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答申第146号「精神保健指定医の指定取消しに関する文書」部分開示決定に係る異議申立事案

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(1)

情個審 第 28 号 平成28年12月9日

茨城県知事 橋本 昌 殿

茨城県情報公開・個人情報保護審査会 委員長 大和田 一雄

行政文書部分開示決定等に対する異議申立てについて(答申)

平成27年11月12日付け障福諮問第4号で諮問のありました下記事案について,別 紙のとおり答申します。

「精神保健指定医の指定取消しに関する文書」部分開示決定等に係る異議申立事案

(2)

第1 審査会の結論

実施機関が別表「行政文書の名称」欄に掲げる文書を特定したことは妥 当であるが,同表「不開示部分」欄に掲げる部分を同表「不開示の理由」 欄に掲げる理由により不開示とした部分開示決定は,同表「開示相当部分」 欄に掲げる部分について,これを取り消し,開示すべきである。

第2 諮問事案の概要 1 行政文書の開示請求

平成27年10月11日,異議申立人は,茨城県情報公開条例(平成1 2年茨城県条例第5号。以下「条例」という。)第5条の規定に基づき, 茨城県知事(以下「実施機関」という。)に対して,次に掲げる内容の行 政文書の開示を請求(以下「本件請求」という。)した。

聖マリアンナ医科大学病院の医師が「精神保健指定医」の資格を不正 取得したなどとして,今年2度にわたって厚生労働省に指定を取り消さ れた件に関する情報一切。業務の再開等も含む。また,その件に付随す る診療報酬の不正・返還についての情報一切。

例えば,起案,議事録・会議報告書,大学からの文書,大学宛ての文 書,プレスリリース,アンケート,チラシ広告及びインターネット上の 告知の印刷・設置・配布,新聞や雑誌への広報,広報誌,講師の選定, 礼金の有無や金額,交通費や宿泊費や旅費,地方公務員法第35条及び 第38条に規定される文書並びにそれに相当する文書,贈与等報告書, 電話又はその他のメモ,講演・講座の依頼文,配布資料,レジュメ,写 真,映像,音声,原稿,電子メール,FAX,参加者数,キャンセル数, 申込数,職員側の出席者,その他の出席者,上記の添付文書,上記の関 連文書。上記に類する文書等々,とにかく全て。

2 実施機関の決定及び通知

平成27年10月28日,実施機関は,本件請求に係る行政文書として 別表「行政文書の名称」欄に掲げる文書を特定し,文書1から文書5まで を開示決定(以下「本件処分1」という。)するとともに,文書6から文 書15までの同表「不開示部分」欄に掲げる部分について,同表「不開示 の理由」欄に掲げる理由により不開示とする部分開示決定(以下「本件処 分2」といい,本件処分1と併せて「本件処分」という。)を行い,異議 申立人に通知した。

(3)

平成27年10月31日,異議申立人は,実施機関が行った本件処分の 取消しを求めて,行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の 規定に基づき,実施機関に対して異議申立てを行った。

第3 異議申立人の主張の要旨 1 異議申立ての趣旨

本件処分を取り消し,更に本件請求に係る行政文書を特定した上で,全 てを開示するとの決定を求める。

また,公益上の理由による裁量的開示を求める。

2 異議申立ての理由

異議申立人が,異議申立書及び異議申立人意見書等において主張してい るところは,おおむね次のとおりである。

(1)特定不足

ア 文書の探索が不十分であるか,適用除外又は解釈上の不存在という 判断が違法である。

イ 聖マリアンナ医科大学病院の精神科医が精神保健指定医の資格を違 法に取得した件(以下「本件事件」という。)に付随する診療報酬の 不正・返還に関して,神奈川県,横浜市,川崎市及び相模原市は,報 酬の返還を求めるのは難しいと判断しており,茨城県においても,報 酬の返還に関する判断やその経緯を示す文書等を特定すべきである。

ウ 報道によると,平成27年4月25日頃,聖マリアンナ医科大学病 院は,不当に受け取った診療報酬の自主返還を検討する考えを示して おり,当該病院から自主返納する旨の文書を収受しているのであれば, 対象の行政文書として特定すべきである。

エ 本件事件で処分を受けた精神保健指定医(以下「処分対象医師」と いう。)の判断の当否を検証した文書が,文書12の1枚しか特定さ れていない。その検証に対する報償費並びに検証に係る場所代,交通 費及びコピー用紙代といった情報も必要不可欠な情報である。

(4)

事実から,当該病院から障害福祉課に電話があった際に作成したメモ 等で行政文書に該当するものが存在するはずである。

カ 文書8に「18日に当該保健所,20日に障害福祉課様に報告した 実務以外に精神保健指定医としての従事と判断される実務がさらに確 認されました。」と明記されており,文書9にも同様の記述があるた め,少なくともその報告に係る文書が管轄保健所に存在するはずであ る。

(2)不開示部分の不開示情報非該当性 ア 条例第7条第2号非該当性

(ア)処分対象医師の氏名及び職歴に関する情報

精神保健指定医は,精神保健及び精神障害福祉に関する法律(昭 和25年法律第123号。以下「精神保健福祉法」という。)第1 9条の4第2項により,特別職の公務員に該当する。

処分対象医師の氏名は,厚生労働省が毎回公表しており,何人も 入手することができる。厚生労働省の担当者に公表した理由を問い 合わせたところ,公表慣行があること及び事件の重大性を挙げてい た。

内閣府情報公開・個人情報保護審査会の答申(平成16年度(独 情)答申第20号及び第21号)でも,法令の規定により又は慣行 として公にすることが予定されている情報に該当すると判断してい る。

さらに,処分対象医師の氏名,勤務先病院の名称及び勤務期間等 を開示することこそ,条例第1条及び第3条第1項の趣旨に合致す るものである。

本件事件の場合は,公表慣行があること並びに他の自治体におい て処分対象医師の氏名及び職歴に関する情報に相当するものが開示 されていることから,条例第7条第2号ただし書アに該当する。

(5)

とも処分対象医師の氏名及び職歴に関する情報は,これを公表して も社会通念上当該個人の正当な権利利益を侵害するおそれのある情 報とはいえない。

本件事件の問題の重大性に鑑みても,行政の説明責任の観点から も,公表慣行があると認められる。

処分対象医師の氏名及び職歴に関する情報は,本件事件について 患者やその家族が当該医師の勤務先病院においてインフォームド・ コンセントの権利を行使することで公になる情報である。

精神科病院の名称であれば,精神保健福祉法の規定に基づく調査 に関する文書を開示請求すれば開示になる情報であり,病院の名称 であれば,医療法(昭和23年法律第205号)の規定に基づく調 査に関する文書を開示請求すれば開示になる情報であり,医療機関 の名称は,公になっている情報に該当する。

精神保健指定医の氏名も同様であり,また,医師が精神保健指定 医であるか否かの情報は,厚生労働省や各厚生局(本件事件では関 東信越厚生局)に対して行政機関の保有する情報の公開に関する法 律(平成11年法律第42号。以下「情報公開法」という。)の規 定に基づいて開示請求すれば,開示になる。

処分対象医師に係る調査期間は,茨城県内で精神病床を有する全 ての精神科病院に対して医療法や精神保健福祉法の規定に基づく調 査に関する文書のうち保存期間内のもの一切を条例に基づいて開示 請求すれば,自ずと判明する情報である。

したがって,処分対象医師の氏名及び職歴に関する情報は,条例 第7条第2号ただし書全てに該当する。

(イ)厚生労働省職員の氏名

厚生労働省職員の氏名は,同職員が明らかに国家公務員であるか ら,条例第7条第2号ただし書ア及びウに該当する。

(ウ)筑波大学付属病院担当者の氏名

筑波大学付属病院担当者の氏名は,同担当者が明らかに独立行政 法人等職員であるから,条例第7条第2号ただし書ア及びウに該当 する。

(エ)患者に関する情報

(6)

イ 条例第7条第3号非該当性

処分対象医師の勤務先病院において不適切な医療が行われていたこ とは,れっきとした事実であり,それを公表しても当該病院の正当な 権利利益を害するおそれがあるとは認められない。

処分対象医師が勤務先病院で精神保健指定医の業務を実施していた という情報については,仮にそれを公開して法人等が否定的に評価さ れたとしても,それを秘匿することで法人等の社会的信用を維持する ことまで条例第7条第3号で保護しようとするものではない。万一実 施機関の危惧するところが現実になったとしても,やむを得ない結果 とみるべきであり,そうした反社会的事実を隠ぺいすることが病院経 営者らの正当な利益の範囲には含まれないことは,明らかである。さ らに,精神科医療機関に関して,社会的に重大な衝撃を与えた事件に 関する情報は,秘匿するよりも,むしろ精神科医療を改革改善する際 の有用な情報として公開することが,同号ただし書の趣旨にも合致す るというべきである。

(3)不開示の保護の非該当性

他の自治体において,本件処分2の不開示部分と同一の情報又はそれ に相当する情報が開示されていることから,公になっている当該情報は, 不開示の保護に値しない。

(4)精神医療領域の情報の公的性格

内閣府情報公開・個人情報保護審査会の答申(平成17年度(行情) 答申第299号)によると,精神保健指定医の職務・職責には極めて重 いものがあり,その立場は,高度な専門職であって,社会的責任の大き い極めて公的性格の強いものであることが認められるとしている。そし て,精神保健指定医の判断は,人の自由に対する権利に多大な影響を及 ぼすこともあるのであるから,そのような社会的責任の大きい立場にあ る精神保健指定医に対しては,その専門性が十分に満たされる者である ことを社会が期待することは当然であり,したがって,精神保健指定医 が十分な専門性を有しているかという情報については,広く一般に公に されることが要請されているものというべきであるとしている。

(7)

することになる。

(5)条例第9条該当性

実施機関に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったと考えている。 実施機関は,「本県で勤務実績のある精神保健指定医の診察内容につい て調査をしたところ問題は見当たら」ないことを理由に条例第9条該当 性を否定しているが,その調査手法に著しい問題があった。

処分対象医師の判断が適切だったかの再検証が,書類上間違いがない かということだけで済まされていた。本来であれば,処分対象医師の判 断とは別に不適切な判断と適切な判断を混ぜて再検証すべきで,処分対 象医師の判断であるということを念頭に再検証がされてしまっている。 ゆえに,本件処分2で不開示とした箇所を開示することが公益上特に 必要であるとは認められないとする実施機関の主張は,理由がない。

第4 実施機関の主張の要旨

実施機関が,諮問庁意見書等において主張しているところは,おおむね 次のとおりである。

1 文書の特定について

(1)文書の探索については,障害福祉課において再度探索を行ったが,別 表に掲げる行政文書以外の存在を確認することはできなかった。

(2)本県においては,処分対象医師による措置入院及び緊急措置入院に係 る診察の実績がないため,そもそも処分対象医師に対して報酬を支払っ ておらず,報酬の返還に関する判断をする必要がないことから,処分対 象医師に支払った報酬の返還に関する判断やその経緯を示す文書等は作 成していない。

(3)聖マリアンナ医科大学病院から自主返納する旨の文書について,文書 収受処理簿を確認したがそのような文書を収受した記録はなく,念のた め改めて探索を行ったが,存在を確認することはできなかった。

(4)処分対象医師の診察内容の調査は,本県の職員である障害福祉課職員 及び精神保健指定医の資格を有する精神保健福祉センター長により実施 したものであるため,報償費や場所代等が発生しておらず,それに関す る文書も作成していない。

(8)

員が作成したメモ等については,改めて探索を行ったが,その存在を確 認することはできなかった。通常,この種のメモ等は,正式な回答が提 出されるまでに利用されるものであって,仮に作成したとしても,その 内容は,回答の様式から推測すると,どの病院で従事実績(氏名,従事 期間及び措置入院・医療保護入院に係る診断件数)があったかを取り急 ぎ分かる範囲で聞き取ったものであると考えられることから,正式にF AXで回答があった後は不要になり廃棄したものと考えられる。

(6)処分対象医師の勤務先病院から平成27年4月18日に管轄保健所, 同月20日に障害福祉課へ報告があった際に作成した文書等については, 管轄保健所と障害福祉課で当該報告に関して調査したところ,電話によ るものであったことを確認したが,改めて探索を行ったが,その存在を 確認することはできなかった。また,電話による報告であったことから すると,聞き取った内容を記録するメモ等を作成した可能性もあるが, 上記(5)と同じ理由により,文書8の提出があった後には不要になり 廃棄したものと考えられる。

(7)適用除外については,精神保健指定医について定めている精神保健福 祉法で情報公開法の規定を適用しないとする定めもなく,現に条例第3 5条により適用除外とした文書等は存在しない。

(8)解釈上の不存在については,行政文書の要件を満たすにもかかわらず 条例の対象から除外した文書等は存在しない。

2 条例第7条第2号の該当性について

(1)別表「不開示の理由」欄で条例第7条第2号に該当するとした部分は, その内容から次に掲げる情報に分類できる。

ア 「担当者の氏名及びメールアドレス」(以下「厚生労働省担当者識 別情報」という。)

イ 「回答内容」,「病院の名称,院長名及び印影」,「病院の住所及 び連絡先」,「医師名及び勤務期間」,「医師名」,「医師の氏名及 び職歴等」及び「病院名及び対応者」(以下「特定処分対象医師識別 情報」という。)

ウ 「担当者名」(以下「病院担当者識別情報」という。)

(9)

(2)厚生労働省担当者識別情報については,特定の個人である厚生労働省 担当者を識別できる情報であるため同号本文に該当し,また,公にする 慣行があるとは認められないので,同号ただし書アに該当せず,同号た だし書イ及びウに該当する事情も認められないことから不開示とすべき 情報である。

(3)特定処分対象医師識別情報についても,指定取消処分された23名の うち本県で勤務実績のある精神保健指定医を識別できる情報であるため, 同号本文に該当する。

そして,指定取消処分された23名の精神保健指定医の氏名は既に新 聞等で公にされている情報であるが,本件処分で開示した部分と特定処 分対象医師識別情報を照合することにより,23名のうち本県で勤務実 績のある精神保健指定医が誰なのかといった情報(精神保健指定医の勤 務先の情報)を特定でき,これは公にされていない情報であるため同号 ただし書アに該当しない。また,本県で勤務実績のある精神保健指定医 の診察内容について調査をしたところ問題は見当たらず,特定処分対象 医師識別情報は,同号ただし書イに該当せず,同号ただし書ウに該当す る事情も認められないことから不開示とすべき情報である。

(4)病院担当者識別情報及び患者識別情報についても,特定の個人を識別 できる情報であるため同号本文に該当し,公にする慣行があるとは認め られないので,同号ただし書アに該当せず,同号ただし書イ及びウに該 当する事情も認められないことから不開示にすべき情報である。

3 条例第7条第3号の該当性について

別表「不開示の理由」欄で条例第7条第3号に該当するとした部分は, 「回答内容」,「病院の名称,院長名及び印影」,「病院の住所及び連絡 先」,「医師の氏名及び職歴等」及び「病院名及び対応者」であって,精 神保健指定医の指定を取り消された特定の医師の勤務先が分かる情報(以 下「病院情報」という。)である。

(10)

ら不開示とすべき情報である。

4 条例第9条の該当性について

異議申立人は「非開示部分は,いずれも,精神保健指定医の違法取得事 件の重大性に鑑みて条例第9条に該当する。」と主張しているが,条例第 9条に定める公益上の理由による裁量的開示は,保護される利益に優越す る公益上特別の理由があると認められる場合に限り,実施機関が行政判断 により開示するものであって,上記で述べたとおり,本県で勤務実績のあ る精神保健指定医の診察内容について調査をしたところ問題は見当たらず, 本件処分2において不開示とした部分を開示することが,公益上特に必要 があるとは認められない。

5 以上により,本件処分は条例に基づいた適正なものである。

第5 審査会の判断

当審査会は,本件諮問事案について審査した結果,次のように判断する。 1 聖マリアンナ医科大学病院に関連する精神保健指定医の指定の取消しに

ついて

厚生労働省は,精神保健指定医の指定申請時に,自ら担当として診断又 は治療等に十分な関わりを持っていない症例をケースレポートとして提出 した行為があったこと並びに指導医としての指導及び確認を怠りながら, 指導医としてケースレポートに署名をした行為があったことが精神保健福 祉法第19条の2第2項に規定する「指定医として著しく不適当と認めら れるとき」に該当するとして,平成27年4月15日付けで20名及び同 年6月17日付けで3名の精神保健指定医の指定を取り消した。

この指定の取消しに伴って,処分対象医師が過去5年間に勤務したこと のある医療機関が所在する都道府県等においては,当該医師が関与した, 精神保健福祉法で精神保健指定医が行うこととなっている業務(以下「指 定医業務」という。)の妥当性等について調査(以下「本件調査」という。) を行った。

2 本件異議申立てについて

(11)

られる。

3 本件処分の妥当性について

(1)本件対象行政文書の特定の妥当性について

異議申立人は,特定が不足している文書等を具体的に挙げて更に特定 を求めていることから,以下,本件対象行政文書の特定の妥当性につい て検討する。

ア 報酬の返還について判断したことが分かる文書等について

異議申立人は,神奈川県,横浜市,川崎市及び相模原市が報酬の返 還を求めるのは難しいと判断していることから,報酬の返還に係る判 断やその経緯を示す文書等を特定すべきであると主張している。

これに対して,実施機関は,処分対象医師による措置入院及び緊急 措置入院に係る診察の実績がないため,そもそも報酬を支払っておら ず,報酬の返還について判断する必要がないことから,報酬の返還や その経緯を示す文書等は作成していないと主張しているが,報酬を支 払っていなければ,当然に,返還を求めるか否かについて検討する必 要はないと認められ,実施機関の主張に不自然・不合理な点はない。 よって,実施機関において,報酬の返還について判断したことが分 かる文書等を保有しているとは認められない。

イ 聖マリアンナ医科大学病院から取得した診療報酬の自主返還に関す る文書について

異議申立人は,聖マリアンナ医科大学病院から,不当に受け取った 診療報酬を自主返還する旨の文書を受領しているのであれば,行政文 書として特定すべきであると主張している。

これに対して,実施機関は,文書収受処理簿を確認したところ,当 該文書を収受した記録はなく,障害福祉課において改めて探索を行っ たが存在を確認できなかったと主張しているが,その探索の方法及び 範囲に特段の問題はなく,実施機関の主張に不自然・不合理な点はな い。

よって,実施機関において,聖マリアンナ医科大学病院から取得し た診療報酬の自主返還に関する文書を保有しているとは認められない。

ウ 本件調査に要した費用が分かる文書等について

(12)

これに対して,実施機関は,本件調査について,報償費や場所代等 は発生しておらず,それに関する文書を作成していないと主張してい る。

この実施機関の主張は,職員による一般の調査と比較しても,不自 然・不合理な点はなく,これを覆すに足りる特段の事情も存しない。 よって,実施機関において,本件調査に要した費用が分かる文書等 を保有しているとは認められない。

エ 電話の内容を記録したメモ等について

異議申立人は,行政文書の要件を満たさないと判断された文書のう ち,実は行政文書の要件を満たすものが存在するはずであると主張し, 具体的には,処分対象医師の勤務先病院から障害福祉課に電話があっ た際に作成したメモ等を挙げている。

これに対して,実施機関は,当該メモ等について,探索を行ったが 存在を確認できず,仮に作成したとしても,その内容は,回答の様式 から推測すると,どこの病院で従事実績があったかを取り急ぎ分かる 範囲で聞き取ったものであって,正式に回答があった後は不要になり 廃棄したものと考えられると主張している。

この実施機関の主張に不自然・不合理な点はなく,これを覆すに足 りる特段の事情も存しない。

よって,実施機関において,電話の内容を記録したメモ等を保有し ているとは認められない。

オ 処分対象医師の勤務先病院が平成27年4月18日及び同月20日 に行った報告に係る文書等について

異議申立人は,文書8及び文書9に「18日に当該保健所,20日 に障害福祉課様に報告した実務以外に精神保健指定医としての従事と 判断される実務がさらに確認されました。」との記載があるため,処 分対象医師の勤務先病院が平成27年4月18日に管轄保健所に行っ た報告に係る文書が存在すると主張している。

これに対して,実施機関は,両日の報告は電話によるものであった ことを確認したが,管轄保健所及び障害福祉課において改めて探索を 行ったがその存在を確認できず,聞き取った内容を記録したメモ等を 作成した可能性もあるが,文書8の提出があった後は不要になり廃棄 したものと考えられると主張している。

(13)

よって,実施機関において,処分対象医師の勤務先病院が平成27 年4月18日及び同月20日に行った報告に係る文書等を保有してい るとは認められない。

カ 適用除外とした文書等について

条例第35条では,個別の法律により情報公開法の適用除外措置が とられている文書等を条例の適用除外としている。

異議申立人は,実施機関の適用除外であるという判断が違法である と主張しているが,精神保健指定医について定める精神保健福祉法に 情報公開法の適用除外に関する規定はなく,精神保健福祉法以外の法 律で本件請求に係る行政文書の適用除外措置を講じているとも考え難 い。

また,実施機関は,現に適用除外とした文書等は存在しないと主張 しており,これを覆すに足りる特段の事情も存しない。

よって,実施機関において,適用除外とした文書等が存在するとは 認められない。

キ 小括

以上のほか,本件対象行政文書以外に本件請求の対象として特定す べき文書等が存在する特段の事情も認められないことから,実施機関 が本件対象行政文書を特定したことは,妥当であると判断する。

(2)不開示情報該当性について

異議申立人は,実施機関が条例第7条第2号及び第3号アに該当する として不開示とした別表「不開示部分」欄に掲げる部分について,その 全部の開示を求めていることから,以下,当該部分の不開示情報該当性 について検討する。

ア 条例第7条第2号該当性について

(14)

(ア)厚生労働省担当者識別情報について

厚生労働省担当者識別情報は,厚生労働省の担当者の氏名及びメ ールアドレスであることから,特定の個人を識別することができ, 条例第7条第2号本文に該当することは明らかである。

しかし,厚生労働省では,「各行政機関における公務員の氏名の 取扱いについて(平成17年8月各府省情報公開に関する連絡会議 申合せ)」により,所属する職員の職務遂行に係る情報に含まれる 当該職員の氏名については,特段の支障の生ずるおそれがある場合 を除き,公にしていると認められることから,厚生労働省担当者識 別情報のうち「担当者の氏名」の部分については,異議申立人が主 張するとおり,慣行として公にされ,又は公にすることが予定され ている情報であり,同号ただし書アに該当すると認められる。

(イ)特定処分対象医師識別情報について

特定処分対象医師識別情報は,処分対象医師のうち茨城県内の医 療機関で勤務したことのある医師の氏名及び当該医療機関の名称を 明らかにする情報であることから,特定の個人を識別することがで き,条例第7条第2号本文に該当すると認められる。

厚生労働省のプレスリリースには,異議申立人が主張するとおり, 処分対象医師の氏名は掲載されているが,当該医師が勤務したこと のある医療機関の名称までは掲載されていないことから,特定処分 対象医師識別情報は,慣行として公にされ,又は公にされることが 予定されている情報であるとはいえず,同号ただし書アに該当しな いと認められる。

(ウ)病院担当者識別情報について

病院担当者識別情報は,茨城県内にある精神科病院の担当者の氏 名及び職名であることから,特定の個人を識別することができ,条 例第7条第2号本文に該当するのは明らかである。

異議申立人は,筑波大学附属病院担当者の氏名について,同担当 者が独立行政法人等の職員であることから,同号ただし書ア及びウ に該当すると主張している。

当審査会事務局職員をして筑波大学附属病院に確認させたところ, 同病院では,国家公務員に準じ,所属する職員の職務遂行に係る情 報に含まれる当該職員の氏名については,特段の支障の生ずるおそ れがある場合を除き,公にしているとのことであった。

(15)

名」の部分については,異議申立人が主張するとおり,慣行として 公にされ,又は公にすることが予定されている情報であり,同号た だし書アに該当すると認められる。

(エ)患者識別情報について

患者識別情報には,患者の氏名及び生年月日が含まれていること から,全体として,特定の個人を識別することができ,条例第7条 第2号本文に該当し,同号ただし書に該当する事情は存しないと認 められる。

なお,異議申立人は,患者の氏名や生年月日等を不開示とすれば, その他の部分を開示しても個人を特定できず,個人の権利利益を害 することにならないとも主張していることから,患者識別情報の同 号本文後段の該当性について検討する。

当審査会において見分したところ,患者識別情報のうち氏名及び 生年月日といった個人識別性のある部分を除いた残りの部分は,文 書9の2頁目の4行目,13行目及び17行目の1文字目から7文 字目までの部分については,公にしても,個人の権利利益を害する おそれがない情報であると認められる。しかし,これら以外の部分 については,患者の具体的な入院期間や病院での経過という,通常 他人に知られたくない情報であることから,公にすることにより, なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であると認められる ため,部分開示することはできない。

イ 条例第7条第3号ア該当性について

実施機関は,病院情報について,条例第7条第3号アに該当すると しているが,これを不開示としたことの妥当性については,上記ア(イ) のとおりであるから,同号該当性については,判断しない。

ウ 小括

実施機関が別表「不開示部分」欄に掲げる部分を同表「不開示の理 由」欄に掲げる理由により不開示とした本件処分2は,同表「開示相 当部分」欄に掲げる部分について,これを取り消し,開示すべきであ ると判断する。

4 異議申立人の主張について (1)裁量的開示の適用について

(16)

ても,実施機関が公益上特に必要があると認めるときは,当該実施機関 の高度な行政判断により裁量的開示を行うことができるとしている。

異議申立人は,特定の処分対象医師が関与した指定医業務に関する実 施機関の調査手法に著しい問題があったとして,裁量的開示を求めてい るが,上記3(2)のとおり,条例第7条第2号に該当し,不開示とす ることが妥当であると判断した部分については,これを不開示とするこ とにより保護される利益を上回る公益上の必要性があるとは認められな い。

よって,裁量的開示をしなかった実施機関の判断に,裁量権の逸脱又 は濫用があるとは認められないと判断する。

(2)異議申立人のその他の主張について

異議申立人のその他の主張は,開示・不開示の判断に影響を及ぼすも のではないと判断する。

5 結論

(17)

第6 審査会の処理経過

本件異議申立てに係る審査会の処理経過は,次のとおりである。

年 月 日 内 容

平成27年11月12日 諮問受理

平成27年12月15日 諮問庁意見書受理 平成28年 1月13日 異議申立人意見書受理 平成28年 2月23日 諮問庁補足意見書受理 平成28年 3月 9日 異議申立人補足意見書受理

(18)

別表

行政文書の名称 不開示部分 不開示の理由 開示相当部分

文書1

平成27年4月17日付け「聖マリ ア ン ナ 医 科 大 学 病 院 に 関 連 す る 精 神 保 健 指 定 医 の 指 定 取 消 処 分 に 係 る 該 当 者 の 本 県 で の 従 事 実 績 に つ いて(照会)」

文書2

平成27年4月28日付け「精神保 健 指 定 医 取 消 処 分 に 係 る 調 査 に つ いて(照会)」

文書3

「過去5年(平成22年2月~平成 27年4月)の指定医業務に係る調 査結果等報告書」

文書4

平成27年7月7日付け「聖マリア ン ナ 医 科 大 学 病 院 に 関 連 す る 精 神 保 健 指 定 医 の 指 定 取 消 処 分 に 係 る 該 当 者 の 本 県 で の 従 事 実 績 に つ い て(照会)」

文書5

「過去5年(平成22年2月~平成 27年6月)の指定医業務に係る調 査結果等報告書」

文書6

平成27年4月16日付け「聖マリ ア ン ナ 医 科 大 学 病 院 に 関 連 す る 精 神 保 健 指 定 医 の 指 定 の 取 消 し に つ いて」

担当者の 氏名及び メー ルアド レス

条例第7条第2号該当

個人に関する情報であって,当該情 報に含まれる氏名,生年月日その他の 記 述 等 に よ り 特 定 の 個 人 を 識 別 す る

(19)

ことができるものであり,ただし書の いずれにも該当しないため。

文書7

「 聖 マ リ ア ン ナ 医 科 大 学 病 院 に 関 連 す る 精 神 保 健 指 定 医 の 指 定 取 消 処分に係る調査」の回答

回答内容

条例第7条第2号該当

個人に関する情報であって,当該情 報に含まれる氏名,生年月日その他の 記 述 等 に よ り 特 定 の 個 人 を 識 別 す る ことができるものであり,ただし書の いずれにも該当しないため。

条例第7条第3号ア該当

法人に関する情報であって,公にす ることにより,当該法人の権利,競争 上 の 地 位 そ の 他 正 当 な 利 益 を 害 す る おそれがあるものに該当するため。

担当者名

条例第7条第2号該当

個人に関する情報であって,当該情 報に含まれる氏名,生年月日その他の 記 述 等 に よ り 特 定 の 個 人 を 識 別 す る ことができるものであり,ただし書の いずれにも該当しないため。

文書8

平 成 2 7 年 4 月 2 1 日 付 け 調 査 結 果報告

病院の名 称,院長 名及 び印影 並びに病院の住所及び連絡先

条例第7条第2号該当

個人に関する情報であって,当該情 報に含まれる氏名,生年月日その他の 記 述 等 に よ り 特 定 の 個 人 を 識 別 す る ことができるものであり,ただし書の いずれにも該当しないため。

(20)

法人に関する情報であって,公にす ることにより,当該法人の権利,競争 上 の 地 位 そ の 他 正 当 な 利 益 を 害 す る おそれがあるものに該当するため。

医師名及び勤務期間

条例第7条第2号該当

個人に関する情報であって,当該情 報に含まれる氏名,生年月日その他の 記 述 等 に よ り 特 定 の 個 人 を 識 別 す る ことができるものであり,ただし書の いずれにも該当しないため。

患者名, 生年月日 ,入 院期間 及び実務内容

条例第7条第2号該当

個人に関する情報であって,当該情 報に含まれる氏名,生年月日その他の 記 述 等 に よ り 特 定 の 個 人 を 識 別 す る ことができるものであり,ただし書の いずれにも該当しないため。

文書9

平 成 2 7 年 4 月 2 2 日 付 け 調 査 結 果報告

病院の名 称,院長 名及 び印影 並びに病院の住所及び連絡先

条例第7条第2号該当

個人に関する情報であって,当該情 報に含まれる氏名,生年月日その他の 記 述 等 に よ り 特 定 の 個 人 を 識 別 す る ことができるものであり,ただし書の いずれにも該当しないため。

条例第7条第3号ア該当

法人に関する情報であって,公にす ることにより,当該法人の権利,競争 上 の 地 位 そ の 他 正 当 な 利 益 を 害 す る

(21)

おそれがあるものに該当するため。

医師名

条例第7条第2号該当

個人に関する情報であって,当該情 報に含まれる氏名,生年月日その他の 記 述 等 に よ り 特 定 の 個 人 を 識 別 す る ことができるものであり,ただし書の いずれにも該当しないため。

患者名及び病院での経過

条例第7条第2号該当

個人に関する情報であって,当該情 報に含まれる氏名,生年月日その他の 記 述 等 に よ り 特 定 の 個 人 を 識 別 す る ことができるものであり,ただし書の いずれにも該当しないため。

文書10 平成27年5月7日付け「回答書」 医師名

条例第7条第2号該当

個人に関する情報であって,当該情 報に含まれる氏名,生年月日その他の 記 述 等 に よ り 特 定 の 個 人 を 識 別 す る ことができるものであり,ただし書の いずれにも該当しないため。

文書11

平成27年5月22日付け「聖マリ ア ン ナ 医 科 大 学 病 院 に 関 連 す る 精 神 保 健 指 定 医 の 指 定 取 消 事 案 を 受 けた今後の対応について」

担当者の 氏名及び メー ルアド レス

条例第7条第2号該当

個人に関する情報であって,当該情 報に含まれる氏名,生年月日その他の 記 述 等 に よ り 特 定 の 個 人 を 識 別 す る ことができるものであり,ただし書の いずれにも該当しないため。

(22)

医師の氏名及び職歴等

条例第7条第2号該当

個人に関する情報であって,当該情 報に含まれる氏名,生年月日その他の 記 述 等 に よ り 特 定 の 個 人 を 識 別 す る ことができるものであり,ただし書の いずれにも該当しないため。

条例第7条第3号ア該当

法人に関する情報であって,公にす ることにより,当該法人の権利,競争 上 の 地 位 そ の 他 正 当 な 利 益 を 害 す る おそれがあるものに該当するため。

文書12

「 聖 マ リ ア ン ナ 医 科 大 学 病 院 に 関 連 す る 精 神 保 健 指 定 医 の 指 定 取 消 事 案 に 係 る 特 定 の 病 院 に お け る 該 当医師の診察内容の調査について」

病院名及び対応者

条例第7条第2号該当

個人に関する情報であって,当該情 報に含まれる氏名,生年月日その他の 記 述 等 に よ り 特 定 の 個 人 を 識 別 す る ことができるものであり,ただし書の いずれにも該当しないため。

条例第7条第3号ア該当

法人に関する情報であって,公にす ることにより,当該法人の権利,競争 上 の 地 位 そ の 他 正 当 な 利 益 を 害 す る おそれがあるものに該当するため。

医師名

条例第7条第2号該当

(23)

ことができるものであり,ただし書の いずれにも該当しないため。

患者の氏 名,生年 月日 及び入 院日時等

条例第7条第2号該当

個人に関する情報であって,当該情 報に含まれる氏名,生年月日その他の 記 述 等 に よ り 特 定 の 個 人 を 識 別 す る ことができるものであり,ただし書の いずれにも該当しないため。

文書13

平成27年6月17日付け「聖マリ ア ン ナ 医 科 大 学 病 院 の 指 定 医 申 請 に 関 わ っ た 指 導 医 の 指 定 取 消 し に ついて」

担当者の 氏名及び メー ルアド レス

条例第7条第2号該当

個人に関する情報であって,当該情 報に含まれる氏名,生年月日その他の 記 述 等 に よ り 特 定 の 個 人 を 識 別 す る ことができるものであり,ただし書の いずれにも該当しないため。

担当者の氏名

文書14

平成27年7月6日付け「聖マリア ン ナ 医 科 大 学 病 院 に 関 連 す る 精 神 保 健 指 定 医 の 指 定 取 消 事 案 を 受 け た今後の対応について(再依頼)」

担当者の 氏名及び メー ルアド レス

条例第7条第2号該当

個人に関する情報であって,当該情 報に含まれる氏名,生年月日その他の 記 述 等 に よ り 特 定 の 個 人 を 識 別 す る ことができるものであり,ただし書の いずれにも該当しないため。

担当者の氏名

文書15

「 聖 マ リ ア ン ナ 医 科 大 学 病 院 に 関 連 す る 精 神 保 健 指 定 医 の 指 定 取 消 処分に係る調査」の回答

担当者名

条例第7条第2号該当

個人に関する情報であって,当該情 報に含まれる氏名,生年月日その他の 記 述 等 に よ り 特 定 の 個 人 を 識 別 す る ことができるものであり,ただし書の いずれにも該当しないため。

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