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(1)

講義ノート2:二期間競争均衡モデル

稲葉 大

2008 11 10

update 2010 5 21

update 2010 5 26

目 次

I 経済環境 2

I.1 家計の効用 . . . 2 I.2 生産技術 . . . 3

II 家計と企業の行動 5

II.1 家計の効用最大化問題 (Consumer Problem (CP)) . . . 5 II.2 企業の利潤最大化問題 (Firm Problem (FP)) . . . 9 II.3 競争均衡 (Competitive Equilibrium) . . . 10 III 中央計画者問題 (Social Planner Problem) 12 III.1 厚生経済学の定理(The Welfare Theorem) . . . 13

近年のマクロ経済学の中心は,リアル・ビジネスサイクル(real business cycle: RBC) と, RBC の問題点を修正しつつ派生した動学的確率一般均衡モデル (dynamic stochastic general equilibrium model: DSGE model) である.リアル・ビジネスサイクルモデルのミクロ経済学的 な基礎になるのが,動学的一般均衡である.このモデルはRamsey(1928) により提示されたの がはじめであるためラムゼイ・モデル,または最適成長モデルと呼ばれる.まずは簡単化のた めに二期間の問題を紹介する.ソローモデルでは,貯蓄率(s) が一定であった.これは消費の 割合(1 − s) が一定であることを意味している.つまり消費の選択については,特に経済学的な モデルが想定されていなかったことになる.ここでは,二期間生きる消費者が,その間に受け 取る所得をどのように消費するかといった,異時点間の消費選択の問題を考察することにする.

(以下の議論は,Gertler の講義ノートをベースにしているが,モデルや説明などは,大分異なっ ている.)

(2)

I 経済環境

• 経済の期間は t = 0, 1 の二期間であるとする.

• 家計(消費者 consumer)は代表的家計 (one representative household) として表されると する

1

• 家計は,資本と労働を所有している.資本を企業にレンタルすることでレンタル料を得 る.労働を企業に提供することで賃金を得る.この家計は労働力を1 単位保有しており, 労働供給はつねに1 単位であると仮定する(非弾力的労働供給)2

• 家計は企業を所有しており,企業の利潤は配当として家計に支払われる.(ただし競争的 企業を仮定しているため配当はゼロである.以下では配当を明記しない.)

• 家計は,各期得られる所得を,消費と貯蓄に振り分ける.貯蓄を原資として,投資を行い, 資本ストックを増やす.

• 代表的な企業は,資本と労働を生産要素として,家計から雇い生産を行う.家計も企業も 競争的に行動すると仮定する.つまり,両者とも,価格決定に影響力を持たず,市場の価 格を所与としてプライス・テイカーとして行動する.

• この経済の財 (goods) は,消費ができ,また投資として資本蓄積にも使えるとする.

I.1 家計の効用

家計は,二期間の効用の現在価値を最大にするように各期の消費を決定する.家計の効用関 数は,次のようにあらわされる.

(1) u(c0) + βu(c1)

ここで0 < β < 1 は,割引因子 (discount factor) である3u(·) は効用関数であり, u(0) = 0, u(·) > 0, u′′(·) < 0, u(0) = ∞, u(∞) = 0

という性質をもつと仮定する.

効用関数u(·) の性質は,増加関数で,凹関数 (concave function) である4.これは限界効用 (marginal utility) は正であるが,逓減していくことを表現している.割引因子 β は,家計が将 来のことをどの程度考えているかという重みを表しており,家計の主観的割引因子という.

1

代表的な家計だけでマクロ経済の家計を表すというのは単純すぎるように見える.しかし市場が十分に整備さ れている場合には,多くの主体がいる経済において,各個人の消費の動きは,経済全体の消費の動きとパラレルに なることが知られている.このとき代表的家計モデルが正当化される.詳しくは後の講義でカバーする予定.また 斎藤(2006) の3章,Ljungqvist and Sargent(2004) の8章を参照.

2

この仮定は後に緩める.

3β の変わりに,1+ρ1 を使い,

u(c0) + 1 1 + ρu(c1)

このときρ を割引率(discount rate) と呼ぶ.これらの違いに注意すること.

4

凹関数につちいては,チャン(1995) および西村 (1990) を参照.

(3)

I.2 生産技術

企業の生産技術は,生産関数としてあらわされる.投入される生産要素は資本K と労働 L で ある.

(2) Yt= Ft(Kt, Lt)

生産関数には次のような仮定を設ける.

1. 規模に関して収穫一定 (Constant return to scale)

全ての投入をz 倍するとき,生産量も z 倍される.つまり任意の正の実数 z について, zYt= Ft(zKt, zLt)

が成立する.

2. 各投入要素について増加関数 (increasing function with respect to each input) M P K = ∂Y

∂K >0, M P L=

∂Y

∂L >0

MPK: 資本の限界生産力 (marginal product of capital) MPL: 労働の限界生産力 (marginal product of labor)

3. 各投入要素について限界生産力逓減 (diminishing marginal product with respect to each input)

∂M P K

∂K =

2Y

∂K2 <0,

∂M P L

∂L =

2Y

∂L2 <0 4. 稲田条件 (Inada condition)

K→0lim

∂Y

∂K = ∞, K→∞lim

∂Y

∂K = 0,

L→0lim

∂Y

∂L = ∞, L→∞lim

∂Y

∂L = 0.

代表的家計は,一人であるから一人当たりの生産関数を考えてみる.生産関数の規模に関し て収穫一定の仮定より,任意の正の整数z について zYt = Ft(zKt, zLt) が成立する.いま z = L1t とすると,

zYt = Ft(zKt, zLt)

⇐⇒ Yt Lt = Ft(

Kt Lt,1) とかくことができる.ここで,

yt Yt

Lt, kt Kt Lt

(4)

と定義をすると,一人あたりの生産関数は, yt≡ Ft(kt,1)

と書くことができる.Ft(kt,1) ≡ f (kt) と定義する. (3) yt= f (kt)

この関数f(kt) の形は,次のようになる(証明略). M P K= f(k) > 0

f′′(k) < 0 limk→0f

(k) = ∞

k→∞lim f

(k) = 0

(5)

II 家計と企業の行動

II.1 家計の効用最大化問題 (Consumer Problem (CP))

代表的家計は,予算の制約のもとで,効用を最大にするように消費と投資を決定する. (CP) max

c0,i0,c1,i1

u(c0) + βu(c1)

各期の予算の制約は,次のようになる. c0+ i0 = w0+ r0a0

(4)

c1+ i1 = w1+ r1a1

(5)

a1− a0 = i0− δa0

(6)

a2− a1 = i1− δa1

(7)

a0 = a0

(8)

a2 ≥ 0. (9)

(4) 式は,第 0 期の家計の予算制約である.a は家計が保有している資本ストックであり,初期 の保有量a0a0与えられている.w は実質賃金(real wage) である.この家計の労働力は単位 と仮定しているため,労働所得はw∗ 1 となる.資本の r は実質レンタル料 (real rental price) である.家計が持る資本を企業にレンタルするときの価格である

5

.つまり第0 期に,家計は資 本と労働から,所得を得る.得た所得を消費と投資に配分する.(5) 式は,第 1 期の予算制約で ある.(6),(7) は資本蓄積を表している.

経済はここで終了するため,第1 期末(2 期)に残す資本が a2である.上の定式化では,a2 ≥ 0 であるが,均衡ではa2 = 0 となる.たとえば a2 >0 で経済が終わったとしよう.すなわち家計は, また消費できる財を残したまま死んでしまったことになる.もっと消費をすれば,効用をより高い 水準へと高めることができるため,a2 >0 は最適ではない.これを横断性条件 (transversality condition) と呼ぶ.逆に,a2 <0 である場合は,家計が負債を残して死んでしまった状態を表 す.負債を残して死んでしまうような家計には貸す人がいなくなってしまうため,こうした状 態は経済学的に排除される.これは非ポンジ・ゲーム条件(no-Ponzi-game condition) と呼 ぶ

6

.この問題では,はじめからa2 ≥ 0 を課しているため,当然満たされている.以上から,a2

はゼロとなる.以下ではあらかじめa2 = 0 として考察する.数学的な取扱いは,ラグランジュ 乗数法によるコラムを参照.

予算制約を用いてc0,c1,i0,i1を代入して消去すると,家計の問題は次のように書きなおす ことができる.

(10) max

a1

u(w0 − a1+ (1 + r0− δ)a0

)+ βu(w1+ (1 + r1− δ)a1

)

a1について,微分して最大化のための一階条件(first order conditions, F.O.C.s) を取ると, (11) −u(c0) + βu(c1)(1 + r1− δ) = 0

5

家計はプライス・テイカーであるため,w と r は家計にとって所与である.

6Ponzi が,ネズミ講に似た仕組みで儲けたことに由来する.

(6)

となる

7

.少し変形すると, (12) u(c0) = βu(c1)(1 + r1− δ)

と書くことができる.これは消費のオイラー方程式(Euler equation) と呼ばれる.(14) 式の左辺 は,第0 期の消費を限界的に一単位止めて,変わりに貯蓄を行ったときの機会費用 (opportunity cost) が限界効用 (marginal utility) であることを表している.一方右辺は,第 0 期に貯蓄して変 わりに第1 期に消費したときの限界的なベネフィットである.つまり,効用最大化の一階条件 は,現在の消費をあきらめて,貯蓄して,将来の消費に回したときの,限界的なコストと限界 的なベネフィットが等しいとあらわされる.

ここで,予算制約(4),(5),(6),(7) をまとめてみると次のようになる. (13) c0+ c1

1 + r1− δ = w0+

w1

1 + r1− δ + (1 + r0− δ)a0

この式の右辺は,「第0 期の労働所得+第 1 期の労働所得の割引現在価値+第 0 期に持っている 資本から得られる所得」になっており,家計が生涯に得られる所得の割引現在価値になってい る.左辺は,家計が生涯に行う消費の割引現在価値である.よって,(13) 式は家計の異時点間 の予算制約(intertemporal budget constraint) と呼ばれる.

家計の最適な消費計画(c0c1)は,オイラー方程式と,異時点間の予算制約に基づいて決ま る.これは直観的には,次のように考えれば良い.オイラー方程式から,

(14) u

(c0)

βu(c1) = (1 + r1− δ)

と書ける.左辺は異時点間の消費の限界代替率(marginal rate of substitution: MRS),一方右 辺は投資のリターンである.つまり,限界代替率とリターンとが等しくなるように消費が選ば れる.効用関数の凹性から,図1 のようなところで消費が選択される.

消費は現在の所得ではなく,生涯の所得に基づいて決定されるのである.この異時点間の消 費選択の問題は,Friedman の恒常所得仮説 (permanent income hypothesis) や Modigliani のラ イフサイクル仮説(life cycle hypothesis) と基本的に同じであることに注意したい.恒常所得仮 説とは,人々の消費は,一時的な所得の変化にはほとんど反応せず,恒常的な所得に反応する というものである.恒常的な所得を生涯の平均賃金と解釈すれば,人々は生涯の所得に基づい て消費を決定し,一時的な所得の変化に影響される消費をスムースにしていると考えることが できる.ライフサイクル仮説は,もどうように生涯の所得を考慮した消費決定であり,異時点 間の消費選択の問題と同値である.

これらのモデルから,重要なインプリケーションが得られる.消費者は所得の変化が一時的 か,恒常的かによって消費の反応が異なる.つまり所得の変化が一時的か,恒常的かによって 限界消費性向(marginal propensity to consume) が異なってくる.一時的な所得の変化には消費 者は反応せず,限界消費性向はゼロに近い.一方恒常的な所得の変化に対しては,限界消費性

7

一階条件は効用最大化のための必要条件である.つまり一階条件が満たされているからといって,必ずしも利 潤が最大になっているとは限らない.最大化の必要十分条件は,一階条件に加えて,二階条件があることである. ここでは,効用関数の仮定から二階の条件が満たされている.詳しくはチャン(1995) および西村 (1990) を参照.

(7)

c0

c1

c0

c1 O

u(c0) + βu(c1)

予算制約(11) 式

図 1: 異時点間の最適化問題

向が大きくなる.つまり,ケインズ型消費関数において,限界消費性向は一定であると仮定さ れているが,実は限界消費性向は所得の変化が一時的か恒常的かという特性に依存しているの である.Lucas(1976) は,限界消費性向のような本来経済環境に応じて内生的に決まってくるパ ラメーターを,普遍的な構造パラメーターとして一定だと取り扱ってしまうケインズ経済学の 方法論的問題点を批判している.これはルーカス批判(Lucas critique) と呼ばれる.(この段落 の記述は斎藤(2006) 第 2 章 2.5.2 節に基づいている.

(8)

ラグランジュ乗数法による解法

この問題(CP) の解法は,いろいろある.ここでは2期間の問題であるため,変数を消去 することで,簡単な問題に置き換えて解くことができる.後に考察する多期間および無限 期間の問題ではこのような方法を利用することができない.その時は例えばラグランジュ 乗数法などを利用することになる.計算を簡単にするため,i0,i1を消去して,問題(CP) を次のように変えておく,

c0,cmax1,a1,a2

u(c0) + βu(c1) subject to

c0+ a1− (1 − δ)a0 = w0+ r0a0

c1+ a2− (1 − δ)a1 = w1+ r1a1

a0 = a0

a2 ≥ 0.

ラグランジアンを以下のように定義する. L = u(c0) + βu(c1) + λ0

[

w0+ r0a0−{c0+ a1− (1 − δ)a0

}] + λ1

[

w1+ r1a1−{c1+ a2− (1 − δ)a1

}]

+ λ−1(a0− a0) + λ2a2.

以下ラグランジュ乗数法を適用し,ラグランジアンをc0, c1, a1, λ0, λ1, a2, λ2で微分した微 分係数をゼロとおくと,最大化のための一階条件は,

∂L

∂c0

= 0 ⇐⇒ u(c0) = λ0

(15)

L

∂c1

= 0 ⇐⇒ βu(c1) = λ1

(16)

∂L

∂a1

= 0 ⇐⇒ λ0 = λ1(1 + r1− δ) (17)

∂L

∂λ0

= 0 ⇐⇒ c0+ a1− (1 − δ)a0 = w0+ r0a0

(18)

∂L

∂λ1

= 0 ⇐⇒ c1− (1 − δ)a1 = w1+ r1a1

(19)

∂L

∂a2

= 0 ⇐⇒ λ1 = λ2

(20)

a2 ≥ 0, λ2 ≥ 0 かつλ2a2 = 0 (クーン・タッカー条件) (21)

∂L

∂λ−1

= 0 ⇐⇒ a0 = a0 (初期条件) (22)

次頁に続く.

(9)

ここで,λ0λ1を消去すれば, u(c0) = βu(c1)(1 + r1− δ) c0+ a1− (1 − δ)a0 = w0+ r0a0

c1− (1 − δ)a0 = w1+ r1a1

となり,本文の(14) と同じオイラー方程式を求めることができる.下の2本の式は各期の 予算制約式である.

8(21) 式は,クーン・タッカー条件と呼ばれる. λ2a2 = 0

は相補性条件(complementary slackness condition)と呼ばれ,a2 >0 のとき,λ2 = 0,ま たa2 = 0 のとき,λ2 > 0 であることを表している.λ1 >0 かつ λ1 = λ2より,λ2 >0 で あるから,k2 = 0 であるとわかる.クーン・タッカー条件から本文の横断性条件を導くこ とができた.

ラグランジュ乗数法,非線形計画およびクーン・タッカー条件については,チャン(1995) および西村(1990) を参照すること.

II.2 企業の利潤最大化問題 (Firm Problem (FP))

企業は各期利潤を最大にするように,雇うべき資本と労働を決める.企業の利潤は, (23) max

Kt,Lt

Ft(Kt, Lt) − rtKt− wtLt · · · for t = 0, 1

と表せる.Ltで割り,一人当たりの利潤であらわせば,労働力は均衡では1であるので,資本 の投入だけを決めれば良いことになる.

(24) max

kt

f(kt) − rtkt− wt · · · for t = 0, 1

ktは企業が需要する資本量である.利潤最大化の一階条件は

9

, (25) f(kt) = rt · · · for t = 0, 1

実質賃金wtは,資本への支払いの残りが支払われる

10

. (26) wt= f (kt) − rtkt · · · for t = 0, 1

9

一階条件は利潤最大化のための必要条件である.つまり一階条件が満たされているからといって,必ずしも利 潤が最大になっているとは限らない.利潤最大化の必要十分条件は,一階条件に加えて,二階条件があることであ る.ここでは,生産関数の仮定から二階の条件が満たされている.詳しくはチャン(1995) および西村 (1990) を参 照.講義でも時間があれば解説する.

10

生産関数は規模に関して収穫一定であるため,オイラーの定理が成立する.そのため企業の超過利潤はゼロで ある.

(10)

II.3 競争均衡 (Competitive Equilibrium)

競争均衡とは,一般に次のように定義できる(この定義は,マッキャンドレス=ウォレス(1994) に基づく).

定義 競争均衡(competitive equilibrium) とは次の二つの条件を満たす一組の価格と 数量である.

1. 数量は,価格と初期保有量を所与として,購入可能なすべての数量集合のなかから, 経済主体が効用(または利潤)を最大化するように選択したものである.(各経済主 体の最適化)

2. すべての期日 t において,その数量によってすべての市場の需給が一致している.(市 場清算条件(market clearing condition) および資源制約 (resource constraint)). 言い換えれば家計,企業といったプライス・テイカーである競争的な経済主体が,市場価格 と初期賦存量を所与としてそれぞれが最適に行動している.主体的均衡が達成されているとい う.そして資源制約が満たされ,すべての市場の需給が一致している.これを競争均衡と定義 している.

よって,今考えているモデルでの競争均衡は次のように定義できる.

競争均衡

 この経済の競争均衡は,以下を満たすような配分(allocation){ct, it, at+1, kt+1, yt}お

よび価格(prices){wt, rt}である.

1. 家計は,市場価格{w0, w1, r0, r1}および初期保有量a= 0 を所与として,効用を最 大にするように,c0, c1, i0, i1, a1, a2を決めている.

2. 企業は,市場価格{w0, w1, r0, r1}を所与として,利潤を最大にするように,投入で ある資本k0, k1を決めている.

3. 市場清算 (market clearing):労働市場,資本市場の需給は一致している.

• 労働市場: 家計の労働供給  1  = 企業の労働需要  1

• 資本市場: 家計の資本供給  at = 企業の資本需要 kt

4. 資源制約:各期の財市場の需給は一致している. c0+ i0 = y0

c1+ i1 = y1

(11)

問題を再掲しながら整理すると,

1. 家計は,市場価格{w0, w1, r0, r1}を所与として,次の効用最大化問題を解いている. (CP) max

c0,i0,c1,i1

u(c0) + βu(c1)

各期の予算の制約は,次のようになる. c0+ i0 = w0+ r0a0

c1+ i1 = w1+ r1a1

a1− a0 = i0− δa0

a2− a1 = i1− δa1

a0 = a0

a2 ≥ 0.

2. 企業は,市場価格{w0, w1, r0, r1}を所与として,利潤最大化問題を解いている. (FP) max

kt

f(kt) − rtkt− wt · · · for t = 0, 1

3. 市場が均衡している.

• at = kt

• ct+ it= yt

F.O.C.s と均衡条件をまとめると, u(c0) = βu(c1)(1 + r1− δ) (27)

f(kt) = rt

(28)

wt = f (kt) − rtkt (29)

yt = f (kt) (30)

ct+ it = yt (31)

it= kt+1− (1 − δ)kt

(32)

k0 = k0

(33)

k2 = 0. (34)

ただし,t= 0, 1.

(12)

III 中央計画者問題 (Social Planner Problem)

中央計画者問題とは、資源制約と生産関数の下で、計画当局が経済の全ての主体に消費計画 を提示して、それを実行させることができる問題のこと.中央計画者は,代表的家計と同じ効 用を持っているとする(あるいは代表的家計の効用を最大にするように行動している)ときの, 中央計画者問題は次のようになる.

(SP)   max

c0,i0,c1,i1

u(c0) + βu(c1) s.t. c0+ i0 = f (k0)

c1+ i1 = f (k1) k1− k0 = i0− δk0

k2− k1 = i1− δk1

k0 = k0

k2 ≥ 0.

中央計画者が経済の配分を決定する問題なので,ここには市場は存在しない.よって当然な がら,市場価格というものも,ここでは登場しない.中央計画者は,代表的家計の効用を最大 にするように,その経済の生産技術に基づいて生産を行い,生産物を配分していくという問題 を解いているのである.

上記の問題から,i と k2を消去してみると,

cmax0,c1,k1

u(c0) + βu(c1)

s.t. c0 + k1− (1 − δ)k0 = f (k0) c1 − (1 − δ)k1 = f (k1) k0 = k0

k2 ≥ 0.

という問題になる.ここでは簡単に,c0, c1を代入して11

maxk1

u(f(k0) − k1+ (1 − δ)k0

)+ βu(f(k1) + (1 − δ)k1

)

を解くことにする

12

.一階条件は,

− u(c0) + βu(c1){f(k1) + (1 − δ)}= 0

⇐⇒ u(c0) = βu(c1){f(k0) + (1 − δ)}

11

横断面条件より,k2= 0 となることを確認しておくこと.

12

ラグランジュ乗数法による解法は,詳しくは多期間モデルのときに説明するが,先のコラムを参照して,練習 問題として取り組んでおくと良い.

(13)

よって,中央計画者問題のシステムは次のようにまとめられる. u(c0) = βu(c1){f(k1) + (1 − δ)}

(35)

c0+ k1− (1 − δ)k0 = f (k0) (36)

c1− (1 − δ)k1 = f (k1) (37)

k0 = k0

(38)

k2 = 0. (39)

III.1 厚生経済学の定理( The Welfare Theorem

ここでの記述は厳密性に欠ける.より詳しくは,Ljungqvist and Sargent (2004) や,ミクロ 経済学のテキストを参照.

厚生経済学の第一定理(First Welfare Theorem) 競争均衡の配分である{ct, kt+1}

1

t=0を想定する.この配分は,社会的に最適(socially op- timal) である.つまり,この配分は中央計画者問題の解になっている.

Proof

{ct, kt}1t=0は,競争均衡の配分であるため,家計と企業の最適化のための必要条件を満たしてい る.家計と企業の最適化のための必要条件(27),(28) から,

(40) u(c0) = βu(c1){f(k1) + (1 − δ)}

を導くことができる.これは中央計画者問題の最適化の必要条件である(35) とまったく同じで あるため,競争均衡の配分である{ct, kt+1}

1

t=0は,中央計画者問題の解になっている.Q.E.D.

厚生経済学の第二定理(Second Welfare Theorem) 中央計画者問題の配分である{ct, kt+1}

1

t=0を想定する.これらは,中央計画者問題の配分 であるため社会的に最適な配分である.このとき,すべての市場が清算する配分ような {ct, at+1, kt+1}1t=0とともに,競争均衡を形成するような価格{wt, rt}

1

t=0が存在する.

Proof

第一に,中央計画者問題の配分では,すべての市場清算条件(market clearing condition) は成立 している.労働市場と資本市場では,中央計画者問題の定義から市場清算している.財市場も また,資源制約を満たしている((36),(37)) ことから,市場清算している.

次に,価格を次のように作ると, rt = f(kt)

(41)

wt= f (kt) − rtkt (42)

これは,企業の利潤最大化の必要条件を構成している.

最後に,中央計画者問題の(35) から,家計の最適化の必要条件である (27) が導かれる.Q.E.D.

(14)

参考文献

[1] チャン, A., C., (1995),『現代経済学の数学基礎〈上〉〈下〉』,CAP 出版 [2] Romer, David, (2005) “Advanced Macroeconomics”, 3rd edition, McGraw-Hill.

[3] Ljungqvist, Lars and Thomas Sargent, (2004), “Recursive Macroeconomic Theory,” 2nd edition, MIT Press.

[4] Lucas, Robert, (1976), “ Econometric Policy Evaluation: A Critique,” in K. Brunner and H. Meltzer (eds.), The Phillips Curve and Labor Markets, Amsterdam: North-Holland, 19-46.

[5] マッキャンドレス, G., ウォーレス, N., 『動学マクロ経済学―世代重複モデルによる分析』, 創文社,1994.

[6] Ramsey, F. P., (1928), “A Mathematical Theory of Saving,” Economic Journal, 38, 152, 543-559.

[7] 齊藤誠,(2006), 『新しいマクロ経済学―クラシカルとケインジアンの邂逅』,有斐閣,新版. [8] 西村清彦,(1990),『経済学のための最適化理論入門』,東京大学出版会.

参照

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