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第4 回 T C A サイ ク ルと
電子伝達系
日紫喜 光良
基礎生化学
2010.4.27
T C A サイ ク ル
• T C A : Tricarboxilic acids
– カ ルボニル基( 炭素と 酸素の2 重結合) が3 個含
まれる酸
• サイ ク ル: も と に戻る
3
T C A サイ ク ルのはたら き
炭素数6 ( グルコ ースなど)
炭素数3 の中間代謝物
× 2分子(以下略)
炭素数2 の中間代謝物
CO
2炭素数4 の
中間代謝物
炭素数6 の
中間代謝物
炭素数5 の
中間代謝物 CO
2CO
2イラストレーテッド生化学 図8.2
T C A サイ ク ルの場所: ミ ト コ ンド リ ア
細胞質
外膜
NADH など 内膜
アセチル CoA など
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T C A サイ ク ルの中間代謝物
ピルビン酸
アセチル CoA
ク エン酸
イ ソ ク エン酸
α −ケト グルタ ル酸
スク シニルC o A
コ ハク 酸
フ マル酸
リ ンゴ酸
オキサロ酢酸
CO
2CO
2C6
C5
C4
C3
C2
CO
2TCA 回路への投入と 産生
アセチル CoA ( CoA+COCH 3 )
TCA 回路
CO
NAD + 3 個 FAD 1 個 H 2 O 2 個
NADH ( + H + ) 3 個 FADH 2 1 個
GDP ( +Pi ) 1 個
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T C A サイ ク ルでのエネルギー産生
ピルビン酸
アセチル CoA
ク エン酸
イ ソ ク エン酸
α −ケト グルタ ル酸
スク シニルC o A
コ ハク 酸
フ マル酸
リ ンゴ酸
オキサロ酢酸
CO
2CO
2C6
C5
C4
NADH
NADH
GTP
FADH
2NADH
T C A サイ ク ルでできるエネルギー源
• G T P
• N A D H
• F A D H 2
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N A D + の還元→ NADH の生成
イラストレーテッド生化学 図28.14
ヒ ド リ ド イ オン
( 水素原子+電子)
N A D
+N A D H
フ ラ ビンアデニンジヌ ク レオチド ( FAD)
イラストレーテッド生化学 図28.15
リボフラビン(ビタミンB2) リン酸 結合
リン酸 結合
リボース アデニン
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TCA サイ ク ルの酵素
ピルビン酸デ
ヒ ド ロゲナーゼ
複合体
ピルビン酸
アセチルCoA オキサロ酢酸
クエン酸
ク エン酸シンタ ーゼ
アコ ニタ ーゼ
イソクエン酸
イ ソ ク エン酸デ
ヒ ド ロゲナーゼ
α ーケトグルタル酸
α - ケト グル
タ ル酸デヒ
ド ロゲナー
ゼ複合体
スクシニルCoA
リ ンゴ酸デヒ ド
ロゲナーゼ
リンゴ酸
フ マラ ーゼ
フマル酸
コ ハク 酸チオキナーゼ
コハク酸
コ ハク 酸デヒ ド ロ
ゲナーゼ
アセチル CoA の生成
ピルビン酸デヒ ド ロゲ
ナーゼ複合体
CoA と NAD+
ピルビン酸
NADH + H+
CO2
アセチル CoA
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ピルビン酸デヒ ド ロゲナーゼ複合体
• ピルビン酸デヒ ド ロゲナーゼ
• ジヒ ド ロリ ポアミ ド アセチルト ラ ンスフ ェ ラ ーゼ
• ジヒ ド ロリ ポアミ ド レダク タ ーゼ
• 補酵素
– チアミ ンピロリ ン酸
– リ ポ酸
– FAD
– NAD+
→チアミ ン ( ビタ ミ ン B
1) やナイ アシン ( ビタ ミ ン B
3) の不足は深
刻な中枢神経症状を引き起こ す
コ エンザイ ムA ( CoA )
アセチルCoA
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ク エン酸の生成
アセチルCoA
オキサロ酢酸
クエン酸シ ンターゼ
クエン酸
イラストレーテッド生化学 図9.5
α - ケト グルタ ル酸の生成
クエン酸
イソクエン酸
イソクエン酸デヒドロゲナーゼ アコニターゼ
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スク シニル CoA の生成
α - ケト グルタ ル酸
スク シニル CoA
α - ケト グルタ ル酸デヒ
ド ロゲナーゼ複合体
NAD
+NADH + H
+CO
2イラストレーテッド生化学 図9.6
リ ンゴ酸の生成
スクシニルCoA
コハク酸
コハク酸デヒドロゲナーゼ
フマル酸
フマラーゼ
コハク酸チオキナーゼ
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オキサロ酢酸の再生
リンゴ酸
オキサロ酢酸
リンゴ酸デヒドロゲナーゼ
イラストレーテッド生化学 図9.7
1 分子のアセチル CoA から 作ら れる
ATP の数
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TCA 回路まと め( 1 )
1周する間に、1分子のアセチルCoAから3分子の
NADH, 1分子のFADH2ができる。また、1分子のGTP ができる。アセチルCoAの炭素は2分子のCO2として 消滅する。
アセチルCoA
クエン酸
イソクエン酸
α -ケトグルタル酸
スクシニルCoA コハク酸
フマル酸 リンゴ酸
オキサロ酢酸
CO2
CO2 図9.9
T C A 回路の調節
• ピルビン酸デヒ ド ロゲナーゼ複合体
• イ ソ ク エン酸デヒ ド ロゲナーゼ
• α ーケト グルタ ル酸デヒ ド ロゲナーゼ複合体
酸化的脱炭酸
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ピルビン酸デヒ ド ロゲナーゼ複合体の調節
リ ン酸化→不活性化
脱リ ン酸化→活性化
プロテインホスファターゼを活性 化(ピルビン酸デヒドロゲナーゼ を活性化):カルシウムイオン
プロテインキナーゼを活性化: ATP,アセチルCoA, NADH プロテインキナーゼを不活性化
(ピルビン酸デヒドロゲナーゼを活 性化):ピルビン酸
イ ソ ク エン酸デヒ ド ロゲナーゼの調節
• イ ソ ク エン酸+ NAD + →α −ケト グルタ ル酸
+ CO 2 + NADH + H +
• 活性化するも の: ADP, Ca 2+
• 阻害するも の: ATP, NADH
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α ーケト グルタ ル酸デヒ ド ロゲナーゼ
複合体の調節
• α −ケト グルタ ル酸+ CoA + NAD + →スク シ
ニル CoA + CO2 + NADH + H +
• 補酵素:
– チアミ ンピロリ ン酸、 リ ポ酸、 FAD 、 NAD
+、 CoA
• 阻害するも の: ATP, GTP, NADH, スク シニ
ル CoA
• 活性化するも の: Ca 2+
• リ ン酸化、 脱リ ン酸化による調節は受けてい
ない。
TCA 回路まと め( 2 ) 反応を促進または阻害する要因
エネルギー物質( NADH,
ATP, GTP ) 過剰、 中間
代謝物 ( スク シニル CoA)
蓄積→阻害
エネルギー物質不足
(ADP 増加) 、 Ca イ オ
ン→促進
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N A D H 、 F A D H
2 の処理
• 電子の運び屋
• 水素原子を酸素と 反応さ せて水をつく る。
• その際のエネルギーでミ ト コ ンド リ ア内部から
H + を外にく み出す
• H + がチャ ンネルを通っ てミ ト コ ンド リ アに再流
入するエネルギーで ADP をリ ン酸化し て ATP
にする。
「 酸化的リ ン酸化」
質問
• ピルビン酸から アセチル CoA と CO2 への変換
に関し て正し いも のはどれか
– A . 可逆的である
– B . リ ポ酸が関与する
– C . ATP の存在下に PDH キナーゼによっ てピルビ
ン酸デヒ ド ロゲナーゼ (PDH) 複合体がリ ン酸化さ
れると 活性化さ れる
– D . 細胞質でおこ る。
29
質問
• ク エン酸回路におけるアセチル CoA の酸化が
減少するのはどう いう 場合か?
– A. 低 ATP/ADP 比
– B. 呼吸鎖による NAD
+への迅速な酸化に起因
する低 NADH 濃度
– C. 低 NAD
+/NADH 比
– D. 高濃度の AMP
– E. 低 GTP/GDP 比
代謝と 酸化的リ ン酸化と の関係
炭水化物、 脂肪酸、 アミ ノ 酸
酸化
C O
2
、 H
2O
還元
電子運搬物質
還元さ れた電子
運搬物質 +H
+酸素
還元さ れた電子
運搬物質
酸化
電子の
授受
ADP+Pi
H
+の
流れ
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酸化的リ ン酸化をたと えると …
H
+H
+の濃度勾配がA T P 生成の駆動力
H
+の濃度勾配
燃料電池
ポンプを回し てH
+をく み出し ている
H
+の流れで起電力
をつく り 、 その電力
で ATP を合成し てい
る
A T P を使っ て
化学反応をお
こ なっ ている。
汲み出す
酸化的リ ン酸化はミ ト コ ンド リ アの内部( マト リ ク
ス) でおこ なわれる
内膜は多く の小イ オン、 小分子、
大分子に対し て非透過的
電子伝達系 ATP シンタ ーゼ
マトリクス
TCA回路の酵素
脂肪酸酸化のための酵素
イラストレー テッド生化学 図6.7
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電子伝達系
ミトコンドリア
ミトコンドリアのマトリクス
ミトコンドリアの内膜 NADH, FADH2
酸素
水 NAD+, FAD
電子の流れ
エネルギーを放出 チトクロームオキ シダーゼ
複合体 I ∼ IV: 水素と 酸素を反応さ せてエネルギーを発生
複合体 V: ATP を合成
図6.8
プロト ン (H
+ ) ポンプと ATP 合成
ミトコンドリアの マトリクス
ミトコンドリアの 内膜と外膜の間
膜間空間 内膜
外膜
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微生物燃料電池
http://home.hiroshima-u.ac.jp/tkakizo/ 広島大学 柿園俊英研究室