘点」(2007年湖南省担保業界の発展状況概要)、『信
2008 年度研究報告:
金融グループ
●
氏名・
所属
計聡・専修大学商学部准教授
●
2008 年度の研究実施内容
今年度の研究は、昨年度に引き続き主に二つの方面で進行している。
(1) 中小企業金融の実態に関する研究(日本のケース)
80 年代までは、日本企業の主要な資金調達は銀行借入を通じて行われていた。その説明
として情報生産機能や保険機能といったメインバンクの役割に関する多くの議論が展開さ れてきた。その後の金融の自由化・国際化に伴い、大企業・上場企業の資金調達には内部 資金や社債・株式発行によるもの中心になりつつある。その一方、非上場企業の中小企業 の資金調達は、公開市場での資金調達に必要とされるハード情報が開示されないため、依 然として銀行借入が中心である。そこで、日本の中小企業金融においても、かつての借手 としての大企業とメインバンクの間の長期的・継続的取引関係がみられるかどうか。個票 データを使い、中小企業金融の実態を探る。
中小企業の場合、ハードな情報には反映されない潜在的な経営者の資質に関するソフト な情報が借手と貸し手の間の情報の非対称性を軽減すると同時に、ソフトな情報の蓄積に はリレーションバンキングバンクが重要であると考えられる。
今年度行った日本の中小企業金融の分析の大きな特徴は以下の通りである。分析のサン プルを業績不振に陥った中小企業に限定して行ったことに加えて、単に取引銀行の変更だ けでなく、同じ銀行内の取引支店変更も考察している点である。また、変更の原因を、支 店閉鎖や銀行倒産・合併といった外的な要因による場合と、それ以外(内的要因)による 場合に分け、変更が借り手企業のその後のパフォーマンスに及ぼす影響を考察している点 にある。
収集したデータでは、中小企業のサンプル数は地域によってかなりのばらつきがあり、
また扱う期間(1993−2003)は銀行の大合併と銀行の不良債権処理という特殊な時期にあ
たっており、分析をまとめるのに若干の時間が必要であるが、できる限り早い時期にまと めたい。
(2) 民間金融に関する研究(中国のケース)
今年度は、まずこれまで行われてきた中国の研究成果をアップデートした。そしてそれ を英訳し『Public Policy Review 』に公表する予定である。
る。そして各地域における民間(インフォーマル)金融と公営(フォーマル)金融の関係を、 また各産業における民営企業の発展段階における資金調達の方法を中心に分析してきた。 しかしながら、民間金融部門の企業情報についてはデータ公表がほとんどなく、現地での 更なる資料収集とヒアリング調査が必要と思われる。
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研究成果の公表
“Chinese Informal Financial Systems and Economic Growth -- A Case Study of China's Small
2008 年度研究報告:
金融グループ
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氏名・
所属
瀬下博之・専修大学商学部教授
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研究目的の概要
中小企業の資金調達手段は限られている。金融市場がかなり発達している国でさえ、そ の資金調達手段は主として銀行からの融資である。この融資は負債契約で実行される。従 って、中小企業の資金調達は、その国の担保法制や倒産法制、さらにはその前提となる所 有権や契約法などの整備状況から大きく影響を受ける。実際近年のアジア諸国は、アジア 通貨危機や日本の長期の経済の低迷などの教訓から、これらの法整備や改正を積極的に進 めてきた。また近年、新興企業向けに上場基準等を緩和した市場も多くの国で整備されて きているが、中小企業においては投資家との間で情報の非対称性の問題が深刻に存在する ことからも、市場にさまざまなゆがみも生じやすい。
本研究では、このようなアジアの中小企業向けの金融問題を経済学的な観点から分析し、 その分析を通してアジアの中小企業金融に特有な法的・制度的な問題点などを明らかにし、 効率的な資源配分を達成しうる金融制度のあり方を検討する。
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2008 年度の研究実施内容
本年は中小企業の直面する資金調達の問題について法制度とのかかわりを理解するため に、法とファイナンスや、金融市場と経済成長に関するクロスカントリーデータの実証分 析についての文献をサーベイし、企業の資金調達と法制度や経済成長の関係を検討した。 また日本の会社法や民法、倒産法制、信託法などの近年のさまざまな法改正を、企業の資 金調達という観点から整理し、その意義を分析した。その上で、その分析などを論文(未 定稿)としてまとめた。
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研究成果の公表
・2008年7月「抵当権に関する優先権侵害が企業価値に及ぼす影響について」大瀧雅之編
『平成長期不況 政治経済学的アプローチ』,p117-145, 東京大学出版会(共著)
・2008年11月「解雇規制と有期雇用保障契約」『経済セミナー』11月号,p48-55,
日本評論社(共著)
・2008年11月「情報の非対称性と自己規制ルール」中山信弘・藤田友敬編
『ソフトローの基礎理論』第2部第2章p123-152,有斐閣(単著)
・2008年11月「ソフトローとハードロー――何がソフトローをエンフォースするのか」中山
鈴木健嗣・東京理科大学経営学部専任講師 手嶋宣之・専修大学商学部准教授
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研究目的の概要
東アジアにおける中小企業の資金調達を研究するという金融グループの枠組みの中で、
われわれは特に中小企業向けの証券市場(新興市場)に焦点をあてている。1990年ごろか
ら東アジア諸国に相次いで新興市場が開設されており、それぞれが国情などを反映した特 色を有している。各国の新興市場の制度・動向を横断的に比較して、中小企業向け証券市 場の成功要因や課題を分析するとともに、企業レベルのデータを使用して、株価形成のプ
ロセスなどについて実証分析を進めている。このプロジェクトを開始して以来、シンセン、
香港、台湾の順に、現地調査とそれに基づく研究を行っている。
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2008 年度の研究実施内容
(1) 中国(シンセン)の中小企業向け株式市場の研究
(論文の刊行)
2007年7月に国際学会(4th SMEs in a Global Economy Conference)にて報告した
論文を大幅に改訂の上、査読つきの英文雑誌(Corporate Ownership and Control)に投
稿した。レフェリーの審査を経てアクセプトされ、2008年9月に刊行された同誌の第6
巻第1号に収録された。
(2 ) 台湾におけるIPOの研究
(実証分析の実行)
昨年度末に契約したTaiwan Economic Journalのデータベースを使って、台湾のIP