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日本のリーダーの不思議 なぜ国民と同じ方向を向かないのか 金子博人のエッセイ|M&A・企業再生・民事再生の弁護士 金子博人法律事務所

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Academic year: 2018

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(1)

1 

. 

日 

本 

の 

リ 

ー 

ダ 

ー 

は 

特 

異 

本  稿  の  第  3  回  で  説  明  し  た  と  お  り  、  日  本  は  、  異  民  族  の  侵  入  が  な  い  と  い  う  こ  と  か  ら  、  甘  え  社  会  が  構  築  さ  れ  た  。  そ  の  結  果  、  リ  ー  ダ  ー  の  あ  り  方  も  日  本  は  極  め  て  特  異  で  あ  る  。  今  回  の  、  東  日  本  大  震  災  や  福  島  第  一  原  発  の  事  故  で  、  日  本  の  ト  ッ  プ  リ  ー  ダ  ー  と  大  陸  諸  国  の  そ  れ  の  ス  タ  ン  ス  の  違  い  が  顕  著  に  表  れ  る  こ  と  と  な  っ  た  。  日  本  の  リ  ー  ダ  ー  を  考  え  る  と  き  の  絶  好  の  研  究  テ  ー  マ  と  な  る  の  で  、  こ  こ  に  検  討  す  る  こ  と  と  し  よ  う  。 

2 

. 

リ 

ー 

ダ 

ー 

の 

決 

断 

は 

突 

然 

出 

る 

福  島  第  一  原  発  の  危  機  に  際  し  、  発  生  後  2  ヶ  月  近  く  た  っ  た  5  月  7  日  、  政  府  よ  り  浜  岡  原  発  の  停  止  の  決  定  が  突  然  発  表  さ  れ  た  。  ま  さ  に  唐  突  で  あ  り  、  経  団  連  の  米  倉  弘  昌  会  長  は  、  自  分  に  は  相  談  が  な  か  っ  た  と  不  快  感  を  露  骨  に  表  明  し  て  い  た  。  し  か  し  、  リ  ー  ダ  ー  の  決  断  は  突  然  、  唐  突  に  出  る  の  が  世  界  標  準  で  あ  る  。  大  陸  国  で  あ  る  欧  米  諸  国  は  、  大  統  領  や  首  相  の  決  定  は  突  然  発  表  さ  れ  る  の  が  原  則  で  、  作  成  、  形  成  過  程  は  秘  密  と  さ  れ  る  。  こ  の  と  き  の  管  政  権  の  決  定  は  、  確  か  に  突  然  の  発  表  で  あ  っ  た  が  、  世  界  的  に  は 

普  通  の  こ  と  で  あ  る  。  作  成  過  程  を  公  表  す  る  と  不  利  益  を  被  る  層  が  猛  反  発  を  し  て  、  結  局  利  益  を  調  整  し  た  八  方  美  人  の  結  論  が  出  て  き  て  し  ま  う  。  調  整  案  は  、  最  良  の  結  果  を  生  み  出  す  案  と  は  別  物  な  の  で  あ  る  。  欧  米  の  ト  ッ  プ  リ  ー  ダ  ー  は  人  の  意  見  を  十  分  に  斟  酌  し  て  決  定  す  る  と  し  て  も  、  そ  の  過  程  は  公  表  せ  ず  、  出  て  き  た  案  の  う  ち  で  最  高  の  結  果  を  も  た  ら  す  と  思  わ  れ  る  案  を  そ  の  責  任  で  決  定  し  発  表  す  る  。  発  表  と  同  時  に  な  ぜ  そ  の  案  が  ベ  ス  ト  か  、  国  民  に  向  か  っ  て  滔  々  と  演  説  す  る  。  そ  の  演  説  力  こ  そ  リ  ー  ダ  ー  の  実  力  の  み  せ  ど  こ  ろ  だ  。  と  こ  ろ  が  、  日  本  は  調  整  さ  れ  た  案  こ  そ  ベ  ス  ト  で  あ  る  と  考  え  る  。  結  果  の  是  非  よ  り  も  、  調  整  し  た  と  い  う  こ  と  自  体  が  大  事  な  の  だ  。  そ  の  結  果  、  諮  問  委  員  会  で  答  申  さ  せ  、  あ  る  い  は  、  各  界  の  意  見  を  徴  し  て  、  出  て  き  た  さ  ま  ざ  ま  な  意  見  を  調  整  し  た  う  え  で  最  終  決  定  が  な  さ  れ  る  。  そ  こ  で  の  決  定  は  、  結  果  が  最  良  と  い  う  よ  り  も  、  み  な  の  顔  を  立  て  た  中  庸  の  案  と  な  る  。  中  庸  の  案  こ  そ  、  民  主  主  義  の  成  果  と  な  る  の  で  あ  る  。  欧  米  も  民  主  主  義  の  社  会  で  あ  る  が  、  同  じ  民  主  主  義  で  も  内  容  は  日  本  と  は  大  い  に  異  な  る  よ  う  だ  。  多  数  決  の  み  が  民  主  主  義  で  は  な  く  、  そ  れ  と  は  別  に  、  国  や  社  会  を  率  い 

て  い  く  ト  ッ  プ  リ  ー  ダ  ー  の  決  断  を  尊  重  し  、  大  事  に  す  る  こ  と  も  、  民  主  主  義  の  必  須  の  要  素  と  考  え  る  。  し  か  し  、  日  本  人  は  そ  の  よ  う  に  ト  ッ  プ  の  決  断  に  依  存  す  る  と  独  裁  者  が  で  き  て  し  ま  う  と  心  配  す  る  。  だ  が  、  不  適  切  な  決  断  し  か  で  き  な  い  無  能  な  ト  ッ  プ  は  辞  め  て  も  ら  え  ば  い  い  。  ま  た  、  決  定  で  不  利  益  を  受  け  る  者  は  、  民  主  的  な  方  法  で  そ  れ  を  ア  ピ  ー  ル  す  れ  ば  よ  い  。  そ  の  た  め  の  手  段  と  し  て  、  大  部  分  の  欧  米  諸  国  は  憲  法  裁  判  所  を  設  け  て  お  り  、  そ  れ  を  活  用  し  て  い  る  。  福  島  第  一  原  発  の  放  射  能  放  出  事  故  を  う  け  、  ド  イ  ツ  の  メ  ル  ケ  ル  政  権  は  2  0  2  0  年  ま  で  に  、  原  発  を  全  廃  す  る  決  定  を  し  、  脱  原  発  法  を  成  立  さ  せ  た  。  こ  れ  に  対  し  電  力  会  社  は  、  脱  原  発  法  を  違  憲  だ  と  し  て  違  憲  訴  訟  を  提  起  す  る  は  ず  で  あ  る  。  欧  米  社  会  で  は  、  政  府  の  決  定  や  成  立  し  た  法  律  に  対  し  て  、  そ  れ  に  反  対  す  る  業  界  か  ら  違  憲  訴  訟  が  起  こ  さ  れ  る  こ  と  は  日  常  茶  飯  事  で  あ  る  。  欧  米  諸  国  は  、  ト  ッ  プ  の  決  定  は  唐  突  で  あ  る  こ  と  を  当  然  視  し  、  民  主  的  な  吟  味  は  、  後  か  ら  行  使  す  れ  ば  十  分  と  す  る  。  そ  れ  な  ら  、  事  前  に  調  整  す  れ  ば  い  い  で  は  な  い  か  と  考  え  る  の  が  日  本  人  で  あ  る  が  、  仮  に  、  手  間  が  か  か  っ  て  も  、  ト  ッ  プ  リ  ー  ダ  ー  の  決  断  を  尊  重  す  る  の  が  欧  米  社  会  で  あ  る  。  ほ  か  の  文  化  圏 

第19回 日本のリーダーの不思議

なぜ国民と同じ方向を向かないのか

どうすれば強い日本を作れるのか

弁護士 金子博人

The Lawyers July 2011 64

(2)

65 The Lawyers July 2011

■ 随想 「甘え」が日本を滅ぼす

で  も  、  大  陸  諸  国  で  は  ト  ッ  プ  リ  ー  ダ  ー  の  決  断  は  唐  突  な  は  ず  で  、  そ  れ  を  当  然  視  し  て  い  る  の  だ  。 

3 

. 

国 

の 

ト 

ッ 

プ 

リ 

ー 

ダ 

ー 

は 

国 

民 

と 

同 

じ 

方 

向 

を 

向 

く 

東  日  本  大  震  災  で  は  、  菅  総  理  は  強  い  リ  ー  ダ  シ  ッ  プ  を  ふ  る  え  な  か  っ  た  。  少  な  く  と  も  、  多  数  の  国  民  に  は  強  い  リ  ー  ダ  ー  と  は  映  ら  な  か  っ  た  。  国  の  危  機  の  と  き  、  ト  ッ  プ  リ  ー  ダ  ー  と  し  て  は  そ  の  指  導  力  を  ア  ピ  ー  ル  し  、  支  持  率  を  上  げ  る  絶  好  の  チ  ャ  ン  ス  な  の  に  、  菅  総  理  は  そ  れ  が  で  き  な  か  っ  た  の  だ  。  な  ぜ  か  。  そ  れ  は  片  足  を  東  電  側  に  置  き  国  民  と  対  立  す  る  ス  タ  ン  ス  を  取  っ  た  か  ら  で  あ  る  。  こ  れ  は  、  国  民  と  東  電  の  調  整  役  に  な  っ  て  し  ま  っ  た  の  で  あ  り  、  こ  う  な  る  と  、  事  態  が  う  ま  く  展  開  し  な  い  と  き  に  、  そ  の  責  任  を  東  電  と  一  緒  に  負  う  こ  と  に  な  り  、  東  電  と  一  緒  に  怒  り  の  タ  ー  ゲ  ッ  ト  に  な  っ  て  し  ま  う  。  こ  れ  は  極  め  て  危  険  な  こ  と  で  あ  り  、  世  界  の  リ  ー  ダ  ー  は  、  極  力  こ  の  よ  う  な  事  態  を  避  け  よ  う  と  す  る  。  危  機  の  と  き  、  リ  ー  ダ  ー  は  国  民  と  同  じ  方  向  を  向  き  、  国  民  と  意  識  を  共  通  化  す  る  必  要  が  あ  る  。  そ  の  た  め  に  は  、  国  民  の  意  識  を  代  弁  し  て  、  ﹁  な  ぜ  、  こ  ん  な  こ  と  が  起  き  た  の  だ  ﹂  と  怒  り  、  ﹁  状  況  を  迅  速  か  つ  正  確  に  知  ら  せ  ろ  。  あ  ら  ゆ  る  手  段 

を  尽  く  し  て  事  態  を  解  決  し  ろ  ﹂  と  、  東  電  に  強  く  迫  る  。  同  時  に  、  政  府  は  、  現  地  本  部  を  置  い  て  専  門  家  を  常  駐  さ  せ  、  専  用  回  線  を  施  設  し  、  独  自  に  必  要  な  情  報  を  確  保  す  る  。  そ  れ  を  前  提  に  、  国  民  に  対  し  、  ﹁  現  場  指  揮  が  出  来  る  よ  う  に  な  っ  た  。  安  心  し  て  く  れ  ﹂  と  ア  ピ  ー  ル  す  べ  き  で  あ  る  。  そ  の  時  で  も  、  発  表  は  ま  ず  東  電  に  さ  せ  、  ﹁  そ  れ  で  は  、  不  足  だ  。  国  民  が  納  得  し  な  い  。  政  府  は  こ  の  様  な  情  報  を  得  て  い  る  ぞ  ﹂  と  の  ス  タ  ン  ス  で  、  政  府  の  得  た  情  報  を  追  加  し  て  発  表  す  る  必  要  が  あ  る  。  政  府  は  、  こ  の  よ  う  に  常  に  国  民  側  に  立  つ  必  要  が  あ  り  、  か  つ  、  国  民  を  安  心  さ  せ  る  必  要  が  あ  る  。  こ  の  安  心  感  こ  そ  、  政  府  が  国  民  に  与  え  る  べ  き  責  務  で  あ  り  、  こ  れ  が  政  府  に  対  す  る  信  頼  感  に  変  わ  る  も  の  で  あ  る  。  2  0  1  0  年  8  月  、  チ  リ  で  、  鉱  山  の  落  盤  事  故  が  生  じ  、  3 3 人  が  地  下  7  0  0  メ  ー  ト  ル  に  閉  じ  込  め  ら  れ  る  と  い  う  事  故  が  起  き  た  。  こ  の  と  き  チ  リ  の  大  統  領  は  、  現  地  に  陣  取  り  、  自  分  が  指  揮  し  て  い  る  か  の  ご  と  く  ふ  る  ま  い  、  国  民  に  安  心  感  を  あ  た  え  、  自  分  の  存  在  感  を  め  い  っ  ぱ  い  ア  ピ  ー  ル  し  た  。  決  し  て  、  鉱  山  側  や  そ  れ  を  管  轄  す  る  役  所  側  に  立  た  な  か  っ  た  。  こ  れ  が  、  世  界  の  リ  ー  ダ  ー  で  あ  る  。  し  か  し  、  日  本  で  は  こ  う  は  行  か  な  い  の  だ  。 

枝  野  官  房  長  官  が  、  事  故  直  後  か  ら  状  況  を  発  表  し  だ  し  た  が  、  そ  の  方  法  は  致  命  的  な  失  策  で  あ  っ  た  。  ま  る  で  、  東  電  に  な  り  か  わ  っ  て  発  表  し  て  し  ま  い  、  こ  れ  に  よ  り  、  政  府  の  軸  足  の  一  本  は  東  電  や  経  産  省  側  に  乗  っ  か  り  、  国  民  と  相  対  立  し  て  し  ま  っ  た  。  自  分  は  、  東  電  が  発  表  し  な  い  か  ら  、  あ  る  い  は  、  不  十  分  な  の  で  そ  れ  を  補  足  す  る  、  あ  る  い  は  、  東  電  の  発  表  に  対  し  意  見  を  述  べ  る  と  い  う  ス  タ  ン  ス  を  明  確  に  し  、  自  分  は  常  に  国  民  側  に  立  っ  て  、  最  善  を  尽  く  し  て  い  る  と  い  う  姿  勢  を  示  す  べ  き  で  あ  っ  た  。  が  、  実  際  は  逆  の  立  ち  位  置  と  な  っ  て  し  ま  っ  た  の  で  、  そ  の  後  の  遅  々  と  し  て  進  ま  な  い  原  子  炉  の  冷  却  は  、  政  府  に  指  導  力  が  無  い  た  め  と  い  う  こ  と  に  な  っ  て  し  ま  い  、  急  速  に  国  民  の  支  持  を  失  っ  て  い  っ  た  。  今  回  の  原  発  事  故  は  、  菅  政  府  の  失  策  で  な  く  、  東  電  の  サ  ボ  タ  ー  ジ  ュ  を  放  置  し  て  き  た  歴  代  自  民  党  政  府  の  失  策  で  あ  る  。  菅  政  府  と  し  て  は  、  事  故  に  対  し  て  は  怒  り  、  被  害  の  最  小  化  に  努  力  す  る  と  と  も  に  、  今  後  の  原  子  力  対  策  に  対  し  抜  本  的  な  見  直  し  が  必  要  で  あ  る  旨  意  思  表  示  す  べ  き  で  あ  っ  た  。  し  か  し  、  実  際  は  浜  岡  原  発  の  再  開  を  止  め  た  だ  け  で  、  そ  れ  以  上  の  意  思  表  示  が  で  き  な  か  っ  た  。 

と  こ  ろ  が  、  当  事  国  で  な  い  ド  イ  ツ  が  2  0  2  0  年  ま  で  に  原  子  力  発  電  所  を  全  廃  す  る  こ  と  を  決  め  、  イ  タ  リ  ア  は  、  国  民  投  票  で  原  発  の  新  た  な  設  置  を  否  決  し  て  し  ま  っ  た  。  ト  ッ  プ  の  リ  ー  ダ  シ  ッ  プ  力  の  違  い  を  見  せ  付  け  る  こ  と  と  な  り  、  菅  総  理  の  指  導  力  の  無  さ  が  、  際  立  っ  て  し  ま  っ  た  。  菅  総  理  は  平  均  的  な  日  本  人  な  の  で  、  東  電  や  経  産  省  、  産  業  界  を  含  め  た  原  発  推  進  派  の  意  見  と  原  発  に  対  し  強  い  不  信  感  を  抱  く  国  民  の  多  数  の  意  見  を  調  整  す  る  こ  と  こ  そ  政  府  の  役  割  と  い  う  発  想  か  ら  抜  け  出  す  こ  と  が  で  き  な  か  っ  た  の  だ  ろ  う  。  そ  の  結  果  、  ド  イ  ツ  や  イ  タ  リ  ア  の  よ  う  な  ト  ッ  プ  と  し  て  の  役  割  を  果  た  せ  な  い  ま  ま  、  政  権  を  去  る  こ  と  と  な  ろ  う  。  次  の  総  理  は  、  は  た  し  て  国  民  と  同  じ  方  向  を  向  け  る  の  で  あ  ろ  う  か  。 

金  子  博  人 

︵  か  ね  こ  ・  ひ  ろ  ひ  と  ︶ 

(3)

掲載内容の無断転載・転用を固く禁 ま 。

金子博人法律事務所

104-0061

東京都中央区銀座

8

丁目

10

4

和孝銀座

8

丁目ビル

7

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