14Seika1-2 生化学Ⅰ 第2回小テスト
2014.12.11 問題 1.
i.以下の酢酸のイオン化反応式(式 1)において,Brønsted・Lowry の定義に従って「酸」 と呼べるもの,「塩基(アルカリ)」と呼べるものをすべて答えなさい。ただし,H3O
+
=H+とみなしてよい。
CH3COOH + H2O ⇄ CH3COO + H3O+....式 1
ii. 問題ⅰの式1を用いて,水の濃度([H2O])がほぼ一定であることを利用すると酢酸に 固有の解離定数 Ka (=K[H2O])を定義した以下のような式が作成できます。
Ka=![!!![!!!!"!!]
!!""#] ....式2
式2より,酢酸についてのヘンダーソン・ハッセルバルヒの式を導出しなさい。
iii. 実験に利用するために 0.1 mol/l 酢酸水溶液(CH3COOH)100 mlと 0.5mol/l 酢酸ナ トリウム水溶液(CH3COONa)を 200 ml混合して全体の体積を純水で 1 リットルに調製 した。以上の情報より,ii.で導出したヘンダーソン・ハッセルバルヒの式を用いてこの溶 液の pH を求めなさい。ただし,計算にあたっては下記の3点に注意すること。
・酢酸の pKa(=log10Ka)の値は 4.76 である。
・加えられた酢酸ナトリウム分子はすべてイオン化している。
・加えられた酢酸分子の中でイオン化した分子の濃度は加えた酢酸ナトリウムの濃度より も十分小さい,無視できるほどの値である。
問題 2.下の図は「ヴォート生化学第 4 版」の図 3-3 より抜粋した核酸の図である。この 図を参考に以下の問に答えなさい。
i. 図中の分子は DNA ですか,RNA ですか?根拠ととも に答えなさい。
ii. 図に描かれた,リン酸基で形成される核酸の骨格をな す分子結合の名前を答えなさい。
iii.図中①,②の,核酸の分子末端の正式名称を答えなさ い。
iv. 文中❶∼❼に適当な塩基名・化合物名を答えなさい。 図中には 4 種類の塩基が表示されていますが,A
( ❶ ),G( ❷ )は ❸ という 化合物と同じ環状構造を持ち,C( ❹ )と U
( ❺ )は ❻ という化合物と同じ環状 構造を持つ。図にあるように,U の 5 位にメチル基が 結合した塩基は T( ❼ )と呼ぶ。
v. 1953年に発表された,「DNA の二重らせん構造」の構 造的特徴をまとめなさい。
<裏に続く>
①
②
14Seika1-2 vi. DNA から蛋白質への遺伝情報の流れを示す「セントラルドグマ」とはどのような概念 か,必要ならば図を用いて説明しなさい。
問題 3.
i. 下の①∼⑩は,生物で蛋白質を合成する材料の「天然アミノ酸」10 種類の構造を示す。 それぞれのアミノ酸について「名称」「3 文字略語表記」「1 文字略語表記」を答えなさい。
ii. 問題 i.のアミノ酸④,⑤,そして⑦は,他の天然アミノ酸が持たない,「ユニークな特 徴」を持つアミノ酸である。これら 3 つのアミノ酸が持つ「ユニークな特徴」について, それぞれ簡単に説明しなさい。
① ② ③
④ ⑤ ⑥ ⑦
⑧ ⑨ ⑩
解答用紙 所属 学籍番号 氏名
<裏に続く> 14Seika1-2 問題 1.28点
i.酸(5点,一方のみ3点) CH3COOH, H3O+
塩基(5点一方のみ3点) H2O, CH3COO-
ii. Ka= !
![!!!!"!!]
[!!!!""#] より log10Ka=log10[H
+] + log10[!!!!"!!]
[!!!!""#], 」3
移項してlog10[H+] = log10Ka + log10
[!!!!"!!]
[!!!!""#]。」9 log10[H
+] = pH, log10Ka=pKaという表 記を利用して pH = pKa + log10
[!!!!"!!]
[!!!!""#] が Henderson・Hasselbalch の式。(10点)
iii. 加えた酢酸,酢酸ナトリウムの1リットル中のそれぞれの濃度を計算すると: 酢酸: 0.1 x 100/1000=0.01 mol/l」2
酢酸ナトリウム:0.5 x 200/1000=0.1 mol/l。」4このなかで,酢酸は一部酢酸イオンと水素イ オンに電離するが,実際に電離する酢酸の濃度は大変少なく(この条件ではだいたい 10-8mol/l),無視しても良い位である。一方酢酸ナトリウムは全部イオン化するので, [CH3COOH]=0.01 mol/l,[CH3COO̶]=0.1 mol/lと近似して良い。この 2 つの値を ii.で求めた 式に代入すると: pH=pKa + log10(0.1/0.01)」6= pKa + 1 = 4.76 + 1=5.76。(8点)
問題 2.36点 i.どっち?
RNA(2点)
根拠 (根拠が正しくても核酸名が間違っていればx。「ウラシルある」は1点)
図中リボースの2 位には水酸基(OH)が結合しているので(2点) ii.
ホスホジエステル結合(2点)
iii.①(頭) 5 末端(2点) ②(尾) 3 末端(2点)
iv.❶ アデニン ❷ グアニン ❸ プリン ❹ シトシン
❺ ウラシル ❻ ピリミジン ❼ チミン(各2点) v.
2本のポリヌクレオチド鎖が互い違い(逆平行)の配置で右巻きらせん構造を形成してい る。塩基(疎水性)はらせんの内側に,糖とリン酸の主鎖はらせんの外側に配置される。 らせんの形の関係上,主溝と副溝と呼ばれる2種類の溝が分子表面に現れる。2本のポリ ヌクレオチド鎖は水素結合からなる塩基対により安定化される。アデニンはチミンと2本 の水素結合,グアニンはシトシンと3本の水素結合を形成する。(7点,下線各1点)
14Seika1-2 問題 2.(続)
vi. Francis Crick が提唱した「遺伝情報の基本的な流れ」を表すコンセプトで親 DNA→子 DNAは「複製」,DNA→RNA は「転写」,RNA→タンパク質は「翻訳」という反応を経て 遺伝情報が伝達される。
(5点,部分点有り)
問題 3.36点(全欄 各1点;名称を英語で表記した人は最大5点のEnglish Bonusあり)
i. 名称 3文字略語 1文字略語
① バリン Val V
② イソロイシン Ile I
③ グルタミン酸 Glu E
④ システイン Cys C
⑤ ヒスチジン His H
⑥ トリプトファン Trp W
⑦ プロリン Pro P
⑧ アルギニン Arg R
⑨ セリン Ser S
⑩ アスパラギン Asn N
ii.④ システインのチオール基は酸化反応を経てジスルフィド結合という共有結合を作 り,タンパク質の構造安定化に寄与できる。(2点,原則「特徴」と「どうユニークなのか」の説 明がそろって満点)
⑤ ヒスチジンのイミダゾール基は中性付近の pH で水素イオンを解離する(pKa=6.06) ので,酵素反応などで水素イオンのやりとりに関わる場合が多い(酵素の反応部位で見か けることが多い)。(2点)
⑦ プロリンは天然アミノ酸の中で唯一側鎖がα炭素とアミノ基の2箇所に結合するので
(イミノ酸の一種であるので)構造上の自由度が制限された「堅い」分子として,タンパ ク質の構造安定化に寄与する残基である。(2点)
※English Bonus 込みで105点満点。
DNA RNA タンパク質 翻訳
複製 転写